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勇気が出ない,仕事や恋愛で勇気を出す方法

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勇気が出ない,仕事や恋愛で勇気を出す方法

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「勇気が出ない,勇気を出す方法」についてご相談を頂きました。

勇気が出ない,ビビり

相談者
32歳 男性 会社員

お悩みの内容
私は元々、勇気が出ない方で、何かと怖がりでした。嫌なことがあっても主張することを避け、リスクがあったら安全な選択ばかりしてきた気がします。今2つのことで勇気が出ません。

1つ目は、好きな人に告白する
2つ目は、大型資格にチャレンジする

どちらも、失敗することを考えると逃げ出したくなります。こんなビビりやすい性格なのですが克服したいと考えています。

何かに挑戦しようと考えると、どうしても恐怖心が出てきていまいますよね。「自分を変えたい」という言葉に強い意志を感じました。劣等コンプレックスの改善で有名な、アルフレッドアドラーは以下の言葉を残しています。

「勇気を持って人生の課題を処理して行くことで幸福が生まれる」

好きな人への告白、スポーツの勝負所、起業への挑戦…私たちは人生の様々な場面で勇気が試されます。もし勇気が足りなければ、私たちは次のステージに進むことができず、変わらない日常を過ごす事になります。

少しでも前向きな一歩を踏み出せるよう、勇気に関する心理学の知識をお伝えしたいと思います。

勇気,アドラー

勇気の意味とは

まずはじめに勇気の理解を深めていきましょう。

意味とは

勇気については以下のような定義があります。

困難や悪い結果が予想されていたとしても、行動を起こすに十分な動機付け(堀合,2011)[1]

苦痛や恐怖の状況に直面したときでも、価値のある目標のために意図的な選択ができること(フットマン,2001)[2]

自分の能力や資源を超える脅威があり恐怖心があるにもかかわらず、大義のために行動できる能力(レートら,2007)[3]

勇気は意義とワンセット

私たちは困難に遭遇すると、恐怖心が芽生えます。しかし、恐怖心があるから、行動しないわけではなく、勇気を出してチャレンジすることができます。

定義にもあるように、「十分な動機付け」「価値のある目標」「大義」これらがあれば、恐怖心があったとしても、勇気を出して、前に進むことができるのです。

勇気と3つの条件

堀合(2011)[1] の定義によると、勇気には3つの条件があることがわかります。

困難

先行する条件として「困難」があります。例えば、告白であれば、緊張してうまく話せない可能性があります。起業であれば、失敗をして資産を失うことになるかもしれません。勇気を出す場面には、こうした困難が伴うのです。

動機付け

これらの困難に打ち勝つには「動機付け」が大事になります。告白であれば、交際したいという強い気持ちが動機となります。起業であれば、世の中に自分のサービスを広げ、社会を変えたい、という気持ちが動機となるでしょう。

行動力

困難に打ち勝つ動機付けができたとしても、行動に移さなければ、それは単なる理想に留まってしまいます。困難を前に気持ちを整理して、一歩を踏み出すことができてはじめて「勇気がある」と言えるのです。

勇気を出す

不健康な勇気とは

プットマン(2001)[2]は不健全な勇気として以下を挙げています。

臆病

「危険性を過剰に見積もる」「自信がない」この2つがある人は臆病とされます。このような人は、困難な状況に直面すると、過度に悲観的な未来を想像し、自信のなさからチャンスを逃してしまいます。

無謀

「危険性を小さく見積もる」「自信過剰」この2つがある人は無謀とされています。このような人は、リスクを軽視し、無謀な行動を取ることで、自分自身や周囲を危険にさらす可能性があります。周囲からは無鉄砲と見られがちです。

防衛的勇気

「危険性を過剰に見積もる」「自信過剰」この2つがある人は、防衛的勇気とされています。この状態は、過去のトラウマや不安な経験によって引き起こされることが多く、自分自身の弱さを隠すための防衛メカニズムとして、虚勢を張ってしまうのです。周囲からは強がりと見られます。

勇気を出すメリット

勇気を出すと3つのメリットがあります。

経験値を得られる

勇気を出さず、逃げるという事は、経験できるチャンスを放棄しているということになります。例えば、失敗するのが怖いから、試験勉強から逃げたとします。確かに一時的には楽になれるのですが、チャレンジをしないことで、知識が身に付きません。

一方で、試験にチャレンジすれば、失敗したとしても、勉強したこと自体は残りますし、また次はその失敗を活かして勉強の仕方を工夫することができるのです。行動する人は、たくさん失敗をして失敗の中から経験値を積み重ね、自信をつけていくのです。

