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SSTソーシャルスキルトレーニング入門

SSTソーシャルスキルトレーニング入門

みなさんこんにちは。公認心理師の川島です。私はこちらの心理学講座を開催しています。今回のテーマは「SST」です。

ソーシャルスキルトレーニング

目次は以下の通りです。

①SSTとは何か
②スキルと能力の違い
③SSTの効果,研究紹介
④基本訓練モデル
⑤ステップ・バイ・ステップモデル
➅子供が学ぶSST具体例
⑦大人が学ぶSST具体例

SSTは、会話や人間関係が苦手で「どんな風に改善したらいいのか分からない」という方におすすめの認知行動療法です。SSTは私の大学院の研究テーマだったので張り切って解説します。

①SSTとは何か

意味とは

ソーシャルスキルは、複数の学者によって異なる定義がありますが、概ね以下のように定義できます。

人間関係を健康的に築くための言語・非言語スキルを総称したもの

例えば、挨拶をする、友人を作る、仲直りをする、嫌な依頼を断るなど、健康的な人間関係を築く技術を指します。ソーシャルスキルに「トレーニング」がくっつくと、ソーシャルスキルトレーニング(Social Skills Training)と呼びます。頭文字をとってSSTと呼ぶことが多いです。

提唱者

SSTに関する重要人物は、創始者であるリバーマン、訓練モデルを発展させたベラック、理論的な基礎を築いたアーガイルの3人がいます。以下折りたたんで解説をしました。興味がある方は参考にしてみてください。

Robert Liberman(ロバート・リバーマン)

筆頭となるのは、米国の心理学者であるRobert Liberman(ロバート・リバーマン)です[1]。リバーマンは、1975年から慢性精神障害患者向けのリハビリとしてSSTを開始しました。これは「基本訓練モデル」と言われていて、SSTの代表的な手法になっています。

Robert Liberman

基本訓練モデルが開発された背景には、脱施設化運動があります。精神病院などの施設から患者が地域社会に開放されるにつれ、さまざまな問題が起こりました。施設から患者を退院させたものの、家庭や地域社会の中で必要となる支援が整備されていなかったため、患者の生活の質が極めて貧しい実態になってしまったのです。

そこでリバーマンらは、地域でのサポート体制の充実を図ると共に医療側の治療方法として、対人関係の改善や、服薬の継続、症状自己管理など、精神障害者が学習できるように、まとめたのです。日本では、1988年から本格的普及が開始されました[2]

Alan.S.Bellack(アラン・S・ベラック)

2人目の提唱者は、米国のメリーランド大学で教授をしていた(アラン・S・ベラック)です[3]。ベラックは、統合失調症の患者向けに「ステップ・バイ・ステップ」というSSTの手法を開発しました。こちらもSSTの基本的なやり方として定着しています。

alan.s.bellack

ステップ・バイ・ステップは、名前の通り、ステップを踏むことによるコミュニケーション手法です[4]。テーマに沿ったいくつかのステップを踏むことで、円滑な人間関係を作っていきます。テーマは複数名で共有し、モデリングしながら進めるため、いろいろな状況に合わせたスキルを身につけていくことができます。

Michael Argyle(マイケル・アーガイル)

基本モデル、ステップバイステップどちらも、精神疾患の患者向けに開発されたSSTです。教科書的にはこの2人が提唱者としてよく出てきて、国家試験にも出題されるのですが、実はもう一人、超重要人物がいます。

Michael Argyle

3人目の提唱者は、社会心理学者のMichael Argyle(マイケル・アーガイル)です[5]。オックスフォード大学の教授であるアーガイルは、人間関係に関する心理学の第一人者と言われる人物で、1960年代からソーシャルスキルの研究を行っていました。1972年には、6つのステップが含まれるコミュニケーションサイクルを確立しました。

このように、SSTは「心の病気を治す分野」と「人間関係に関する心理学」の分野で発達してきたと押さえておいてください。

トレーニングメニュー

SSTは、老若男女が対象となります。子供に対しては、学校で教育目的で行われることが多いです。例えば、いじめを防止する練習、友人作りのやり方、発達障害児向けのトレーニングなどが多いです。

