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自意識過剰を治す方法,原因や特徴

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自意識過剰を治す方法,原因や特徴

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「自意識過剰を治す方法」についてご相談を頂きました。

自意識過剰を治す

相談者
33歳 女性

お悩みの内容
私は以前から、自意識過剰で困っています。例えば、友人同士が遊びに行くと、私は嫌われたのかもしれない…と考えてしまいます。

職場では、食堂の別のテーブルで同僚が話しているのを見ると、私のことを噂しているのではないか?と考えてしまいます。

自意識過剰で警戒しすぎるので、行動範囲が狭くなり、人間関係も薄い感じがしています。どうすればいいでしょうか。治す方法を教えて欲しいです。

必要以上に相手の目を気にしてしまうと、毎日ストレスが掛かりますね。

当コラムでは自意識の理解と、過剰な自意識を緩める手法について解説していきます。ご自身に合いそうなものがありましたら参考にしてみてください。

自意識過剰とは何か

自意識とは何か

自意識(self attention) とは以下の意味があります。

自己に注意が集中した状態
(Duval,1972)[1]

すなわち、「自分」の価値観、考え、感情、評価、を意識している状態が自意識となります。Fenigstein(1975)[2]は自意識について研究をしたところ、自意識は「私的自己意識」と「公的自己意識」の2つに分けられることを発見しました。

私的自己意識(privateself-consciousness) とは

自分自身の気持ち、考え、価値観

を気にかけることを指します。例えば人前に立った時に「自分の考えを楽しく話そう!」と考えている時は、私的自己意識が働いている状態です。私的自己意識は強くなっても自意識過剰とは評価されません。

一方で、公的自己意識 (public self-consciousness) は

周りからどう見られているか、どう思われているか

を気にかけることを指します。例えば、人前に立った時に「失敗をして周りからの評価を下げてはいけない!」と考えている時は、公的自己意識が働いている状態です。一般的に自意識過剰とは、公的自己意識が過剰な状態を意味します。

ポジテイブな自意識過剰

自意識過剰な人の中には、なんでも「ポジテイブな評価をされている」と考える人がいます。例えば、ちょっと優しくされると、

好かれているに違いない!
私モテモテ!
やっぱり私人気者!

と、早とちりしてしまうことがあります。ポジティブな自意識過剰な方は、自分に周りが興味があると錯覚してしまうことから、一般的な善意を特別な好意に取り違えることがあります。これが行き過ぎると、ストーカーなどの問題に発展することもありそうです。

一方で、ポジティブな自意識過剰な方は、臨床現場ではそこまで問題として取り上げられることはありません。周りからの好意を前提として行動できるため、人間関係には比較的前向きです。

ただ、自覚なくあまりにもポジティブ自意識過剰となり、他人に対しても自身の自意識の肯定を押し付けてくるようになるとパーソナリティ障害圏、とりわけ、自己愛性パーソナリティ障害になる可能性もあります。

自意識過剰,ポジティブ

ネガティブな自意識過剰

自意識過剰な人の中には、不幸になりやすい方もいます。なんでもネガティブな評価をされていると考えてしまう場合です。例えば、ちょっと批判されただけで、

嫌われたに違いない!
私はどうせ馬鹿にされている!
またアンチが現れた!

と、どんどんネガティブに考えていきます。なんでもネガティブに受け取る自意識過剰な人は、現実以上に「他人から嫌われる」「ネガティブな出来事が起きるのではいか」という、世界観を持っています。心の中は絶えず穏やかではありません。

ネガティブな自意識過剰は、放置すると、社交不安障害(社交不安症)につながることもあるので注意が必要です。

自意識過剰,ネガティブ

自己意識過剰を治す7つの方法

ここからは自意識過剰を改善する方法を7つお伝えします。

・スポットライト効果を理解する
・拒否されたくないと折り合いをつける
・賞賛欲求と折り合いをつける
・自己関連付けをし過ぎない
・現実検討力をつける
・私的自己意識を高める
・過度の読心癖をやめる