後悔が減る

上市ら(2004)[3]は大学生70名に対して、「第一志望の受験状況」と「後悔の程度」を調査しました。その結果が以下の図です。

後悔しない生き方 原因

第一志望を受験しなかった人は後悔が大きくなったのに対して、受験した人は結果に関わりなく、後悔の度合いが小さくなっていることがわかります。難易度が高いことに勇気を出してチャレンジすると、結果を問わず後悔が少なくなるのです。

不安が減る

疋田ら(2017)[4]は、大学生345名を対象に、回避行動が人間の心理にどのように影響するかを調査しました。その結果が下図となります。

勇気が出ない 不安との関連

上記の図は正の相関を意味していて2つの意味があります。

・回避するほど不安が強くなる
・行動をすると不安が減る

勇気をもって行動していけば、だんだんと自信がついてきて、不安も減っていくと考えられます。

勇気を出す7つの方法

堀合(2011)[1]は大学生153名を対象に勇気の心理的な調査を行いました。その結果、勇気には7つの特徴があることがわかりました。

①経験になると考える
②目的を明確にする
③夢中になる仕掛け
④恐怖を受け入れる
➄好奇心を育てる
⑥決断力をつける
⑦人の評価を気にしない

以下、勇気を出す方法と解説しました。活用できそうなものを組み合わせて参考にしてみてください。なお、それぞれの特徴は筆者がアレンジをしています。正確な用語を知りたい方は、堀合(2011)の論文をご参照ください。

①経験になると考える

勇気が出ない人は、チャレンジをする前から、失敗や挫折をイメージしてしまい、行動する勇気が出ない傾向があります。一方で、勇気がある人は、困難に遭遇した時に、以下のように考える特徴があります。

挑戦すると社会経験につながる
困難を乗り越えると成長につながる
可能性を広げることができる

挑戦には、失敗や苦労がつきものですが、代わりに今までにない経験が得られます。挑戦を続けていれば、その道中失敗しても、最終的には、うまくいく!とイメージをすることが大事です。

失敗ばかりイメージをしてしまう…と感じる方は以下のコラムを参考にしてみてください。

失敗が怖いを改善コラム

②意志を持続させる

勇気がない人は、目的意識が希薄で、ちょっと恐怖を感じるだけで勇気がしぼんでしまいます。一方で勇気がある人は 目的意識が強く、何としてもやり遂げようとするため、少々の恐怖で勇気がしぼむことはありません。

例えば勇気が持続する人は、以下のように行動するための目的をしっかり持っています。

この挑戦を成功させて家族を楽にさせたい
この挑戦がうまく行けば、病気が治る人がいる
絶対の〇〇ちゃんと付き合いたい!ふさわしい男になるため努力する

このように目標を強く持つことができれば、勇気が湧いてきます。

目的を明確にするためには、深く自分と向き合い、人生の目的を考えていく必要があります。具体的なやり方としては、以下のアイデンティティ確立コラムで解説しました。目的意識が薄い、人生の目標がない、と感じる方は以下のコラムを参照ください。

アイデンティティを確立する方法

③夢中になる仕掛け

勇気がすぐしぼむ人は、身の丈に合わない目標を設定している可能性があります。目標を高くしすぎると無謀なチャレンジになるので、勇気がしぼみやすくなるのです。一方で勇気が持続する人は、目標を丁度良い塩梅で設定することができます。

適度な目標設定を設定する理論としては、活動に没頭しやすい条件の理解が深まるフロー心理学が挙げられます。具体的には、「自分の能力をしっかり使う」「そこそこ難しい難易度の課題」だと私たちは、最も勇気の出力が増大し、エネルギッシュに活動できるとされています。

何かにチャレンジをしても失敗しやすい…と感じる方は以下のコラムを参照ください。

フロー心理学で目標設定がうまくなる

④恐怖を受け入れる

勇気がでない人は、恐怖心が原因で行動を先延ばしにして、諦めてしまいます。そんな時は、勇気がある人を見て「あの人は恐怖心がなくていいな~」「不安がないから行動できるんだろう」と考えてしまうものです。

しかし、勇気があるように見える人でも、多かれ少なかれ恐怖心は感じているものです。勇気がある人は、恐怖心に対する構えが違うのです。例えば、以下のように考えていきます。

