人間関係が悪い,うまくいかない時の対処法
皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のお悩み相談は「人間関係が悪い,うまくいかない」です。
相談者
32歳 女性
お悩みの内容
私は昔から人間関係がうまくいかないです。仲良くなった友だちとはいつも長続きしません。「自分に問題があるのでは…」と考えると新しい人間関係を作ることに躊躇してしまいます。人間関係がうまくいかない時の対処法があったら教えて欲しいです。
人間関係がうまくいかないと、毎日ストレスが溜まってしまいますよね。当コラムでは人間関係がうまくいかない時の対処法をしっかり解説していきます。是非最後までご一読ください。
人間関係の悩みと深刻性
まずはじめに人間関係がうまくいかない状況が続くとどのようなリスクがあるか考えてい見ましょう。
ストレスが溜まる
厚生労働省(平成24年)[1]は、仕事や職業生活に関するストレスの原因について調査を行いました。その結果の一部が以下のグラフです。
ストレスの原因となっているもので最も多かったのは「職場の人間関係の問題」(41.3%)であることが分かります。日本の労働人口が6000万人であることを考えると、数千万単位の方が、職場の人間関係がうまくいかないと感じていると推測できます。
自己肯定感が下がる
人間関係がうまくいかないと、お互い悩みの相談をしたり、雑談をして息抜きをするなど、情緒的サポートが不足することになります。細田ら(2009)[2]は、中学生305名を対象に、ソーシャルサポートと自己肯定感の関係について調査しました。その結果が以下の図です。
図を見ると、周りの情緒的サポートソーシャルが不足すると、自己肯定感が下がりやすいことがわかります。人間関係がうまくいかないと、周りからほめてもらうことが減り、逆に批判的な言動を受けやすくなるので注意が必要です。
将来への希望が減る
人間関係がうまくいかず、友人数が減ると、どのような影響があるのでしょうか。以下は内閣府の調査(2013)[3]から引用した図です。ざっとご覧ください。
図を見ると、友人が多いほど将来に希望を持っていて、友達が少ない人ほど将来を悲観的に考えていることがわかります。特に「いない」と回答した人は、58人中、47人が希望を持てない傾向があり、友人関係が重要であることが推測されます。人間関係がうまくいかないと将来への希望を失いかねないので注意が必要です。
深刻度が低い場合
人間関係がうまくいかない時の対処法は、複数ありますが、人間関係の悪化が軽度な場合から重度な場合で対処法が異なってきます。その上で当コラムでは、「深刻度は低い」「深刻度が高い」場合の2つに分けてそれぞれ対処法をお伝えします。
まずは深刻度が低い場合の対処法をお伝えします。深刻度が低い場合は、あなたが前向きに取り組めば関係改善はしやすい時期です。早めに対処するようにしましょう。具体的には以下のやり方があります。
好意の返報性
人間関係の改善には、まず自分から「仲直りしたい」という気持ちを育てることが大切です。これは心理学の「返報性の原理」に基づいています。
返報性の原理とは、自分の態度や行動が相手の反応に影響を与えるという考え方です。例えば、以下のような姿勢を持つと、関係改善は難しくなります。
〇〇の件は相手が悪い。相手から謝るべきだ。
私は悪くない。相手の責任だ。
今回の件は納得いかない。イライラする。
このような態度では、相手も防衛的になり、お互いの心が閉じてしまいます。
一方で、以下のような前向きな姿勢を持つことで、状況は大きく変わります。
話し合えばわかりあえるはずだ
話し合って仲直りしよう
きっとまた仲良くなれる
このように心を開き、腹を割って話し合う覚悟ができれば、返報性の原理が働き、相手も警戒を解いて心を開いてくれやすくなります。
まずは自分の心の中で、和解への意志を固めることから始めましょう。この「仲直りしたい」という気持ちが、関係改善の第一歩となります。
相手の価値を再認識
関係修復のためには、相手の存在価値を再認識することが重要です。研究によると、相手の価値を認識することで、共感や許す気持ちが増えるとされています。
日本には「喧嘩をするほど仲がいい」という諺があります。今あなたが喧嘩をしているのは、実は価値のある関係があったからこそかもしれません。本音をぶつけ合えるほどの関係だったからこそ、喧嘩に発展してしまったのかもしれません。
ここで大切なのは、相手を非難する気持ちをいったん抑え、価値を感じる部分を思い出すことです。例えば、
笑わせてくれたこと
悩みを聞いてもらったこと
一緒に遊びに行ってくれたこと
声をかけてくれたこと
これらの良い思い出や感謝できる点を思い出し、相手の存在の大切さを再確認しましょう。このように相手の価値を感じることができると、相手を許し、関係を修復したいという素直な気持ちが自然と育っていきます。
自分から声掛けをする
仲直りしたいという気持ちが育ってきたら、次はベースとなる関係作りをしていきます。ここで大切なのは、毎日の小さなコミュニケーションです。
