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ブリーフセラピーの技法,リソースの意味と探し方

ブリーフセラピーの技法!「リソース探し」とは?

みなさんこんにちは。公認心理師の川島です。私はこちらの心理学講座を開催しています。ブリーフセラピーコラム①では、ブリーフセラピーの基礎を解説してきました。今回は「リソース探し」について解説していきます。

コラム1 ブリーフセラピーの基礎
コラム2 技法,リソース探しのコツ
コラム3 技法,ミラクルクエスチョン

リソース,探す

リソースの意味とは

リソースとブリーフセラピー

短期集中療法(Brief Therapy)におけるリソースの概念は、特に1970年代以降、効果的な問題解決を迅速に実現するために家族や個人が持つ強みを活用するアプローチとして注目されました[1]

ミルトン・エリクソンは、クライアントが持つ潜在的なスキルやリソースを短期間で引き出すことに重点を置き、サルバドール・ミニューチンは家族システムの再編成を通じてリソースを活性化しました。

さらに、マイケル・ホワイトは、クライアントの物語の中にある解決策や強みを見出し、問題解決を促しました。このように、短期集中療法はリソースの発見と活用を核心に据え、迅速かつ効果的な治療を実現しました。

語源と意味

語源としては、「re(再び)+source(源)」で「源にあったものが、再び価値あるものとして日の目をみる」というニュアンスになります。具体的には以下のような定義があります。

個人が持つ感情的、心理的、行動的な能力や強みを指し、ストレスへの対処や問題解決に役立つ(Bandura,1997)[2]

家族やグループ内でメンバーが持つ支援や協力の資源。問題解決のために互いに援助し合う能力(Minuchin,1974)[1]

このようにリソースとは幅広い意味があり、問題解決のために活用できる、ありとあらゆるものを指します。より具体的には以下のようなものが挙げられます。

能力 技術 成功体験 失敗体験 性格 価値観 福祉施設 友人 家族 知り合い 資産 お金 情報 健康 モチベーション

私たちが日々の悩みを改善していくには、能力や体験など自分の中にあるもの、家族や友人など自分の周囲にあるもの、このような資源を改めて認識し、助けを借りていくことが大切になります。

ブリーフセラピー,リソース,家族

リソースと4つのプロセス

リソースを活かすプロセスは心理療法家によって異なりますが、概ね以下のようなステップを取られることが多いです。

①悩みの把握
②目標
③リソース探し
④計画を立てる

リソース,サポート

①悩みの把握

自分が直面している問題を深く掘り下げて理解します。具体的にどんな場面で困っているのか、どのような感情や状況が不安やストレスを引き起こしているのかを認識することが重要です。

このプロセスを通じて、悩みを明確にし、解決策を見つけるためのスタート地点を設定します。自分の心の中で何が問題で、何が自分を困らせているのかを冷静に振り返ることが解決への第一歩です。

②目標の設定

悩みを解決するために、具体的な目標を設定します。目標は達成可能で具体的であるほど効果的です。漠然とした目標ではなく、測定可能で期限があるものを設定することが重要です。

例えば、「3ヶ月後に自信を持って人前で話せるようになる」といった具合です。明確な目標があることで、自分が何をすべきかがわかり、モチベーションも高まります。目標設定は解決に向けた道しるべとなります。

③使えるリソース

目標を達成するために活用できるリソースを探します。具体的には以下の視点から考えると良いでしょう。

自己リソース
自己リソースは、自分自身が持っている内的な資源や能力、物質のことです。自分の強みや過去の経験を活かして目標を達成するための手段です。

具体例
専門知識 技術 体力的 健康 過去の成功体験 失敗から学んだ教訓 自己管理能力 使える時間 資金 PC スケジュール管理アプリ

外部リソース
外部リソースは、周囲の人や社会、環境から得られる支援やサポートです。これらを活用することで、自己リソースを補強し目標達成を加速できます。

具体例
家族の支援 友人の支援 職場の支援 専門家からの指導 SNSでの情報 励ましてくれる人 

このような視点から自分が持っているリソースを一度リストアップし、どれを優先的に活用できるかを考えることで、効果的に問題解決の方法を見つけることができます。

④計画を立てる

見つけたリソースをどのように活用するかを基に、実行可能な行動計画を立てます。目標を達成するためには、具体的なステップを踏んでいくことが大切です。

計画には、どのリソースをどのタイミングで使うか、どのように行動を進めるかを詳細に書き出します。毎日のルーチンに組み込むことができる小さな目標を設定し、それを積み重ねていくことで、着実に目標に近づいていきます。

