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レジリエンスの意味と鍛え方

レジリエンスの意味と鍛え方

みなさん、こんにちは。公認心理師,精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向けコミュニケーション講座で講師をしています。当コラムのテーマは「レジリエンス」です。

目次をお願いします。

はじめに

2020年はコロナショックがありました。緊急事態宣言が出たばかりの頃、私はあるニュースを見て驚愕しました。お客さんが全く来なくなったBARの店主が思い切ってミシンを3台購入し、BARを一時的なマスク製造工場に変えた!というニュースでした。私はこのとき、

「なんてレジリエンス力だ!」

と唸ったことを覚えています。BARの店主はこれをむしろチャンスと捉え、意気揚々とマスクを作っていたのが印象的でした。

病気、天災、失恋、失業、友人との喧嘩…私たちは人生を通して様々な問題と直面し、乗り越えていくしなやかさを求められます。そんなときに必要なのがまさに「レジリエンス力」なのです。本コラムではレジリエンス力の基礎を学び、しなやかに生きていく手法をお伝えしていきます。是非最後までご一読ください。

レジリエンス,乗り越える,ACイラスト

レジリエンスと歴史

まずはじめにレジリエンスの歴史からひも解いていきましょう。

19世紀,物理学での使用

「レジリエンス」という言葉は、ラテン語の「resilire」(跳ね返る、弾む)に由来し、19世紀ぐらいから「弾力」や「反発力」を意味する物理学用語として、主に西欧で使用されてきました。

産業革命期の19世紀には、鉄道や橋、建築物などの構造物に関する安全性の向上が求められ、特に橋梁や鉄道車両などの設計において、材料の強度と弾力性が重要視されました。

工学者や物理学者たちは、鉄鋼や木材などの耐久性と「レジリエンス」を測定し、衝撃や圧力がかかっても損傷を最小限に抑え、可能な限り元の形に戻るような素材や設計が求められました。

心理学での下地の形成

「レジリエンス」の概念は、20世紀に入ると心理学や社会学にも取り入れられるようになりました。その下地を作った一人として、アンナフロイト(1943)[1]が挙げられます。

1940年代になると、アンナ・フロイト(Anna Freud)を含む研究者たちは、子どもが環境から受けるストレスに対する適応力や防衛機制に注目していました。アンナ・フロイトは、レジリエンスという言葉そのものを使ってはいませんが、特に戦時下の子どもたちの心理的な耐性や対処行動について研究しました。

彼女の理論は、レジリエンスの概念が心理学的な議論の中に組み込まれる礎を築き、のちにレジリエンス研究へとつながる「自己防衛」や「心理的適応力」に関連しています。

エミー・E・ウェルナーの研究

レジリエンスは80年代から研究上で使われることが盛んになり、精神疾患に対する「弾力性、回復力、復元力、抵抗力」を意味するものとして、心理学、精神医学、免疫学の世界で浸透していきました[2]

アメリカの発達心理学者であるエミー・E・ウェルナー (Werner, E.E.) 教授はレジリエンスの発達心理学の手法を用いての観察・実証研究を行なった研究者の一人です。ここでは、ウェルナー教授の研究について触れてみたいと思います。

ウェルナー教授は2017年までご健在でした。生前の様子もYOUTUBEにあがっています。

ウェルナー教授は、ハワイのカウアイ島の乳児698名を対象として、1955年から30年間もの間、縦断的研究を行ったことで有名です。縦断的研究とは、同一の対象者を長期間にわたり定期的に観察していく手法で、心理学の世界では相当な覚悟がないとできない研究です。

ウェルナー教授は、カウアイ島の乳幼児が成長していくなかで、30%のグループが非常に柔軟で生きる力に長けていることを発見します[3]。この30%について「resilient」と名付けました。先生の研究に興味がある方は以下の折り畳みを展開してみてください。

ウェルナー教授は、周産期から1、2、10、18、および32歳まで、カウアイ諸島で1955年に生まれたすべての子供を追跡しました。当時のカウアイ島は不安定な状況でした。

精神疾患のある母親の養育 アルコール依存症の家庭 失業家庭 不安定な家庭環境

これらの環境で育った子供たちの多くは、非行に走ったり、体の問題を抱えていました。一方で、全体の30%ほどの子供たちはそのようなリスクのある環境でレジリエンスを発揮し、心理的に成長していくことがわかったのです。

