褒め上手になる方法
皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のお悩み相談は「褒め上手になりたい」です。
相談者
33歳 女性
お悩みの内容
私は会話の時に相手を褒めるのが苦手です。褒めたいという気持ちはあるのですが、「いいですね」「すごいですね」で終わってしまいます。
これから仕事や恋愛で褒める力が大事になると考えています。褒め上手になるコツを知りたいです。
気持ちがあるのに言葉が出てこないのはもったいないですね。心理学の研究では褒めることには以下のような効果があることがわかっています。
褒め上手になる10の方法
それでは、具体的に褒め上手になる方法を見ていきましょう。当コラムでは褒め上手になる方法を10個提案いたします。
①イイね!の禁止
②語彙を増やそう
③減点法から加点法に
④「結果,能力」と「努力」を褒める
⑤相手基準で褒める
⑥こだわりポイント褒め
⑦リフレーミングをして褒める
⑧無条件の肯定で褒める
⑨アイメッセージで誉める
⑩決めつけ褒め
役立ちそうなものを組み合わせてご活用ください。
①イイね!の禁止
私は生徒さんには、まず「イイね!」を使わずに褒める練習をするように指導しています。なぜかというと、この言葉は抽象的すぎて、褒められた側もピンとこないからです。
褒めるのが苦手な人ほど「イイね!」を使いがちですが、これでは表現力が豊かになりません。「イイね!」を封印して、もっと具体的で心のこもった褒め言葉を探してみましょう。きっと、相手の心にも響く褒め方が見つかるはずです。
②語彙を増やそう
川岸(1972)[3]は学生114名を対象に性格を評価する形容詞について調査を行いました。その結果の一部が下図となります。図の見方としては、得点が高いほど社会的に望ましいと考えられている形容詞となります。
上位を見ていくと、1位は責任感のある、2位は健全な、3位は礼儀正しい、4位は協力的な、5位は頭の良い、6位は熱心な、となっています。
逆にワーストを見ると、1位は無力な、2位は役に立たない、3位は病弱な、4位は無責任な、5位は不潔な、6位は異常な、7位は不真面目な、となっています。
この研究は褒め言葉の効果を研究したものではないですが、語彙を増やす上で参考になりそうです。褒め上手になりたい方は、上位の言葉を増やし、下位の言葉を減らすと良さそうです。
しっかり練習をしたい方は以下の折り畳みを参照ください。
③減点法から加点法に
褒め上手な方は減点法よりも加点法の精神を持っています。まずは、それぞれの意味を見ていきましょう。
*減点法
完璧を基準にして、間違った部分を指摘する方法
*加点法
ゼロべースを基準にして、うまくいった部分を確認していく方法
褒める言葉が思いつかない方は、減点法で他人を評価する傾向があります。完璧な状態と比較して、相手のことを評価してしまうと、欠点ばかりが目に付くようになります。
そこで、加点法で相手を評価することが大切です。相手が少しでも成長したところ、できるようになったことに目を向けることで、褒める言葉もスムーズに浮かぶようになります。
④「結果,能力」と「努力」を褒める
心理学の研究では、能力、結果、努力に対しての褒める効果研究が盛んです。それぞれの違いは以下の通りです。
結果褒め
・成果を褒める
・勝利を褒める
・うまく行った作業を褒める
能力褒め
・相手の才能を褒める
・自頭の良さを褒める
・性格を褒める
努力褒め
・日々の作業内容を褒める
・辛い時も積み重ねた姿勢を褒める
・経験を積んだことを褒める
そしてそれぞれについて基本的にはどの褒め方でも効果が確認されています。浅沼ら(2018)[4]は大学生249名を対象に、「ほめられ経験の種類」が「自己効力感」に与える影響を調べました。その結果が以下の図です。
こちらは自己効力感が高い群は低い群よりも「努力」も褒めてもらう機会が多いことを表しています。
こちらは自己効力感が高い群は低い群よりも「能力」も褒めてもらう機会が多いことを表しています。
講師として推奨するのは、能力もしくは結果と努力をワンセットで褒めるということです。努力としっかり組み合わせることで、能力に慢心することを防ぐことができますし、結果に必然な日々の積み重ねを促すことができるからです
以下の折り畳みでは、練習問題と研究を紹介しています。理解を深めた方は展開してみてください。
⑤相手基準で褒める
褒める言葉が思いつかない方は、自分基準で相手を評価してしまう癖があります。自分ならこうなのに…、私の時はこうだった…と、自分と照らし合わせながら評価してしまいます。
褒める時はあくまで相手の基準で考えることが大事です。
自分がやってきたことはいったん忘れる
その人なりに成長した点はどこかを考える
この2点を是非意識していきましょう。
⑥こだわりポイント褒め
相手が「こだわっているもの」を見つけたら褒めるチャンス到来です。例えば
洋服 靴 鞄 髪型 スマフォカバー お店のチョイス 飲み物のチョイス 料理
など、日常生活全般にこだわりポイントはあります。こだわっているもは大概の場合、その人なりの思い入れがあるものです。ほとんどのケースで相手にとってうれしい会話になります。
その洋服素敵ですね♪どこで買われたのですか?
