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いじめ撲滅

~ 代表講師の研究 ~ 研究➀被害者が加害者へ変わる理由

筆者の研究その1

はじめまして!
いじめ撲滅委員会代表の栗本顕です。

私は学生時代、そうぜつないじめを体験してきました。
その後この問題を世界からなくすことを決意し、心理学の大学院でいじめの防止策を研究してきました。

現在では公認心理師として、いじめの解決策や、教育相談を行っています。

全国の小~高校生・保護者のかた、先生方へカウンセリングや教育相談を行っています。

大学生の頃から、とりわけ「いじめ」をテーマに研究を続けており、もうすぐで10年になろうとしています。
私自身がいじめが原因で不登校になった経験を大いに活かし、今後のいじめ対策に貢献ができればと思います。

大学生への回顧法を用いたイメージをもとに筆者がいじめにおける被害者が加害者へと変わる理由について研究したものをご紹介します(内容はHP用に編集し、短縮化したものです)。

いじめ撲滅委員会代表栗本顕

問題の背景

近年、いじめに関わる児童・生徒の自殺問題が注目を集め、教育の分野のみならず社会的にも深刻な問題として認識されるようになってきました。

例えば200610月に起きた「福岡中2いじめ自殺事件」や201110月に起きた「大津市中2いじめ自殺事件」など教育現場に大きな衝撃を与えた事件も次々に発生しています。

文部科学省(2013)によるといじめ認知数は合計198,108 (前年度より127,877 件増加)と前年度の約2.5倍となっており、認知をされていないいじめもあることが予測されるため、いじめの件数はさらに多いことが考えられます。

代表講師の研究➀いじめの被害者が加害者へ変わる理由:大学生への回顧法を用いたイメージをもとに

これまでのいじめ研究

いじめを防止するための手掛かりを得るために、いじめの様態、いじめの発生機序、いじめ被害者および加害者の個人的特性等を明らかにすることを試みた研究が多く行われてきました。

オルウェーズ(1995)は、いじめとは「ある児童生徒が、繰り返し長期に渡って、1人または複数の児童生徒による拒否的行動にさらされていること」と定義しています。

いじめと子どもの心身健康状態との関連性について検討した実証的研究では、Crick&Grotpeter(1996)は、仲間はずれのような関係性のいじめ被害を受けた小学生は、孤独感や抑うつ反応が高い傾向にあることを示しています。

代表講師の研究➀いじめの被害者が加害者へ変わる理由:大学生への回顧法を用いたイメージをもとに

いじめ被害についての研究

また、Rigby(1998)も、いじめ被害を受けた中学生は被害を受けたことのない中学生に比べ精神的・身体的不調を強く訴えることを示しています。

いじめ被害を受けた者には抑うつ、自尊心の低下、心身症、対人不安などの不適応症状が表れ(Hawker&Boulton2000)、被害後数年が経過した時点でも解消されないことが知られています。

荒木(2005)は、抑うつや不安などのいじめ被害の後遺症とも呼べる不適応状態は少なくとも青年期後期まで持続し、その強さはいじめ被害経験の程度に一定の影響を受けるとの考えを示しています。

被害経験は被害的な認知傾向をもたらし,不安に対して過敏にさせ,対人関係に悪影響をもたらすことが示されています。
被害経験が調査時点での不適応傾向の要因である可能性が示唆されています(森本,
2004)。

三島(2003)は、小学校の高学年の親しい友人をいじめた経験をもつ児童の中で、親しい友人からの経験をもつ児童の割合が、男子に比べ女子が高かったことをしていきしています。
つまり、
「いじめを行う子の多くは、いじめられた経験がある」という現象が、女子によく当てはまると指摘しています。

また、内藤(2009)は、いじめは自分にとって耐えがたい体験のひな型になってしまった筋書を、他者を利用して快適なものに加工する「癒し」の作業となるとも述べています。
もっとも、橋本(2008)は、被害者性と加害行為を一元的な結びつきで考えるのではなく、加害行為に及んだ要因の一つには被害者性もあるが、それ以外にもさまざまな要因が複合していることを指摘しています。