恐怖はゼロにならない、恐怖は自然なことだ
怖いけどやってみなけりゃわからない
恐怖心はあるけど、恐怖を持ちながら挑戦しよう

すなわち、恐怖があるから=行動できないとは考えず、恐怖心があっても一旦行動する姿勢があるのです。

これは森田療法という心理療法で大事にされている考え方です。森田療法では、恐怖の対象は、実際チャレンジしてみると、意外とどうということはないから、えいやでチャレンジしなさい!と考えていきます。

恐怖心があると行動できない…と感じる方は以下のコラムを参照ください。

恐怖突入と森田療法

恐怖心,勇気

➄好奇心を育てる

勇気がでない人は、慣れた環境に留まることを好み、新しいことに挑戦することを恐れます。一方で勇気のある人は、たとえ失敗のリスクがあっても、新しいことに挑戦し、自分の可能性を広げようとします。

普段気になっていたお店やイベントに行く
ひとり旅で新しい人と出会い、文化に触れる
習い事やスポーツなど、未経験の分野にチャレンジ

このように強い好奇心はときに恐怖心を凌駕して、私たちを行動へと駆り立てます。現代こそ情報社会になり、体験する前に事前に調べられるようになりましたが、昔は地図もなく町から出ればどんな危険があるかわかりませんでした。

しかし、「この先がどうなっているのか知りたい!」「この先に何があるか知りたい!」という好奇心が、人々を動かし、やがて世界の形もわかるようになったのです。

興味が出ても食わず嫌いをしてしまう…という方は、下記コラムを参考に好奇心を高める練習をしてみてください。

好奇心を持つ方法

⑥決断力をつける

勇気のある人は、選択に迫られた時に、すぐに大胆な決断はせず、ハードルを下げて小さな決断をしていきます。

転職するか否か
⇒求人を見てみる、自己分析をする
結婚相手を探すか
⇒まずは異性の友人作りから始める
起業するべきか
⇒ローコストで副業から始めてみる

このように、決断を小さくすると、これならできる!と、勇気を刺激しやすくなります。決断はできる限りスモールステップにして、1つ1つ丁寧にチャレンジしていきましょう。

具体的にスモールステップで、行動する方法は下記のコラムを参照ください。

行動療法,スモールステップコラム

⑦人の評価を気にしない

堀合(2011)[1] の研究では、大学生153名を対象に勇気についての研究を行いました。その結果が以下の図です。

勇気 評価懸念

このように評価懸念が高い方は、決断力が減り、意志の持続性も減ることがわかりました。勇気と絡めて解釈すると、周りからの評価を気にしない人は、勇気をもって決断しやすいと言えます。

周りからの視線を気にする心理を改善するには。以下のような自分への声がけが有効です。

周りの気持ちを考えることも大事だが、自分らしく話すことも忘れないようにしよう
自分の人生の価値は自分で決めるものだ、周りからの評価は参考程度にしよう

このように、自分の価値観、自分の生き方を土台として、考える習慣が大切になってきます。周りの評価が気になって勇気がでない…と感じる方は、以下のコラムを参考にしてみてください。

人の目が気になるコラム

勇気を出す方法,マイペース

 

まとめ

勇気が出ない、逃げたい、不安だ、という気持ちは誰でもあるものです。しかし、人生は一度しかありません。毎回自分の恐怖心に付き合い、回避を続けると、やりたいことができなかった、チャレンジできない人生になってしまいます。

皆さんが、勇気に打ち勝ち、前向きなチャレンジを続け、時に盛大に失敗し、時に成功を手にしながら、様々な経験を積まれていくことを切に願っています。

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。

・勇気を引き出す,心理学の学習
・失敗を恐れる気持ちのコントロール
・逃げ癖の改善,恐怖突入法
・スモールステップ行動計画表の作成

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
 
[2]Putman, Daniel (2001). “The Emotions of Courage”. Journal of Social Philosophy. 32 (4): 463–470. doi:10.1111/0047-2786.00107. 上市ら(2004)後悔の時間的変化と対処方法 74 巻 6 号 p. 487-495
 
[3]Rate, Christopher R.; Clarke, Jennifer A.; Sternberg, Lindsay; Sternberg, Robert J. (2007). “Implicit theories of courage”. The Journal of Positive Psychology. 2 (2): 80–98. doi:10.1080/17439760701228755S2CID 144404365. 
 
[4]疋田一起, 山本竜也, 首藤祐介,坂井誠. (2017). 回避行動とネガティブな反復的思考が抑うつと不安に及ぼす影響. 中京大学心理学研究科・心理学部紀要= Chukyo University Bulletin of Psychology, 17(1), 47-52.