ウェルナー教授の研究によると危険な状態を乗り越えていくためには

ソーシャルサポートを得る 暖かいコミュニティに所属する

ことが大事であることがわかりました。

マイケル・ラターの研究

イギリスの精神科医であり自閉症研究の権威でもあるマイケル・ラター(Michael Rutter)は、レジリエンス研究において重要な人物とされています[4]。ラターはレジリエンスを「逆境にもかかわらずポジティブな適応を示す能力」とし、この適応には個人の持つ生物学的・心理的要素と、周囲からのサポートや環境要因が含まれるとしました。

このアプローチにより、レジリエンスは単なる個人の資質ではなく、複数の要因から形成される力であると示され、従来の「内的な強さ」だけでなく、外部的な支援もレジリエンスの要因と捉えられるようになりました。

レジリエンス,マイケル・ラター

画像出典

レジリエンスの浸透

2000年代以降、レジリエンス研究はポジティブ心理学や脳科学の分野と統合され、個人の幸福やウェルビーイング、ストレス管理における重要性が強調されました。

セリグマンを中心としたポジティブ心理学者による研究が、レジリエンスの理論に大きな影響を与え、前向きな感情や適応力がレジリエンスの一部であることが示されました。

レジリエンスの意味とは

レジリエンス(Resilience)とは

現在では様々な定義があります。

精神的、感情的、行動的な柔軟性と外部および内部の要求への適応を通じて、困難または挑戦的な人生経験にうまく適応するプロセス
(アメリカ心理学会)[5]

強い風にも重い雪にも、ぽきっと折れることなく、しなってまた元の姿に戻るように、何があってもしなやかに立ち直れる力
(枝廣,2015)[6]

いかがでしょうか。なんとなくイメージがつきますでしょうか。

具体例

例えば、下記のようなバネがあったとします。

(バネバネバネバネ)

バネの両端を指で押すと、
圧力⇒⇒(バネバネ)⇐⇐⇐圧力
こんな感じでバネは縮まりますよね。

次に指を離すとどうなるでしょうか?
下記のように元の形に戻ります。

(バネバネバネバネ)

この「跳ね返して元に戻る力」がレジリエンスです。心理学の世界では、ばねだけでなく、心にも
 「元に戻る力」
 「立ち直る力」
 「へこたれない心」
があると考えられているのです。

レジリエンスと獲得

レジリエンスは「もともと備わっている能力」というよりも、「困難な状況に対応しながら育まれていくプロセス」として理解すると分かりやすいです。つまり、レジリエンスは「特別な能力」ではなく、さまざまな経験や周囲の環境を通じて少しずつ形成されていくものです。

レジリエンス

レジリエンスモデル

レジリエンスについては、様々なモデルがありますが、当コラムではラザルス(1984)[7]の「ストレス理論モデル」、加藤(2006)[8]のレジリエンスモデル、筆者(川島)の経験、を土台として解説していきます。

図形差し替え

 

ストレス理論を参考にまとめてください

https://www.direct-commu.com/shinri/wp-admin/post.php?post=2435&action=edit

以下 パワポとなります

https://docs.google.com/presentation/d/17CvlpvNScLDrH7pRW26P90KkHgOYNfff/edit?usp=sharing&ouid=117340890708424371925&rtpof=true&sd=true

予防的レジリエンス

予防的レジリエンスは、危機を事前に察知をして備える力を意味します。具体的には以下が挙げられます。

「自己理解」自分の性格や体力を把握する
「リスクの見積」重大な危険を事前に回避する
「準備をする」試練に対する備えをします

ストレッサーへの遭遇

予防をしたとしても、その見積もりを誤ったり、自分ではどうしようもない原因で、重大な試練に遭遇することがあります。これらの試練はストレッサーと呼ばれています。具体的には以下のようなものが挙げられます。

「身体」病気やケガ、運動不足、
「環境」暑さ、寒さ、騒音
「社会」景気が悪い、収入がない
「心理」失恋、誹謗中傷、モラハラ

一次レジリエンス

私たちはストレッサーに直面すると、一次レジリエンスによって対処をしていきます。一次レジリエンスとしては以下が挙げられます。

「遺伝的な強さ」楽観的な性格、開放的な性格
「認知の健康さ」柔軟な考え、現実的な考え
「自己効力感の高さ」経験の豊富さ、乗り越える自信

急性ストレス反応

上記と体裁を合わせて軽く解説

ストレス理論を参考に解説

二次レジリエンス

上記と体裁を合わせて軽く解説

ストレス理論を参考に解説

2次レジリエンス

ストレッサーに対する評価がうまくいかず、急性のストレス反応が出ると本格的なレジリエンス力が必要になります。2次的なレジリエンスについては、様々なものがありますが、以下の6つを抑えておきましょう。