大人に対しては、日常的な人間関係を築くトレーニング、ビジネス上の主張練習、モラハラの防止、就労支援、精神科デイケアでの主張練習などが挙げられます。

以下目的別のトレーニングメニューです。参考にしてみてください。

基本コミュニケーション
基本コミュニケーション
あいさつ
初対面や日常のあいさつ練習、笑顔でのあいさつ
自己紹介
名前、職業、趣味など簡潔な自己紹介の練習
感謝を伝える
感謝の表現練習、感謝カードの作成
質問力
オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンの使い分け練習
会話の切り出し
初対面の相手に自然に話しかける練習
話の展開
相手の返答に応じた話の広げ方や深め方の練習
共感スキル
共感スキル
共感的理解
相手の話を受け止め、共感的に返答する練習
相槌の打ち方
タイミングよく相槌を入れる練習
感情表現の確認
相手の感情を読み取り、確認する練習
同情と共感の違い
共感と同情を区別し、適切に表現する練習
自己表現スキル
自己表現スキル
自己主張
自分の意見や考えを相手に伝える練習
感情の表現
怒りや悲しみなど、自分の感情を適切に表現する練習
自己肯定感の強化
自分の強みや成功体験を見つけ、自己肯定感を高める
自己開示
適切な自己開示の範囲を学び、実践する
断り方
相手の気持ちを傷つけずに断る練習
非言語コミュニケーション
非言語コミュニケーション
アイコンタクト
相手と適切なアイコンタクトを維持する練習
表情表現
喜怒哀楽の表情を適切に伝える練習
ジェスチャー
手や体の動きを使って話を強調する練習
声のトーンと速度
場面に応じた声のトーンや話す速度の調整練習
パーソナルスペースの理解
距離感を意識しながら、適切な距離で話す練習
対立と問題解決スキル
対立と問題解決スキル
意見の調整
相手の意見を受け入れつつ、自分の意見も主張するバランスを取る練習
建設的な批判
批判的な意見を建設的に表現する練習
折衝と妥協
意見の違いを乗り越え、妥協点を見つける練習
怒りのコントロール
怒りの感情をコントロールし、冷静に対処する練習
仲裁スキル
他者間の対立を解決するための仲裁方法を学ぶ練習
フィードバックスキル
フィードバックスキル
褒める技術
相手の良い点を具体的に褒める練習
アサーティブな表現
相手を傷つけずに自分の意見を伝える練習
効果的な助言
相手にとって役立つ助言を適切に提供する練習
ポジティブフィードバック
相手の行動や成果を評価し、ポジティブなフィードバックを伝える練習
ネガティブフィードバック
相手の改善点を指摘する際、建設的に伝える練習

 

②ソーシャルスキルとは何か

ソーシャルスキルを理解するうえで、「能力」と「スキル」の違いはしっかりと押さえておきましょう。以下は、能力とスキルの関係を表している図です。緑色「能力」を土台として、黄色「スキル」が上にくっついている状態です。

スキルと能力の違い SST

「能力」は、スキルも含めた広いもの、先天的な才能や資質で、学習の土台になります。一方で「スキル」は、後天的に学習していくものになります。私たちの能力は、先天的な資質と後天的に学ぶスキルの2つを組み合わせた、総合的な力になるのです。

具体例として、水泳で考えてみましょう。身長、体重、手の長さなどは先天的な才能や資質の部分です。ここで、スキルの学習なしに自己流で泳でみたとします。いくら資質があっても、最初は溺れかけてしまったり、がんばっても前にすすむぐらいで「能力」としては止まってしまうでしょう。

一方で、知識のある人から正しい泳ぎ方のスキルを学ぶと、多少体力がなくても、資質に恵まれなくても、スイスイと泳げるようになるものです。これがスキルの最大の特徴です。

スキルと能力の違い SST

このように、先天的な資質が無かったとしても、スキルを身に付けることで能力がグンと伸びるのは「会話力」も同じです。例えば、性格的に緊張しやすかったり、内向的で口下手な面があっても、ソーシャルスキルを学ぶことで緊張しながらもまあまあ話せるようになります。これがソーシャルスキルトレーニングの良いところだと私は考えています。

