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DESC法,段階的主張法の使い方,具体例

DESC法,段階的主張法の使い方,具体例

みなさん、こんにちは。公認心理師,精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向けコミュニケーション講座で講師をしています。

コラム1ではアサーションの歴史や技術の概要を解説しました。今回は「段階的主張-DESC法」について解説していきます。

コラム1 アサーションの基礎
コラム2 段階的主張‐DESC法
コラム3 感謝とセットで断る法
コラム4 価値観ワーク,学校や職場編
コラム5 断り方ワーク,こども編
コラム6 断り方ワーク,大人編

 

DESC法とは何か

意味とは

DESC法はDESC法は、シャロン・A・ベーレン(Sharon A. Bower)とゴードン・H・ベーレン(Gordon H. Bower)によって、1976年に発表された書籍『Asserting Yourself: A Practical Guide for Positive Change』[1]にて提唱されました。

アサーティブコミュニケーションでもよく使う手法です。具体的には以下の意味があります。

自己主張を4つの段階に分けることにより、柔らかく主張していくやり方

自己主張がうまい方は、弱い主張から初めて、解決しない場合は段々と強くしていくという柔軟さを持っています。DESC法を覚えると、主張の引き出しを増やし、状況に応じて使い分けることができるようになります。

4つの段階

4つの段階とは以下になります。

1.Describe(描写する)
今の状況を客観的に表現します。事実を淡々と述べるようにします。筆者の体感となりますが、事実の描写で50%ぐらいの方は察してくれます。

2.Explain(説明する)
描写に対する自分の主観的な気持ちを、悲しい・辛いなどアイメッセージで主張します。この段階で70%ぐらいは解決します。それでもうまく行かない場合は、次の段階に進みます。

3.Specify(提案する)
相手にしてほしいこと、妥協案や解決策を述べます。相手が受け入れやすい表現を心がけます。

4.Choose(相手の選択と応答)

アサーションでは相手にも選択権があると考えます。そして、相手の返答がYESだった場合、NOだった場合、それぞれに適した回答をします。なるべく建設的な関係になることを目指しますが、場合によっては強く主張することもあります。

なお、バウアー先生はChooseではなく、Consequences(結果)という用語を使っていました。現在は、どちらかというとChooseで使う支援者が多い印象です。

DESC法の効果

DESC法の効果は、対立を避けつつ自分の気持ちを上手に伝えることができ、信頼関係を築いたり、ストレスを減らすことに役立つ点です。また、問題を解決する力が高まり、誤解やケンカが減って人間関係が良くなることが期待できます。冷静で建設的な話し合いができるようになり、コミュニケーション全般のスキルが向上します。

アサーション 握手

DESC法の具体例

DESC法には以下のような具体例があります。

状況
・上司から食事に誘われた
・しかし、友人と約束がある
・友人とは1年ぶりに会う

1.Describe(描写する)
実は今日は1年前からの約束がありまして・・・

(あくまで客観的な事実だけを述べます)
(解決できない場合は次に進みます)

2.Explain(説明する)
う~ん…困ったなあ…

(感情を述べる)
(提案はまだしない)
(解決できない場合は次に進む)

3.Specify(提案する)
〇日なら空いているのですが、その日はいかがですか?

4.Choose(相手の選択と応答)
*YESの場合
その日なら気持ちよく行けると思います!お店も私が探しますよ♪

*NOの場合
申し訳ないです。やはり友人との約束はどうしても守りたいのです。別の候補日はありますか?

 

状況
・美容サロンに行った
・新しいトリートメントの勧誘を受けた
・高額で厳しい

1.Describe(描写する)
トリートメント代…2万円ですか…

2.Explain(説明する)
う~ん…少し困っています。

3.Specify(提案する)
今は他のメニューを試したいと思っているのですが、こちらのトリートメントについては考えさせていただけますか?