①情動解決レジリエンス
感情を発散する方法でカタルシス効果とも呼ばれます。たとえば、日記を書く、泣きたいときには泣くなど、気持ちを素直に表現することで心の整理をします。

②問題解決レジリエンス

直接問題解決していく方法です。たとえば、満員電車がストレスなら、引越しをするなど問題を解決することでストレスを軽減していきます。

③認知的評価レジリエンス

考え方を変えることでストレスを減らす方法です。たとえば、上司からの注意がストレスなら、学びのためのアドバイスと考えるなど、考え方を柔軟にすることでストレスを軽減していきます。

④社会支援レジリエンス

周囲にアドバイスを求めたり、信頼できる人に打ち明けるなど、悩みを相談する方法です。家族や友人、時にはカウンセラーに相談してもいいでしょう。

⑤身体的レジリエンス

運動をする、十分な睡眠をとるなど体の健康面からストレスを発散させる方法です。

⑥気晴らしレジリエンス

自分にとって気晴らしになることをする方法です。たとえば、旅に出る、趣味に没頭する、美味しい食事をするなでリフレッシュをします。

それぞれの内容については以下のコラムで解説しています。2次的なレジリエンス力をつけたい方は参考にしてみてください。

6種類のストレスコーピング

慢性ストレス反応

軽く解説

身体的問題
睡眠障害、胃潰瘍、突発性難聴、心筋梗塞

精神的問題
適応障害、うつ病

行動面の問題
暴飲暴食、暴言を吐く、ギャンブル依存

このようにレジリエンス力は3段階で発揮されます。それぞれの段階に応じたレジリエンス力を鍛えておくと、危機的な状況を乗り越えやすくなります。

 

レジリエンス 鍛え方

レジリエンス研究

レジリエンスは広い概念なので、これまで様々な分野で研究されてきました。上記のように,過程(プロセス)なのですが,これまで行われてきた研究では,「能力」として捉えているような研究も散見されます。それは,レジリエンスが確固たる定義がないことで,研究者がそれぞれの「定義」をした上で,研究を行なっているからなのです。以下折りたたんで記載したので興味があるものを展開してみてください。

藤澤(2015)[9]は、思春期158名を対象に逆境とレジリエンスについて調査を行いました。その結果の一部が、以下のような図となります。

 

レジリエンスと立ち直り力 心理学研究

PTGはPosttraumatic Growthの略で、心的外傷後成長と言われています。ざっくりと「苦しい経験を経て成長していく力」のことを指します。

図を見ると、レジリエンスが高いと、逆境での成長力も高まるというプラスの相関関係があることが分かります。

心理学的には0.5前後の相関があると、お互いが中程度、影響しあうと考えます。レジリエンスが高まると、困難な状況をバネにできるようですね。

藤澤(2015)[9]の研究では、レジリエンスと抑うつの関連も調査されました。結果を以下の図に示します。

 

レジリエンスと抑うつへの影響

図はマイナスの相関になっています。すなわち、「レジリエンスが高い傾向の人は、抑うつが低い傾向がある」「抑うつが高い傾向の人は、レジリエンスが低い傾向がある」と言えます。
レジリエンスが低いと、状況に応じて柔軟に対応することが難しくなり、精神的に不安定な状況に陥るのですね。

長内(2004)[10]は、女子大生110名に対して、質問紙を用いてレジリエンスと心の安定について調査しています。その結果が以下の図です。

 

レジリエンスと不安と不眠の関係 心理学研究

上図は、レジリエンスが高いほど、不安や不眠になりにくいことを表しています。安眠できる環境を増やすとレジリエンスが向上しやすいとも言えます。

*RQはThe Resilience Quotient尺度の日本語版を意味します。

長内(2004)[10]らの研究によると、レジリエンス力があると社会的活動がしやすくなることがわかっています。

 

レジリエンスが社会的活動障害に与える影響

例えば、就職活動などでは、様々な試練が待ち構えています。会社選び、志望動機の作成、面接、落選…様々な苦労を乗り越えて、はじめて就職できます。この時、レジリエンス力がある方ほど、様々な問題を乗り越えていけるのです。

