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判断力を鍛える,10のトレーニング法

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判断力が低下している,鍛える方法

皆さんこんにちは。現役経営者,公認心理師の川島達史です。私はこちらのビジネスコミュ力講座を開催しています。当コラムのテーマは「判断力を鍛える」です。

説得力を高める

私は会社を17年経営し、一度も倒産することなく、乗り越えてきました。当コラムでは、心理学の専門的な知識と、現役経営者としての経験をもとに、判断力を鍛える10の方法をお伝えします。目次は以下の通りです。

①感情的決めつけをやめる
②不安をコントロールする
③リターンとリスクの比較が基本
④期待値を計算する
⑤利益確定の誘惑に注意
⑥損失回避,一発逆転の誘惑に注意
⑦決断に期限を設定
⑧うまくいくイメージを持つ
⑨レベルが高い場所で戦う
⑩判断ミスに寛容になろう

採用できそうなものをぜひ参考にしてみてください。

判断力を鍛える10の方法

①感情的決めつけをやめる

私たちの判断力を鈍らせるものとして、「感情的決めつけ」というものがあります。1976年にアローン・ベックによって、提唱されました[1]。感情的決めつけは、その名の通り、物事を感情的に決めつけて判断してしまうことです。

例えば、怪しい投資などの儲け話が舞い込んできたとしましょう。この時、判断力が低い人は以下のように考えます。

そんなに儲かるならやってみたい!
自分はこんな話を聞けてラッキーだな~
投資で儲けたら海外旅行でもしようかな

判断力が低い人は、「儲かるに違いない」と感情的に決めつけていることが分かります。本当に儲かるならよいですが、投資詐欺などの場合は、大きく損をする可能性があります。一方で、判断力が高い人は以下のように考えます。

本当に儲かるのかな?
どんな投資にも少なからずリスクはあるはず
一度自分で色々調べてみよう

判断力が高い人は、「本当に儲かるのかな?」と根拠を探す方向に考えていることが分かります。根拠を調べた結果、儲け話が論理的で、ある程度確証が得られるものであれば実行すればよいでしょう。逆に詐欺や真偽が怪しいものであれば避ければよいです。

このように感情ではなく事実に基づいて判断することで、より良い選択肢が見えてきます。

感情的決めつけについて学び、より判断力を高めたい方は下記をご覧ください。

感情的決めつけとは何か

②不安をコントロールする

判断を迫られたとき私たちは不安を覚えます。不安を覚えると、パニックになったり、ネガティブな側面ばかりを見たりして、誤った判断をしがちです。これは選択的知覚と呼ばれ、保守的な選択肢を取りやすくなります。

こうした不安感を和らげるためには「マインドフルネス」の感覚を養うことが大切です。マインドフルネスとは、簡単に言えば、今ここの体験を観察することです。ここで言う観察とは良い悪いという評価をせずに、ただ眺めることです。

理解しやすいように1つワークをご紹介しましょう。

静かで心地よい場所を見つけ、5分間タイマーをセットしましょう。
次に以下のステップを実行していきます。

1.ゆっくり背筋を伸ばす。
2.呼吸の自然な動きを観察する。
3.雑念が浮かんだら、そのことに気づく。
4.またゆっくりと呼吸の動きに注意を向け直す。
5.制限時間まで2~3を繰り返す。

タイマーが鳴ったら、ゆっくりと目を開けましょう。

いかがでしょうか。たった5分間でも、かなり落ち着きを取り戻せたのではないでしょうか。このように今ここに注意を向けることで、不安が少なくなり、判断力を高めることに繋がります。

マインドフルネスを深く学び、より判断力を高めたい方は下記をご覧ください。

マインドフルネス力をつける

③リターンとリスクの比較が基本

冷静に判断できる心ができたら、判断力のある人は「リターン」「リスク」を比較し、バランスよく判断していきましょう。断片的な自分の都合のいい情報を見るのではなく、俯瞰することで、正しい選択をしていくのです。例えば「転職する場合」で考えてみましょう。

