対人恐怖症克服記117 会社員編11 王さんの彼女のパンツ
引きこもりから脱出して、私はどうにか就職先を見つけました。
経営についての知識が役に立ち、重要度の高い仕事を任されはじめました。そしてある日、社長から突然中国へ行ってこい!という指令をもらったのです。
高度成長期の上海
私が上海に降り立ったのは、たしか2004年頃だったと思います。
当時、
中国のGDPは160兆円ぐらい
日本が430兆円ぐらい
でした。
人口が10倍もいるのに、大体1/3ぐらいしかGDPがない時代だったのです。「日本人1人雇う代金で優秀な中国人を10人雇うことができる」が社長の口癖でした。
しかし、成長速度がすさまじい時代でした。
特に上海は高層ビルが立ちまくっていました。上海から子会社に向かうバスの中から外をみると、新宿の高層ビル群のような景色が長々と続いていました。
外観だけは東京よりも発展しているように見えたかもしれません。
王さんのファーストインプレッション
バスは上海の都心に進んでいきました。
事務所がある場所の近くで降りると、現地で世話をしてくれる王さんが待っていてくれました。王さんは私とほぼ同い年の丸顔の男性でした。
日本語検定2級?を持っていたので最低限の日本語を話してくれました。
男同士の同い年というのはそれだけでも幾分か警戒心が取れるものです。
さらに王さんは人相がたいそうよく、好々としています。はじめての海外出張でピンチに陥っていた私にとってラーメンマンが迎えに来てくれたように見えました。
*闘将ラーメンマン12巻より
中国の町並み
事務所まで会話をしながら進んでいきました。そこで感じたことは、やはりまだまだ中国は発展途上な国なんだということです。
バスから見た眺めと違い、少し大通りから外れるだけで、薄暗く、服装がぼろぼろな方が多かったのです。
スーツを着ている人なんていませんでした。
襟付きのワイシャツを着ている人もほとんどいなかったように記憶しています。ファッションというより、生きるための服を着ている。そんな印象がありました。
しかし、活気だけは日本の3倍ぐらいありました。上野のアメ横のような雰囲気でしょうか。
よくも悪くも、活きている、生活している、必死さのようなものを町並みから感じました。
事務所の雰囲気
そしてしばらく上海の町を歩くと、いよいよ上海事務所に到着しました。
一般的な日本の事務所では、10階建てぐらいのビルの1室に、電子機器がたくさんあるというイメージがあります。
しかし、上海事務所のそれは、薄暗い団地の一角のような場所にあり、会社感ゼロの雰囲気がありました。こんなとこに会社あるのかよ!というような雰囲気です。
そうして、団地の一室にある上海事務所(?)に入ると、さすがに部屋の中には、PCやFAXといった見なれたものがおいてありました。
上海事務所には全部で5部屋ぐらいあったのですが、1室だけは会社ぽい雰囲気がありました。
幻?事務所から何かが見える
事務所には王さんの他に2名ほど従業員がいました。
いずれも男性で20代の若い社員でした。到着すると、王さんが出してくれたお茶を飲みながら、他の社員と談笑していました。
しかしそのオフィスから、別の部屋のドアが開いているのですが、何か違和感のあるものが見えました。
それは、タオルでもなく、ハンカチでもない、しかし、どこかで見覚えのあるような、なつかしい、母なる大地のような布が見えるのです。
会話をしながらひらひらと動くその布が気になり、私は会話に集中できなくなっていきました。
そこで私は王さんに
「あれはなんですか?」
と指をさして質問をしました。
すると王さんは
ニヤリ
とわらいました。
「あれは私の彼女のパンツです」
という日本人男子でも一生に一度言うか言わないかという日本語を、中国という異国の地で王さんは格調高く炸裂させたのです。
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・川島達史 1981年生まれ
・公認心理師 精神保健福祉士 心理学大学院修了
・社交不安症専門カウンセラー
・ご相談はこちらからお待ちしています
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