クレーム対応の基本-直接謝罪する場合
当コラムではクレーム対応の方法について解説をしています。全体の目次は以下の通りです。
①クレーム対応の基礎,10選
②直接対応する場合
③メール対応の場合
④電話対応の場合
前回はクレーム対応の基礎10選について解説しました。まだ読んでない方はご一読頂いてから当コラムを読むと効果的です。
今回は、直接クレーム対応をするケースについて解説をしていきます。アポ取りから直接の謝罪場面まで解説しました。ご自身の状況に合わせて使えそうな部分を参考にしてみてください。
直接謝罪する場合の心構え
誠実な態度で臨む
直接謝罪は、相手の感情を和らげ、信頼関係を修復する重要な機会です。まず、心から反省し、誠実な態度で臨むことが大切です。謝罪の言葉を形式としてではなく、真摯な気持ちを込めて伝えましょう。
誠実な態度を示すためには、事前に自身の行動や組織の問題点を十分に理解し、反省することが重要です。謝罪の場では、
相手の目を見て話す
明確な言葉で自分の非を認める
深くお詫びする姿勢を示す
などのポイントに留意することが大切です。
また、問題の原因や経緯を説明する際も、言い訳めいた表現は避け、客観的な事実を簡潔に述べることが大切です。誠実さは言葉だけでなく、態度や表情にも表れるので、終始真摯な姿勢を保つよう心がけましょう。
相手の立場に立って考える
謝罪の際は、常に相手の立場に立って考えることが大切です。相手がどのような気持ちでいるか、何を求めているかを理解しようと努めましょう。共感を持って接することで、より効果的な謝罪が可能です。
相手の立場に立つためには、問題によって相手が被った不利益や心理的影響を十分に考慮する必要があります。
相手の感情を想像する
痛みや不満を理解しようする
などのポイントに留意することで、より適切な謝罪の言葉や対応策を選ぶことができます。
また、相手の価値観や優先事項を把握し、それらに配慮した解決策を提案することも重要です。謝罪の際は、相手の話をよく聞き、理解を示すことで、相手の気持ちに寄り添う姿勢を示しましょう。これにより、相手との信頼関係を回復し、前向きな対話につながる可能性が高まります。
1.アポ取り
心理学では、気分によって状況の見え方が変わる心理を「気分一致効果」と呼びます。クレーム対応と絡めると、気分が良い時は許されやすく、気分が悪い時は、よりクレームが悪化してしまう可能性があります。
そこで、対面する日は、先方の気分が良い時、場所を考え、会う約束をすることをおすすめします。具体的には以下が一例として挙げられます。
金曜日のお昼すぎ
→金曜日は機嫌がよくなりやすい
ご飯を食べた後は機嫌が良い傾向
月曜の朝、昼前は不利になりやすい
話し合う場所
→狭い部屋よりは広めの応接室
騒がしくない部屋を選ぶ
空調を十分整える 軽くアロマを炊く
天気の良い日
→お宅を訪問する場合は週間予報を見て晴れを選ぶ
雨の日 風が強い日 寒い日、暑い日は避ける
クレーム対応がうまく行くかは、環境設定から始まっています。まずはお客様の気持ちが温和になりやすい状況を作っていきましょう。
2.準備
クレーム対応は事前準備で決まる!
