悲観的で疲れる方,性格を直す方法
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師,精神保健福祉士の川島達史です。今回は「悲観的な性格を直す方法」についてご相談を頂きました。
相談者
33歳 女性
お悩みの内容
私は昔から悲観的な性格でした。
未来を予想すると不安になる
恋人いてもいつかフラれると考えてしまう
どうせうまくいかない…とあきらめる
何をやるにしても、先に悲観的な未来を考えてしまうので、消極的になってしまいます。こんな自分を変えたいと思います。どうすればいいでしょうか。
行動する前に悲観的な未来を予測してしまうのですね。こんな自分を変えたい!という言葉から強い意志を感じました。当コラムでは悲観的への対策を解説してきます。前向きに力強く生きていけるよう、心を込めて執筆したいと思います。
悲観的と生物学的要因
人間はなぜ悲観的になるのでしょうか。まずは生物学的要因を考えてみましょう。
悲観する脳
悲観的な感情は脳の前頭葉が大きくかかわっています。例えば、虫はプログラミングをされた行動しかできないので、悲観的に考えることができません。一方で、犬ぐらいの知能を持つと、嫌な出来事が続くと将来を悲観的に考えるようになります。これは学習性無力感と言います。
人間が悲観的になるのは、脳が発達している証拠です。ある意味で未来のことを考えるだけの力があるとも言えます。そして、悲観的になるのは、前頭葉が大きくかかわっています。前頭葉はちょうどおでこの裏側にある脳です。
人間は前頭葉が他の動物により大きく、これにより未来をより深く考えるようになりました。そして未来のことを考えることができるようになったがゆえに、「悲観的」「楽観的」という感情が生まれてきたのです。
悲観と遺伝的要因
日本人はそもそも悲観的になりやすい傾向があることがわかってきています。センら(2004)[1]は、日本とアメリカの人たちのS遺伝子とL遺伝子の割合を調べました。
「S遺伝子」とは
不安、神経質、悲観的になりやすい遺伝子
「L遺伝子」とは
楽観的、ポジティブになりやすい遺伝子
を意味します。その結果以下の図のようなそれぞれの保有率は以下のようになりました。
日本はS遺伝子が多く、L遺伝子が少ないことがわかります。その割合は世界でも最高水準に位置づけられるようです。私たちは基本的な性格として、不安を感じたり、将来を悲観しやすい傾向があると言えそうです。
悲観・楽観の種類
心理学の研究では未来を考える姿勢は以下の4つに分けられます(外山,2005)[2]。
防衛的悲観
過去の経験としては、ポジティブな認知、すなわちうまく行っていたと認識しているにも関わらず、将来はうまくいかないと考える悲観です。あらかじめ、リスクを考えておくことで、失敗した時のショックを和らげようとします。例えば以下のような例が挙げられます。
前回のテストでは80点を取ったが、今回は60点を取るだろう
過去の恋愛ではうまく行ったが、今回は失敗しそうだ
これまで仕事に恵まれていた分、これからは苦労しそうだ
一般的悲観
一般的悲観は、過去の経験がネガティブだったと認識しており、将来の結果もネガティブになると予想する思考スタイルです。このタイプの悲観主義者は、過去の失敗や挫折に基づいて、将来の努力が報われないと考えるため、モチベーションが低下しがちです。例えば以下のような例が挙げられます。
前回のテストでは50点を取ったが、今回は40点を取るだろう
過去の恋愛ではうまくいかなかったので、今回も失敗しそうだ
これまで仕事で苦労してきたので、これからも同じように苦労するだろう
方法的楽観
方法的楽観は、過去の経験がポジティブだったと認識しており、将来の結果もポジティブになると予想する思考スタイルです。このタイプの楽観主義者は、過去の成功に基づいて、将来も同じように成功するだろうと考え、積極的に行動します。例えば以下のような例が挙げられます。
前回のテストでは80点を取ったので、今回も80点以上を取るだろう
過去の恋愛ではうまくいっていたので、今回も成功するだろう
これまで仕事に恵まれていたので、これからも順調に進むだろう
非現実的楽観
非現実的楽観は、過去の経験がネガティブだったにもかかわらず、将来の結果がポジティブになると予想する思考スタイルです。このタイプの楽観主義者は、過去の失敗を過小評価し、根拠のない自信を持って将来の成功を信じます。例えば以下のような例が挙げられます。
前回のテストでは50点を取ったが、今回は90点を取るだろう
過去の恋愛ではうまくいかなかったが、今回は完璧にうまくいくだろう
これまで仕事で苦労してきたが、これからは順風満帆だろう
メリット-デメリット
悲観的に考えることは、すべてが悪いわけではありません。大事なことは、メリット、デメリットを正しく認識し、正しく悲観すればOKなのです。以下メリット・デメリットに関する研究を記載しました。気になるタイトルがある場合は展開してみてください。
メリット
デメリット
このように悲観的な思考にはメリットもあればデメリットもあります。悲観の性質を理解して、バランスよく悲観することが大事なのです。
改善する6つの方法
ここからは悲観的思考が過剰になり、深刻度が高い方向けの対処法を6つ提案させて頂きます。
①リフレーミング
②現実検討力をつける
③思考停止法
④問題解決力にしてしまう
⑤森田療法,目的本位に生きる
⑥人間関係を充実させる
ご自身の感覚に合いそうなものを組み合わせてご活用ください。
①リフレーミング法
悲観的な思考が多い方に有効なのが、リフレーミング力をつけることです。リフレーミングは、物事を多角的な視点から見ることを意味します。例えば
前向きな人はどう考える?
