目を見て話す心理と効果を上げる方法
皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のお悩み相談は「目を見て話すのが苦手」です。
相談者
30歳 男性
お悩みの内容
私は昔から、緊張が強い方で、目を見て話すのが苦手です。最近付き合って3か月になる彼女ができたのですが、目を見て話してくれないので不安になると言われました。改善する方法を知りたいです。よろしくお願いします。
会話をするときに目を見るのは恥ずかしいものですよね。
・相手の目を見て話すと不安になる
・どこを見ていいのか分からなくなる
・相手の目を見て話すことが怖い
こんなお気持ちになる方はすごく多いです。当コラムでは、目を見て話す効果と改善法を解説していきます。是非最後までご一読ください。
目を見て話す効果とは
アイコンタクトは実際どれぐらい重要なのでしょうか。関連する心理学の研究を紹介します。
印象形成が良くなる
梅野(2015)[1]は、笑顔、目の表情、姿勢など、非言語コミュニケーションと好感の関係について、大学生230名に対して調査を行いました。結果は下の図のようになりました。概観してみてください。
上図を見ると、目の表情は、笑顔について印象形成に重要であることがわかります。目を見て話せるようになると、印象がかなりよくなる効果があると推測できます。
相手が話しやすくなる
青山・戸北(2005)[2]は、小学5年生を対象にアイコンタクトと発話の関連を調べています。その結果の一部が下図となります。概観してみてください。
この図からわかるように、視線を受けている人は、発話数が高い傾向にあることがわかります。話を聴くときに目を見ると、相手が話しやすくなる効果があると言えます。
自信があるように見える
深山ら(2002)[3]は、人の顔のアニメーションを利用して“視線と印象の関係”について研究しました。その結果の一部が下図となります。
図を要約すると
・アイコンタクトが適度にあると
→「自信がある」「強い」
・下を向いている
→「自信がない」「弱い」
という印象になることがわかりました。つまり、アイコンタクトの長さを適切にすることで、自信のある印象を与えることができるのです。
興味があることが伝わる
目を見て話すと、相手に興味や好感を持っていることが伝わります。目は「心の窓」とされ、視線を通じて感情や意図を伝えることができます。視線を合わせることで、相手に注意を向けているという信号が送られ、相手は自分が重要な存在であると感じます。
そして興味を持ってくれる相手には、好意的な感情が芽生えますので、相手からも好かれやすくなるという返報性の原理が働きます。目を見て話すことは、相手にとっても、自分にとってもWINWINな効果をもたらすのです。
目を見て話す8つのコツ
このように目を見て話せるようになると様々な心理的効果があるのです。ここからは専門家が実践している、効果を上げる8つの方法をお伝えします。具体的には以下の項目となります。
①5センチずらす
②目の周りを見る
③50%で充分
④目があったら1秒ではずしてOK
⑤目線は縦に外す
⑥表情も大切に
⑦傾聴は多め,発話は控えめ
⑧過剰な視線意識は不要
ご自身でも使えそうなものを組み合わせてご活用ください。
①5センチずらす
目を見て話すのが苦手な方は、相手と正面から向き合うと、緊張してぎこちない視線になってまう傾向があります。あてはまると感じる方は、椅子を少しだけずらして座ると良いでしょう。
具体的には、喫茶店などで向かい合って座ることになるな…と感じたら、座る前の椅子を引くタイミングで、気持ち5センチほど椅子をそっと横にずらします。
5センチですとほとんど変わらないと感じるかもしれないですが、実際やってみると随分、気が楽になります。真正面が苦手な方は試してみてください。
②目の周りを見る
有名な方法としては、鼻やオデコを見るというテクニックがあります。これは相手と距離が離れている、薄暗い状況下であればかなり有効です。
一方で鼻やおでこを見る方法は、相手と距離が近く、相手の顔がハッキリ見える環境ですと、結構バレてしまいます。
その場合は、目と目の間の付け根のあたりを見ると有効です。このやり方はまず気づかれません。ストレートに目を見ることが苦手な方は、心の負担が軽くなるのでオススメです。
深山ら(2002)[3]は、人の顔のアニメーションを利用して“視線と印象の関係”について研究しました。その結果の一部が下図となります。
このように、相手の顔とその周辺を均等に見る方は、自信のある印象を与えるという結果が出ています。相手の目を直視できない方は、目の周りを見るだけでも、アイコンタクトの効果は得られるのです。
③50%程度はボヤっと目を見る