今日のお店のチョイス最高です!選んだきっかけはありますか?
う~ん今日の料理は香辛料が効いていて最高!
このように積極的に褒める言葉を投げかけていきましょう。
⑦リフレーミングで長所として励ます
褒め上手な方は、リフレーミング力があります。リフレーミング力とは「物事の捉え方の枠組みを変える力」を意味します。例えば、相手の特徴は一見短所に見えても、長所として褒めることができます。
根暗 →落ち着きがある
内向的 →思慮深い
仕事が遅い →丁寧に行う
遅刻しがち →ゆったり生きている
など同じ物事も別の枠組みで見れば、褒める発想に変えることができます。褒める力をつけるためには、物事を多面的に捉えることが必要なのです。
リフレーミング力をつけたい!と感じる方は以下のコラムを参照ください。
⑧ストローク力をつける
褒め上手になる上では「ストローク」について理解を深めると効果的です。ストロークとは「人との関わり方」を意味します。抽象的な概念なので、解説を読みながら感覚をつかんで頂けると幸いです。
ストロークには、以下の2つ種類があります。
条件付き肯定的ストローク
…条件を満たしているから相手を肯定する
具体例
100点を取ったから褒める
営業成績が上がったから褒める
上場企業だから相手を褒める
無条件の肯定的ストローク
…無条件に相手を肯定する
具体例
目が合ったときにニコっと微笑む
いつも助かってるよと褒める
〇〇さんがいてくれるだけで安心
条件付きの肯定的ストロークでも褒められれば嬉しいものです。ただ、条件付きの肯定は、「条件を満たさないと認められない…」という点で、やや不安が残るのです。
そのため、相手を褒める時は、無条件の肯定を織り交ぜていくことが大切です。失敗、成功、肩書、結果を問わず、相手を温かく褒められるようになったら、本当の意味での褒め上手になったと言えます。
無条件の肯定的ストロークをより深く理解したい方は下記をご覧ください。
⑨アイメッセージで誉める
甘能(2016)[5]はアイメッセージとユーメッセージは誉めるときにも応用することができると主張しています。例えば、相手の髪を褒めるときは以下のような違いが出てきます。まずはアイメッセージのほめ方から見ていきましょう。
<具体例>
(私は)つやつやしていて惹かれてしまう
(私は)髪がきれいでうらやましい
(私は)髪がきれいでドキッとする
このように主語を「私」にして自分の感情を表現すると、相手は自然と受け入れやすくなります。なぜなら相手がそう感じたこと自体は紛れもない事実だからです。一方でユーメッセージで誉めると以下のようになります。
<具体例>
(あなたの)髪はつやつやしているね
(あなたの)髪はきれいだね
(あなたの)髪はわかわかしいね
このように相手の状態を評価するようなほめ方は、ユーメッセージよりのほめ方となります。基本的には、褒められることはユーメッセージでも嬉しいものですが、例外もあり、上から目線と感じられたり、場合によっては「そんなことはない」と思われてしまうケースもあります。
誉めるときは相手の状態に対して、自分がどのような肯定的な感情を覚えたかも伝えると良いでしょう。アイメッセージについて理解を深めたい方は以下を参照ください。
⑩決めつけ褒め
これは相手のパーソナリティーを、こちらで勝手に前向きに解釈して褒める方法です。例えば、こんな風に言ってみます。
〇〇さんって、いつも気遣いができるから、接客系のお仕事してるんじゃない?
面白いのは、当たっても外れても盛り上がるところです。当たった場合は「ええ!なんでわかったの?」と驚かれますし、外れた場合でも「ええ?そうかなあ。ただの事務なんだけど」と言いながら、内心はうれしく思ってくれるのです。
他にもこんな例があります。
「〇〇さん、発言の内容が深いですね。本をすごく読んでそうなイメージです。」
・
当たった場合⇒「そうなんです!読書が大好きで…」
と嬉しそうに話し出します。
・
外れた場合⇒「いえいえ、そんなに読んでないんですけど…」
と照れながらも、実は嬉しく思っているはずです。
「〇〇さん、むちゃくちゃ健康的ですよね。スポーツで活躍してたでしょ。」
・
当たった場合⇒「え!そうなんです。高校時代は野球部でキャプテンやってました!」
外れた場合⇒「いやいや、運動音痴なんですけど…でも健康には気を使ってるんです。」
このように、相手の良いところを積極的に想像して褒めることで、会話が弾みますし、相手も自分の良さを再認識できるのです。ちょっとした冒険心を持って、楽しみながら褒め上手になっていきましょう。
まとめ
褒める言葉を伝えられるようになると、自分の幸福感も上がり、自己肯定感も高まります。相手のモチベーションも高まりますし、人間関係も良好になります。日々の生活に褒め言葉を増やして、是非温かい人間関係を築いてください♪応援しています!
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・褒め上手になる,語彙を増やそう
・減点法から加点の意識を高める
・短所を長所に,リフレーミング力をつける
・好印象になる,傾聴トレーニング
🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
-repository.seikei.ac.jp