友達がいない,友達を作る方法
皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している元引きこもり、公認心理師の川島達史です。今回のお悩み相談は「友達がいない,友達が欲しい」です。
相談者
33歳 男性
お悩みの内容
私は昔から、社交的ではなく、学生時代から友達がいない生活を送ってきました。コロナウイルスの時期にテレワークになり、ほぼ1日会話がない状態が続いています。
このままだと孤独な人生で終わってしまう気がしています。今更ですが、友達の大事さを痛感しています。友達作りのコツを学びたいです。
友人がいない状態だからこそ、その大事さに気づかれたのですね。当コラムでは友達の作り方について、私の体験談も交えながら、基礎から解説をしていきます。是非最後まで御一読ください。
友達がいない,心理的問題
友達がいない状態は心理的にどのような影響があるのでしょうか。まずはこの点を確認しておきましょう。
将来への希望を失う
友達は生きる希望と直結します。以下は内閣府の調査(2013)[1]から引用した図です。ざっとご覧ください。
図を見ると、友人が多いほど将来に希望を持っていて、友達が少ない人ほど将来を悲観的に考えていることがわかります。特に「いない」と回答した人は、58人中、47人が希望を持てない傾向があり、友人関係が重要であることが推測されます。
自尊心が低くなる
宮本(2012)[2]は日本人169名、アメリカ人220名に対して、人間関係の広さと自尊心の関係について調査をしました。その結果の一部が下図となります。
こちらは友人数が少ないほど自尊心が低くなりやすいことを意味しています。日本人のみにみられる傾向でアメリカ人には見られませんでした。この点について宮本は日本人の人間関係を重視する国民性が影響していると主張しています。
対人不安が増える
相川(2005)[3]は大学生10,002人を対象に、社交性スキルについて調査しました。その結果の一部が下図となります。
こちらは、孤独感が強い人は、対人不安が強くなりやすいことを意味しています。一人でいる時間が長くなると、人と接することに苦手意識が強くなります。その結果、対人不安が増加してしまうのです。特に、対人不安が異常に強い、人間関係を回避する、視線が怖い、これらの感覚がある方は社交不安症(障害)のリスクも増大していきます。
問題行動に結びつく
西野(2007)[4]は疎外感が学生にどのような影響を及ぼすか調査を行いました。その結果の一部が以下の図となります。
図のように、疎外感を感じると、自己価値が下がり、否定的な感覚が強くなり、問題行動につながりやすくなります。
*講師の視点
私の臨床経験において、メンタルヘルスが悪い方のほとんどに、友人関係の脆弱さが見て取れます。心理学の研究でも、メンタルヘルスの指標のほとんどでマイナスの結果になっています。
資格の勉強、研究が忙しい、など人生をかけた目標がある場合は、孤独になって集中することも大事ですが、長期的には人間関係を充実させることをおすすめします。
友達を作る8つの方法
ここからは全く友達がいない方向けに、ゼロから作る方法を8つ提案させて頂きます。
①じっくり成長しよう
②人目を気にする心理を改善
③周りと比較しない
④温かいコミュニティを探す
⑤単純接触効果を生かそう
⑥会話の基礎力をつける
⑦見捨てられ不安への対処法
⑧本音でつきあう勇気を
友達がいない状況は個人差があります。上から順に読み進め、これはできていないな…と感じる部分がありましたら、組み合わせて活用してみてください。
①じっくり成長する決意
友人作りについてこれから複数紹介しますが、様々な心理的な成長や技術が必要になります。ここで大切なことは、友人が作りがすぐにうまくなるということはないということです。
せっかく話しかけたのに反応がなかった
新しいサークルに出たのに孤立した
メッセージを送っても返ってこない
せっかく努力をしても、これらの困難がつきものです。特にこれまで友達ができなかった…と感じる人ほど、それなりに大きな困難が待っていると思います。
ですが、これらの困難と直面したときに、腐らず前向きに成長していくきっかけに変えていく意思が大切です。特に友人関係の問題は、コミュニケーション力をつける格好のチャンスです。
せっかく話しかけたのに反応がなかった
→声が小さかったかも!次はもう少し元気に話しかけよう
新しいサークルに出たのに孤立した
→終始受け身だったからかな。次は隣の人に質問をしてみよう
メッセージを送っても返ってこない
→あせらずじっくり構える気持ちを持とう
このように、考え1つ1つ乗り越えるたびに、人間関係のレジリエンス力(心理的柔軟性)をつけることができます。あせらずじっくり成長することを大事にしましょう。
②人目を気にする心理を改善
友達がいないことを悩む方の多くは、周りの目を過剰に気にする心理を持っています。具体的には、
人に嫌われないだろうか
話しかけたら迷惑だろう
こんなこと言ったら笑われる
こんな心理になりがちです。このような周りの目を気にする心理は「公的自己意識」と呼ばれて、特に10代の中盤から強くなります。公的自己意識は、思いやりや気遣いの土台なので必要な心理です。
一方で、過剰になると、気を使いすぎて疲れてしまい、深刻になると社交不安症という病気になることもあります。もし人の目がすごく気になると感じる場合は、最初のステップとして、公的自己意識を緩めるところから始めていきましょう。
心がけることは私的自己意識を高めることです。私的自己意識とは、自分自身の気持ちに注目をする心理を意味します。
すごく面白い経験をした誰かに話したい
〇〇さんと話したいな♪はなしかけよう
友人がほしいな~ 遊びに誘ってみよう