リターン
自分が興味のある仕事ができる
新しい技術を学ぶことができる
副業OKなのでYoutube活動ができる

リスク
労働環境が悪くなるかも…
最初は年収が低くなるからな…
通勤片道1時間もかかる…

このようにメリットとデメリットを比較する癖をつけることが判断力を養う基礎になるのです。不安に駆られて偏った情報を元に判断をしていないか?バランスよく考える癖をつけましょう。

④期待値を計算する

期待値計算の技術は判断力の向上に役立ちます。期待値とは「確率を考慮した平均値」のことを言います。例えば、「宝くじを引くのが損か得か」を判断する場合で説明します。以下の宝くじがあったとしましょう。

1回引くのに100万かかる
1/20の確率で1000万円当たる
1/10の確率で20万円当たる

このくじを引くのは得でしょうか?損でしょうか?期待値を計算する時は、貰える金額に確率をかけていきます。

すると、ぞれぞれ、50万円と2万円という結果になります。この2つの結果を足すと、宝くじを引く期待値が算出できます。以下の図は期待値計算の式を表したものです。

1回100万円の宝くじなので、100万円払って、52万円の期待値という計算になります。つまり、宝くじを引くべきではないという判断ができますね。

現実のビジネス場面ではこのように明確に確率を計算できるものではありません。しかし、期待値の考え方ができる方は、バランスの良い意思決定がしやすくなります。

判断力を鍛えよう

⑤利益確定の誘惑に注意

行動経済学においては、人間は、利益を確定したがる傾向があることがわかっています。トベルスキーとカーネマン1981年に行った、有名な実験があります[2]。実験では参加者に対して以下の質問がなげかけられました。

質問
600人を死に至らしめると予想される特殊なアジアの病気が発生したとします。この病気を治すために2種類の治療法が提案されました。どちらの治療法を選びますか。

リフレーミング効果の実験

みなさんなら、A・Bどちらの治療法をえらびますか。実験の結果は、治療法Aが72%、治療法Bが28%でした。

リフレーミング効果の実験結果

治療法Aは「確実に救う」というのがポイントとなります。人間は決断を求められると利益を確定させたいと思う心理が働くのです。

一方でこの利益確定型には、落とし穴があります。それは、期待値が高いにも関わらず、早めに利益を確定してしまうということです。

先程の宝くじの例で言えば、期待値が高い場合は、投資をした方がいいにも関わらず、目先の利益確定に惑わされて、小さな利益で確定してしまうのです。判断力をつけるには「利益確定の誘惑の罠」に気を付けてなくてはなりません。

⑥損失回避,一発逆転の誘惑に注意

人間は利益を確定させたい心理が働く一方で、損失が確定してしまう行動を避ける心理も働きます。この心理を損失確定型といいます。先ほどの実験では、伝え方を変えた質問をしています。

質問
600人を死に至らしめると予想される特殊なアジアの病気が発生したとします。この病気を治すために2種類の治療法が提案されました。どちらの治療法を選びますか。

治療法の内容が変わっています。実験の回答は、治療法Aが22%、治療法Bが78%でした。

ポジティブな面を強調するか、ネガティブな面を強調するかで、印象は大きく変わるのです。

改めて選択肢の内容と結果を比較してみましょう。内容は一緒ですが、表現の仕方を変えることで選択肢の印象が変わり結果が大きく変わっています。

リフレーミング効果の実験結果

このように、同じ状況でも選択肢の表現次第で意思決定が変わってしまうことをフレーミング効果といいます。印象操作されない判断をしたい…という方は、以下のコラムをご覧ください。

意思決定の理論,リフレーミング効果

⑦決断に期限を設定

判断力がない人は、1つの決断にいつまでも悩んでしまいます。気がつけば、1週間、2週間と時間が過ぎ去ってしまい、検証する機会を失います。これでは判断力がつきません。

一方で判断力がある方は、ある程度考えたら、さっさと行動してしまい、結果を検証していきます。失敗、成功に限らず、情報を得ることができるので、その情報を元に、より質の高い判断ができるようになっていきます。大事なことは決断に期限を設けることです。

