デマ拡散,流言に騙されない方法
皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のお悩み相談は「デマに惑わされない方法」です。
相談者
35歳 女性
お悩みの内容
私は周りの影響を受けやすく、自分で考えるのが苦手です。噂話やデマに惑わされやすいです。最近ですと、コロナ関連で根拠のない話を信じてしまい、SNSでリツイートをたくさんしてしまいました。
ですが、あとでデマとわかり、周りに迷惑をかけてしまいました。デマに惑わされない方法を教えてほしいです。
デマ情報であっても、ネガティブな情報に触れると不安を感じてしまいますよね。今回はデマへの対処法を6つ解説していきます。
① デマの公式を知る
② ネガティブ内容に注意
③ 不安を煽る内容に注意
④ 序盤に注意する
⑤ 2度聞き効果に注意
⑥ 情報源の信頼性をチェック
⑦ 現実検討をする
⑧ 犯罪になる可能性も考える
①デマの公式を知る
心理学者のG.W.オールポート、L.ポストマン(1947)は、噂話は、人々にとっての話題の重要性、状況のあいまさの積に比例して流布すると主張しています[1]。具体的には、次の公式で示すことができます。
R=I×A×N
R:rumor
噂話、流言、デマを意味します。
I:importance
重要性、関わる人にとって大切な情報かを意味します。
A:ambiguity
曖昧さを意味します。
N:network
通信でのつながりを意味します。
日本語で表記をすると
流言の量=重要性×曖昧さ×ネットワーク
となります。情報が不確かなほどデマは広がるという考えから、古典的な公式は「R=I×A」でした。しかし最近は、SNSなどでデマが広がるため、ネットワークが係数に追加されています。以下具体的な例を元に解説をしました。理解を深めたい方は折り畳みを展開してみてください。
②ネガティブ内容に注意
梅島ら(2011)[2]は、東日本大震災当日~30日の間ツイートを収集しました。そのうち、リツイート数が多いもの上位1,000件のリツイートを収集・分析しました。その結果、「ネガティブ内容のデマは拡散されやすい」ことがわかりました。以下のグラフをご覧ください。
このように、ネガティブな内容のツイートのうち、「デマ」の方が「非デマ」よりもリツイートされやすいことが分かります。デマは書き手が自由な場面設定をして、センセーショナルに書くことができるため、広がりやすいと言えます。根拠のない噂話、陰謀論、スキャンダルなどには注意が必要だと言えそうです。
③不安を煽る内容に注意
梅島ら(2011)の同研究では、「不安を煽る内容のデマは拡散されやすい」こともわかりました。以下のグラフをご覧ください。
このように、ネガティブな内容のツイートのうち、「非デマ」よりも「デマ」の方がリツイートされやすいことが分かります。
例えば、2020年の新型コロナウィルスでは、不安を煽る内容のデマが発信され、社会が混乱状態に陥りました。過剰な自粛、食料品の買い占め、陰謀論なども記憶に新しいところです。不安を煽る情報は、デマの可能性も多いため十分に注意する必要があるでしょう。
④序盤に注意する
デマは特に、事件や天災の序盤に起こりやすくなります。SNSでデマ情報が拡散した「コスモ石油事件」についてみていきましょう。コスモ石油事件は、コスモ石油の製油所火災から発生した事件で、その際、「有害物質が降る!」というデマ情報がTwitterで拡散した事件です。
白井ら(2012)[3]は、コスモ石油事件に関するデマツイート及び訂正ツイートを抽出し、時間当たりのツイート数をまとめています。
この調査から
デマ情報は、問題発生直後
真実の情報は、デマ情報の後
に拡散する傾向にあることが分かりました。つまり事件や事故の直後は、デマ情報が出回ること可能性が高いことが推測できます。現代社会ではSNSが発展し、現実的な
意見もすぐに行われるため、不安な気持ちに流されて、鵜呑みにするのではなく、少なくとも3日程度は待ち、正しい情報なのか、落ち着いて吟味するようにしましょう。
➄二度聞き効果に注意する
二度聞き効果とは、心理学の用語で、以下の意味があります。
別々の人から同じ情報を聞くと信じやすくなる心理的効果
SNSでデマ情報が拡散されると、同じ情報を繰り返し見ることになります。たった1つの情報元であっても、それを元に複数の方がSNSでつぶやくと、同じことを考えてる人がたくさんいるように感じ、より信じやすくなってしまうのです。
同じ主張を見てしまったときは、二度聞き効果のリスクが発生していることを自覚し、あくまで重要なのは情報元であることを冷静に考えましょう。具体例として以下のようになります。
*注意が必要なパターン
Aさん ⇒ 3日後に地震が起こる
Bさん ⇒ 3日後に地震が起こるらしいよ
Cさん ⇒ 近いうち地震が起こるんだって!!
情報源は?
Aさん ⇒ 煽り系インフルエンサーZが言っていた
Bさん ⇒ 煽り系インフルエンサーZが言っていた
Cさん ⇒ 煽り系インフルエンサーZが言っていた
このような状態は、一見地震が起こるという意見が多数を締めているように見えます。2度聞き効果で、たくさんの人が同じことを言っていると、信憑性があるかのような錯覚を受けてしまいます。
しかし、冷静に元をたどると情報源はただ1つで、信憑性の低いZの主張のみです。このようなケースでは、2度聞き効果に惑わされず、1つの情報源、信憑性が薄い、と確認するだけで、デマに煽動されるリスクを減らすことができます。
⑥情報元の信頼性を確認する
発信元の信頼性はどのように判断すればいいのでしょうか。特に注意すべき点は、あいまいな場合や非専門家の発言です。たとえば、インターネット情報であれば
発信者が匿名
発信者が一般人
情報ソースに引用がない
非断定的な表現(~らしい)
などはデマ率が高い可能性があります。噂話やデマに流されないためには、誰が言った内容なのか?が極めて大事です。信頼できる発信元の情報を探して比較・検討してから行動するようにしましょう。
⑦現実検討する
情報を受け取ったときは、その情報が現実的かどうか検討する癖をつけるようにしましょう。具体的には、以下のポイントで検討していきます。
実際に起こったことか?
憶測、推測、仮説か?
何%の確率で起こるのか?
デマは、あくまで推測の域であることが多いです。実際に起こった事実なのか?仮説なのか?比較してみましょう。
また確率計算も重要です。例えば100万件に1件でも、「●●で死亡!」とセンセーショナルに煽ることはできます。実際にどれぐらいの確率で起こることなのか?現実的に検討する癖をつけましょう。
⑧犯罪になる可能性も考える
現在の法律においては、デマを流す行為が、法に触れるケースは多々あります。例えば、以下の例が挙げられます。
噂話をして、他人の信用を損ねた場合
→刑法第233条前段に規定されている「信用毀損罪」にあたる可能性がある。
真偽にかかわらず、他人の信用を損ねた場合
→刑法第230条1項の「名誉毀損罪」にあたる可能性がある。
デマによって、業務が妨害された場合
→刑法第233条後段に規定されている「偽計業務妨害罪」にあたる可能性がある。
このように、デマによって誰かの信用を落としたり、業務を妨害することは、犯罪に該当することがあります。信用性の低い情報を周りに伝えるときは十分注意しましょう!
まとめ
今回は心理学の原理や公式を交えながら、デマ情報・噂話に流されない方法を紹介してきました。私たちはさまざまな情報を、手軽に入手できるようになりました。
その中には、デマや噂話もあり、情報を正しく選別していく力が必要になっています。当コラムで紹介した6つのポイントをおさえてみてくださいね。
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連