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自己開示が苦手!克服するトレーニング法

日付:

苦手な自己開示を克服,トレーニング法

皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のお悩み相談は「自己開示が苦手」です。

 

相談者
29歳 女性

お悩みの内容
私は昔から自分のことを話すのが苦手です。「失敗したらどうしよう」「私の話を喜んでくれるわけがない」と考え、自分の話をすることに躊躇してしまいます。

一問一答になってしまうことが多く、会話が盛り上がりません。人の話を聴いてばかりな自分を変えたいです。自己開示のトレーニング法を知りたいです。

自己開示が苦手だと、あなたの魅力が伝わらず、もったいないですね。当コラムでは皆さんの自己開示力をUPさせる秘訣をしっかりお伝えしていきます。是非最後まで御一読ください。

自己開示の効果

まずはじめに自己開示の効果から確認していきましょう。

日々が充実する

石本ら(2010)[1]は、大学生397人を対象に自己開示と精神的健康度について研究を行いました。その結果の一部が下図となります。

自己開示苦手

こちらは自己開示をする人ほど、充実感があることを示しています。自己開示をすると、相手に楽しんでもらったり、自分も肯定してもらう機会が増えてきます。人とのつながりが増え、充実感が得やすくなると推測できます。

幸福感が向上する

和田(1995)[2]は、男性91名、女性156名の大学生を対象に、自己開示量と幸福感を測定しました。その結果、以下のグラフのようになりました。

自己開示と幸福感

自己開示の欲求度が4の時に心理的幸福感がもっとも高くなっていることが分かります。つまり自己開示が「やや多い」方が幸福感高いことが考えられます。自分の思いや主張を伝えることは、幸せな人生にプラスに働くのです。

やりとりが増える

Laurenceau ら (1998)[4]の研究によると、下記のように、自分の自己開示、相手の自己開示はそれぞれ、促進しあう関係があり、最終的に親密性につながることもわかっています。

自己開示-親密性

上記の図を見ると「自分の自己開示」「パートナーからの開示」は、パートナー同士の応答を増やします。さらに相互のやり取りがふえることで、親密性が高まることも分かりました。

さらに、「自己開示」と「パートナーからの開示」はそれぞれ、直接的に親密性へ影響を与えていますね。つまり、双方の自己開示はお互いに促進し合い、親密性を高める傾向があるのです。

Laurenceau の研究詳細

Altman & Taylor (1973)[3] の社会的浸透理論でも言われていることですが,自己開示の度合いは,対人関係の中での親密性と関連があります。そこで,Laurenceau ら (1998) [4]は,対人関係における親密性のレベルを示したReis and Shaver モデル (1988) [5] の検証を目的とした研究を行いました。

仮説①「自己開示とパートナーからの開示の双方が親密性に影響を及ぼす」
仮説②「この影響は,開示された側の反応の程度によって左右される」

これは仮説モデルといって,仮説理論を図示したものです。左から「自己開示」「パートナーによる開示」の双方が影響しあっていることが,両側の矢印で繋がって示しています。これは相関を表します。「自己開示」,「パートナーからの開示」から「パートナー同士の応答」へ,片方矢印が出ていますが,これが,影響を表すものです。つまり,自己開示,パートナー開示の双方が,パートナーの反応の受け止め方に影響を与える,という意味になります。

最後に,自己開示,パートナーからの開示,さらに,パートナーの反応の受け止め方から,「親密性」に片方矢印が出ています。親密性には,これら3つの要素全て影響を与える,という意味となります。それぞれの矢印にp と数字が書かれていますが,これがパス係数と言って,影響の度合いを表します。自己開示とパートナーからの開示には相関があると言いましたが,双方矢印に,rと数字が書かれています。相関を表す統計量はrで示しますので,rと書いてあるわけです。

さて,この仮説モデルを検証するために,実際に研究参加者からデータを取ったところ,図2のような結果になりました。

自己開示,効果,モデル

自己開示とパートナーからの開示には相関係数が0.60という高い相関が見られました。自己開示,パートナーからの開示と親密性の関係を見ると,自己開示→親密性は,0.22 ,パートナーからの開示→親密性は 0.32 という比較的影響力があるような関係が見られますが,パートナーの反応の受け止め方によって,さらに高い影響,0.36 が示されたことがわかります。

 