本当にそれは起こるの?
行動するとどんなメリット?
失敗したとしても経験は得られるかも
など様々な視点から物事を見る練習をしていきます。特にいつも悲観的になってしまう方は、リフレーミングで引き出しを増やすことがすごく効果的です。
前向きに考える引き出しが少ない…と感じる方は下記のコラムの練習問題に取り組んでみてください。
②現実検討力をつける
悲観的な人は、現実的には簡単に起こらないことまで心配して、とりこし苦労をしてしまいます。
万が一仕事を失ったらどうしよう…
ちょっとでも外出したら感染するのでは…
もし嫌われたらどうしよう…
もし年金がなくなったらどうしよう…
特に、万が一、もし〇〇したら・・・というフレーズをよく聞きます。ですが大概のマイナスの未来は起こらなかったのではないでしょうか?
このような取り越し苦労には、「現実検討練習」が有効です。現実検討とは、
非現実的な考えをしていないか?
確率的にほどんど起こらないのでは?
自分の考えには根拠があるか?
など自分の考えを見直すことを意味します。現実検討力をつけると、取り越し苦労が多い…というお悩みに有効です。
非現実的な思い込みが多い…と感じる方は下記のコラムを参照ください。
③思考停止法
悲観的思考が強い人は「ネガティブ反すう」傾向が高くなります。反すうとは、悲観的な出来事を繰り返し考え、何度も嫌な未来をイメージしてしまいます。
思考停止法では、この反すうを意図的にストップさせる練習をしていきます。
悲観的思考はあと3分でやめ!
充分考えた!さあ勉強するぞ
悲観思考ストップ,楽しい思考はじめ!
という感じで掛け声をかけて思考の方向性を変えるのです。一度悲観的になると止まらない…という方はこちらのコラムを参照ください。
④問題解決力にしてしまう
前半のメリットでもお伝えしたように、悲観的思考はメンタルヘルスには悪影響ですが、パフォーマンスを上げることもあります。
そこで悲観的思考を変えずに、むしろ活かしてしまう方法が「じゃあどうする法」です。悲観的思考が浮かんだら、
じゃあどうする?
と考え、解決策を練るのです。悲観的思考をむしろ前向きに活かしたい!と感じる方は、下記を参照ください。
悲観的思考の親戚概念である、ネガティブ思考の活かし方コラムで詳しく解説しています。
⑤森田療法,目的本位に生きる
心理療法の中に目的本位という言葉があります。目的本位とは、
感情に流されることなく、やるべきことをきちんとやる
という考え方です。
何かを行動するとき、私たちは多かれ少なかれ悲観的になるものです。ただ悲観に1回1回付き合っていると、やるべきことをやらない習慣がついてしまいます。
大事なことは、悲観的な面を持ちながらも、目的をもって、やるべきことをやるという姿勢です。マイナスの未来を予測してしまったとしても、それを受け入れながら、目の前のやるべくことをやる!これが目的本位な生き方となります。
詳しくは下記のコラムを参考にしてみてください。特に感情に流されやすい…という方におススメです。
⑥人間関係を充実させる
友人関係は私たちの人生に大きな影響を与えます。特に、将来への希望と密接に関連していることが内閣府の調査(2013)[1]から明らかになっています。この調査結果を見てみましょう。
図を見ると、友人が多いほど将来に希望を持っていて、友達が少ない人ほど将来を悲観的に考えていることがわかります。
注目すべきは、友人が「いない」と回答した58人のうち、実に47人が将来に希望を持てないと答えていることです。この結果は、友人関係が私たちの人生観や将来への展望に重要な役割を果たしていることを示唆しています。
友達を増やす方法や作る方法について詳しく知りたい方は、以下のコラムをご覧ください。
まとめ
今回は悲観的な性格についての特徴と直し方を解説してきました。繰り返しになりますが、悲観的な性格は過剰でなければ、皆さんの生活の見方になってくれます。
うまく付き合いながら、活かすべき点は活かし、改善すべき点は改善することで、メンタルヘルスの向上を獲得されることを願っています♪
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連