目を見て話すことを改善するトレーニングをすると、意識が高くなりすぎて、凝視をしてしまう方がいます。しかし、過剰な視線は相手が圧迫感を感じてしまうので注意しましょう。
心理学の研究では、対面時間の50%程度の目を見て話すのが、もっとも友好度が高くなることが分かっています。会話の半分ぐらい、ぼやっと相手の目を見ていれば十分です。適切なアイコンタクト量を心がけていきましょう。
④目があったら1秒ではずしてOK
心理学の研究では0.5秒~1秒間のアイコンタクトが、一番友好度が高くなり、2秒になると大幅に下がってしまうという調査があります。ただし毎回1秒にするのは忙しくなってしまうと思います。
全体の50%程度は目を見る意識を持って、実際に目があったら1秒ぐらいで外してもOKと考えておくといいでしょう。
⑤目線は縦に外す
目線を外す時は「縦に外す」のがポイントです。目があったら、首のあたり、お腹のあたり、机のあたりに目線を上下させると自然です。
凝視をしたり、目線を横に外すと、ネガティブな印象を相手に与えてしまいます。目線を外すときは縦に外すと覚えておきましょう。
⑥表情も大切に
目を見て話す行為は、実は諸刃の剣な面もあります。なぜなら人は敵意があるときも視線を相手に向けるからです。真顔や眉間にしわを寄せながら相手を見るとむしろ逆効果になります。
一方で、穏やかな表情、笑顔で相手を見ると、目を見ているあなたの真意がしっかり相手に伝わります。また、軽い頷きや眉の動きといった微表情は、相手の話に対する理解や関心を示します。視線と表情が調和することで、相手に対するポジティブな感情や興味が自然かつ強力に伝わるのです。
表情は自分ではよくわからないところもあったりします。可能であれば一度動画でスピーチをしてみて、自分の表情が硬くなっていないか、チェックしてみましょう。もし表情が硬いな…と感じたら以下のコラムも参考にしてみてください。
⑦傾聴は多め,発話は控えめ
目を見て話す意識は「傾聴」の際は大事にしましょう。質問をするとき、肯定するとき、相槌をするときは、目を見ながらするといいでしょう。
逆に発話の場合は、目を見なくても、そこまで不自然になることはありません。大切な事を伝える時だけ、目を見て話せばでOkです。
視線に対する意識は、「傾聴はたっぷり」「発話は控えめ」とおさえておきましょう。
⑧過剰にこだわらない
目を見て話すことは、あなたの印象UPに効果的ですが、「こだわりすぎる」と逆にぎこちなくなってしまいます。なぜなら会話は視線だけでなく、「相手の話に集中する」「自分の話を楽しくする」などやることがたくさんあるからです。目に意識を向けすぎると、他のことがおろそかになってしまいます。
そこで、以下の意識を大事にしてください。
目を見て話すことに気を使うのは、会話の際、5%ほどで充分。相手の話をしっかり聴く、楽しく話すことを大事にしよう。
繰り返しになりますが目を見て話すことは全てではありません。肩の力をぬいて無理なく見るぐらいの気持ちで充分と考えておきましょう。
視線が異常に怖い…と感じる方は、視線恐怖症の可能性があります。視線を合わせるのが怖く、人間関係を徹底的に回避している、という方は下記のコラムを参考にしてみてください。
動画でまとめ
視線について好感度があがる話し方を動画でも解説しました。仕上げとしてご活用ください。
最後に
目が合ったときは、ちょっと気恥ずかしく、照れるところもありますが、なんやかんや嬉しい人が多いと思います。会話をする場面では、あなたに注目しています、あなたの話をしっかり聞いています、という意識を持ちながら目を見ていきましょう。相手はきっとあなたに対して前向きな印象を持つでしょう♪応援しています!
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・アイコンタクトの取り方,5センチずらす法
・話しやすくなる視線の配り方
・聴き上手,話し上手になる方法
・印象がUPする,人間関係の心理学
🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
・出典[1]青山康郎,戸北凱惟(2005).発話を促す話し合いの場に関する研究 日本教科教育学会誌 第28巻 第1号[2]梅野利奈(2015).好感をもたらす非言語コミュニケーションに関する研究 目白大学大学院 心理学研究科 現代心理学専攻5[3]深山篤・大野健彦・武川直樹・澤木美奈子・荻田紀博(2002).擬人化エージェントの印象操作のための視線制御方法 情報処理学会論文誌
素敵な記事をありがとうございます。
客観的で中庸的な書き方を徹底されていて情報として非常に分かりやすかったので情報を得ようと内容に見入ってしまいました。
あなたがされたような書き方をする方がもっと増えてほしいという願いをこめつつ、コメントさせていただきました。
一閲覧者として参考にさせていただきます。