深い話ができる

自己開示をすると相手も自己開示しやすくなります。ここでAltman & Taylor(1973)[3]の社会的浸透理論で使われる図を見てみましょう。それぞれの意味は次の通りです。

外側「表面的な話題」
中間「やや踏み込んだ話題」
内側「人に言えないような深い話」

相手の気持ちを知る自己開示の深さと広さの図

図を見ると、人物A・人物B、それぞれの矢印が最初は外側の表面的な話題からスタートし、徐々に内面的な話題へと移行していることが分かります。すなわち自己開示を進めていくと、相手の自己開示を促し、お互い深い話ができるようになると言えます。

さらに自己開示をすると、相手も自分の情報を開示しやすくなることが分かっています。詳しく知りたい方は、下記を展開してチェックしてみてください。

自己開示の返報性

遠藤(1993)[6]では、大学生61名を対象とした調査から、自己開示と会話の活性化に相関関係があることが示されています。その結果が以下の図です。

話し方 自己開示

このように自分自身に関する情報を積極的に共有する人に対して、相手も同様に自己開示を行う傾向が顕著に表れました。つまり、自己開示は「伝染性」があると言えるでしょう。

自己開示がうまくなる8の方法

ここからは自己開示がうまくなる8の方法を解説していきます。

①全体の指針をおさえる
②失敗過敏の改善
③公的自己意識の改善
④自己肯定感を高める
⑤5W発話法
⑥感情追加法
⑦具体例提示法
⑧50%を意識する

活用できそうなトレーニングを組み合わせてご活用ください。ブックマークをしてじっくり取り組みましょう。

①全体の指針をおさえる

自己開示がうまくなるには、大きく分けて、技術面と心理面の2つの改善が必要です。両者は表裏一体なのでどちらか一方ではうまくいきません。

話す力が高いとしても、心が不安定で、自己開示に後ろ向きではそもそも話そうという気持ちになれません。逆にいくら心が前向きでも、語彙力が不足していたり、ワンパターンだと自己開示はうまく行きません。このように自己開示がうまくなるには、技術と心が大事になるのです。

話し方の苦手意識を克服
②失敗過敏の改善

心理学的に、失敗過敏は自己開示の天敵であることが分かっています。失敗過敏とは

恥をかいてはいけない
嫌われてはいけない
つまらないと思われたくない

こんな失敗を恐れる心理を意味します。失敗過敏を修正するには、前向きな考えを増やしていくのがコツになります。例えば、

多少の失敗はOK!楽しんで話をしよう
ガリガリくんの面白い味の話をしよう
笑えるYOUTUBEチャンネルの話をしよう

と前向きな表現に変えてみるのです。すると、どこか積極的な気持ちが芽生えて、話す気力が湧いてくるのです。以下練習問題を作成しました。自己開示をする前から失敗をイメージしがち…と感じる方は練習してみてください。

失敗過敏-改善練習

練習問題1

花子さん
・大学1年生
・失敗過敏な性格
・自己開示が苦手

花子さんは、サークルの新入生歓迎パーティに参加します。初めて会う人が多いため「失敗して恥をかいてはいけない」と考えています。

花子さんの考え方を前向きに変えてみましょう。

自己開示と失敗過敏

解答例
「失敗して恥をかいてはいけない」
      ↓
「せっかくだから楽しもう!」
「無理せずリラックス♪普段通りでいこう」
「多少の失敗は笑いがあってもいいかも」

練習問題2

太郎さん
・婚活を始めた
・失敗過敏な性格
・自己開示が苦手

太郎さんは、婚活パーティーに参加しています。気になる異性との会話のチャンスに「自己開示して嫌われてはいけない」という思いから会話が盛り上がりません。

この太郎さんの考え方を前向きに変えてみましょう。

失敗過敏の練習問題

解答例
「自己開示して嫌われてはいけない」
    ↓
「用意した話題で楽しんでもらおう」
「無理せずありのままの自分の話をしよう」
「謙虚でありつつも、自分の魅力は伝えよう」

失敗過敏の改善を、もっと練習したい方は、以下のURLをご覧ください。

失敗が怖い…を改善する練習

 

③公的自己意識の改善

公的自己意識が高いと、対人不安が強くなるため、自己開示が消極的になってしまいます。公的自己意識は、周りの目を気にする意識を意味します。 

嫌われたらどうしよう
馬鹿にされるかも…
評価が下がるかも…

自己開示をするときにこのような考え方があたまをぐるぐる回っている方は要注意です。 公的自己意識が過剰になると、緊張や不安が大きくなり自己開示しにくくなってしまうのです。 

不安から自己開示ができない例

公的自己意識を改善するには、私的自己意識を増やすことが大事です。私的自己意識とは、自分自身がどう感じるか?を大切にする意識です。

昨日食べた〇〇おいしかったなあ~よし!話そう
旅行にいきたいなあ~思い出を話したいなあ
先週行った資格の学校、結構ためになった。話したい!

