夫婦の会話がない,増やす方法
皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のお悩み相談は「夫婦の会話がない」です。
相談者
40歳 女性
お悩みの内容
私は現在結婚10年目です。子供も成長し、夫との会話のきっかけがなくなってしまいました。昔は会話が絶えない暖かい家庭だったのに、とても寂しく感じます。夫はいつもTVやスマホを見ているばかりで、家族のことに興味がないように思います。会話が多い夫婦になるためには、どうすればよいでしょうか。
夫との会話が少ないと、寂しくなったり、ないがしろにされている気持ちになってしまいますよね。当コラムでは、夫婦の会話がない時の対策をご紹介していきます。是非最後までご一読ください。
夫婦の会話と現状
現在、夫婦の会話について、社会的にどのような現状になっているのでしょうか。自分の立ち位置を知る上で把握しておきましょう。
30分未満の家庭の割合
株式会社ドゥ・ハウス(2015)[1]は649名を対象に夫婦の会話について調査を行いました。その結果の一部が下図となります。
このように平日では30分未満の家庭が約65%、休日では約30%となっています。皆さんはいかがでしょうか。自分がどこにあてはまるか検討してみましょう。後ほど解説しますが、30分未満になってくるとリスクが増えてくるので注意が必要です。
会話の不満は18%
江崎グリコ株式会社(2019)[2]は、配偶者との離婚意向のない男女1,000人を対象にインターネット調査を用いて、夫婦の会話について調べました。その結果が以下のグラフです。
このように結婚生活が進むにつれて会話の満足度が低下する傾向が見られます。具体的には、会話に不満を感じている夫婦が18%存在することがわかります。時間の経過とともに意識的にコミュニケーションを取り、お互いの理解を深める努力が必要とされています。
夫婦の会話のネタ
実際に会話をする際にどのような話題が多いのでしょうか。株式会社ビースタイル(2019)[3]は、605名を対象に調査を行いました。
上記のように子供のことが約80%となっています。学校行事の話、進路の話、行楽の話、成長の話などで夫婦が絆を深めていると推測されます。
夫婦の会話が不足する危険性
夫婦の会話が不足すると様々なリスクがあります。
30分以下は離婚の危険
MDRT日本会(2006)[4]は、既婚男女 516名を対象に、夫婦の意識調査を行いました。その結果の一部が以下の図です。
このように「離婚する可能性なしと回答したグループ」の方が、会話時間が多いことがわかります。つまり、パートナーとの会話時間が少ないほど、離婚の危険性があると言えそうです。
自己開示度が低いと満足度が下がる
伊藤ら(2017)[5]は、子育て期・中年期の男女1882名を対象に、夫婦のコミュニケーションと関係の満足度について調査をしました。この研究の一部が下図となります。
こちらの図は、夫婦の会話時間、お互いの自己開示が少ないほど、関係の満足度は低くなる傾向を表しています。お互いに自己開示をしないと、誤解が生まれやすい、悩みをため込みやすい、不満を解消できない、という事態になります。“会話レス夫婦”から脱却して夫婦の会話を増やすためには、「話をする機会」を意識的に作る努力も必要になってきます。
子供にも悪影響
菅原ら(2002)[6]は、1360名の母親を対象に夫婦関係が子どものメンタルヘルスにどのような影響を与えるか調査をしました。その結果が以下の図です。
少し複雑な図ですが、夫婦仲が悪い家庭は、子供が抑うつを抱えやすいことを示しています。家庭に会話がなく、ポジティブな感情の交流がない家庭は注意が必要です。
信頼関係が減る
山口(2007)[7]は有配偶者1024名を対象に夫婦関係満足度の調査を行いました。その結果の一部が下図となります。
上記は、夫への心の支えの信頼度を向上させる要因として、会話時間の増加が3位にランクインしていることを表しています。また休日を一緒に過ごすことの重要度も高いことがわかります。言い換えると、会話もなく、休日もばらばらに過ごしていると信頼関係が崩れやすくなると言えるのです。
夫婦の会話を増やす方法
ここからは、夫婦の会話を増やす7つの方法を解説します。
①夫婦の会話を定例化する
②傾聴力をつける
③自己開示する
④よく笑う
⑤TV,スマホなし
⑥共通の趣味を持つ
⑦ポジティブな大型の計画を立てる
ご自身の家庭で取り組めそうなものを組み合わせてご活用ください。
①夫婦の会話を定例化する
夫婦の会話を増やすためには、習慣化していくことが大切です。「そのうち時間ができたら」「何か話すことがあれば」と話す機会を待つのではなく、「毎週1回」「毎日〇時」など時間や環境を決めてしまうことがおすすめです。例えば以下のようなやり方がおすすめです。
朝食は一緒に取る TVを消して 15分間会話をする
就寝前の10分間 ソファーでくつろぎながら その日の出来事を報告する
毎週1回は外食する 1週間を振り返る
このように、日常の生活の中に習慣として組み込むと、会話を増やすことができます。生活のあり方を見直すようにしましょう。
②傾聴力をつける
夫婦の会話を増やすためには、自分から傾聴していくことが大切です。例えば、以下のようなやり方が挙げられます。
今日は良いことあった?