例えば、職場で喧嘩した同僚同士の場合、まずは挨拶など小さな触れ合いから始めましょう。
おはよう
今日は暑いね~
今日は涼しいね~
お疲れ様
これだけでも、印象はだいぶ変わるものです。相手は最初戸惑うかもしれませんし、返してくれないこともあるかもしれません。それでも続けていくことが大切です。
もし喧嘩相手とSNSでつながっていたら、それも活用しましょう。「いいね」ボタンを押すことも一つの方法です。
このような小さなコミュニケーションを継続する努力が、関係改善の基盤となります。相手の反応にあまり一喜一憂せず、粘り強く続けることが重要です。
雑談を大切にする
会話が必要最小限
仕事以外の会話をする空気がない
お互いプライベートの会話がない
このように雑談ができない環境は、お互いの心の内がわからず、ストレスが溜まりやすくなります。あてはまる方は、許される範囲で、屈託のない話題を提供してみることが大事です。
職場であれば、始業時間前、昼休憩、仕事終了後、などタイミングをみてちょっと会話をするだけで随分和むものです。雑談に対して苦手意識がある方は、以下のコラムを参照ください。楽しく雑談するコツを解説しています。
感謝の気持ちを持つ
奥山・降矢ら(2008)[4]は看護師26名に対して、1か月間、笑顔や感謝の気持ちを習慣化してもらい、その効果を調査しました。その結果、実施前は、結果の一部が下図となります。
こちらの図を読み取ると、笑顔や感謝の習慣化により、同僚への信頼感が向上する、職場に前向きになる、職場が居心地のよいコミュニティになる効果が期待できます。一方で
上司がいつも怒ってばかりだ
どうせミスするに決まっている
同僚は足を引っ張ってばかりだ
このように職場の人たちに対して、
感謝の気持ちを増やす方法をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
相手への期待値を下げる
手伝ってくれるのが当たり前
先生からの指示は絶対だ
遅刻なんてありえない
このように、人間関係がうまくいかない方は、相手への期待値が高いことが多いです。自分と他人は全く別の人間です。そのため、
相手の期待が大きいほど、
このように、期待値「50」を下回ると人は相手にイライラし、
他人に対してイライラしがち…と感じる方は以下のコラムを参照ください。
小まめに話し合う
理不尽な要求も我慢してしまう
嫌なことも笑顔で引き受ける
相手の誤った言動を指摘できない
このような傾向がある方は注意が必要です。周りの要求になんでも答える癖をつけると、自分の負担ばかりが増え、人間関係でトラブルを抱えやすくなります。深刻な状況になると、爆発してしまい、人間関係が終わってしまうこともあります。
なんでもYESと言ってしまう方は、「アサーティブ」な考え方を身に着けることをおすすめします。アサーティブとは、率直に話し合うことで、建設的な関係を築く姿勢を意味します。
人間関係はうまくいかない時期が来るのは当たり前です。大事なことはそのような時期がきたらアサーティブに話し合うことが大切です。
価値観の違いがあるときは早めに話し合う
不快なことをされたら柔らかく主張する
主張をした上で譲るときは譲る
このように、人間関係の問題を覆い隠さず、小さなトラブルのうちに丁寧に改善していきましょう。大切なことは「うまくいかない状態」を放置せず、話し合うことなのです。結果的にすべて解決することはなく、あなたが譲る場面もあるかもしれません。
ですがその、「譲ってくれた」という事実は重く、あなたへの信頼を増すことにつながります。アサーションについては以下のコラムで詳しく解説しました。理解を深めたい方は以下のコラムを参照ください。
深刻度が高い場合
次に深刻度が高い場合の対処法をお伝えします。深刻度が高い場合は、あなたが前向きに取り組んだとしても、解決できないこともあります。環境を変えることも視野に入れて、対処するようにしましょう。具体的には以下のやり方があります。
感情労働に注意する
疲れているのに笑顔で対応する
嫌なことを笑顔で引き受ける
自分は悪くないのに謝る
このように自分の感情を素直に表現できない状態を感情労働状態といいます。人間関係がうまくいかない方は、本音を隠すことにエネルギーを使い、精神的に疲れてしまうのです。
あてはまる方は、無理に笑顔になることをやめ、素直な自己表現を心がけることです。必要以上に気を使いすぎて、疲れ果ててしまうよりも、本音ベースで付き合い、腹を割った関係を築いていくことが大事になります。
感情労働していることが多い…と感じる方は下記を参考にしてみてください。
過剰適応に気をつける
友だちに毎回のように1万円以上貸してしまう
彼(彼女)の悩みの相談に毎日2時間付き合い疲れる
上司に気を使って有休を消化できない
このように自分の限界を超えて、周囲に適応をしようとすると、精神的にも肉体的にも消耗してしまいます。こうした状態は心理学で「過剰適応」と呼ぶことがあります。
