流動性知能,結晶性知能の意味

皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「流動性知能,結晶性知能」について解説していきます。

流動性知能,結晶性知能

目次は以下の通りです。

①提唱者
②流動性知能の意味とは
③結晶性知能の意味とは
④検査の仕方

是非最後までご一読ください。

提唱者

流動性知能と結晶化知能は、1960年代にレイモンドキャッテルと教え子のジョンL.ホーンによってさらに発展しました[1]

キャッテルは心理学を統計的に分析する第1人者で、知能や性格を科学的に明らかにする手法を生み出してきました。

流動性知能,結晶性知能とは

流動性知能 fluid intelligence (gf) 

流動性知能とは以下の意味があります。

新しい場面への適応を必要とする際に働く能力 臨機応変に問題を解決する創造的な知能[2]

流動性知能があると、初めて経験するような新しい場面に遭遇した際に「どのように行動すればよいか」「どう対処すればよいか」と考え振る舞うことができます。流動性一般能力と呼ぶこともあります。

具体例

計算力 暗記力 法則を発見する力
新しい電子機器を使いこなす
新しい社会の仕組みを発見する
企画をして動画を作成する

年齢

新しいことを知能として定着させるため、加齢による低下がみられることが特徴です。Salthouse(2004)の研究では、新聞広告に応募してきた1000名以上の被験者を対象に、流動性知能である「処理速度」「推論」「記憶」を年代別に調べました。その結果が以下の図です[3][4]

 

結晶性 流動性

20代から徐々に低下していき、60代と70代で急激に低下していることが分かります。このように流動性知能は加齢にしたがって、低下していくと考えられています。

結晶性知能とは

結晶性知能 crystallized intelligence (gc)

過去の学習経験を高度に適応して得られた判断力や習慣[2]

人生を通じて培ってきた知識や経験に基づく判断を意味します。結晶性知能があると、これまで経験してきた事象を正確かつ効率よくこなすことができます。結晶性一般能力と呼ぶこともあります。

具体例

言葉を話す 円満なコミュニケーション
長年作り続けてきた家庭料理を作る
年賀状を達筆に書く
近道で帰る

年齢

過去に得た経験が知能の土台であるため、加齢による低下が少ないのが特徴です。そのため、認知症の患者でも結晶性知能が保たれていることが多いです。Salthouse(2004)の研究では、新聞広告に応募してきた1000名以上の被験者を対象に、結晶性知能である「語彙」を年代別に調べました。その結果が以下の図です[3][4]

結晶性,

このように、結晶性知能に関しては60代あたりまで上昇していき、その後ゆるやかに低下していくことが分かります。

流動性知能の検査方法

流動性知能は2つの検査方法が代表的です。

WAIS-Ⅳ

WAIS-Ⅳとはウェクスラー式知能検査と呼ばれ、Wechsler,D.によって開発されました[5][6]。世界中の臨床で使用されており、もっとも有名な知能検査の一つです。2018年から「WAIS-Ⅳ」として日本版が出ています。対象の年齢は、16歳~90歳11か月を対象に実施されています。

WAIS-Ⅳでは以下の4つの領域で知能を測ってきます。
・言語理解
・知覚推理
・ワーキングメモリ
・処理速度

この4つの指標にはそれぞれ対応する下位検査があり、それぞれの検査を実施することで各能力を測ります。そのうち、「言語理解」の指標は結晶性知能を、「知覚推理」の指標は流動性知能を測っていると言われています。

WAIS-Ⅳとはウェクスラー式知能検査,流動性知能

田中ビネーⅤ

田中ビネー知能検査はBinet,A.とSimon,Th.が開発し、その後田中寛一が日本語版にしたものです[6]。対象の年齢は、2歳~成人までとしています。

特徴としては、偏差知能指数(DIQ)が算出できることです。この偏差知能指数とは、対象者と同じ年齢の基準と比較して知能を算出するものです。これによって、発達段階に応じた知能が算出できるようになっています。

田中ビネーⅤでは4つの領域に分かれます。
・結晶性領域
・流動性領域
・記憶領域
・論理推理領域

この田中ビネーⅤ検査でも、流動性知能と結晶性知能を測ることができます。

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ダイコミュ用語集監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


YouTube→
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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典

[1] Horn, J. L., & Cattell, R. B.(1967).Age differences in fluid and crystallized intelligence. Acta Psychologica, 26, 107-129.

[2] 中島 義明・子安 増生・繁桝 算男・箱田 裕司・安藤 清志(編)(1999).心理学辞典.有斐閣

[3] 西田裕紀子(2015).中高年者の知能の加齢変化. 老年認知症研究会誌  Vol.21 No.10

[4] Timothy A. Salthouse(2004).What and When of Cognitive Aging Current Directions in Psychological Science Vol. 13, No. 4 (Aug., 2004), pp. 140-144

[5] Wechsler D (2008a). WAIS-IV technical and interpretive manual. Pearson. San Antonio

[6] Wechsler D (2008b).WAIS-IV administration and scoring manual. Pearson. San Antonio.

[7] 中村淳子,大川一郎(2003).田中ビネー知能検査開発の歴史 立命館人間科学研究 第6号

・その他の出典
Cattell 画像出典 ウイキペディア