あと10分で決めよう
今日の8時が決断の期限だ
8月21日を最終期限とする

このように具体的な数字を使うことをおすすめします。判断力は、決断の数と正比例して鍛えることがあります。決断に期限を設定して、決断数を増やすことを意識しましょう。決断力が不足している…と感じる方は以下のコラムも参照ください。

決断力,納期法

⑧うまくいくイメージを持つ

判断力が低い方は、失敗を過剰に意識してしまう傾向にあります。最善の判断しようとするあまり、失敗を極度に恐れてしまうのです。

実は、失敗に意識が向きすぎると、本当に失敗しやすくなってしまうことが分かっています。これは「ワレンダ要因」と言われています。

失敗を極度に意識する
→考え方が堅くなる 緊張しやすくなる 身体が堅くなる
→本来の力が発揮できない
→失敗しやすくなる

という悪い流れが生まれてしまうのです。そして、失敗確率が上がってしまうため、結果的に自分の判断は間違っていた…と後悔しやすくなります。

大事なことは、失敗してもある程度はOk、失敗よりもうまくいくことを考えよう、と前向きに考えることです。その結果、考え方がほぐれ、リラックスして、チャレンジすることができるのです。

挑戦しようとすると、失敗する感覚が増える…と感じる方は以下のコラムを参照ください。

失敗が怖いコラム

⑨レベルが高い場所で戦う

判断力は、レベルが高い環境ほどどついて行きます。徳永(2001)[3]はスポーツ選手を対象にした、心理的競技能力について調査を行いました。その結果、市町村大会の選手に比べて、全国大会に出る選手の方が、判断力があるという結果が出ています。

スポーツ選手に対する心理的競技能力と判断力

このような結果が出るのは、「全国大会」という高いレベルで切磋琢磨することで、選手の方が多くが、より高度な経験を積んでいることが挙げられます。ビジネスにおいても、周りのレベルが高いと判断力が向上していくと考えられます。

⑩判断ミスに寛容になろう

レベルが高い場所では、必然的に判断ミスをしやすくなります。もし判断ミスをしてしまったら、自分自身を奮い立たせる言葉を用意しておきましょう。

ここで私が好きなエジソンの話を紹介したいと思います。エジソンは学生時代、牧師から「何を勉強させても愚かだ!」と言われ、若いころには2つの仕事で解雇をされています。そんなエジソンですが、電球を発明し、世界に明かりをもたらしました。エジソンはインタビューでは次のように述べています。

 私は1000回の失敗をしたのではない!1000のステップを踏んだのだ!

エジソンでさえ失敗しまくっているのです。私たちがチャレンジして少々失敗したところでエジソンに言わせれば、1つの経験を積んでいると言えるかもしれません。失敗が恐くて判断できない…という時には、

失敗してもそれは経験になる。その経験は未来の判断力の向上に役立つ。だから逃げずにチャレンジしてみよう!

と心の中で呟いてみてください。きっと勇気が湧いてくると思います。

 

エジソン失敗,回避癖

まとめ

社会人にとって判断力は必須のスキルです。正しい判断ができるようになると、「プレゼン」「企画」「部下への指示」など、様々なビジネスシーンで、成果が出やすくなります。皆さんの判断力が向上し、仕事で成果を出されることを切に願っています!応援しています!

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した方法は、現役経営者、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。

・感情的決めつけへの対策
・冷静になる練習,マインドフルネス練習
・失敗過敏の改善,成功イメージ法
・ビジネスコミュ力をつける,トレーニング

🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^) 

判断力を鍛える,10のトレーニング法,コミュニケーション講座

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1]Beck, A. T. (1976). Cognitive therapy and the emotional disorders. New York, NY: International Universities Press. Psychology, Vol.2 No.5, August 31,
 
[2]Amos Tversky,Daniel Kahneman (1981).The Framing of Decisions and the Psychology of Choice SCIENCE Vol 211, Issue 4481 pp. 453-458