~ 児童虐待といじめ ~ 背景にある児童虐待
~いじめの背景にある児童虐待~その予防と早期発見にできること
はじめまして!
いじめ撲滅委員会代表の栗本顕です。
私は学生時代、そうぜつないじめを体験してきました。その後この問題を世界からなくすことを決意し、心理学の大学院でいじめの防止策を研究してきました。
現在では公認心理師として、いじめの解決策や、教育相談を行っています。
全国の小~高校生・保護者のかた、先生方にカウンセリングや教育相談を行っています。
大学生の頃から、とりわけ「いじめ」をテーマに研究を続けており、もうすぐで10年になろうとしています。
私自身がいじめが原因で不登校になった経験を大いに活かし、今後のいじめ対策に貢献ができればと思います。
今回は、今社会問題となっている「児童虐待」と「いじめ」の関連性についてご紹介ます。
いじめ問題や児童虐待の予防と早期発見をして、解決の糸口を見つけていただければと思います。
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児童虐待防止法
児童虐待の問題は、何も最近はじまったものではありません。
児童虐待については、、平成12年に「虐待の防止等に関する法律」(「児童虐待防止法」)が施行されたことで、学校の責任や役割が明確になりました。
この「児童虐待防止法」では、児童虐待とは保護者が18歳未満の者に対して行う次の4種類のことです。
<➀身体的虐待>
身体に外傷が生じる、または生じるおそれのある暴行を加えることです。
生じる「おそれ」を含むので、外傷がある必要はありません。
<②性的虐待>
わいせつな行為をする、またはわいせつな行為をさせることです。
ポルノの被写体にするなどもこれに含まれます。
<③ネグレクト>
心身の正常な発達を妨げるような著しい減食をさせる、
または長時間の放置、保護者以外の同居人による➀・②・④などの虐待行為と同様の行為の放置、その他の保護者としての監護を著しく怠ることです。
<④心理的虐待>
著しい暴言、または著しく拒絶的な対応、同居する家庭における配偶者に対する暴力、その他の児童生徒に著しい心理的外傷を与える言動を行うことです。
つまり、家庭に配偶者間の暴力があると、その家庭の子は虐待を受けたことになります。
児童虐待の発見と通告
「児童虐待防止法」では、学校、児童福祉施設、病院などの団体や、学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師などは、
児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならないと定めています。
つまり、学校関係者は、児童虐待を早期に発見する義務を負っていると自覚し、努力することが求められています。
また、虐待の疑いがある児童生徒を発見したら、速やかに市町村、都道府県の設置する福祉事務所もしくは児童相談所に通告しなければならないと義務付けられています。
学校は、虐待をなるべく早く発見して、関係機関と連携して対応することが求められていますし、そのためには虐待の定義やその影響、対応の仕組みなど虐待に関する正確な知識を持つことが大切です。
連携による継続的支援
学校が単独で、虐待を行っていると思われる保護者に対して直接注意し指導することが、虐待をより深刻化させることがあります。
児童虐待への対応の基本は「一人(一機関)で抱え込まない」「疑わしきは通告と連携」です。
通告は児童生徒と保護者を虐待から守る支援を開始するための手続きです。
そのためにも、疑いの段階で速やかに通告することが求められています。
虐待の対応は、通告して終わるのではなく、児童相談所や市町村の要保護児童対策地域協議会など、
権限と守秘義務のあるネットワークの一員として、連携に基づいた支援を続けることが必要になります。
学校現場でいじめ問題の理解
いじめはどの子どもにも、その学校においても起こりえるものであること、
また、誰もが被害者にも加害者にもなりえるものであることを十分に認識しておく必要があります。
いじめの背景にあるいじめる側の心理を読み取ることも重要です。
不安や葛藤、劣等感、欲求不満などが潜んでいることが少なくありません。
対応の方向性への示唆が得られるだけでなく、その視点から児童生徒の生活をみることでいじめの未然防止にもつながります。
児童虐待がリスクを高める!!