③SSTの効果,研究紹介

ソーシャルスキルと心への影響

相川ら(2005)は、学生1,002名(男性435名,女性567名)を対象に、ソーシャルスキルに関する調査を行いました[6]。結果の一部を抜粋して紹介します。

SST(ソーシャルスキルストレーニング)の効果

この結果から、ソーシャルスキルが向上すると、対人不安が減りやすく、孤独感が減りやすいことが推測できます。また抑うつ感もマイナス関係になっている点から、ソーシャルスキルが向上すると元気に過ごしやすいと言えます。

SSTと傾聴スキル

川島(2010)は、成人100名を対象に、SSTを行う前後での傾聴スキルについて調査しています[7]。以下の図は、介入をしていない比較群と、SSTの介入を行った実験群(ダイコミュ生徒さん)のグラフです。縦軸は傾聴スキルの得点を表します。SST 傾聴スキルSSTの実践前は、傾聴が苦手な人が多いことがわかりますが、トレーニングを重ねることで、着実に傾聴力が向上していることがわかります。

SSTと抑うつ感

石川ら(2010)[8]の研究では、小学生1150名を対象に児童のSSTを抑うつ感について調査を行いました。その結果が以下の図です。

SST抑うつ

上図は、SSTトレーニングの抑うつ傾向を4つの時期で測定したものです。このように、SSTトレーニング事前に比べて、事後以降は抑うつ傾向が低下していることがわかります。

④基本訓練モデル

先程解説したように、SSTの基本モデルは、リバーマンの「基本訓練モデル」とベラックの「ステップバイステップモデル」です。両者の進め方と、効果とデメリットを確認しておきましょう。

基本訓練モデルの進め方

①アイスブレイク
基本的には、4〜8人くらいで輪になって行うことが多いです。ワークをする前に、雑談などで雰囲気をほぐしておきましょう。軽い体操なども効果的です。

②問題場面の設定
支援者は、参加者に社会生活で苦手な場面を聞いていきます。そして、その問題がなぜ起こるのか、どうすればうまくできるか、などについて話し合いをします。

③ ロールプレイ
実際の場面を想定したロールプレイをします。必要に応じて支援者がお手本を見せます。他者の振る舞いを見て学ぶことを「モデリング」と言います。

④ 正のフィードバック
ロールプレイをした人に対して、支援者はできた部分を見つけてしっかり褒めてきます。また改善点がある場合は、レベルに応じて伝えていきます。これを何度も繰り返します。

⑤ 日常生活への汎化の確認
練習でできるようになったら、日常生活での目標を宣言してもらいます。日常生活でできるようになることを「汎化(はんか)」と言ったりします。練習だけで終わらないよう、支援者は促していきましょう。宿題を出すのも効果的です。

効果

基本訓練モデルは、具体的な悩みにフォーカスして練習することができるので、即効性が高いモデルです。今まさに悩んでることを、皆でアイデアを出し合い練習するので、協調性も養うことができます。

デメリット

基本訓練モデルは、実際の悩みをベースにワークを組み立てるので、逆に言えば、悩んでいないスキルについては獲得が難しくなります。散発的なスキルの獲得になりやすく、総合的な力は高まりにくいと言えます。

参考動画

こちらは、丹羽真一先生監修による基本訓練モデルの参考動画です。参加者に困りごとをしっかり聞いてからワークを実施している点が特徴的です。

⑤ステップバイステップモデル

ステップバイステップモデルの進め方

①教科書を準備
ステップバイステップモデルでは、原則として教科書が必要になります。SSTに精通した支援者が、レベルに応じた支援計画と教科書を作成します。

教科書作りについては、傾聴スキル、話し方スキル、アサーティブスキル、感情表現スキルなどを組み合わせて作成します。教材作成が難しいと感じる方がいらっしゃいましたら、私はコンサルテーションもできますので、こちらから気軽にお問合せください。

②教科書で練習問題を解く
ステップバイステップモデルでは、教科書をベースに、まずは簡単な問題を解いていきます。テキストベースで、さくさくできるようになるまで練習しましょう。

