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行動力がない4つの原因と対策

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行動力がない4つの原因と対策

皆さんこんにちは!現役経営者、公認心理師の川島達史です。私が現在こちらのコミュニケーション講座の講師として活動しています。今回頂いた相談は「行動力がない原因と対策」です。

行動力がない,原因

相談者
30歳 男性

お悩みの内容
私は現在、メーカーに勤務をしています。周りは優秀な人が多く、とにかく行動力があります。一方で私は、いつも受け身で、自分から率先して行動することができません。最近会社に行くのが嫌になってきています。行動できない原因と対策を知りたいです。よろしくお願いします。

行動力がないことに焦りを感じていらっしゃるのですね。心理学者の斎藤(2015)[1]は、行動力がない人は、以下の4つタイプに分類できると主張しています。

①分析タイプ
②他者参照タイプ
③不安タイプ
④先延ばしタイプ

以下それぞれのタイプの心理と、対策を解説していきます。ご自身にあてはまると感じるタイプを重点的に参考にしてみてください。

①分析タイプの対策

分析タイプとは

行動する前に詳細に分析したい、絶対に間違わない選択をしたい、数字の根拠を徹底する、これらにあてはまる方は分析タイプとなります。

長所

情報を精査することは得意なので、決断の正確性は高い傾向があります。しっかりとした分析を元に大局観をもって行動することができます。

短所

分析しようがない出来事の場合、いたずらに時間を浪費することがあります。例えば、新規のビジネスでは前提となる情報が不足しているので、数字では判断しようがないこともあります。

分析タイプの対策

分析に適したものか判断
まずは挑戦しようとしていることが、分析しやすい対象なのか考えましょう。例えば、売上の傾向、来客者数など数字に起こせるものは比較的分析しやすいです。

一方で、起業する、新しい商品を生み出す、などは、やってみなくてはわならないことがたくさんあります。まずは分析すべきものなのか?考えるようにしましょう。

曖昧さ耐性をつける
チャレンジする対象が、分析しようがないという結論に達したら、曖昧さ耐性を意識して、行動するようにしましょう。曖昧さ耐性とは、曖昧な状況を面白がったり、楽しめる力を意味します。

ビジネスの世界では、白黒がつかず、曖昧なことがよくありますが、曖昧な状況のまま思い切って「エイヤ!」で行動してしまうのです。考えても仕方がないことは、行動で確かめる!という意識を持つと、分析型の方も行動力をつけていくことができます。

曖昧さ耐性がないかも…と感じる方は以下のコラムを参照ください。

曖昧さ耐性をつける

行動日記をつける

「行動日記をつける」とは、毎日の行動や進捗を記録し、行動できた事実を可視化する方法です。これにより、ただ分析するだけでなく、実際に行動に移した成果が確認できるため、達成感が得られます。

日記をつけることで、自分がどの程度進んでいるかを具体的に把握できるため、モチベーションが高まり、次の行動への意欲が向上します。また、小さな進歩でも記録していくことで、自信が積み重なり、結果として行動する習慣が身についていきます。行動日記は、振り返りながら改善を加えるためにも有効です。

行動力を高めよう

②他者参照タイプの対策

他者参照タイプとは

周囲の行動を見て自分の行動を決める、常に周りのことを意識している、多数派の意見に流されやすい、これらの傾向がある方は他者参照タイプになります。

長所

協調性があり、周りに配慮した行動ができるのが長所です。敵を作らないので、誰とでもうまく付き合うことができます。チームワークが求められる仕事では、重宝されるでしょう。

短所

配慮するあまり、本当にやりたいことを実行できないのが短所です。例えば、新しいプロジェクトを企画して提案したいが、会社が忙しい時期で迷惑になると考えてしまいます。自分の気持ちより、相手の気持ちを優先するため気疲れしやすい傾向にあります。

他者参照タイプの対策

人の目を気にし過ぎない
他者参照タイプの方は、恥をかくのではないか、迷惑をかけるのではないか、馬鹿にされるのではないか、と考えすぎて、行動できないことがあります。もちろん周りに配慮することは大事ですが、あなたはあなたの人生をしっかりと生きて行かなくてはなりません。人の目をかなり気にする…と感じる方は以下のコラムを参考にしてみてください。

人の目を気にする心理を改善

他人は自分を見ていない

「他人も自分を気にしていないと理解する」とは、実際には他人は自分が思うほどこちらの行動に関心を持っていないことを理解することです。これはスポットライト効果と言います。多くの場合、他人は自分自身のことで忙しく、他人の細かな行動に注目していません。この事実を認識することで、過剰に気負うことが減り、自由に行動しやすくなります。

自意識過剰,スポットライト効果

自分軸を作る
世間一般の常識や周りの気持ちを考えすぎると、決断が鈍ることがあります。行動力がある方は、自分軸をしっかりと確立し、やるべきことが明確になっています。他人の目を気にし過ぎてしまう方は、自分の軸を作り上げていく必要があります。自分の価値観がまだ定まっていない…と感じる方は以下のコラムを参照ください。

