~ LINEいじめの影響と対策 ~ 教職員向け-LINEいじめの影響と対策
こんにちは!いじめ撲滅委員会代表,公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。
現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。また全国の小~高校生、保護者や先生へのカウンセリングや教育相談も行っています。
今回のテーマは
「LINEいじめ」
です。
さまざまな種類のいじめがある中、時代背景とともに、いじめは姿形を変えてきました。こうした変化にも教職員は、柔軟に対応していくことが大切です。
目次は以下の通りです。
・児童生徒を取り巻くSNS
・LINEいじめのメカニズム
・LINEいじめの7つの対処法
ネットいじめの基礎から対処法までわかりやすく解説していきます。
児童生徒を取り巻くSNS
LINEいじめを紐解いていくには、まずは背景となるSNSの実態を知る必要があります。
学年別所持率
内閣府(2014)「平成25年度青少年のインターネット利用環境実態調査」の携帯電話の学年別所持率によると、以下のようになりました。
このように、小学生の36.6%、中学生の51.9%、高校生の97.2%がスマートフォンを含む携帯電話を所持していることがわかりました。
例年と比べると、小中高生のスマートフォンの所持率は年々増加し、SNSを介したコミュニケーションを利用する児童生徒が増えていることが報告されています。
ネット利用目的
次にネットの利用目的を見ていきましょう。
内閣府(2014)「平成25年度青少年のインターネット利用環境実態調査」では、以下のグラフのようになりました。
このように、3つの項目が例年に比べて増加傾向であることが分かりました。特にメッセージやチャットは2倍以上も伸びており、SNSなどのコミュニケーションが活発になっていることが分かります。
LINEの利用率
SNSの中でも、最近では「LINE」の利用が目立っています。総務省(2014)「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、以下のグラフのようになりました。
このように10代の70.5%、20代の80.3%が利用していると報告されています。現在はLINEは学生のもっとも身近なコミュニケーションツールになっていると言えます。
LINEの問題点
三島ら(2015)によれば、「『LINE』のように、第三者への公開が許可されていない場合は、モニタリングが難しくなってしまうため、ネットいじめが起こっていることに気づきにくい」と指摘しています。
LINE以外のSNSであれば、モニタリングが可能な場合が多いです。しかし、LINEのようなチャットツールでは、メッセージが閉鎖されており、外部からいじめに気付くこと難しいのです。
LINEいじめと深刻さ
LINEいじめは大きく以下の原因により深刻化しやすいと言えます。
・想像しにくさ
・ネットリテラシーの低さ
・グループ機能と閉鎖性
・同調圧力が生じやすい
想像しにくさ
ネットには相手の顔が見えないため、傷ついているか分かりにくいという特徴があります。表情や声の抑揚など、人間関係に重要な要素が抜けてしまうため、被害者の苦しみが伝わりにくいのです。
特に加害者側は「いじり」のつもりと思っても、被害者には「いじめ」だと受け取られている…。このような認識のズレが対面よりも発生しやすいのです。
ネットリテラシーの低さ
中学生・高校生はネットの使用経験が浅いです。そのため、SNSや掲示板での誹謗中傷などについて想像力が欠けています。
遊び半分で暴言を書き込んだり、ネット上なら何をやっても大丈夫と考えている場合があります。
グループ機能と閉鎖性
LINEグループで起こるいじめは、学校のクラスで起こるいじめと状況が酷似しています。以下の図は、クラス内で起こるいじめの構造を簡単に示したものです。
クラス内でのいじめは、傍観者が「加害者と被害者」を取り囲むことで、外部にいじめの実態が伝わりにくくなっています。そのため、教職員がいじめに気付くことが難しくなってしまうのです。
では、LINEいじめと比較してみましょう。
以下の図は、「LINEいじめ」が発生している状況を簡単に示したものです。
LINEグループ内でも、多くの人が傍観者となり、いじめの実態が外に広まることがありません。校内のいじめであれば、グループ外の誰かがいじめに気づき、先生に知らせることができます。
しかし、LINEいじめの場合、グループの閉鎖性が高く、外からいじめの実態を知ることができません。そのため、教職員がLINEいじめに気付くことがとても難しいのです。
同調圧力がかかる
LINEのグループでは、同調圧力が強くがかかります。例えば、グループ内でいじめがあった時、それ止めようとすれば、退会させられるリスクがあります。
もしくは、自分がいじめの対象となってしまうかもしれません。こうした恐怖心から、いじめに加担したり、傍観者となってしまうのです。
LINEいじめへ8つの対処法
それでは、実際にLINEいじめへの対処はどのようにすればいいのかをご紹介していきます。LINEいじめはモニタリングが難しいため、児童生徒を内面から変えていくことが大切です。
今回は、8つのやり方を提案させて頂きます。
①予防‐危険性を教える
②予防‐相談できる環境を作る
③予防‐最新のSNSに触れる
④被害者の状況を把握,ケア
⑤加害者の状況を把握,指導
⑥保護者に知らせる
⑦教職員との連携
⑧専門家との連携
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①予防‐危険性を教える
まずは、LINEいじめの危険性を教えることが大切です。
・朝の朝礼
・道徳の時間
・情報の授業
などで繰り返し教育をしてきます。LINEいじめ被害者の気持ちや、SNS上だと言葉がきつくなってしまうことなど、リアリティをもって伝えましょう。