このように、あくまで自分の意識をベースに話すのが私的自己意識です。自己開示をするときには、たまには私的自己意識を全開にして、好きなように話すことも大事です。以下、私的自己意識が不足していると感じる方は以下のコラムを参照ください。

過剰な公的自己意識-改善練習

練習問題1

月子さん
・仕事一筋の働きマン
・婚活をはじめた
・公的自己意識が強い

月子さんは、以前参加した時、初対面の異性から「仕事一筋なんだ…残念…」と言われました。2回目の婚活パーティーを前に「仕事好きをアピールして嫌われたらどうしよう」と、異性の目が気になり、不安になっています。

この月子さんの考え方を私的自己意識に変えてみましょう。

自己開示への不安


解答例
「自己開示して嫌われたらどうしよう」
  ↓
「自分を大切に素直に自己開示して気に入ってくれる人がいればOK」
「昨日面白いことがあったから話したいな」
「自分の好きな食べ物の話をして楽しもう」

練習問題2

二郎さん
・入社1年目の会社員
・学歴コンプレックスがある
・公的自己意識が強い

二郎さんは取引先の人から「君は○○大学出身なんだね…ふ~ん…」と言われたことを気にしています。職場で学歴の話になると「学歴で恥をかくかも…」と人の目が気になり不安が大きくなっています。

この二郎さんの考え方を私的自己意識に変えてみましょう。

自己開示が不安になる例


解答例
「学歴で恥をかくかも…」
  ↓
「学歴が全てではない。色々な自分を知ってもらおう」
「学歴は自分の1つの要素に過ぎない,たくさんの魅力を伝えよう」
「自分には●●という専門性がある!これをしっかり伝えるぞ!」

私的自己意識への改善をもっと練習したい方は、以下のURLをご覧ください。

人の目が気になる心理とは?原因と治し方

 

④自己肯定感の不足

自己開示は自分をさらけ出す行為です。その意味で、自分を肯定できない方は、「自分をさらけ出すと、皆から否定される」と考えてしまい、自分の情報を隠したがるようになります。

自分は欠点ばかりだ
自分に自信がもてない
自分があまり好きでない

このような感覚が強い方は注意が必要です。自分を否定する習慣を改善し、自己肯定感をじっくり育てていく必要があるでしょう。

ただし、自己肯定感を高めるのは長期戦です。以下のコラムではリフレーミング法、ソーシャルサポートなど様々な手法があります。じっくり取り組んでいきましょう。詳しくは、以下のURLをご覧ください。

自己肯定感が低い状態から高める5つのコツ

⑤5W発話法

ここからは技術編です。技術面の改善は繰り返しの練習が必要です。まずはやり方を覚えて、日々の生活で習慣化していくといいでしょう。1つ目の技術としては、5W発話法をおすすめします。5W発話法は、

時間 登場人物 場所 特徴 きっかけ

をベースにして話をする方法です。 5つの枠に沿って返すだけで会話にボリュームを出してくれます。実際の会話では、5Wの中から3つほど情報を追加すると、ちょうどよいボリュームになります。

私は以前、横浜の大口に住んでいました(場所)気取らない人が多い街でサンダル1つでウロウロできるような街でした(人物)5年ほど住んでいたと思います(時間)

昨日(時間)、国分寺で(場所)ラーメンを食べました。いわゆる二郎系のラーメンで野菜がたっぷり入って、中太のしっかりした麺なのでお腹いっぱいになれます(特徴)

いかがでしょうか。自己開示がいつも1問一答になってしまう方は、まずは5Wを意識しながら話すようにしてみてください。もっと練習をしたい方は、以下のコラムを参照ください。

話が膨らむ,5W発話法

⑥感情追加法

5Wがスムーズにできるようになったら次に、話に彩りをつけていきます。感情発話法は、自分がどう感じたかの感情を織り交ぜた発話です。先ほどの例をベースにすると以下のようになります。