レジリエンスにはいくつかの構成要素があることが分かっています[11]。また以下のように、対象によっても必要な要素は微妙に変わっていきます。

・「大学生」
・「成人期」
・「持病のある成人」

まずは、「大学生」の場合を見ていきましょう。

立ち直り力UP

構成要素としては、「新奇性追求」「肯定的な未来志向」「感情調節」の3つですね。新しいものを求め、希望を持ち、自分の感情をコントロールできることがレジリエンスの獲得には必要だと言えます。

続いて「成人期」の場合を見ていきましょう。

レジリエンス 高める

成人期では、「自分を管理できる能力」と、「自分の人生を受け入れる」ことが大切だとされています。特に、自分自身をあるがままに捉え、管理していくことがレジリエンスには必要というわけですね。

最後に、「持病のある成人」の場合を見ていきましょう。

レジリエンス 鍛える

この調査では、成人患者と健常者を対象にレジリエンスの構成要素を調べています。結果、社会的コンピテンス、家族凝集性、ソーシャルサポートの3つの要素が抽出されました。

このように、年齢、環境、健康状態などによって、レジエンスの要素は変わってくるのです。

イラスト:逆境にもへこたれない、跳ね返して元に戻る力の象徴

 

鍛える10の方法

アメリカ心理学会[12]は、2020年2月1日に最新の「レジリエンスを築く10の方法」を提唱しています。以下それぞれに準拠して解説していきます。足りていない部分があると感じたらぜひリンク先をたどってみてください。

①つながりを築く
Build your connections!

共感しあう、笑いあう、会話を楽しむことはレジリエンスを高めてくれます。友人を作って遊びに行く、奥さんと定期的に出かける、毎朝家族とご飯を食べる、これらの日常のつながりはメンタルヘルスに極めて重要です。

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②ウェルネスを育む
Foster wellness!

ウェルネスとは、身体的、精神的、そして社会的に健康な状態を意味します。心にストレスを溜めすぎず、十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動など、体の健康と心の健康を大事にする姿勢を持ちましょう。

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③目的を見つける
Find purpose!

これからの人生をどう生きるか?という目標が定まると、困難な時期も乗り越えていけます。心理学的にはアイデンティティを確立すると言います。一度しかない人生です、自分なりの人生の目的を探して、エネルギーをぶつけていきたいものです。

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④適応的な考えを受け入れる
Embrace healthy thoughts

出来事を様々な視点で捉えること、状況を受け入れていくことは、レジリエンスに重要な役割を果たします。苦しい時期や辛い時期は特に、頭を柔らかくして多角的に考えていく姿勢を大事にしましょう。

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⑤援助を求める
Seeking help!

周囲からサポートを受けることは、レジリエンス力をつける上で重要です。トラウマやストレスが強い状況は、自分だけでは乗り越えられない時もあります。家族や信頼できる友人、メンタルヘルスの専門家やサポートグループの力を借りて安心できる環境を作りましょう。

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⑥決断し行動する
Take Decisive Actions!

不利な状況であっても決断し行動する経験は、レジリエンスを高めてくれます。直面する問題やストレスに背を向けるのではなく、自分なりに判断し行動することがとても大切です。

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⑦自己発見の機会を探す
Look for opportunities for self-discovery

危機的な状況を乗り越える経験は、レジリエンスを鍛えてくれます。大きな悲しみや困難を乗り越えた後には、何らかの成長があるものです。より良い人間関係、自分自身の心の強さ、自己価値の向上、精神性の発達、人生への感謝の高まりなどを感じましょう。

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⑦自信を深める
Nurture a positive view of yourself

問題や課題を自分自身で乗り越え、経験を積んでいくことはとても大切です。経験が増すと、「自分は失敗を乗り越える力がある」「自分は社会でやっていく力がある」という自信を深めることができます。

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⑧広い視野で捉える
Keep Things in Perspective

目の前の困難な状況をより広い視野で捉えらえると、レジリエンスが高まります。直面しているストレスを長期的な視点で検討できれば、苦痛な状況も人生のイベントとして乗り越えることができるでしょう。

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⑨希望に満ちた展望を維持する
Maintain a hopeful outlook!

楽観的な見方は、レジリエンスを高めてくれます。ポジティブな見通しを持ち、良いことを期待すれば、希望が見えてくるものです。恐れや心配を想像するのではなく、望むものを視覚化しましょう。

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⑩自分を大切にしてください
Take Care of Yourself!