このように、自分自身の気持ちを大切にする意識を持つと、周りの目を気にしすぎず、緊張をほぐすことができます。周りに配慮する姿勢も大切ですが、それと同じぐらい自分自身の素直な気持ちも大事にしてください。
公的自己意識、私的自己意識の理解を深めたい方は下記のコラムをご覧ください。
③周りと比較しない
コラム前半に紹介した宮本(2012)[2]の研究で明らかになった調査をもう1つ紹介します。*少し難しい研究なので、図に表示されている文言はわかりやすくしています。正確な文言は論文を参照ください。
こちらの図は、友人数を周りと比べ、少ないと感じると、自分が無能であると感じやすいと解釈ができます。「周りは楽しそうにしているのに…僕は友人がすくない…」と感じることが多い方は注意が必要です。次に以下の図をご覧ください。
こちらの図は「現実の友人数」に注目する人は「自分が有能であるかどうか」に影響はないことを示しています。わかりやすく言い換えると、周りと比較せず、今目の前にいる友人に注目する人は、自分の自信を保つことができると言えます。
最近ではSNSが発達して、フォロワー数などが明らかになりやすいですが、周りと比較してばかりいると自信がなくなる恐れがあります。数にとらわれず、現実の友人関係を大事にするようにしたいところです。
④温かいコミュニティを探す
会話の基礎力がついたら、いよいよ実践です。具体的には温かいコミュニティを探していきます。コミュニティは、長期間通える、上下関係が少ない、雑談があることが理想です。例えば
ファンクラブ 歌のサークル 華道教室 スポーツの集まり SNSの緩いオフ会 地元のスナック
などは比較的おすすめです。例えば、私がカウンセリングをした方の中に、社交不安症の方がいました。その方が思い切って地元の歌のサークルに所属をすると、上下関係がなく、やさしい方が多かったので、心理的に回復をしていきました。
友人作りの土台は暖かいコミュニティに所属することから始まります。継続的に参加できるコミュニティをぜひ探してみてください。なかなか人と話す場所がない…と感じる方は以下のコラムを参照ください。
⑤単純接触効果を活かそう
実際に、新しいコミュニティに参加をすると、どうしても緊張したり、会話ができなかった自分を責めがちです。自分の生活スタイルを変えるのは相当なエネルギーがいるものです。まずは新しい場面に足を踏み出した自分を褒め、結果はどうあれ、頑張れたことを誇りに思ってください。
そして、出会い初期は焦らず、一定のリズムで顔を出していくことが大事です。最初は馴染めなくても、粘り強くその場に参加していくだけで、周りのメンバーも声をかけてくれるものです。
ここでおすすめなのが単純接触効果をお守り代わりに意識しておくことです。単純接触効果とは以下の意味があります。
目に触れる回数が多いほど好感を持つ基本的な心理的傾向
言い換えると人間は、何度も会うだけで、相手に対して安心感を覚え、信頼していく性質があるのです。もちろん会話が弾むとうれしいですが、たとえ会話が弾まなくても、とりあえず会って参加をしているだけでも友人関係の土台はできるものです。まずはじっくり参加し続けることを目標にしましょう。
⑥会話の基礎力を磨く
コミュニティに参加をし続けるとある程度の信頼関係ができてきて、あなた自身も会話をしたい欲求が出てくる時期です。一方で、長い間友人がいなかった方は、会話の力が落ちていることが多いです。そこで、最低限の会話の練習をしていくことをおすすめします。
基本的な会話のスキルは複数ありますが、当コラムでは、「会話共有法」を紹介します。会話共有法は、出た話題を自分と相手双方が話すように心がける技術です。例えば以下のようなやり方があります。
自分が話し手
「そういえば、昨日コンビニで久々にスイカバーを買って食べたんです。すごくおいしかったです。」
相手に同じ話題を振る
「〇〇さんは、好きなアイスはありますか?」
→自分が出した話題を相手にも振る
相手が話し手
「最近、箱根に旅行に行きました。温泉もたくさん入りました…1分程度相手が話す」
自分も同じ話題で話す
「箱根は温泉がたくさんあって最高ですよね!私も温泉が好きでして・・・1分程度自分が話す」
このように話題を共有する意識を持つと、単純に場持ちが2倍になります。このような会話力をつけると友人もできやすくなります。以下のコラムでは会話のトレーニング法をまとめています。会話が苦手…という方は参考にしてみてください。
なお、宣伝になってしまいますが、独学が難しいと感じたら、コミュニケーション教室で練習することもできます。私も講師をしています。たくさん練習をしたい方は以下のリンクからご検討ください。
⑦見捨てられ不安への対処
顔見知りが増えてくると、新しい問題が出てきます。それは、
この人に嫌われたらどうしよう…
せっかく仲良くなった人と別れたくない…
連絡がない…嫌われたのかもしれない…
という不安です。これらの不安は心理学的に、見捨てられ不安と言います。見捨てられ不安はある程度仲良くなってきたときに起こりやすい気持ちで、相手の行動にイライラしやすくなったり、連絡を頻繁に求めたりと、ネガティブな結果になりやすい感情です。
特に今まで友人が少なかった人ほど、見捨てられ不安が典型的に見られるので、感情を客観的に眺め、自分自身をコントロールしていく必要があります。
仲良くなればなるほど、不安が大きくなっていく…と感じる方は下記のコラムを参考にしてみてください。
⑧本音で付き合う勇気を
仲が深まっていくと、だんだんと価値観の違いや、文化の違いを感じることが多くなってきます。もしかしたら、喧嘩になることもあるかもしれません。この時皆さんには
お互い腹を割って、言いたいことが言える関係になったのだ!