アポ取りができたら
気持ちが伝わる謝罪文
想定される質問への回答
クレーム案件の資料
などをまとめておきましょう。クレーム対応は、事前準備が全てと言っても過言ではありません。謝罪の言葉はその場で考えるのではなく、あらかじめ文章を書いてブラッシュアップしておきます。
また追及されそうな箇所は、事前に予想してしっかりと回答できるようにしておきましょう。
お詫びの印を用意する
ビジネスマナーとして、先方に出向く場合、何かしらの品物を持っていくのが基本です。菓子折りを持っていくなど、お詫びの印を用意しておきましょう。謝罪の際の菓子折りですが
適度に重みがある
賞味期限が長い
謝罪の後に渡す
これらを守ると印象がアップします。
3.謝罪当日
謝罪当日は、事前準備で作成してきた資料をもとに、誠実さをもって対応していきます。ここでは、直接のクレーム対応で注意すべきポイントを4つ紹介します。
表情
先方と対面した時は、まずは真剣な表情から入りましょう。問題に対して、誠実に向き合う姿勢を示すことが大切です。
お辞儀の角度は45度
次に相手方に謝罪の気持ちを込めて、お辞儀をします。基本的には謝罪時は「最敬礼」という最も深いお辞儀するのがビジネスマナーです。以下の図のように、角度は45度程度を目安に行いましょう。
ゆっくり話す
クレーム対応では早口で話すよりも、ゆっくりと間を取りながら話すことが大切です。早口とゆっくり話すのとでは以下のような違いがあります。
早口で話す
相手に焦りを感じさせてしまいます。クレーム対応の場面では、相手にさらに不満を与えてしまうかもしれません。
ゆっくり間を取って話す
相手に冷静さを感じさせます。クレーム対応の場面では、相手にも冷静に話しを聞いてもらいやすくなります。
アイコンタクト
最後に視線にも気を配りましょう。クレーム対応の時は、基本的にはしっかりと目を合わせながら話します。しかし、じーっと目を合わせるのはNGです。心理学では、0.5秒~1秒間のアイコンタクトが一番、友好度が高くなり、2秒になると格段に下がってしまうことが分かっています(深山,2002)。
身体は相手に向ける
全体の50%程度は目を見る
視線を外すときは縦に外す
これらを意識してみてください。アイコンタクトが苦手な方は以下のコラムを参照ください。
相手に合わせて笑顔に
相手の空気感に合わせて、少しずつ微笑みや笑顔を入れていきます。相手が謝罪を受け入れ、多く笑顔を見せてきてくれたら、こちらも笑顔を返すようにします。
しっかりと話し合って、相手が笑顔になったら安全です。固くなりすぎず、場の空気を感じ取りながら、柔軟にふるまいましょう。
直接謝罪する場合の注意点
最後に直接謝罪する際の注意点を抑えておきましょう。
言い訳や弁解を避ける
直接謝罪の際、最も避けるべきは言い訳や弁解です。これらは誠意を損なう可能性があります。代わりに、
問題の責任を認める
具体的な改善策を提示する
再発防止に向けた取り組みを説明する
これらの点に焦点を当てることで、前向きな対話が可能になります。
言い訳や弁解は、相手の怒りや不満を増幅させる可能性があります。自社の立場を説明することは重要ですが、それが言い訳と受け取られないよう注意が必要です。問題の原因を客観的に分析し、それに基づいた改善策を提示することで、より建設的な対話につながります。また、謝罪の言葉は簡潔かつ明確に伝え、真摯な態度で臨むことが重要です。
感情的にならない
相手が怒りや不満を表す場合でも、冷静さを保つことが重要です。感情的になると、状況を悪化させる可能性があります。特に直接謝罪する場合は、反射的なコミュニケーションになるため、感情の影響を受けやすい傾向にあります。
以下の点に注意しましょう。
深呼吸をして落ち着く
相手の話を最後まで聞く
穏やかな口調を維持する
冷静な対応は、相手の感情を和らげる効果があります。
感情的にならないためには、事前に心の準備をすることも大切です。相手からの厳しい言葉や態度を想定し、それに対して冷静に対応できるよう心構えをしておきましょう。また、相手の言葉に感情的に反応せず、内容を正確に理解することに集中します。必要に応じて、一呼吸置いてから返答するなど、自分の感情をコントロールする技術も身につけておくと良いでしょう。
以下のコラムでは感情コントロールする方法を解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
具体的な対応策を提示する
謝罪だけでなく、具体的な対応策や補償内容を提示することが大切です。これにより、問題解決に向けた誠意が伝わります。以下の点を明確にしましょう。
問題の再発防止策
補償や対応の具体的内容
今後の改善計画
対応策を提示する際は、実現可能性と効果を十分に検討しておくことが重要です。ただ相手の要求に応じるだけでなく、根本的な問題解決につながる提案を心がけましょう。また、対応策の実施スケジュールや進捗報告の方法なども明確にすると、より信頼感が増します。さらに、対応策の実施に関わる社内体制や責任者についても説明できるよう準備しておくと良いでしょう。
まとめ
直接のクレーム対応は、顔と顔をみて話す分、あなたの気持ちがダイレクトに伝わります。最も効果的な謝罪になるので、自分の会社に非がある場合はおすすめのやり方になります。プレッシャーもありますが、是非誠実に誤り、前向きな関係に戻れるよう努力していきましょう。
もっと学びたい方へ
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連