ジェスチャー,トレーニング方法
皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「ジェスチャーを効果的に見せるやり方」についてご相談を頂きました。
相談者
32歳 男性
お悩みの内容
私は仕事がら人と会話をしたり、プレゼンをする機会がたくさんあります。ただ全体的に成績が悪く、上司から、ジェスチャーがないので、印象に残らないと言われました。動画を撮ってみると確かに全く動きがなく、つまらない印象でした。どうすればジェスチャーがうまくなりますか?
ジャスチャーが苦手だと確かに、印象が暗くなりがちですね。当コラムではジェスチャーの心理的な効果とトレーニング法を解説していきます。是非最後までご一読ください。
ジェスチャーの効果
まず初めにジェスチャーの効果を確認していきましょう。
ジェスチャーがあると知的に見える
藤原(1986)[1]は、大学生162名を対象に、スピーチ速度とハンドジェスチャーが「知性」の印象にどれけ影響を及ぼすかを調べました。結果は以下の図のようになりました。
図のように「スピーチ速度が遅く、ハンドジェスチャーがある」時にもっとも、知性の度合いが高まっていることが分かります。
「ゆっくり」が知的に見える
続いて、自信の度合いを見てみましょう。こちらも知性と同様にスピーチの速度が「遅い」ハンドジェスチャーが「ある」場合にもっとも高い数値を出しています。
この研究結果から、話す時に自信や知性を演出したい場合には「ゆっくり話し、身振り手振り」を加えるのがベストだと考えることができます。話し方次第でガラりと印象も変わってしまうため、しっかりと押えておきたいところです。
話がうまいと思われる
磯(2001)[2]は大学生48名を対象に、話のうまさとジェスチャーの関係について調査を行いました。研究としてはジェスチャーの多さが違う3つの刺激を用意して、それぞれを評定したものになります。その結果の一部が下図となります。
図を見るとジェスチャーが多いほど話が上手いと感じやすいことを表しています。
話下手でも、ジェスチャーでカバー
一方で同研究では下記の結果も得られています。
これは解釈が少し難しいですがジェスチャーが少ない人は「要点が明瞭であるか」が「話が上手いかどうかの基準」となり、多い人は「要点が明確である」ことは「話が上手いかどうかの基準にはならない」と解釈できます。
もっと簡単にすると、ジェスチャーがない人は、「話の内容がしっかりしていないと話が上手いと思われない」、ジェスチャーが多い人は「話の内容が少々悪くても、話が上手いと思われやすい」と考えることができるのです。
ここまでをまとめると、ジェスチャーがうまい人は、知的に見え、少々話の内容が悪くとも、話がうまいと思われる効果が期待できるのです。ビジネスでも日常生活でも、ジェスチャーがある人ほど、コミュニケーションが有利になると言えます。
ジェスチャーと10のやり方
ここからは魅力的なジェスチャーのトレーニング法を10個紹介します。
①手の位置は胸のあたり
②手の平を見せる
③肩を開く
④数字を表現する
⑤大きさ,高低,形を表現
⑥YES,NOを表現
⑦模倣してみる
⑧心の状態を表す
⑨相槌をしっかりうつ
⓾アイコンタクトのコツ
ここで皆さんと一つ約束をさせてください。①~⑧は、絵を見ながら実際に、体を動かしてみてください。少々オーバーに練習するぐらいでOKです。是非チャレンジしてみてください。
①手の位置は胸のあたり
手はジェスチャーの命です。手の位置が低すぎると、堅く弱々しい印象を与えてしまいます。逆に高すぎると騒がしい印象を与えてしまいます。ジェスチャーは「お腹から上」「頭より下」を意識すると良いでしょう。
手をお腹から頭の上を5往復ほど上下させます
手の可動域のイメージを固めましょう
②手の平を見せる
いつも手の甲を相手に向けている方は注意しましょう。手の甲は握った瞬間グーになってしまうので、攻撃的なジェスチャーになってしまいます。力強さを表現したい時以外は避けたいところです。
心理の専門家は、「体が開いている人」は「心も開いている」と読みとっていきます。要所要所で手を開いて、平を見せながら話していくと、伝え手が心を開いている印象になり、安心感が出てきます。
手の甲を見せる、手を開くを5回ほど練習します
心が開いていくイメージをします
③肩を開く
猫背はジェスチャーの大敵で、縮こまった表現になってしまいます。ジェスチャーが豊かになるには、動きの幅を広げるため、肩幅を広くとることが大事です。プレゼンの前などは、腕を後ろに引っ張り肩を開くようにしましょう。
肩を引っ張る動作を10回程度、繰り返しましょう
④数字を表現する
話題の中に、数字が出てくる場合は確実にジェスチャーを入れることができます。例えば「~です。その理由は3つあります」といった表現をする時は、指を3本立てて見せた方が分かりやすくなります。実際に練習をしてみましょう。
理由は3つあります
3つのポイントがあります!
言いたいことは1つだけです!