とはいえ、いじめの被害と加害とにこうした傾向があるとするならば、いじめは連鎖することになり、いじめの予防・解消を考える上で、重大な課題の一つとなります。

代表講師の研究➀いじめの被害者が加害者へ変わる理由:大学生への回顧法を用いたイメージをもとに

研究の目的

いじめの被害者が加害者へと変わる理由について大学生を対象に回顧法を用いたイメージを分析し、いじめの連鎖を止める手掛かりを見つけることを目的とします。

代表講師の研究➀いじめの被害者が加害者へ変わる理由:大学生への回顧法を用いたイメージをもとに

研究結果

研究は研究Ⅰと研究Ⅱの2種類を行い、それぞれの結果をまとめています。

<研究Ⅰ>

いじめにおける被害者が加害者へと変わる理由について、大学生計153名に自由記述調査で実施した回答を分類しました。
回答を切片化し、664件の切片が得られました。

その結果、
「中学生で、いじめっ子にいじめられている状況を想像し,心に湧いてきた気もち」の構造図,
「いじめっ子になったつもりで,いじめている時の心の中を想像し,思いついた気もち」の構造図,
「中学生の時にいじめられ,その後いじめている側となったと想像し心に湧いてきた気もち」の構造図,
「いじめはどうしたらなくなると考えるか,または思うか」の構造図,
「いじめと聞いて何を考えるか,または思うか」の構造図
が得られました。

<研究Ⅱ>

いじめにおける加害者が被害者へと変わる理由を説明するモデルを生成することを目的に、大学生4名に半構造化面接を実施しました。
データを分析した結果、10個の概念が生成されました。
そこから、6つのカテゴリー、そして
【いじめられる理由がわからない】
【いじめられた人がもつ相反する気もち】
【自分の欲求を満たすためにいじめる】
【いじめが起きている際に教師がとる対応】
【いじめ被害が悪いことだけではなかったこと】
という5つのカテゴリーグループが生成されました。
いじめにおける被害者が加害者へと変わる理由に以上のことが関連すると考えられる結果となりました。

代表講師の研究➀いじめの被害者が加害者へ変わる理由:大学生への回顧法を用いたイメージをもとに

研究考察

研究Ⅰと研究Ⅱの結果をまとめた考察をしています。

<いじめにおける被害者が加害者へと変わる理由>

 “いじめられた人がもつ相反する気もち”といった、いじめにおける被害者が加害者へと変わった時の気もちが得られました。

研究Ⅰでは
「自分を守るために仕方なく行っているというイメージ」そのイメージとは逆に「やられたらやり返すといったイメージ」として表され、
研究Ⅱでは【いじめられた人がもつ相反する気もち】といったカテゴリーとして表された。

このことから、いじめにおける被害者が加害者へと変わる理由には、自分を守るために仕方なくいじめを行っていることやいじめられたからいじめ返すといった相反する気もちがあることがわかりました。

以上のことから、 この2つのパターンがあることがわかりました。
それらの対応策として考えられるのがまず、
「自分を守るために仕方なくいじめを行っている」というパターンに対しては、いじめを行うことなく自分を守れる環境をつくることが大切であると考えられます。
具体的には、気軽に相談のできる環境をつくることや生徒をいじめから守るために周りの生徒や教師が一丸となりいじめが起きていたら止める試みをすることが大切であると考えられます。

「いじめられたからいじめ返す」というパターンに対しては、
いじめられたことに対していじめによって反撃するといった行動を止めることが大切であると考えられます。
具体的には、いじめられた生徒に対してよく話をし、相談の出来る機会を増やすことや怒りを鎮めるための方法を見つけるサポートをすることが良いと考えられます。