最近の諸外国における疫学研究では、地域、家庭、学校の環境が思春期の若者のいじめに有意に影響を与えることが明らかになっています(Bowes et al, 2009)。
こうした若者を取り囲む地域・家庭・学校の環境構造が若者自身の意思や行動を超えていじめに影響を与えているとしたら、
そうした環境構造の修復がいじめのリスクを低減させる可能性が出てきます。
今日、少子高齢化、核家族化、離婚増加などにより、若者たちを取り囲む環境、特に家庭環境は、大きく変化しています。
特に、世帯構成や兄弟構成などが多様化しつつあります。
また、近年、親からの虐待・暴力を受けている子どもは、そうでない子どもに比べ、学校でのいじめに巻き込まれるリスクが有意に高いことが諸外国の研究で明らかになっています(Shields & Cicchetti, 2001)。
そこで、西田(2010)は、我が国において、家庭における大人からの暴力と、思春期・青年期のいじめとの関連について疫学的に研究をしました。
内容は、「過去1カ月以内に同居中の大人から暴力を受けた体験を有する生徒」と「そうでない生徒」とで、いじめの加害者になるリスクや被害者になるリスクを検討したものです。
その結果、以下のような内容が報告されました。
表からわかることは、
・「同居中の大人からの暴力があった生徒」は、「そうでない生徒」よりもいじめられた体験がある。
・「同居中の大人からの暴力があった生徒」は、「そうでない生徒」よりもいじめた体験がある。
ということです。
つまり、
「過去1カ月以内に同居中の大人から暴力を受けた体験を有する生徒」は、「そうでない生徒」に比べ、いじめの被害体験のリスクが4倍以上に高くなることが明らかとなりました。
また、いじめの加害体験と意味のある関連が認められた家庭関連要因は、「同居中の大人からの暴力」であり、そのリスクは3倍以上に高くなることが明らかとなりました。
これまでの先行研究では、家庭における親からの暴力や虐待が、子どものいじめの加害体験および被害体験と有意に関連することが報告されています(Shields &Cicchetti, 2001, Baldry, 2003)。
この研究でも同様の結果が得られたということです。
つまり、「家庭で大人から暴力を受けている生徒は、いじめに巻き込まれるリスクが顕著に高い」ということです。
学校現場でできること
児童虐待といじめ問題について、関係があることをご紹介しました。
では、実際に学校現場でできること、気を付けるべきことをご紹介します。
<児童生徒の家庭環境に目を向ける>
児童生徒の家庭に目を向けることで、いじめ問題だけでなく児童虐待を早期に防ぐ可能性が高くなります。
また、親身に児童生徒の家庭に目を向けることで、学校と家庭との連携もとれ、信頼関係も育まれると考えられます。
<加害者が抱えているものを見ていく>
実際にいじめが発生し、その対処をしていく中で、どうしても見落としがちになってしまうのが加害者へのフォローです。
加害者には、加害者になった原因があり、その気持ちを汲み取らなければ、いじめは再発します。
いじめの再発防止のためにも加害者が抱えているものを見ていくことは疎かにしてはいけないものです。
<被害者がいじめだけの被害になっていないか注意する>
実際にいじめが発生した時、当然被害者のケアをします。
しかし、いじめ問題だけを視野に入れたケアでは、不十分なケアであり、偏りのあるケアになります。
抜かりのない、被害者を本当の意味でケアするためにも、いじめだけの被害になっていないか注意することが必要です。
<連携について検討しておく>
児童虐待の疑いがあった時に、冷静に判断し、必要な対応をすることが児童生徒やその保護者を守ることになります。
実際にその対応をすることが頻繁にあることは滅多にありません。
しかし、広い視野を持ち、注意深く観察することでその対応が必要となることが増えます。
必要な連携はどのようなものなのか、所属している学校ではどのような対応をすることになっているのか、今一度確認しておく必要があります。
以上のことを優先的に気を付け、実行していかなくてはなりません。
あまり多くのことを気にしたり、行おうとすると抜け目ができてしまいます。
だからこそ、連携をしていくことが大切です。
相談をご希望の方へ
いじめ撲滅委員会では、全国の小~高校生・保護者のかた、先生方にカウンセリングや教育相談を行っています。カウンセラーの栗本は、「いじめ」をテーマに研究を続けており、もうすぐで10年になろうとしています。
・いじめにあって苦しい
・いじめの記憶が辛い
・学校が動いてくれない
・子供がいじめにあっている
など、いじめについてお困りのことがありましたらご相談ください。詳しくは以下の看板からお待ちしています。
Bowes L, Arseneault L, Maughan B et al. School, neighborhood and family factors are associated with children’s bullying involvement: a nationally-representative longitudinal study. Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry 48, 545-553, 2009.
Baldry AC. Bullying in schools and expousure to domestic violence. Child Abuse and Neglect 27, 713-732, 2003.
Shields A, Cicchetti D. Parental maltreatment and emotional dysregulation as risk actors for bullying and victimization in middle childhood. Jounal of Clinical Child and Adolescent Psychology 30, 349-363, 2001.
西田 淳志 2010 思春期・青年期の「いじめ」に影響を与える家庭関連要因の検討 発達研究 24, 147-154.