ブリーフセラピー,計画を立てる

リソースシート

4つのプロセスを記入するエクセルシートを作成しました。ご自身の状況に合わせて、変更しながらご活用ください。

リソース活用シート記入用

リソース活用シートサンプル

4つのプロセスと具体例

以下4つのプロセスを活用した具体例を解説しました。ご自身の状況と近いものを探して参考にしてみてください。

大型資格を合格したいが不安

①悩みの把握

・試験範囲が広すぎて不安
・勉強時間が確保できるか心配
・前回の不合格経験がトラウマ

特に前回の失敗体験が、心の中でブレーキになっているかもしれません。ただ、この不安をしっかり理解することが、合格への第一歩になります。

②目標

・3ヶ月後の試験合格
・毎週過去問を5回解く
・月1回は模試を受ける

これらの目標は、大きな目標(合格)を小さな目標に分けたものです。毎週の過去問や月1回の模試は、自分の進み具合を確認する道しるべとなります。

③リソース探し

【自己リソース】
・朝型の生活習慣
・他の資格試験合格経験
・基礎知識の理解力

特に朝型の生活は、頭が冴えている時間に勉強できる大切な財産です。また、過去の資格試験合格経験は、効率的な学習方法を知っているという強みにつながります。

【外部リソース】
・勉強時間を確保できる家庭環境
・同じ資格を持つ先輩の存在
・会社の資格支援制度

特に、家族の理解や職場の支援は、長期戦となる資格試験の勉強において、とても心強い味方となります。このような環境があることは、継続的な学習を支える重要な基盤となっています。

④計画を立てる

平日:通勤電車で1時間テキスト読み込み
土曜:図書館で4時間の過去問演習
毎週水曜:先輩に30分質問時間
月1回:模試で弱点分野の把握
就寝前:翌日の学習範囲を決める

通勤時間を使った学習と定期的な先輩への質問で、着実に実力を伸ばすことができます。

会話が苦手でうまく話せない

①悩みの把握

・知らない人と話すと緊張する
・グループでの会話が苦手
・話題が続かない

特に相手の反応が気になりすぎて自分の言いたいことが上手く言えない、という状況はとてもよくある課題です。まずは自分の状況をしっかり理解することが大切です。

②目標

・1ヶ月後に知らない人と5分会話
・週1回は友人と会話練習
・毎日、同僚と短い会話を実践

いきなり完璧な会話を目指すのではなく、小さな成功を積み重ねていきましょう。身近な人との短い会話から始めることで、徐々に自信をつけることができます。

③リソース探し

【自己リソース】
・相手の話を聴ける傾聴力
・自分の専門分野の知識
・基本的な礼儀作法

特に相手の話を聴く力は、会話を円滑に進める上で重要な能力です。また、専門分野の知識があることは、会話の話題を提供できる貴重な資源となっています。

【外部リソース】
・会話練習に付き合う家族
・日常的に交流できる職場環境
・アドバイスをくれる友人の存在

特に、失敗を恐れずに練習できる家族の存在は、会話力を高める上で大きな支えとなります。職場という練習の場があることも、実践的なコミュニケーション能力を育てる機会となっています。

④計画を立てる

・コンビニで店員と一言多く話す
・月曜の朝礼で必ず1回発言する
・友人とランチ1回/週を習慣化
・趣味のオンライン掲示板で週2回書き込み
・電話は要点をメモしてから架ける

友人とのランチや朝礼での発言は、安心できる環境で会話力を高める機会となります。

体重が10キロ増えた

①悩みの把握

・服がきつくなってきた
・階段を上るのがつらい
・体を動かすのが億劫

これらの問題は、見た目の変化だけでなく、日常生活の快適さにも影響を与えています。体重増加の原因を理解することで、改善のヒントが見えてきます。

②目標

・3ヶ月で5キロの減量
・毎日10分の運動習慣
・夜9時以降は食事を控える

これらの目標は、無理なく継続できる範囲で設定しています。特に、短い時間からでも運動を始めることで、少しずつ生活習慣を変えていくことができます。

③リソース探し

【自己リソース】
・過去の運動習慣の経験
・健康的な食事の知識
・自炊ができる能力

特に過去の運動経験は、自分に合った運動方法を知っているという利点です。自炊ができることは、食事内容をコントロールできる重要な能力となっています。

【外部リソース】
・健康的な食事を作る家族
・近所の運動できる環境
・一緒に運動する友人

健康的な食事を準備してくれる家族の存在は、食生活改善の大きな助けとなります。また、身近に運動できる環境があることは、継続的な運動習慣を作る上で重要な要素となっています。
体重が10キロ増えた