4.Choose(相手の選択と応答)
*YESの場合
ありがとうございます!後で検討してみます。

*NOの場合
申し訳ありませんが、やはり今は無理そうです。他のサービスを考えることにします。

 

状況
・飲み会に出席した
・周りが酒豪
・お酒をどんどん注がれる

1.Describe(描写する)
ビール今日4杯目ですね…

2.Explain(説明する)
う~ん…少ししんどくなってきました…

3.Specify(提案する)
この辺でいったんソフトドリンクにしたいと思います。割り勘代も安くなりますしね。

4.Choose(相手の選択と応答)
*YESの場合
ありがとうございます!それではマイペースでソフトドリンクを頼みますね。

*NOの場合
申し訳ありませんが、やはり飲みすぎると皆さんに迷惑をかけるので、あとはソフトドリンクにします。

アサーティブに断る方法

DESC法,練習問題

それでは練習問題に取り組んでみましょう。

①練習問題

状況
・上司から毎日仕事を押し付けられる
・残業が法定時間を超える
・睡眠時間が少ない
・夜8時に帰宅しようとしたところ、上司が声をかけてきた

「悪いけど、今すぐにこの書類を作成して欲しいんだ」

皆さんはこのような状況に遭遇したらどのように断りますか?DESC法で考えてみましょう。

1.Describe(描写する)

 

2.Explain(説明する)

 

3.Specify(提案する)


4.Choose(相手の選択と応答)
*YESの場合

*NOの場合

 

解答例

1.Describe(描写する)
書類が溜まっているのですね。実は睡眠不足でして…

2.Explain(説明する)
う~ん…困ったな… ミスが多くなりそうで不安です…

3.Specify(提案する)
今日はしっかり帰って寝て、明日シャキっと仕事ができると嬉しいです

4.Choose(相手の選択と応答)
*YESの場合
ありがとうございます。明日の朝の方が脳がフレッシュなのでミスも少なくなると思います

*NOの場合
申し訳ないですが、体調を優先させてください。その代わり、元気になってしっかり作業できるようにしますね。

 

②練習問題

状況
・友人と映画に行く
・待ち合わせ時間(12時)に友人が来ない
・映画の時間が迫っている
・公開15分前にようやく来た

皆さんはこのような状況に遭遇したらどのように断りますか?DESC法で考えてみましょう。

1.Describe(描写する)

 

2.Explain(説明する)

 

3.Specify(提案する)


4.Choose(相手の選択と応答)

*YESの場合

*NOの場合

 

 

解答例

1.Describe(描写する)
ええっと…待ち合わせ時間は12時だったよね…

2.Explain(説明する)
もうすぐ公開だからすごく焦ったよ…

3.Specify(提案する)
遅刻すると分かった時点で、連絡して欲しかたなあ。 

4.Choose(相手の選択と応答)
*YESの場合
ありがとう。時間がわかれば、映画の時間をずらしたりできるかもしれないしね。

*NOの場合
う~ん。これからも連絡なしが続くのか…それはつらいな。正直遊ぶ気持ちになれないかも。ラインで1行だけ打つのも難しい?

まとめ

アサーティブコミュニケーションでは主張することを大事にします。しかし、一方的に自分の権利を主張しては、ぶつかり合ってしまいます。

まずは事実確認から入り、主張をする段階を強めていくと、思った以上にスムーズに主張が通りやすくなります。ぜひDESC法を日常生活でも活かしてみてください♪

しっかり身に着けたい方へ

アサーティブコミュニケーションは、公認心理師による講座で、実際に学ぶことができます。内容は以下のとおりです。

・アサーション権を学ぼう
・アイメッセージ実践練習
・DESC法,自己主張訓練
・自分を大事に,他人を大事にする

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)

DESC法,段階的主張法の使い方,具体例,心理学講座

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1]Bower, S. A., & Bower, G. H. (1976). Asserting Yourself: A Practical Guide for Positive Change. Addison-Wesley.