自尊心が低い方へ,高める方法
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「自尊心を高める方法」についてご相談を頂きました。
相談者
31歳 男性
お悩みの内容
私の親はいわゆる毒親でした。日常的に批判されてきて、褒めてもらった記憶がほとんどありません。その成果、卑屈になることが多く、大人になった今でも自尊心が低いです。
どうすれば自尊心を回復することができるのでしょうか。簡単でないことはわかりますがヒントが欲しいです。
幼いころの家庭環境が人生通して影響している感覚があるのですね。自尊心は人生を歩んで行く上で、寄り所となる感情です。自尊心をしっかり育てられるようにお手伝いさせて頂きます。是非最後までご一読ください。
自尊心の意味とは
まず初めに自尊心とは何か?について考えていきましょう。
価値があるという感覚
自尊心は心理学においては以下のように定義されています。
自己に対する評価感情で、自分自身を基本的に価値のあるものとする感覚
心理学辞典(1999)[1]
皆さんはいかがでしょうか?自分には価値があるという感覚はありますでしょうか。
顕在的自尊心
心理学者のJordan(2003)[2]は、自尊心には2種類あると主張しています。1つ目は顕在的自尊心です。顕在的自尊心は、自分で自覚している自尊心を意味します。例えば、自分を誇る部分はどこですか?と質問されたとします。この時、
野球部で県大会まで行った
大学受験で頑張れた
仕事でお客さんに喜んでもらえた
このように自分でも自覚している部分は顕在的自尊心に当てはまります。顕在的自尊心は、幼少期以降、自分自身で獲得していく傾向があります。
潜在的自尊心
潜在的自尊心とは、自分自身で自覚できない自尊心を意味します。潜在的自尊心は、自分の中で自覚がなく、知らず知らずのうちに行動に影響すると言われています。いわゆる「根拠のない自信」に近いイメージです。
潜在的自尊心は、幼少期の記憶のないころに形作られることがあります。例えば、大人になっても原因不明な自尊心の低さに悩む方がいますが、幼少期に虐待が行われていたケースもあります。
自尊心と心理的影響
自尊心は心理的にどのような影響があるのでしょうか?理解を深めるため、いくつかの心理学的な影響を紹介させて頂きます。気になる見出しがありましたら展開してみてください。
自尊感情を高める6つの方法
ここからは自尊感情を高めるコツをお伝えします。当コラムでは、心理職15年の経験値を元に、特に重要だと考える方法を6つ提案させて頂きます。
①短所を長所として捉えなおす
②褒め褒めタイムを作る
③無条件の肯定を自分に与える
④暖かいコミュニティに所属する
⑤過去を受け入れる
⑥チャレンジして成功体験を重ねる
これは使えるかも!と感じるやり方を組み合わせて活用してください。
①短所を長所として捉えなおす
カウンセリングでは相談者の方とリフレーミング練習を行うことがあります。リフレーミングとは、ある事象を様々な角度から捉えなおしていく手法です。例えば以下のように短所は長所として言い変えることができます。
背が低い → 安心感がある、圧迫感を与えない
おとなしい → ゆったりしている、穏やか
自尊感情が低い人は、自分自身についても欠点ばかりを捉える傾向があります。ですがよく考え直してみると、その欠点は長所として考えることもできるのです。
リフレーミングは自尊心を高める基本的な手法になります。下記のコラムでは後半に性格リフレーミングというコーナーがあります。重点的に練習してみてください。
②褒め褒めタイムを作る
自尊心が低い方におススメなのが、褒め褒めタイムを作ることです。これはポジティブ心理学という分野推奨されています。例えば、目をつぶって、布団に横たわったら、
今日頑張れたこと
自分の長所
成長した点
楽しかった出来事
を確認して寝ると良いでしょう。これを毎日続けるのです。目をつぶったら、あとは誰の手も届かないあなただけの大事な世界となります。自分の自尊心を育てる大事な時間として使ってください。自然と睡眠も安定するのがメリットです。
③無条件の肯定
自尊心が低い方に意識して頂きたいのが「無条件の肯定」です。無条件の肯定とは、
いついかなる時も、成功失敗に関わらず、条件なしに肯定していく
そんな姿勢を意味します。
なにはさておき、なんとかやれている
まあなんとかなるさ
失敗もしたけどまあ人生いろいろあるさ
挫折も人生の大事な物語
こんな形で、大きな枠組みの中で全体として肯定していく姿勢が大事になります。自分のことを無条件に肯定できない…という方は下記のコラムを参照ください。
無条件の肯定,ストロークコラム
④暖かいコミュニティに所属する
心理学の研究では、暖かい体験を繰り返すと、自尊心が回復していくことがわかっています。もしあなたが所属しているコミュニティが殺伐としていて、
批判ばかりされる
競争が非常に激しい
蹴落としあう人が多い
徹底した個人主義
このような傾向がある場合、自尊心は極めて保ちにくくなります。おススメなのは、
多様性を認める
競争が緩い
お互いを助け合う
暖かい人が多い
このようなコミュニティに、1つは所属しておくことです。お互いを励ましあい、認め合うような体験は、きっとあなたの自尊心を育ててくれるはずです。
今所属しているコミュニティでは精神的に疲れてしまう…と感じる方は下記のコラムも参照ください。
⑤過去を受け入れる
心理学の研究では、過去を受け入れることが人生を充実させる上でカギとなることがわかっています。
過去を受け入れるとは
「辛い過去があったからこそ今の自分がある」
という感覚を意味します。
自尊心を育てるには、過去に意味を見出し、過去の失敗や、嫌な出来事に重要な意味付けをしていく必要があります。これはかなりしんどい作業になります。心理学的に「嘆きの仕事」と言われることもあります。
過去の嫌な出来事、被害、傷ついた体験はなかなか忘れられないものです。過去を受け入れる時には、涙がでるほど辛いことがあるかもしれません。
ですが、自分を受け入れずして、安定した自尊心を持つことは難しいです。嘆きの仕事をしながら、自分を受け入れていくことも大事にしてください。
自分を受け入れる方法を詳しく知りたい方は下記を参照ください。
⑥成功体験を積み重ねる
最後の課題は、長期的な視点で改善していくものです。自尊心を高めるには、ご自身の中でなんらかの成果を題して、コツコツと積み重ねていく必要があります。
1キロ減量できた
副業で1万円稼いだ
英会話教室に1年通えた
異性の友人ができた
仕事で企画が通った
大事なことは、チャレンジを継続して、小さな成功体験を積み重ねていくことです。そうした成功体験は、「自分にもできる!」という感覚を育て、自尊心の向上に役立ちます。
以下のコラムでは、チャレンジをするときの心理学的な手法を解説しています。消極的になることが多く、自信がない…という方は参考にしてみてください。
まとめ
当コラムでは自尊心を高める方法を紹介していきました。自尊心は非常に広い概念で、幼少期の環境から、今の環境、努力ままで幅広く関連している感情です。
紹介させて頂いた、6つの指標はほんの一部ですが、心に響くものがありましたら、日常生活で取り組んでみてください。
皆さんが、自尊心をしっかりと持って、一度しかない人生を、誇りをもって生きていくことを心から応援しています。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・自尊心を回復する練習
・短所を長所に,リフレーミング
・誉め誉めタイムの作り方
・成功体験を増やす,スモールステップ法
🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連