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自己否定をやめる方法とは,克服方法

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自己否定をやめる方法とは,克服方法

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「自己否定をやめる方法」についてご相談を頂きました。

自己否定,やめる方法

相談者
33歳男性

お悩みの内容
私は昔から、自分が嫌いです。見た目は太っていて、目が細いです。勉強が苦手で、学歴が低いのも影響し、今は収入が低い仕事についています。

自己否定が強いので、会話も愚痴が多くなりがちで、友達もできません。

こんな自分を変えたいです。どうすればいいですか?

容姿と経済的な面の2つについて自信を失っているのですね。一方で、こんな自分を変えたいという言葉に力強さを感じました。

当コラムでは、自己否定の原理を解説し、改善策を提案させて頂きます。自分に合いそうなものを日々の生活の中に取り入れてみてください。

自己否定の原理

わたしたちはなぜ自己否定してしまうのでしょうか。この疑問については心理学者カール・ロジャーズ(1957)[1] が提唱した「自己一致」「自己不一致」という言葉がヒントになると思います。

自己一致とは何か

自己一致とは、「理想の自分」と「現実の自分」が近い状態を意味します。

自己一致をしている状態は

・理想をある程度実現できている
・達成可能な理想がある
・エネルギッシュにチャレンジできる

これらの心的な特徴がみられます。

自己一致の理想と現実の関係たとえば、「ダイエットで3kgやせたい!」と考えたとします。3kgくらいのダイエットなら、達成できる現実的な範囲といえます。

これぐらいの範囲なら、現実の自分と理想と自分のギャップは小さく、健康的であると言えそうです。心理的には、自己否定感が低く、自己肯定感が高くなりやすい状態です。

自己不一致とは?

自己不一致とは、「理想の自分」と「現実の自分」がかなりずれている状態です。

自己不一致をしている状態は

・理想とは程遠い現実を生きている
・達成が厳しい理想がある
・理想が高すぎてチャレンジできない

などの特徴がみられます。

自己不一致とは?理想と現実のギャップたとえば、身長に強いコンプレックスを持つ女性がいたとします。モデルのような体系にあこがれて「どうしても身長をあと15cm伸ばしたい」と考えたとします。

ヒールを履いたり、姿勢を良くすれば、少しは理想に近づくことができるかもしれません。

しかし基本的には、身長などの身体的特徴は変えようがありません。そうした本質的な自分らしさを受け入れられないときは、現実と理想とのギャップから、自己否定を強めてしまいます。

自己不一致が大きい方は、心理的には、自己否定感が強く、自己肯定感が低くなりやすいのです。

理想と現実,自己嫌悪

年を取ると減る

以下は弊社調査による、自己嫌悪感を持つ人の年代別のグラフです。自己嫌悪が最も多い年代は2000年代生まれで、年齢とともに減っていることがわかります。

 

自己否定,年代別

この点、自己否定や自己嫌悪は特に若い人が顕著であると推測できます。若い時は理想に燃えていて、なりたい自分と現状の自分の間に大きな隔たりがあります。

そして、年齢を重ねるにつれてだんだんと、理想の自分と現実の自分の距離感が近づいていくものと考えられます。一方で自己否定が長期化する方もいます。長い間自分が嫌いで、受け入れられない方は注意が必要です。

自己否定に関する研究

次に、自己否定に関する心理学の研究を紹介します。自己否定があるとどのような影響があるのか?理解を深めていきましょう。気になる項目がありましたらクリックしてみてください。

自己否定と他者否定の関係

細田ら(2009)[2]は、中学生305名を対象に、自己肯定感と他者肯定感の関連を調査しました。その結果、自己肯定感と他者肯定感は、正の相関になることが分かりました。

自己否定と他者肯定感

この結果は、自己肯定感が低い人は他者肯定感も低い傾向があるということを表しています。つまり、自分への否定感が強くなると、他者への否定も強くなるのではないかと考えられます。