④計画を立てる

・スーパーでの買い物は食後に行く
・休憩時間に10分の職場周辺散歩
・夕食は20時までに済ませる
・週2回の自重トレーニング
・毎週日曜に体重・体脂肪を記録

定期的な運動習慣と食事時間の管理は、無理なく継続できる健康的な生活の基礎となります。

収入が増えず苦しい

①悩みの把握

・毎月の生活費が厳しい
・急な出費に対応できない
・貯金が増えない

収入と支出のバランスを具体的に理解することで、改善できる部分が見えてきます。

②目標

・3ヶ月以内に月5万円の副収入
・毎月の支出を2万円削減
・半年後に月3万円の貯金

収入増加と支出削減を同時に進めることで、少しずつ経済的な余裕を作ることができます。

③リソース探し

【自己リソース】
・仕事での専門知識や技術
・PCやスマホの操作スキル
・時間管理能力

仕事で培った専門知識は、副業を始める際の重要な武器となります。また、デジタルスキルは、オンラインでの収入機会を広げる貴重な能力です。

【外部リソース】
・副業経験者の知人
・利用可能なネット環境
・時間を作れる生活環境

経験者からアドバイスが得られることは、新しい収入源を見つける際の大きな助けとなります。また、インターネット環境が整っていることは、オンラインでの副業に取り組める重要な基盤となっています。

④計画を立てる

・固定費を3項目見直し(携帯・保険・サブスク)
・副業サイトに毎週2件応募
・帰宅後2時間をスキルアップ学習
・家計簿を毎日つける習慣化
・月1回の支出分析と削減目標設定

計画的な支出管理と新しい収入源の確保を並行して進めることで、確実な改善が期待できます。

恋人ができない

①悩みの把握

・出会いの機会が少ない
・相手との会話が続かない
・自分に自信が持てない

これらの悩みは、多くの人が経験することです。特に、仕事や日常生活に追われて新しい出会いの機会が減っているという状況は、よくある課題です。

②目標

・3ヶ月以内に出会いの場に3回参加
・趣味を通じて月2人の新友人作り
・身だしなみを整える習慣をつける

上記の目標は、いきなり恋人を作ることではなく、まずは自分自身と環境を整えていくためのものです。特に、趣味を通じた自然な出会いは、共通の話題があるため会話も続きやすくなります。

③リソース探し

【自己リソース】
・誠実に人と接する性格
・趣味についての知識
・基本的な気配り能力

誠実な性格は、相手との信頼関係を築く上で重要な特徴です。また、趣味についての知識は、会話を広げる貴重な材料となっています。

【外部リソース】
・恋愛相談できる友人の存在
・参加できる趣味のコミュニティ
・応援してくれる家族

経験豊富な友人からのアドバイスは、恋愛に向けての具体的なヒントとなります。また、趣味のコミュニティは自然な出会いの場として活用できる重要な環境です。

④計画を立てる

・趣味のサークルに月2回参加
・休日の身だしなみ改善(服・髪型)
・友人の集まりに必ず参加
・SNSのプロフィール写真を更新
・週1回は新しい場所やカフェに行く

特に趣味のサークル活動と友人の集まりへの参加は、自然な出会いのきっかけを作る良い機会となります。

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まとめ

繰り返しになりますが、リソースは極めて広い概念です。リソースを発見する視点を育てると、思っている以上に自分は恵まれているということに気がつくことがあります。リソースがたくさんあると、私たちは勇気を持ち、前向きに未来を切り開いていこうという気持ちが増していきます。紹介した技法で、ぜひ自信をつけてください♪

しっかり身につけたい方へ

心理療法を公認心理師の元でしっかり学びたい方は、私たちが主催する講座をおすすめします。内容は以下の通りです。

・はじめて学ぶ心理療法
・リソースを探す練習
・初学者向け,認知療法の基礎
・初学者向け,マインドフルネス療法

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)

コミュニケーション講座,心理療法の学習

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Minuchin, S. (1974). Families and Family Therapy. Harvard University Press.
 
[2] Bandura, A. (1997). Self-efficacy: The exercise of control. W. H. Freeman