③ ロールプレイ
実際の場面を想定したロールプレイをします。必要に応じて支援者がお手本を見せます。他者の振る舞いを見て学ぶことを「モデリング」と言います。

④ 正のフィードバック
支援者はできたことを見つけ、しっかり褒めてきます。また、改善点がある場合は、レベルに応じて伝えていきます。これを何度も繰り返します。

⑤ 日常生活への汎化の確認
練習でできるようになったら、日常生活での目標を宣言してもらいます。日常生活でできるようになることを「汎化」と言ったりします。練習だけで終わらないように、支援者は促すようにしましょう。宿題を出すのも効果的です。

効果

教科書を使うことで、レベルごとの課題を設定しやすく、スキルが積み重なっていくので、総合的な力を養うことができます。会話場面で困ったことがあった時に柔軟に乗り越える力がつきます。

デメリット

良質な教材を作ることに、かなりの時間がかかります。また、ステップバイステップモデルは、お悩みに即していない事柄も訓練することになるので、モチベーションの維持が重要になります。

参考動画

こちらは、筆者が作成した教材の一部です。傾聴する際の基礎スキルを解説しています。

こちらは、佐藤幸江先生によるステップバイステップモデルの参考動画です。やり方を明確にしている点が特徴的です。

こちらは児童デイサービスまはろ様の療育の様子となります。テーマを事前に設定をして進めているのが特徴的です。

こちらは海外の教材です。自閉症スペクトラムの子供向けの教材になっています。

➅子供が学ぶSST具体例

ここからは子供が学ぶSSTの具体例となります。実際にどのようにSSTが行われているか、以下の気になる項目を展開して参考にしてみてください。

挨拶練習

挨拶がうまくできない子供向けのトレーニングです。挨拶は、相手との良好な関係を築くための第一歩です。相手に関心を示し、親しみやすさを伝えることで、信頼感が生まれます。

子どもの挨拶練習用ソーシャルスキルトレーニング(SST)

目標設定
達成したい具体的な行動とその完了状態を明確に定めることが大切です。シンプルで測定可能な目標を立てます。そして、達成までの道筋を明らかにしていきましょう。

例:「相手の目を見て、笑顔で挨拶をする」という具体的な目標を決め、「おはようございます」「こんにちは」「ありがとう」など、状況に応じた挨拶が自然にできることを目指します。

モデリング
子どもが学ぶべき行動の見本を示していきます。正しい挨拶の仕方を実際に見せることが大切です。これにより、具体的なイメージを持つことができるでしょう。

例:トレーナーや親が相手の目を見て、明るい表情で「おはよう」「こんにちは」などの挨拶をする様子を見せます。相手の反応も含めて示すことで、挨拶に自信が持てるようになります。

リハーサル(初回練習)
見本を参考に実際の練習を行うことが目的です。初めての練習では完璧を求めず、できる範囲で取り組みましょう。支援者は温かく見守ることが大切となります。

例:親やトレーナーが相手役となり、目を見て「おはよう」と言う練習を実施します。ぎこちなさがあっても、まずは挨拶する行動自体を認めていきましょう。

フィードバック
練習時の良かった点と改善点を具体的に示します。前向きな評価を中心に伝えていきましょう。そして、改善点は建設的な提案として話し合います。

例:「今の挨拶、とてもいい声でできたね」と評価した上で、「もう少し相手の顔を見てみよう」といった改善点を優しく伝えていきます。

再リハーサル(反復練習)
フィードバックを活かして練習を続けることが大切です。実践的な場面を想定した練習で定着を図ります。段階的にステップアップしていくことがポイントとなるでしょう。

例:友達や先生との出会いなど、異なるシチュエーションを設定して取り組みます。場面に応じた適切な挨拶ができるよう工夫しながら練習していきましょう。

実生活での実践
練習で身につけた挨拶を日常生活で活用していくステップです。最初は緊張することもありますが、少しずつ慣れていくことが大切です。必要に応じてサポートを行いましょう。

例:朝の登校時や友達と会ったときに、練習した挨拶を実践します。不安があるときは、親が付き添って支援することで自信につながっていきます。

振り返りと目標の見直し
実践後に成功体験や課題を話し合い、目標の達成度をチェックします。次の目標設定も一緒に考えていくことがポイントです。支援者は温かく寄り添う姿勢を保ちましょう。