アイデンティティを確立する

 

他者参照タイプ

③不安タイプの対策

不安タイプとは

失敗することを考え不安になる、リスクを先に考え恐怖心が出る、挑戦する前にかなり緊張する、これらにあてはまる方は不安タイプになります。

長所

リスク回避をできることが主な長所です。危険な行動せず、身を守る力が強い傾向があります。医療職、建築業などミスが致命傷になる仕事で才能を発揮する可能性があります。

短所

不安に支配されると、回避する癖がつき、経験不足になりがちです。また、行動した時のメリットを見ずに、デメリットにばかり目が行ってしまいます。そのため、チャレンジをせず現状維持をしがちです。

不安タイプの対策

不安を和らげる考え方を増やす
不安タイプの方は、起こりもしない非現実的な不安を妄想して、行動を止めてしまうことが多いです。現実的に物事を考える力をつけるには、認知行動慮法を学ぶことをおすすめします。認知行動療法は伝統的に不安を軽くする手法として活用されてきています。不安や恐怖が大きくなりやすい…と感じる方は以下のコラムを参照ください。

認知行動療法の基礎

マインドフルネス力をつける
不安型の方は、一度恐怖心を持つとなかなか抜け出せない傾向があります。この点、不安は本能的なもので、ゼロにすることは不可能に近いです。現実的には、不安を抱えながらも行動していくことが大切です。

最近の心理療法では、自分の感情を客観的に観察することで、冷静になる「マインドフルネス」が推奨されています。恐怖心を持った時に冷静になる力をつけたい方は以下のコラムを参照ください。

マインドフルネス療法の基礎

体の緊張をほぐす

不安感を和らげるためには、体の緊張をほぐすことが有効です。筋弛緩法(Progressive Muscle Relaxation)は、特に効果的な方法です。この技法では、体の各部位を意識的に緊張させ、その後リラックスさせることで、緊張を解消します。手順としては、まず深呼吸をしながら、体の各部位(例:手、腕、肩、足)を順番に強く緊張させ、数秒間保持します。

その後、緊張を解き、完全にリラックスさせます。これを数回繰り返すことで、体全体の緊張が和らぎ、リラックス感が得られます。筋弛緩法は、ストレスや不安を軽減し、心地よいリラックス状態を促進するため、日常生活でも簡単に取り入れることができます。

漸進的筋弛緩法のやり方

 

不安タイプ

④先延ばしタイプの対策

先延ばしタイプとは

いつも時間ギリギリになる、重要なことなのに全く焦あせらない、多少遅れても気にしない、これらにあてはまる方は先延ばしタイプです。

長所

焦らずゆっくりと物事を進められるのが長所です。時間に対してあくせくしないので、温和で安心感のある人が多いです。

短所

何かと遅れがちになるのが短所です。仕事の納期に遅れたり、遅刻が多かったり、社会的な信頼を失うことが多くなります。

先延ばしタイプの対策

決断納期法
決断を先延ばししてしまうという方には、「決断納期法」という方法がお勧めです。決断納期法とは、読んで字のごとく決断に納期をつける方法です。

あと3日で決める!
水曜日までに決める!

など期限を決めることで、行動力を高めることができます。詳しくは以下のコラムの3番目の対策を参照ください。

決断力をつける納期法

スモールステップ法
大きな目標を細分化して、小さなステップに分けて行動することも有効です。例えば、以下のように目標を細かくしていきます。

週末までに書類を8~9枚作る
今日は1~2枚作ろう
まずは最初の3行を書こう
とりあえずワードを開こう

という感じで目標を細分化していきます。大きな決断ほど人は先延ばししがちなため、まずは細かく砕いて考えることが大切です。スモールステップ法は心理学の行動療法という分野で主に活用されています。
より深く知りたい方は下記をご覧ください。

行動療法のやり方・原理

習慣化を意識する

「習慣化を意識する」とは、タスクを毎日決まった時間に行うことで、習慣として根付かせることを指します。毎日同じ時間に特定の作業を行うことで、タスクが自然にルーチンの一部となり、先延ばしの習慣を断ち切る効果があります。

例えば、毎朝10分間だけでもタスクに取り組む時間を設定し、継続することで、タスクを行うことが苦痛でなくなり、自然と取り組むようになります。習慣化することで、タスクが負担に感じられなくなり、効率的に作業を進められるようになるでしょう。

行動力とタイプ

まとめ

同じ行動力の無さでも、タイプによって対策は異なってきます。ご自身の状況に合わせて、当コラムを活用して頂けると幸いです。1つ1つ丁寧に原因を取り除いて、行動できる体質に近づいていきましょう。皆さんが一度しかない人生をアグレッシブに生きていかれることを願っています。

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。

・行動力をつける,心理学の学習
・曖昧さ耐性をつける練習
・人の目を気にする心理の改善
・自分に自信をつける,プレゼンへ挑戦

🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^) 

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1]斎藤聖子,緑川晶(2015).「優柔不断尺度の作成と信頼性および妥当性の検討」中央大学人文科学研究