ご自身に合いそうなものを組み合わせて活かしてみてください。

スポットライト効果を理解する

心理学の世界にはスポットライト効果という用語があります。スポットライト効果には以下の意味があります。

思った以上に自分が注目されていると勘違いしてしまう心理的な性質

スターがステージに上がり、スポットライトのもとで注目を浴びているような勘違いをしてしまうことからこの名がつけられています。

Gilovich(2000)の研究[3]では、「自分が注目されているという感覚は、実際に注目されている2倍程度になる」という結果にもなっています。人は基本的に「みんなが自分に注目している」と勘違いしやすいのです。つまり、「自分が思っているほど周りは自分のことを見ていない」ということを、まずはおさえておきましょう。

スポットライト効果については以下の2つの研究が有名です。理解を深めたい方は参考にしてみてください。

①GilovichのTシャツへの注目研究

Gilovichら (2000)[3]は、大学生109名(実験参加者15名、観察者94名)を対象に、人が自分に向けられる他者の注目度をどの程度過大評価するのかについて調査を行いました。

実験の内容としては、実験参加者にバリー・マニロウ(有名歌手)の顔が大きくプリントされた「ダサい」Tシャツを着用してもらい、アンケート調査中の教室に入室してもらいました。教室内には4-6人の観察者がいる状況を設定し、実験参加者は入室後すぐに退室。その後、教室内の人々が自分のTシャツにどれくらい気づいたと思うかを予測してもらいました。

その結果、

実験参加者は平均して46%の人が気づいたと予測
実際に気づいた観察者は平均21%のみ

このことから、人は自分への注目度を実際の2倍程度も過大評価する傾向があり、「スポットライト効果」を証明した1つの研究例となります。

この研究は、私たちが日常生活で感じる「みんなが自分を見ている」という感覚が、実際よりも大きく感じてしまう心理的傾向があることを示しています。このことを理解することで、人前での不安や緊張を和らげることができるかもしれません。

②バラッハーの発言への注目研究

バラッハーら(2011)は大学生を対象に、人が自分に向けられる他者の注目度をどの程度過大評価するのかについて、異なる社会的状況下で調査を行いました。

実験の内容としては、実験参加者に2つ状況(授業中とパーティー)での行動を想定してもらい、その際の他者からの注目度を予測してもらいました。授業中では発言をする場面、パーティーでは社交的な交流をする場面を設定し、それぞれの状況で周囲の人々が自分にどれくらい注目していると感じるかを予測してもらいました。

その結果、

授業中の場面
実験参加者は平均70%の人が注目していると予測
⇒実際に注目していた観察者は平均30%のみ

パーティーの場面
実験参加者は平均85%の人が注目していると予測
⇒実際に注目していた観察者は平均40%のみ

*正確な数値は文献を参照ください

このことから、人は社会的状況下において自分への注目度を実際の2倍以上も過大評価する傾向があり、特にパーティーのような社交的な場面ではその傾向が強まることが示されました。これは「スポットライト効果」の状況依存性を示した研究例となります。

拒否されたくない心理の改善

菅原(1986)[5]では、4年制大学の男女学生401名を対象に、賞賛されたい欲求と拒否されたくない欲求について調べました。

その結果が以下の図です。 

 

自意識過剰 拒否されたくない

このように、公的自己意識が強いほど、拒否されたくない欲求が高いことが分かりました。公的自己意識とは、周りからどう見られるかを気にする意識のことです。

拒否されたくないという気持ちがあると自意識過剰になりがちになります。嫌われたくないと感じるのは自然なことですが、行き過ぎると自意識過剰になり、感情のコントトロールが難しくなるので、折り合いをつけることが大事になります。

拒否されたくない、と感じる心の根底には、見捨てられ不安があることがあります。あてはまると感じる方は以下のコラムを参照ください。

見捨てられ不安への対処法

賞賛を求めすぎない

菅原(1986)[4]では、公的自己意識と賞賛されたい欲求についても調査しました。

その結果が以下の図です。

自意識過剰 賞賛されたい

このように、公的自己意識が強いほど、賞賛されたい欲求が高いことが分かりました。

賞賛を求めすぎると、自意識過剰になり、自分自身が疲れてしまいます。そのため、ある程度折り合いをつけることが大切です。たとえは、インスタグラムで、自分を必要以上に大きく見せない、嘘をついてまで人の興味を引こうとしない、などが挙げられます。