<いじめ加害者の気もち>

 “自分の欲求を満たすためにいじめる”といった、いじめ加害者の気もちが得られました。

研究Ⅰでは「いじめを楽しむというイメージ」「相手に対して怒りというイメージ」として表され、
研究Ⅱでは【自分の欲求を満たすためにいじめる】といったカテゴリーとして表されました。

このことから、いじめ加害者の気もちには、いじめを楽しみのためにやり、自分の怒りをぶつけるといった自分の欲求を満たすためにいじめを行っているといった気もちがあることがわかりました。

以上のことから、いじめ加害者は自分の欲求を満たすためにいじめることがわかりました。
考えられる対応策として、怒りや不満を鎮めるための方法を見つけるサポートをすることや教師の注意の仕方に加害者の気もちも汲み取るような注意の仕方をするように心がけることが良いと考えられます。

代表講師の研究➀いじめの被害者が加害者へ変わる理由:大学生への回顧法を用いたイメージをもとに

 

相談をご希望の方へ

いじめ撲滅委員会では、全国の小~高校生・保護者のかた、先生方にカウンセリングや教育相談を行っています。カウンセラーの栗本は、「いじめ」をテーマに研究を続けており、もうすぐで10年になろうとしています。

・いじめにあって苦しい
・いじめの記憶が辛い
・学校が動いてくれない
・子供がいじめにあっている

など、いじめについてお困りのことがありましたらご相談ください。詳しくは以下の看板からお待ちしています。

いじめ,カウンセリング

荒木 剛 2005 いじめ被害体験者の青年期後期におけるリズィリエンス(resilience)に寄与する要因について パーソナリティ研究,14,54-68.
坂西 友秀 1995 いじめが被害者に及ぼす長期的な影響および被害者の自己認知と他の被害者認知の差,社会心理学研究,11,105-115.
Crick,N.R.&Grotpeter,J.K. 1996 Children’s treatment by peers : Victims of relational and over aggression. Development and Psychopathology,8,367-380.
Hawker,D.S.J.&Boulton,M. J. 2000 Twenty year’s research on peer victimization and psychosocial maladjustment : A meta-analytic review of cross-sectional studies. Journal of Child Psychology & Psychiatry,41,441-455.
橋本 和明 2008 加害者の被害者性,現代のエスプリ,491,56-63.
神村 栄一・向井 隆代 1998 学校のいじめに関する最近の研究動向-国内の実証的研究から-カウンセリング研究,31,190-201.
木下 康仁 2003 グラウンデッド・セオリー・アプローチの実践――質的研究への誘い―― 弘文堂
栗本 顕・田村 節子 2015 いじめにおける被害者が加害者へと変わる理由:大学生への回顧法を用いたイメージをもとに 東京成徳大学臨床心理学研究 15,197-208.
三島 浩路 2003 親しい友人間にみられる「いじめの加害・被害関係」―高校生を対象にした小学校高学年当時の回想調査よりーJapanese association of educational Psychology ,561
文部科学省 2012 平成18年以降のいじめ等に関する主な通知文と関連資料 【通知3】問題行動を起こす児童生徒に対する指導について.
文部科学省 2013 平成24 年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」について.
森本 幸子 2004 過去のいじめ体験における対処法と心的影響に関する研究,心理臨床学研究,22,441-446.
内藤 朝雄 2009 いじめの構造 なぜ人が怪物になるのか,講談社現代新書.
オルウェーズ,D.(松井賚夫・角山 剛・都築幸恵 訳) 1995 いじめ-こうすれば防げる- 川島書店
Pellegrini,A.D. 1998 Bullies and victims in school : A review and call for research. Journal of Applied Developmental Psychology,19,165-176.
Rigby,K. 1998 The relationship between reported health and involvement in bully/victim problems among male and female secondary schoolchildren.Journal of Health Psychology,3,465-476.
鈴木 康平 1995 学校におけるいじめ 教育心理学年報,34,132-142

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