傷つきやすくなる

斎藤ら(2009)[3]は、大学生474名を対象に、自己評価と失敗過敏について調査を行いました。

その結果、自己評価が低くなると、失敗過敏が強くなることが分かりました。失敗過敏とは、失敗を気にしすぎてしまうことです。

自己否定と失敗過敏

自己否定的な状態では、失敗に敏感になりやすいと言えます。自己評価が低い場合は心に余裕がない分、1つ1つの失敗を恐れ、消極的になりやすいのです。

疑心暗鬼になりやすい

斎藤ら(2009)[3]は、大学生474名を対象に、自己評価と行動疑念についても調べています。その結果、自己評価が低いと行動疑念が高まることが分かりました。

自己否定と行動疑念

自己否定しがちな人は、自分の行動に疑心暗鬼になりやすく、自信をもって行動できない状態にあると推測でいます。

自己成長につながるケースも

Deevyら(1992)[4]によると、自己否定は自己成長につながると報告されている面もあります。自己を否定しがちな人は、自分の至らないところに目が向くため、反省点がたくさん出てきます。その反省点を活用すれば、前に進んでいくことができるのです。

たとえば、ネガティブ思考がダイエットにどのような効果があるかを調べた研究 (Oettingen,1991) では、ネガティブ思考の方がダイエット効果が高いことが分かりました。

以下のグラフをご覧ください。ポジティブ思考の人と比べると、ネガティブ思考の人は体重を大幅に減少させていることが分かります。

この研究では、ネガティブ思考はダイエットだけではなく、恋愛や仕事、勉強などでも同じような現象が確認されたと述べられています。加えて、ネガティブ思考を正しく使うことで成長に貢献できることも示唆されています。

つまり自己否定をうまく活かすと、目標達成につながることもあると認識しておくといいでしょう。

目をそらすと悪化する

高坂(2009)[5]は中学生228名、高校生190名を対象に、劣等感について調査を行いました。その結果の一部が下図となります。

自己否定 否定性直視への抵抗

上記の、否定性直視への抵抗は、自分の嫌なところを見たくない、ネガティブな面を考えないようにする感覚を意味します。例えば、自分の学業成績について、無理に何も考えないようにすると、かえって勉強への劣等感を高めてしまうリスクがあると言えます。

自己否定をやめる7つの方法

ここまで解説してきたように、自己否定は、健康的なレベルであれば行動するエネルギーに繋がります。しかし、大きくなるにつれてデメリットが大きくなってきます。

では不健康な自己否定をやめるには、どうすれば良いのでしょうか?以下の7つを提案させて頂きます。

①褒め褒め時間を作る
②リフレーミングする
③温かいコミュニティに所属する
④人を褒める
⑤理想を見直す
⑥目の前の1つ1つを丁寧に
⑦感謝をする

褒め褒め時間を作る

自己否定が強い人は、自分を肯定する時間や空間を決め、褒め褒め習慣を作ることをおすすめします。これはポジティブ心理学という分野で推奨されているやりかたです。

例えば、布団に入って目をつぶったら、1日のうち一番うれしかった瞬間や、努力が実った瞬間を思い出しながら寝るようにします。入眠するまでの5分間ぐらいですが、リラックスできますし、自己肯定感が回復していく効果があります。

その他の例としては以下のものが挙げられます。

トイレにいる時は自分を褒める
毎日日記で良いことだけを書く
出勤中は自分を褒める
近所の神社に行って自分を肯定する

是非、毎日自分を褒めるルーティンを作るようにしましょう。ご自身にあったやり方をみつけてください。

リフレーミングする

褒める時間を作った時に有効なのがリフレーミングという手法です。リフレーミングとは

物事を様々な角度から捉え直していく手法

を意味します。

例えば、受験勉強に身が入らず、滑り止めのみに入学し、学歴コンプレックスがある人がいたとします。そんな時は

・専門的な勉強や研究はいくらでもできる
・勉強を頑張れなかった分、仕事にぶつける
・もやもやするのでTOEIC800点を目指す
・学歴が低くても幸せにはなれる

とリフレーミングしていくのです。具体的には、18のリフレーム法があるので、自分を褒めようと思ってもうまく褒められない…という方は下記のコラムでぜひ練習してみてください。

リフレーミングコラム

暖かいコミュニティに所属しよう

自己肯定感を育てにくい環境がある場合は、思い切って人間関係を再検討してみることも大事です。たとえば、

悪口ばかりを言う人
あなたを馬鹿にする人
過度に競争意識を持つ人

このような人が周囲にたくさんいたら、自己否定的な気持ちが刺激されてしまうので注意が必要です。

あてはまると感じる方は、殺伐とした人間関係から距離を置き、温かいコミュニティを探してみる事をおすすめします。肯定的な心を持つ人が多い、ほっとできる受容的な雰囲気がある、そんなコミュニティに1つは所属するようにしましょう。