最近仕事は楽しい?
身体の調子はどう?
などオープンクエッションで質問する
それめちゃめちゃ楽しそう!
そうかあ~辛かったんだね
などオウム返しをする
このように、あなたから傾聴することを増やすと、パートナーは会話をすることが楽しくなってきます。継続していくと、相手から話しかけてくることも多くなり、会話が増えていくでしょう。夫婦の会話を増やすにはまずは傾聴から入ることを意識してみてください。傾聴力を高める方法をより詳しく知りたい方は、以下のコラムをご参照ください。
③自己開示をする
傾聴がある程度うまく行ったら、自己開示を積極的にしてみましょう。自己開示を行うことで、自分の状況をパートナーに知ってもらうことができます。その結果、相手から質問が生まれたり、逆に相手が自己開示してきたりと、コミュニケーションが弾みやすくなります。具体的な方法としては、
相手が仕事から帰ってきたときに、
今日一日で印象に残ったことを話す
嫌なことがあったときに
ユーモアを交えながら適度に愚痴を言う
などがあげられます。自己開示を積極的に行うことで、会話のきっかけが生まれ、穏やかな雰囲気が流れることも多いです。まずは自分が楽しむ!という気持ちで、興味のあることを存分に話していきましょう。
④よく笑う
夫婦の会話がなくなってしまう原因として、ユーモアが少ないことが挙げられます。ユーモアが少ないと、日常会話が単調になり、殺伐とした雰囲気になってしまいます。夫婦の会話を増やすためには、よく笑うことが大切です。例えば、
・自分の失敗談を面白く話してみる
・眼鏡をかけているのを忘れて眼鏡を探す
・相手の寝ぐせを適度にからかってみる
などがあげられます。このように、日常生活の中に笑いの要素を取り入れることで、会話が生まれやすくなります。よく笑う人になるための方法をさらに詳しく知りたい方は、以下のコラムをご参照ください。
⑤TV,スマホなし
夫婦の会話がなくなる原因として、TVやスマホが使用が挙げられます。TVがついていると、世間のことにばかりに意識が行ってしまい、家庭の話がおろそかになります。また、スマホの使用はお互いに自分の世界に入りこんでしまうので、夫婦の会話を妨げる要因になります。
夫婦の会話を増やすためには、TVやスマホの使用を制限することが大切です。例えば、
・食事中はTVを消して会話をする
・会話の時はスマホを見ないルールにする
・22時以降はTVをつけず一緒に晩酌する
・休日はデジタルレスにして一緒にでかける
などがあげられます。このように、団らんの時間にデジタル機器を使用しないことで、夫婦の会話も活性化しやすくなります。まずは「食事中はスマホを見ない」など、できそうなところから始めてみてくださいね。
⑥共通の趣味
夫婦生活が長いと、お互いの興味が一致しなくなってくることが多いです。新婚の時は、相手に興味を合わせようと努力するのですが、年数を重ねるごとに、それぞれ自分の興味を求めるようになります。
夫婦の会話を増やすためには、初心に帰って、相手に興味を合わせようとすることが大切です。相手の関心事に興味を持つことができれば、共通の趣味となり、会話が発展しやすくなります。
例えば、
・一緒にゲームをしてみる
・相手の好きなYouTuberを見てみる
・同じ球団を応援してみる
・一緒にジムに通ってダイエットする
などがあげられます。
最初は「なんでこんな興味のないことを…」と思うかもしれません。ですが、暖かい家庭に戻るため!と思って、少しでもやってみましょう。人間は面白いもので、何度かやっていくうちにハマってしまうことがあります。
そして、まずはあなたからパートナーの関心事に興味を示すことで、その逆も起こります。人は鏡という言葉があるように、今度はパートナーがあなたに興味を示してくれるようになるはずです。ぜひ、試してみてくださいね。
⑦ポジティブな大型の計画を立てる
ポジティブな大型の計画を立てると、夫婦で協力しあう必要が出てくるため、会話量を増やすことができます。例えば、20年後に貯金を溜めて世界一周旅行に行く、老後は田舎に引っ越して悠々自適な生活を送る、マラソン大会に出て夫婦で入賞する、などが挙げられます。
計画を立てる過程では、お互いの意見やアイデアを共有し、共通のビジョンを持つことが重要です。このプロセスを通じて、二人の絆が強まり、日常生活に対する前向きな視点も生まれます。ポジティブな計画は、夫婦の会話を盛り上げ、共に過ごす時間をより充実したものにするでしょう。
まとめ
夫婦の会話は、お互いのメンタルヘルスを向上させ、子供にも前向きな効果をもたらします。最初は少し恥ずかしいかもしれないですが、面と向かって話す機会を作りましょう。お互いの気持ちを受け止める習慣を増やせば、きっと夫婦関係はより素敵なものになると思います。応援しています♪
しっかり身につけたい方へ
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連