⑤大きさ、高低を表現する
言葉だけでは、物の大きさや形はなかなか伝わりません。そこでサイズ感は手を動かしたジェスチャーで、聞き手にイメージさせることが大切です。以下の表現を実際に練習してみてください。
手を左右に大きく広げ、大きいを表現
手を左右に小さく広げ、小さいを表現
手を上下に大きく広げ、高さを表現
手を上下に小さく広げ、低さを表現
〇、□、△、を手の動きで表現
⑥YES,NOを表す
相手の話に同意する時や肯定する時、または断りや否定を示す時にはジェスチャーを入れることができます。以下の表現を実際に練習してみてください。
肯定する時
親指を立てる「グットサイン」
人差し指と親指を合わせた「OKマーク」
否定する時
手のひらを横に振る
腕をクロスして✕を作る
⑦模倣してみる
話の内容を真似た身振り手振りを加えると、相手に伝わりやすくなります。例えば、カニの話しをする時は両手をチョキにして指を閉じたり開いたりするとスッと頭に入っていきます。以下の表現を実際練習してみてください。
カニ 2本指でピース
猫 グーにして頭をかく
走る 拳を握りぶんぶんふる
野球 架空のバットを想像し振る
⑧心の状態を表す
「考える」「心臓ドキドキ」「はずかしい!」など身体的な表現はジェスチャーが使えます。以下の表現を実際に練習してみてください。
考える 顎を軽く掴み首を少し傾げる
ドキドキ 心臓に手をあてます
はずかしい 手を顔を覆います
うれしい バンザイをします
ジャスチャートレーニングはいかがでしたか?きっと体がほぐれ表現力が増していると思います。プレゼン、スピーチ、営業の前など繰り返し練習してみてください♪①~⑧は主に手のジャスチャーを中心に解説してきました。ここからは他の部位について解説します。
⑨相槌をしっかりうつ
まず初めに首の動きから解説します。相手とのコミュニケーションにおいて、うなずき方や首の動きは非常に重要です。例えば、大きくうなずくことで、相手に強い同意や賛成の意を示し、会話の流れを積極的に促進します。
一方で、ゆっくりとうなずく場合は、相手の話をじっくりと聞き、内容を深く考えている姿勢を表します。また、首を前に傾ける動作は、相手の話にさらに関心を寄せていることを伝え、もっと話を聞きたいという積極的な態度を表現します。より深く理解をしたい方は以下のコラムを参照ください。
そのほか、首の動き1つで様々な意味を相手に伝えることができます。相槌には以下のような意味があります。興味がある方は参考にしてみてください。
⓾アイコンタクトの取り方
果的なアイコンタクトの取り方にはいくつかの具体例があります。まず、3秒から5秒ほど目を合わせることが理想的です。短すぎると相手に無関心な印象を与え、長すぎると威圧的に感じられる場合があります。
例えば、会話中に相手が重要なことを話しているときは、適度なアイコンタクトを保ちながら、時折視線を外して相手にプレッシャーを与えないようにします。
また、相手が話し始めたときにアイコンタクトを取ることも効果的です。たとえば、相手が意見を述べる際に目を合わせることで、話に興味があることを示し、相手の発言を尊重している姿勢を伝えることができます。より深く理解をしたい方は以下のコラムを参照ください。
そのほか、視線には以下のような意味があります。興味がある方は参考にしてみてください。
NGなジェスチャー
好印象につながるジェスチャーですが、中には相手にマイナスの印象を与える動作もあります。仕上げとしてNGなジェスチャーを確認していきましょう!
①腕組み
腕組みはガードしている印象を与えてしまいます。腕組は、自分を守るしぐさで、相手の話しに納得しかねる時によく見られます。場合によってはネガティブな印象を与えるため注意しましょう。
②後傾姿勢
後傾姿勢は、相手の話しに乗り気ではないという気持ちの表れです。人は興味のある話しを聞くとき、前傾姿勢になることが多いのです。つまりその逆の後傾姿勢は、興味のなさを表しています。
③ふんぞり返る
ふんぞり返ると、偉そうな態度となり相手は見下されている感じがします。「やる気がない」「だらしがない」という印象から、第一印象に悪影響を与えます。
④足を組む
足を組むと、ふんぞり返ると同じよう様に態度が大きい印象を与えます。また腕組みと同じように、自分を守るしぐさに該当します。そのため、警戒心が強い印象が残ってしまいます。
⑤貧乏ゆすり
貧乏ゆすりは、イライラしている印象を与えます。「せっかち」「怒りっぽい」「短気な性格」といった印象から、周りから距離を置かれがちになります。
⑥過剰なジェスチャー
絶えず動き続けるジェスチャーはせわしない印象を与えてしまいます。特に年齢層が高い方に対しては、ゆったり目でOKです。動画などを撮影しながら丁度良いジェスチャーの頻度を研究していきましょう。
まとめ
冒頭の研究でも解説したように、ジェスチャーは、あなたの話し方を魅力的にする効果があります。皆さんが、8つのトレーニングを参考に、活き活きとしたプレゼンやスピーチをされることを願っています♪
しっかり身につけたい方へ
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連