~ スクールカウンセラーが行ういじめ対策 ~ スクールカウンセラーが行ういじめ対策の手引き
こんにちは!いじめ撲滅委員会代表,公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。
現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。
今回のテーマは
「スクールカウンセラーのいじめ対策」
です。
はじめに
今回は、新任スクールカウンセラーの方へ向けた知識の、本当に初歩の初歩をご紹介していきます。
医療機関やカウンセリングセンターどのように違うのかを抑えて現場で活躍していってください。
スクールカウンセラーは、いじめの問題解決や対策には必要不可欠な存在です。
目次は以下の通りです。
・生徒本人の4つの対策
・保護者の主な対応
・教職員への主な対応
・外部機関との連携
質の高いスクールカウンセリングを行うため、第一歩となれば幸いです。
生徒本人への4つの対応
まずはスクールカウンセラーが行う児童生徒への対応について見ていきましょう。
相談の敷居を下げる
スクールカウンセラーは、生徒が相談しやすい雰囲気を作っていきます。生徒本人がスクールカウンセラーの存在自体を認知してないことが多いです。そのため、積極的に、
・朝礼に出席する
・行事に参加する
・生徒たちに話しかける
など生徒と交流をすることが大切です。
また、カウンセリングルームは殺風景にせず、暖かい雰囲気で親しみやすい空間にします。例えば、
・ゲームや漫画を置く
・観葉植物を飾る
・おしゃれな看板をおく
など無機質にならないように心がけていきましょう。
家庭環境のヒアリング
相談に来た生徒に対しては、まずは家庭環境のヒアリングを充分に行います。具体的には、
・家庭環境は良好か
・サポート体制があるか
・家族のことで悩みはないか
などをヒアリングしていきます。家庭環境が不安定だと心理的に問題を抱えやすく、極端な場合は、自殺のリスクも高まってしまいます。生徒に対してしっかりと傾聴し、共感を示すことが大切です。
共感スキルの基礎については下記をご覧ください。
臨床心理学的分析
生徒のメンタルヘルスを臨床心理学的な視点から分析を行います。例えば、以下の2つ視点は必ず抑えておきたいところです。
愛着形成の問題
生徒のメンタルヘルスが不安定な場合、愛着不安を抱えている可能性が疑われます。姜・河内(2010)は、子どもの学校適応は、安心してサポートが得られる親との愛着関係が重要であることを示しています。
家庭環境に問題を抱えている場合は、家族療法的な支援も視野に入れることになります。以下のコラムも参照ください。
ソーシャルスキルに問題がないか
思春期はソーシャルスキルが欠如しているために、人間関係で問題を抱えている生徒もいます。場合によっては「アサーティブコミュニケーション」をベースに一緒にロールプレイをして練習してみると良いでしょう。
こうした実践的なスキル向上のワークの引き出しもたくさん持っておきたいところです。
精神医学的分析
スクールカウンセラーは医療との懸け橋になるケースを抱えることもあります。精神医学的の知識も必ず抑えておきましょう。具体的には、以下の4つの精神疾患を抑えておきましょう。
1.発達障害
第1に発達障害の可能性も考えておく必要があります。例えば、自閉症スペクトラムの生徒は、相手の気持ち無視して、思ったことを口に出してしまう傾向があります。
その結果、加害者に目をつけられいじめの対象になることがあります。
2.知的障害
知的障害も視野に入れるようにしましょう。特に授業についていけない場合や、カートゲームなどの複雑な遊びに参加できない場合は、知的障害の可能性が高いです。馬鹿にされてしまいいじめに発展することがあります。
3.パーソナリティ障害
人格障害の可能性も視野に入れておくことが大切です。例えば、「境界性人格障害」の生徒は、極端な人間関係になりやすく、トラブルになりやすい傾向があります。
4.適応障害
適応障害の可能性を視野に入れましょう。特にクラス替えや入学の時期などは適応障害が起こりやすい時期です。よく傾聴して、原因が特定できる場合は、適応障害の可能性が高いです。
適応障害の状態はいじめを跳ね返す力を失いやすいので注意が必要です。
5.その他の精神疾患も抑えよう
スクールカウンセラーは直接的な診断をするわけではないないですが、医療機関に繋げる際に基本的な知識が必要となります。以下の精神疾患の基礎動画も参考にしてみてください。
保護者への主な対応
次にスクールカウンセラーが行う保護者への主な対応について見ていきましょう。
相談の敷居を下げる
生徒本人の対応と同じく、相談の敷居を下げていきます。保護者の方も、スクールカウンセラーの存在を知っている場合は少ないです。
・冊子作り
・保護者会への出席
・学校HPでのあいさつ
などで露出を増やしていくことが大切です。保護者の要望をしっかりと傾聴し、共感を示すことが大切です。
養育状況のヒアリング
相談に来た保護者に対しては、児童の養育状況についてヒアリングしていきます。
具体的には、