また、LINEいじめは24時間いじめの恐怖に曝されることになります。実際のいじめと比較して、同等に悪いことだという認識を持ってもらことが重要です。
②予防-相談できる環境を作る
次に「困った時は先生に相談して」と繰り返し、児童生徒に伝えましょう。できる限り被害者が相談しやすい環境を作っておくことが大切です。
特に「LINE」はプライベートな内容も含まれるため、相談をためらってしまうことも多いです。そこで、先生は日ごろから児童生徒と信頼関係を築いておく必要があるのです。
また、+αでスクールカウンセラーの存在を知らせておくことも大切です。スクールカウンセラーとは、学校の様々な問題の心理相談を行う人のことです。
相談内容は守秘義務があり、プライバシーはしっかりと守られます。先生だけではなく、スクールカウンセラーにも相談できることを知らせておきましょう。
③予防‐最新のSNSに触れる
先生自身がITに疎いと、LINEいじめの実態を把握しにくくなります。生徒から訴えを受けても、被害の内容をイメージできないため、対応が遅れてしまいます。
先生は、普段から生徒が使うツールへの理解を深めておくことが大切です。最低でも、LINEいじめに訴えを受けた場合に、実際に使ってみるなどして、LINEに詳しくなることが重要です。
またSNSは時代と共に新しいものが絶えず出てきます。クラスの大半が使っているSNSは実際に使ってみることが大事です。
④被害者の状況を把握,ケア
実際にLINEいじめが起こってしまったら
・どんないじめがあったのか
・誰にいじめを受けたのか
・いつからいじめを受けているのか
などしっかりとヒアリングしていきます。場合によっては、本人の許可をとって、データを先生が保存しておくことも大事です。
⑤加害者の状況を把握,指導
加害者のシチュエーションを把握し指導を行います。
具体的には、
・なぜいじめを行ったか
・どんなメッセージを送ったか
・被害者とはどんな関係か
などを加害者にヒアリングしていきます。LINEいじめは通常複数で行われます。まずは1人1人状況を聞いて、事実確認をしていきます。
その後、いじめをなぜしてしまったのか?なぜ相手が傷つくのか?など説明をして、場合によっては謝罪をするように促します。
⑥保護者に知らせる
いじめがあった場合、原則としては、両者の保護者にLINEいじめがあったことを知らせます。
今後のLINEとの向き合い方を家庭内で考えてもらい、必要に応じて可能であれば、保護者にLINEの状況をチェックしてもらいます。
ただ被害者が自殺願望などがある場合は、スクールカウンセラーと充分協議をして、伝えるタイミングに注意しましょう。
⑦教職員との連携
LINEいじめに迅速・適切に対応するには、教職員との連携が不可欠です。例えば、グループLINEでいじめがあった場合、メンバーと被害者・加害者との関係をチェックする必要があります。
このとき、一人だけでは対応しきれないケースも多いです。グループ内のメンバーが違うクラスであったり、学年が違う場合もあるため、それぞれの担任と連携する必要があります。
また、LINEいじめ事後対応として、学校全体にいじめ事例を共有していきます。同じいじめが起こらないよう対策を検討し、報告書にまとめます。
⑧専門家との連携
LINEいじめを解決するには、学校問題の専門家との連携も大切です。
・スクールカウンセラー
・スクールソーシャルワーカー
など、学校に所属している専門家にも相談しましょう。特にいじめ解決の経験が浅い先生にとっては心強い味方になってくれると思います。
まとめとお知らせ
動画解説
LINEいじめについては動画も作成しています。良かったらご覧ください。
まとめ
いじめの形態は時代と共に変わっていきます。現在社会はITといじめが密接に関わることが多くなっています。
特に10代の学生は最新のアプリやSNSをどんどん取り入れ、大人が知らないうちにいじめを発展させていることが多々あります。
繰り返しになってしまいますが、先生もこれらのアプリに触れるようにして、是非予防に努めてほしいと考えています。
お知らせ
いじめ撲滅委員会では、いじめのない社会を実現するべく、以下のような取り組みを行っています。
・いじめコンサルテーション
・学校関係者への研修
・いじめについての講演会
もしLINEいじめについて対処が難しいと感じたら、コンサルテーションも行っています。興味がある教育関係者の方は下記ページをご覧ください。
相談をご希望の方へ
いじめ撲滅委員会では、全国の小~高校生・保護者のかた、先生方にカウンセリングや教育相談を行っています。カウンセラーの栗本は、「いじめ」をテーマに研究を続けており、もうすぐで10年になろうとしています。
・いじめにあって苦しい
・いじめの記憶が辛い
・学校が動いてくれない
・子供がいじめにあっている
など、いじめについてお困りのことがありましたらご相談ください。詳しくは以下の看板からお待ちしています。
<引用文献>
文部科学省 2008 小学校学習指導要.
三島 浩路・本庄 勝 2015 技術的観点からのネットいじめ対策 電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン 9,(2),102-109.
内閣府 2014 平成25年度青少年のインターネット利用環境実態調査.
酒井 郷平・塩田 真吾 2015 中学生のネットトラブルへの対応方法に関する分析―LINEのグループトークを事例に― 授業実践開発研究 8,70-78.
総務省 2014 平成25年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書.
渡辺 麻由・北澤 武 2016 LINEによるいじめの一起因に気づかせる道徳の教材開発と評価 東京学芸大学紀要 68,255-267.