例:「今日の挨拶はうまくできた」「少し緊張した」などの感想を共有しながら振り返ります。挨拶が自然にできるようになってきたら、会話の始め方など新たな目標へと発展させていきます。

仲間に入れて練習

引っ込み思案で友人ができない子供向けに、仲間に入れてと主張する練習です。友達の輪に入る練習ができます。

仲間に入れて練習用ソーシャルスキルトレーニング(SST)

目標設定
自分の気持ちを適切に表現するための具体的な目標を立てます。実現可能で明確な行動目標を定めることがポイントです。達成後のイメージを共有することも大切でしょう。

例:「仲間に入れてほしいときに、自分の気持ちを伝えられるようになる」という目標を設定し、遊びに参加したいときに「私も一緒にやりたい!」と自信を持って伝えられることを目指します。

モデリング
適切な自己主張の方法を具体的に示していきます。声の大きさや表情、タイミングなど、実践的な場面を想定した見本を見せることが重要です。

例:トレーナー(親や先生)が、グループで遊んでいる場面を設定し、「私も一緒に遊びたい!」と元気よく伝える様子を実演します。相手の反応や受け入れられた後の行動まで示していきましょう。

リハーサル(初回練習)
見本を参考に、実際の声掛けを練習します。安心できる環境で、自分の気持ちを表現する経験を積むことが大切です。

例:親やトレーナーが遊んでいるグループ役となり、子どもが「私も一緒に遊びたい」と声をかける練習を行います。最初は緊張するかもしれませんが、温かく見守りながら進めていきましょう。

フィードバック
練習での良かった点を中心に評価を行います。声の大きさや表情、タイミングなど、具体的な要素に分けて伝えることがポイントです。改善点は前向きな提案として示していきましょう。

例:「大きな声で言えたね」「笑顔で伝えられてとてもよかったよ」など、できた部分を具体的に褒めます。そして「もう少し近づいて話してみよう」といった改善点を提案していきます。

再リハーサル(反復練習)
フィードバックを活かして練習を重ねていきます。様々な場面を想定し、より自然な表現ができるよう工夫することが大切です。

例:「ボール遊び」「折り紙」など、異なる遊びの場面を設定して練習します。声の大きさや表情を変えながら、状況に応じた自己表現ができるよう取り組んでいきましょう。

実生活での実践
練習で身につけたスキルを実際の場面で活用します。最初は不安もあるため、支援者が見守りながら自信をつけていくことがポイントとなります。

例:休み時間や放課後の遊び場面で、練習した声かけを実践してみましょう。大人が近くで見守り、必要に応じて励ましの言葉をかけていきます。

振り返りと目標の見直し
実践での経験を丁寧に振り返り、成功体験を積み重ねていくことが重要です。新たな課題が見つかった場合は、次の目標として設定していきましょう。

例:「どんな気持ちで声をかけたか」「相手の反応はどうだったか」などを話し合います。うまくいった体験を基に、「他の遊びでも試してみる」といった新しい目標を立てていきます。

たばこの誘いを断る練習

たばこの誘いを適切に断る方法を身につけるためのトレーニングです。断る理由を明確に伝えながらも、相手との関係性を損なわない表現方法を学びます。

たばこの誘いを断る練習用ソーシャルスキルトレーニング(SST)

目標設定
健康的な生活を守るため、適切な断り方を身につけることを目指します。自分の意志をはっきりと伝えられる表現方法を具体的に定めることがポイントです。

例:「たばこの誘いを断るときに、自信を持って自分の意見を伝えられるようになる」という目標を立て、「ごめん、吸わないことにしてる」とはっきり言えるようになることを目指します。