そこで、まずはあらかじめ「限界を設定しておく」ことをおすすめします。ここまでは適応するが、それ以上は応じないという区切りを自分の中で決めておくことで、過剰適応も和らいでいきます。例えば以下のようなやり方があります。
友だちに毎回のように1万円以上貸してしまう
→上限は2000円としてそれ以上は一切貸さない
彼(彼女)の悩みの相談に毎日2時間付き合い疲れる
→悩みの相談に乗るのは1日10分が限界と伝える
上司に気を使って有休を消化できない
→有休消化率は50%を切らないようにする
このように具体的に自分の限界の境界を定めておくと、過剰適応を防ぐことができます。なんとなく我慢を続けるのではなく、線引きを明確にするように心がけましょう。過剰適応を防ぐ方法をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
自分に集中する
心理学者の堀井(2001)[5]は大学生271名を対象に、対人恐怖と青年の心理について調査を行いました。その結果が以下となります。
公的自己意識とは人の目を気にする心理を意味します。具体的には以下のような心理が挙げられます。
相手の顔色を絶えずうかがってしまう
言葉遣いに気を使いすぎる
怒られないか?いつも気になる
このように人の目を気にしやすい人は、人間関係がある社会的場面で混乱しやすく、日々生きて行くことに疲れやすくなるのです。上記の図は女性の統計となっていますが、男性でも同じ傾向がありました。
もちろん、社会生活を送る上で人の目を気にすることも大切です。しかし、過剰に周囲を気にしてしまうと、自分自身が疲れ果ててしまいます。
あてはまる方は、人の目を意識する心理をおさえ、自分自身の気持ちに目を向ける意識を増やすことが大事です。例えば、友人の顔色をうかがって同調するのではなく、自分の価値観を大切に「自分が正しい」と思う考えを主張することなどが挙げられます。
上記の特徴にあてはまる方は以下のコラムを参照ください。
人の目を気にしない方法
公的自己意識を詳しく理解する
悩み相談で回復
悩みを打ち明けられない
自分一人で解決しようとする
相談できる相手がいない
人間関係がうまくいかない時に、悩みをひとりで抱え込んでしまう人は要注意です。誰にも相談できず、
そこでソーシャルサポートを得ることで、精神的な負担を軽減していきましょう。ソーシャルサポートとは、簡単に言えば、「
ソーシャルサポートの効果・得る方法をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
環境を変える
パワハラが改善することがない
セクハラが横行している
残業が多く健康を害する
このような状況であれば、
もちろん、今よりも良い環境である保証はありません。しかし、
緩いコミュニティに所属
学校と家を往復する毎日
家族意外の人と話すことがない
プライベートは1人で過ごす
独り暮らしが長い
このように、所属しているコミュニティが学校や会社だけだと、人間関係の疲れがダイレクトに精神的に響いてしまいます。
あてはまる方は、学校や職場以外のコミュニティに所属することも大切です。緩いコミュニティに所属していれば、
温かいコミュ二ティに参加する方法をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
まとめ
対処の中で活用できそうなものはありましたか?もし使えそう!と感じるものがありましたら、是非ご活用ください。皆さんが温かい人間関係を築き、健康的な心ですごせることを願っています。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・YESマンをやめる,嫌なことは断る練習
・人の目を過剰に気にしない練習
・疲れない,楽しく会話をする練習
・健康的な人間関係を築く心理学
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2件のコメント
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昔よりも人間関係ひどくなってきた自己嫌悪つらい
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
・出典[1]厚生労働省(2013).平成24年労働者健康状況調査結果の概況[2]細田 絢・田嶌 誠一(2009).中学生におけるソーシャルサポートと自他への肯定感に関する研究 心理学研究, 57, 309-323.[3]内閣府(2013).平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 平成26年6月[4]奥山麻也・降矢奈保子・吉田絵美・菅原かなえ・沓澤佳代子・金谷春美 (2008).「笑顔の導入と「ありがとう」を言葉にすることで人間関係が向上するかの検討」,北海道社会保険病院,7,p14-17.[5]堀井 俊章(2001).青年期における自己意識と対人恐怖心性との関係 山形大学紀要. 教育科学
なおさん
自分を責めてしまうのですね。つらいですよね。