私は以前、横浜の大口に住んでいました(場所)気取らない人が多い街でサンダル1つでウロウロできるような街でした(人物)5年ほど住んでいたと思います(時間)。 
 +++
大口の魅力はというと、個人商店が多く、街の人同士の交流があるところです。顔見知りがたくさんできて、家に帰ってきたようなほっとする感覚がありました。またいつか住みたいです。
(感情) 

昨日(時間)、国分寺で(場所)ラーメンを食べました。いわゆる二郎系のラーメンで野菜がたっぷり入って、中太のしっかりした麺です(特徴)
 +++
二郎系ラーメンは、ボリュームが多いので、一度食べると、正直もういいや!という気持ちになるのですが、なぜか2週間ぐらいすると、また食べたい!という気持ちが戻ってきてリピートしてしまいます。
(感情) 

このように、感情を意識しながら話すと、内容が豊かなになりますし、自分自身話していて楽しくなっていきます。感情をこめて話せるようになりたい!と感じる方は、以下のコラムを参考にしてみてください。

豊かな表現,感情発話法

⑦具体例提示法

具体例提示法は、発話の内容をより具体的に描写する方法です。「話が短くなってしまう…」という方はとても参考になると思います。



技術面はひとまず上記の3つを繰返し練習してみてください。自己開示がかなり改善します。練習量を増やしたい方は、こちらのコミュニケーション講座でもトレーニングが可能です。お待ちしています。

⑧50%の自己開示を目指す

名古屋大学の中村教授(1984)[7]は自己開示の量と対人魅力について調査を行いました。その結果が以下の図です。

対人魅力と自己開示

図を見ると

自己開示をしない人は魅力が少ない
自己開示をし過ぎる人は魅力が少ない
50~60%の自己開示が最も魅力的

という結果になっています。

講師としては、2人で話す場合は、相手と半々で、50%の自己開示をオススメします。3人で話す場合は33%前後、4人の場合は25%前後ですね。会話場面で偏りすぎていないか?自己開示の量の目安として参考にしてみてください。

まとめ

自己開示コラムはいかがでしたか?基礎からしっかり練習すれば、だれでもある程度は自己開示ができるようになります。まずは5Wから始めて、少しずつ感情表現をふやしていきましょう。

何気ない話題でも、相手からすると意外と、楽しい話に感じるものです。勇気を出してたくさん表現してみてくださいね。 応援しています!!

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。

・自己開示トレーニング,実践練習
・自己開示が楽しくなる,心理学の学習
・話が膨らむ,会話の継続練習
・豊かな表現力,感情発話練習

🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^) 

自己開示が苦手,克服するトレーニング法,コミュニケーション講座

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1]石本雄真,楠見菜都子,齊藤誠(2010). 大学生の自己開示と精神的健康との関連一自己開示の量的側面と質的側面に注目して一 日本青年心理学会大会発表論文集 18(2010)
 
[2]和田実(1995).青年の自己開示と心理的幸福感の関係 社会心理学研究 第11巻第1号 ,11-17
 
[3]Altman, I., & Taylor, D. A. (1973). Social penetration: The development of interpersonal relationships. Holt, Rinehart & Winston.
 
[4]Laurenceau JP, Barrett LF, Pietromonaco PR(1998). Intimacy as an interpersonal process: the importance of self-disclosure, partner disclosure, and perceived partner responsiveness in interpersonal exchanges. J Pers Soc Psychol.May;74(5):1238-51. doi: 10.1037//0022-3514.74.5.1238. PMID: 9599440.
 
[5]Reis, H.T., & Shaver, P. (1988). Intimacy as an interpersonal process. In S. Duck (Ed.), Handbook of personal relationship. Chichester, England: Wiley. Self-Disclosure, Partner Disclosure, and Perceived Responsiveness in Interpersonal Exchanges. Journal of Personality and Social Psychology, 24, 1238-1251.
 
[6]遠藤公久 (1993).自己開示の引き出しやすさに関する聞き手の発話特徴 一会話の質的分析を通して一. 筑波大学心理学系, 15, 201-209.
 
[7]中村雅彦(1986).自己開示の対人魅力に及ぼす効果(2) 実験社会心理学研究 25 巻2号 p.107-114