モデリング
断り方の具体的な見本を示し、声の調子や表情、姿勢など、実践的な要素を含めて伝えることが大切です。相手を不快にさせない、適切な対応方法を学びます。

例:トレーナーが「ありがとう、でも私は吸わないよ」と笑顔で断るシーンを演じます。断る理由を簡潔に述べ、相手との関係を損なわない伝え方を示していきましょう。

リハーサル(初回練習)
説明:安全な環境で断り方を練習し、自信をつけていきます。様々な誘い方に対して、適切に対応できる力を養うことが目的です。

例:親やトレーナーが相手役となり、「ごめん、私は吸わない」と伝える練習を行います。実際の場面を想定しながら、自然な対応ができるよう取り組んでいきましょう。

フィードバック
練習での表現方法を具体的に評価します。声の大きさや表情、態度など、様々な観点からポイントを伝えることが大切です。相手の気持ちを考えた対応ができているかも確認しましょう。

例:「はっきりと自分の意志を伝えられていたね」「笑顔で断れていて良かったよ」と評価し、「もう少し相手の目を見て話してみよう」といった改善点を提案します。

再リハーサル(反復練習)
異なる状況や場面を想定して練習を重ねます。様々な誘い方に対して、臨機応変に対応できる力を身につけることがポイントとなります。

例:「放課後の帰り道」「休み時間」など、異なるシチュエーションを設定して取り組みます。友人関係を保ちながら、自分の意志を伝えられるよう工夫していきましょう。

実生活での実践
練習で身につけた断り方を実際の場面で活用していきます。緊張や不安を感じることもありますが、支援者が見守りながら自信を育てることが大切です。

例:友人からたばこを勧められた際に、練習した表現方法を使って断ります。必要に応じて事前の相談や事後のフォローを行い、適切な対応を支援していきましょう。

振り返りと目標の見直し
実践での経験を共有し、成功点や課題を整理していきます。対応が難しかった場面があれば、その状況に特化した練習を追加することも検討します。

例:「どんな気持ちで断ることができたか」「相手の反応はどうだったか」を振り返ります。成功体験を基に、「他の誘惑にも同じように対応する」といった新たな目標を設定していきます。

⑦大人が学ぶSST具体例

大人向けのトレーニングについて様々なものがあります。以下に、代表的な4つのスキルについて紹介します。詳しく知りたい方はリンク先を参照ください。

傾聴スキル

傾聴スキルは、聴き上手になるスキルです。オウム返し法、肯定返し法、5W質問法、感情質問法、共感スキル、などが挙げられます。傾聴スキルを学ぶと、相手に配慮したコミュニケーションができるようになります。

傾聴スキル

発話スキル

発話スキルは、話し上手になるスキルです。5W発話法、自分へ質問法、繰り返し表現法、具体例提示法などがが挙げられます。発話力をつけると、対人不安が減る、相互理解が促進されるという効果があります。

発話スキル

アサーションスキル

アサーションスキルは、アイメッセージ法、DESC(Describe「描写」 Express「説明」Suggest「提案」Choose「選択」) 法、壊れたレコード法、限界設定法などが挙げられます。アサーションスキルを学ぶと、自他尊重の心が育ちます。

アサーティブコミュニケーション

感情表現トレーニング

人間関係を築く上では、非言語コミュニケーションのスキルも大事になってきます。笑顔、声の抑揚、姿勢、アイコンタクトの仕方などを練習すると良いでしょう。

感情表現スキル

仕上げ動画

SSTについて動画も作成しました。仕上としてご活用ください。

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、実際に学ぶことができます。内容は以下のとおりです。

・傾聴スキルトレーニング
・発話スキルトレーニング
・アサーティブスキル練習
・あいさつ,感謝を増やす練習

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)

SSTソーシャルスキルトレーニング入門,心理学講座

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

*出典・参考文献

[3]Social Skills Training for Schizophrenia: A Step-by-Step Guide by Julie Agresta, Alan S. Bellack, et al. | Jun 20, 1997
[4]画像出典 Faculty Member Alan Bellack
[5]画像出典:goodreads
[6]相川充, 藤田正美(2005)成人用ソーシャルスキル自己評定尺度の構成, 東京学芸大学紀要. 第1部門, 教育科学
[7]川島達史(2010)成人に対する言語ソーシャルスキルトレーニングの開発と主観的適応状態への影響, 目白大学大学院心理学研究科,修士論文
[8]石川信一・岩永三智子・山下文大・佐藤寛・佐藤正二 (2010). 社会的スキル訓練による児童の抑うつ症状への長期的効果 教育心理学研究, 58, 372-384.