コミュニティを見直したいという方は下記のコラムも参考にしてみてください。

コミュニティを探す方法

自己否定が強い時の対処法

人を褒める

心理学の研究では、他人を否定する人は、自己否定が強くなることが分かっています。その意味で、人に対して攻撃的になったり、短所を指摘し続けたりしてしまう方は、間接的に自己否定感を高めてしまいます。

改善をするには、他人を肯定する力をつける事です。人の長所、尊敬できる点を見つけ、言葉にして褒めていくと、結果的に、自分を肯定する力もつけることができます。

人のダメな点を見つけてしまう…と感じる方は以下のコラムで人の良いところを探す習慣をつけていきましょう。

褒める力をつけるトレーニング

理想を見直す

自己否定を改善するには理想を見直す姿勢も大事になってきます。例えば、

運動能力検査で、身体年齢が実年齢より高く出たから、筋肉を1キロつける

これは頑張れば実現できそうな(「自己一致に近い」)理想です。実際に前向きにチャレンジして、達成できれば自信につながるでしょう。こういった身近な目標はむしろ自分のためになります。

一方で、

私は色黒だ…もっと色白に生まれたかった…

このようなお悩みはどうでしょうか?もちろんお化粧などで、少しは顔の色を変えられるかもしれませんが、限度があります。

こういった「自己不一致が大きな」理想を持ち続けていても、はっきり言ってしまえば、あなたの人生を不幸にするだけです。もし目標が自分にとって高すぎる、実現は限りなく不可能と感じたら、その現実を受け入れ、理想をあきらめることもすごく大事です。

あきらめるとは、あきらかにするということです。現実があきらかになり、あたらしい生き方を模索すべきサインとして考え、理想を修正する勇気を持つようにしましょう。目標や理想は、あなたを幸せにするための物です。あなたを不幸にするものであれば、それは意味を持たないのです。

1つ1つ丁寧にこなす

理想を見直し、自分にもできるレベルに修正できたら、1つ1つの課題を丁寧にこなすことが大事です。自己否定をしている時は、日々頑張れた自分に少しずつ生まれていくものです。

私たちがやれることは1つ1つ丁寧に自信を積み重ねていくことでです。例えば英語を話せるようになりたいと感じたら、1日3個は単語を覚えると決め、これを毎日愚直に続けていきます。

1年たてば1000単語増え、この実績が自己否定を和らげてくれます。大事なことは今目の前にある、1つの課題です。この課題を是非心を込めて達成していきましょう。

感謝をする

心理学の研究では、感謝が万能であることがわかっています。感謝は自己肯定感を高める、幸福感を高める、人間関係を豊かにする、不安を和らげる効果があります。具体的には

「ありがとう」という言葉を増やす
「助かるよ!」とたくさん言う
「いただきます」としっかり言う

などが挙げられます。感謝の気持ちを持つと、以下に私たちが日々様々な人に支えられ生きているかがわかってきます。そうした人のありがたみを感じることで、自己否定感を改善していきましょう。

感謝の気持ちを持つ方法

まとめと動画

自己否定が強いと、自分に自信を持つことができず、積極的な活動が難しくなります。そして、その多くの自己否定は、自分の中で作り出した理想への苦しみから生まれています。

皆さんが、理想と現実のバランスを取りながら、現実の自分をしっかりと肯定し、自分を受け入れ、肯定的に生きていけることを願っています。

自己嫌悪について、動画も作成しました。仕上げとしてご活用ください。

 

自己否定から自己肯定

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。

・自己否定を和らげる,心理学の学習
・長所を発見,リフレーミング練習
・自己否定をやめる,思考制止練習
・自分誉め誉め時間を作る練習

🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^) 
自己否定をやめる方法とは,克服方法,心理学講座

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Rogers, C.R. (1957). The necessary and sufficient conditions of therapeutic personality change. Journal of Consulting Psychology, 21, 95-103.
 
[2] 細田 絢・田嶌 誠一 (2009). 中学生におけるソーシャルサポートと自他への肯定感に関する研究  心理学研究, 57, 309-323. 
 
[3] 斎藤 路子・今野 裕之・沢崎 達夫 (2009). 自己志向的完全主義の特徴 : 精神的不健康に関する諸特性との関連から  対人社会心理学研究, 9, 91-100.
 
[4] Deevey, S., & Wall, L.J. (1992). How do lesbianwomen develop serenity? Health Care for Women International, 13, 199-208.