自己関連付けをしすぎない

自意識過剰な方は、自己関連付け(Self-Reference)が非常に強い傾向があります。自己関連付けとは

情報を自分自身に関連させる考え方

を意味します。例えば、

・チームが失敗したのは私のせいだ
・この批判はきっと私に向けられたものだ
・相手が不機嫌なのは私が原因だ

このように考えることが多い方は、自己関連付けの傾向が強いと言えます。自己関連付けが強い方は、原因を冷静に分析する練習が有効です。あてはまる方は以下の動画を参照ください。



現実検討力をつける

自意識過剰の傾向として、一度「〇〇!!」と考えると、思い込みから抜け出せなるという特徴があります。いうなれば、非現実的な世界で生きていることになるのです。

思い込みが激しい方は、現実を冷静に認めていく「現実検討力」を高めていく必要があります。現実検討力とは、1つの考え方にとらわれず、視野を広げて客観的に物事をみる力です。

具体的には、「根拠が薄いことを考えすぎないようにする」「確率が低いことに悩まない」など、その悩みが実際に起こりうるのか?という視点で考えてみるのがコツです。思い込みが激しい…と感じる方は以下のコラムで練習をしてみてください。

現実検討力をつける

私的自己意識を高める

堀井(2001)[5]は、高校生・大学生を対象に、自己意識と対人恐怖との関連を調査しました。その結果が以下の図になります。

 

図を見ると、公的自己意識が高い方、すなわち周りの目を気にする人は、人間関係で悩みやすいという結果になっています。例えば、気になる人と食事デートをしているとしましょう。この時、公的自意識が強い人は

食べ方が変じゃないかな
つまらないと思われてないかな
マナーがおかしいと思われてないかな

と考え、緊張して食事を楽しむことができません。

一方で私的自己意識が強い人は、

しっかりご飯を味わおう
昨日あった楽しい出来事を話そう
興味がある相手の話を聴こう

と自分自身の感じ方や内面にしっかり目を向けていくのです。このように考えていくと、肩の力が抜けた自分らしい振る舞いができるようになっていきます。

周りの目を気にしすぎる傾向がある方は、下記のコラムを参照ください。

人の目が気になる心理を改善する方法

過度の読心癖に注意

自意識過剰な方は、周りの目を気にしすぎるが故、心を読みすぎることがあります。相手の気持ちを考えすぎる傾向があって空回りしてしまう…という方は、下記の動画を参考にしてみてください。

まとめ

自意識過剰で毎日が辛いという方は、世の中にある様々なネガティブな出来事を拡大解釈してしまい、自分と関連させてしまいます。大事なことは、現実的に考える力を養い、必要以上に相手の心を読みすぎないことです。

自分の頭の中で妄想を膨らませるのではなく、わからないことは深く考えすぎず、自分自身の私的自己意識も大事にしながら行動してみてください♪

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。

・自意識過剰を和らげるワーク
・自己関連付けを和らげるワーク
・心の読みすぎ癖を直す
・私的自己意識を増やす練習

🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^) 

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1件のコメント

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    • ゆがちゃん
    • 2022年10月18日 5:52 PM

    自意識過剰だとよく言われます、自分でも少しナルシストだなと思う時があり、いつもそんな自分が嫌いになってしまいます。

    特に他人からどう見られてるかをよく気にしてしまいます(容姿とか)
    絶対そんなことはないのにあの子私のこと好きなのかなとか思ってしまいます、そんな自分が嫌いです、めっちゃナルシストで、自己中心的で、都合のいいやつなんだなと。

    返信する

コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Duval, S., & Wicklund, R. A.(1972).A theory of objective self-awareness. New York: Academic Press.
 
[2] Fenigstein, A., Scheier, M. F., & Buss, A. H.(1975).Public and private self-consciousness: Assessment and theory. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 43, 522-527.
 
[3] Gilovich, T., Medvec, V. H., & Savitsky, K. (2000). The Spotlight Effect in Social Judgment: An Egocentric Bias in Estimates of the Salience of One’s Own Actions and Appearance. Journal of Personality and Social Psychology, 78(2), 211-222. https://doi.org/10.1037/0022-3514.78.2.211
 
[4] 菅原健介(1986).賞賛されたい欲求と拒否されたくない欲求 公的自意識の強い人に見られる2つの欲求について東京都立大学 心理学研究 57 (3), 134-140 公益社団法人 日本心理学会
 
[5] 堀井 俊章 (2001). 青年期における自己意識と対人恐怖心性との関係  山形大学紀要. 教育科学, 12, 453-468.