・家庭での児童の様子
・幼児期のことについて
・兄弟との関係
などをヒアリングしていきます。このように、家庭での被害児童の様子を充分聞くことで、家族関係での問題を探っていきます。
接し方のレクチャー
保護者の接し方に問題があると判断した場合は、接し方のレクチャーをしてきます。
具体的には、
・無条件の肯定を大事にする
・日々の変化に気が付く
・子どもの話をよく聞く
などを意識するように促します。
具体的な子どもの接し方については以下のコラムをご覧ください。
親自身のストレスを緩和する
最後に保護者自身のストレスを緩和をすることが大切です。深刻なメンタルヘルスの問題を抱えていると判断される場合は、利用できる相談窓口の情報を提供しましょう。こころに関する相談窓口は、
・保健所
・精神保健福祉センター
・児童相談所
などが挙げられます。
保護者が活用できる相談所をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
教職員への主な対応
次にスクールカウンセラーが行う教職員への主な対応について見ていきましょう。
関係性作り
スクールカウンセラーは日々、先生方との関係性づくりを行うことが大切です。スクールカウンセラーと言えど、よくわからない相手にこころの悩みは相談しにくいものです。そこで、積極的に
・あいさつ周りをする
・いじめに関する資料を配布
・校内の精神的健康について会議を開く
など先生との接触機会を増やすことが大切です。また、いじめなどは先生方と連携してチームで対応していきます。関係性はづくりは、スクールカウンセラーの様々な活動の土台となります。
リソースの把握
学校に所属した時、なるべく早い段階で学校のリソースを把握しておきましょう。
例えば、
・いじめに積極的な先生
・いじめに消極的な先生
・過去の事例の傾向
などを調べておきます。このように学校の状況をあらかじめ把握しておくことで、いじめやトラブルが発生した時に、迅速で適切な対応をすることができます。
コンサルテーション
先生との相談は、コンサルテーションとなります。具体的には、
・いじめや不登校が起きた時の助言
・トラブルが起きた時の介入
・先生方の心理的フォロー
などを行います。いじめを止めるための対策を指示したり、実際にカウンセラー自身が行動したりします。また、先生自身のメンタルヘルスが悪化していれば、心理的な援助も行います。
外部機関との関わり
最後にスクールカウンセラーが行う、外部機関との連携について見ていきましょう。
教育委員会との連携
教育委員会はスクールカウンセラーの募集、いじめのケース会議、いじめへの市町村単位での対策などを行うことがあります。これらの活動に積極的に参加をしていきます。また他の教育委員会の良い精度やアイデアを積極的に学び、提言していくことも大事です。
児童相談所との連携
いじめは複雑な家庭環境が影響して起こることもあります。例えば、ネグレクトにより異臭を放っている場合、加害者がからかうこともあります。
虐待と疑われる児童は「児童相談所」や「福祉事務所」に通告する必要があります。
専門医療機関の受診を促す
症状が重いクライアントに対しては、専門医療機関への受診を促します。臨床心理学的分析、精神医学的分析の部分で、治療が必要と判断した場合、クライアントに適した医療機関を紹介していきます。
地域の精神科や心療内科を調査して、信頼できるお医者様を探し、あらかじめ挨拶をしておくと良いでしょう。
まとめとお知らせ
まとめ
これまで、さまざまなことを紹介してきましたが、いじめへの対処法は完璧なものはありません。1つ1つの事例は極めて複雑な要因が絡まり合っているのが普通です。まずは全体を俯瞰し、解決できそうな部分からほぐしていくことが大事です。
スクールカウンセラーがいじめにあっている生徒の希望の光となるよう、皆様のご活躍をお祈りしています。また私自身も自己研鑽を怠らずしっかり前向きに活動していきたいと思います。
新人のスクールカウンセラーの方へ
新人のスクールカウンセラーの方はお仕事を進めるにあたってお悩みになることも多いと思います。不安な場合は有料となってしまいますが、コンサルテーションもできますのでよかったら気軽にお声がけください。
詳しくはこちらのページを参照ください。
動画について
最新のいじめ対策について動画を作成しています。良かったら動画も参照くださいませ。
相談をご希望の方へ
いじめ撲滅委員会では、全国の小~高校生・保護者のかた、先生方にカウンセリングや教育相談を行っています。カウンセラーの栗本は、「いじめ」をテーマに研究を続けており、もうすぐで10年になろうとしています。
・いじめにあって苦しい
・いじめの記憶が辛い
・学校が動いてくれない
・子供がいじめにあっている
など、いじめについてお困りのことがありましたらご相談ください。詳しくは以下の看板からお待ちしています。
文部科学省(2019年8月25日閲覧)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/066/shiryo/attach/1369901.htm