レジリエンスの基本は、自分を大事にすることです。一度しかない人生です!いたずらに自分をないがしろにするのではなく、自己受容して、一生懸命生きている自分を褒め、大切にしていきましょう。

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ラターのレジリエンス理論

マイケル・ラター(Michael Rutter)は、レジリエンス(逆境に負けない力)を「状況や環境で変わるプロセス」として捉えました[4]。これにより、レジリエンスは生まれつきの特性だけでなく、環境や経験によって育まれるものとして考えられるようになりました。以下は、彼がレジリエンスの理解を深めるために提案した重要なポイントです。

保護因子も大切

レジリエンスは、ただ「強い心」を持つことだけではなく、周りからの支え(保護因子)も大切です。ラターは、困難な状況(リスク)に対して、誰かの助けがあると人はより強くなれると考えました。

例えば、家族や学校の友人、先生の支援があると、「自分はできる!」という自信(自己効力感)を持ちやすくなります。こうした支えがあると、困難に直面してもポジティブな気持ちを保つことができ、困難に負けずに立ち向かおうとする気持ちが湧いてきます。

レジリエンスは変化する

レジリエンスは一度得られたらずっと続くものではなく、時間や状況によって変わっていくものです。例えば、ある時期にとても強いレジリエンスを発揮できていた人でも、環境が変わったり、新しい困難が増えたりすると、その強さも変化してしまうことがあります。

また、ある問題に対しては強くいられても、別の種類の問題には弱くなることもあります。ラターはこのように、レジリエンスが常に一定ではなく、状況や経験によって成長したり変わったりする「プロセス」であると説明しました。

回復と成長の可能性

ラターは、レジリエンスは単に困難から回復する力だけでなく、経験を通してさらに強くなる力も含んでいると述べました。たとえば、困難な経験をすることで、その人は新しいスキルや自信を身につけ、以前よりも強い心を持てるようになります。

ラターはこのように、困難な状況を乗り越えることで成長できることをレジリエンスの特徴としています。レジリエンスは、ただ困難に耐えるだけでなく、逆境から得た教訓やスキルで自分自身を強化し、次の困難により強く立ち向かえるようになるプロセスでもあります。

まとめ

受験勉強、就職、婚活、病気、天災…私たちの人生にはたくさんの課題がたくさんあります。レジリエンス力がある方は、そんな困難も力強く乗り越えていくことができます。皆さんが一度しかない人生を豊かなレジリエンス力を元に、柔軟かつパワフルに過ごされることを願っています!

レジリエンス 立ち直る女性

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、実際に学ぶことができます。内容は以下のとおりです。

・はじめての心理療法の学習
・レジリエンス力の強化
・ストレースコーピングの学習
・暖かい人間関係を築くコツ

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)

レジリエンスの意味と鍛え方,心理学講座

 

 

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Freud, A., & Burlingham, D. (1943). War and Children. Medical War Books.  
 
[2] 田 亮介・田辺 英・渡邊 衡一郎 (2008). 精神医学におけるレジリアンス概念の歴史  精神神経学雑誌, 110, 757-763.
 
[3] Werner, E.E. (1996). Vulnerable but invincible:High risk children from birth to adulthood.European.  European Child and Adolescent Psychiatry, 5 Supplement 1, 47-51.
 
[4] Rutter, M. (1987). “Psychosocial resilience and protective mechanisms.” American Journal of Orthopsychiatry, 57(3), 316–331.
 
[5] American Psychological Association  Resilience 
 
 
[7] Lazarus, R.S., & Folkman, S. (1984). Stress, appraisal, and coping. New York, NY: Springer.
 
[8] 加藤 寛(2006).  自然災害とPTSD こころの科学, 129,61-65. The American psychological
 
[9] 藤澤 隆史・小島 雅彦 (2015). 逆境経験からの精神的成長を規定する要因の発達学的検討  発達研究, 29, 95-108.
 
[10] 長内 綾・古川 真人(2004). レジリエンスと日常的ネガティブライフイベントとの関連 昭和女子大学生活心理研究所紀要, 7, 28-38.
 
[11] 斎藤 和貴・岡安 孝弘(2009). 最近のレジリエンス研究の動向と課題 明治大学心理社会学研究, 4, 72-84.
 
[12] The American psychological Association. (2014). The Road to Resilience on-line.  Retrieved from https://uncw.edu/studentaffairs/committees/pdc/
documents/the%20road%to%resilience.pdf  (October 16, 2021)