と考えて欲しいです。喧嘩をするということは価値観をぶつけ合う段階まで人間関係を深めることができた証拠なのです。
この時期に大事なことはアサーティブな精神を持つことです。アサーティブな精神とは、自他尊重の精神であり、お互いの主張を認め合い、建設的に議論をしていくことを意味します。
喧嘩をすることは悪い事ではありません。大事なことはお互い本音でしっかり話し合うことなのです。そしてお互いの非を認め、関係を改善できたとき、きっとあなたは、本当の意味で友達ができた!と実感できるはずです。
友人作りの仕上げとして、以下のコラムをぜひ参考にしてみてください。
まとめ
私自身、学生時代は友達がほとんどいませんでした。サークルに馴染めず、ほとんど学校と家を往復するだけの日々でした。それはそれで、自分の考えを煮詰める時期として今では貴重だったと感じています。
一方でこのまま人生を誰とも交流せずに終了してしまうのはとてももったいないことだと感じていました。すごく努力をしましたが、今ではたくさんの友達と楽しい日々を過ごしています。当コラムが皆さんの日々の充実に役立てたらとても光栄です。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・友人作りのコツを学ぶ
・友人を実際に作る,生徒同士で関係を作る
・会話の基礎力UPトレーニング
・暖かい人間関係を築く,実践練習
🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
4件のコメント
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人間関係で困ってます。高1です
心理学を色々応用してるんですけど…
フォローアップクエスチョン
バックトラッキング
スマイルノッドカップリング
ペーシング法
単純接触効果などを駆使してるんですが
まあ、僕が少ししつこいというのもあるんですけど最近は改善してきてでも、クラスにいても除け者扱いで浮いてる感じです。
クラスの中で僕と似ている子が居て僕が関わり過ぎたのが原因ですが元々その子は、ナーバスであまり人と関わるのが好きではない癖に関わり方が上手くて沢山関わってて少々イラ付きます。
その子とは心理士さんと挟んで相談した結果クラスは一緒なのは変わりはないが極力関わるのはやめようという事になりました。その時にホントは僕以外にも関わってて欲しくないみたいですけどそ言う割には結構関わってるんですね。だから、
イライラしちゃいます。
また、自分はこのクラスに要らないのかなぁと思う事があります。コメントさせて頂きます。
自分の価値観があり、受け入れがたい要求は真っ向から反対できることは、とても素晴らしいことです。
自分の気持ちや考えを無理に曲げる必要はないと思います。
友達を創ること、周囲と上手くコミュニケーションをとる為の2つのポイントをご紹介いたします。
(1) 先ずは人の話を最後まで聴くことです、その後で自分の意見を言うことです。
成るべく相手が話している途中で口を挟まないことが大切です。
(2) I(アイ)メッセージで意見を伝えることです。
私はこのように思います、私はこのように考えています。
主語を私(自分)にすることで、相手を責めるような言い方ではなくなります。
今回はこの2つをご紹介いたしました。
ご参考になりましたら幸いです。私には、自分の価値観があり、受け入れがたい要求を相手がしてくると、真っ向から反対します。このことで人間関係がうまくいかないのがわかっていても、自分の気持ちや考えを曲げることができません。
そのためでしょう周囲から偏見を持たれたりして、友達はできません。ありがとうございます。
とても参考になりました。
最近自分がネガティブであることを自覚し友達に嫌われているのではないかなど、他者の人物が自分の敵に見えてしまうことがありました。
でも、今回この記事を読んでそんなネガティブな自分とはサヨナラしようと思うことが出来ました。
明日からでも自分を変えていきたいと思います。コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
・出典[1]内閣府(2013).平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 平成26年6月[2]宮本聡介(2012),友人ネットワークサイズと社会的自尊心の関連 : 日米大学生の比較 明治学院大学心理学紀要 22号[3]相川充,藤田正美(2005). 成人用ソーシャルスキル自己評定尺度の構成 東京学芸大学紀要. 第1部門, 教育科学 56, 87-93/div>[4]西野泰代(2007).学級での疎外感と教師の態度が情緒的な問題行動に及ぼす影響と自己価値の役割 発達心理学研究 18 巻 3 号 p. 216-226
興味を持ったので、コラムを読んでみましたが、残念ながら私は手遅れです。患者の会に参加します。