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話し方教室で騙された話

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話し方教室で騙された話④

当コラムは「話し方教室」について解説をしているコラムです。全体の目次は以下の通りです。

①話し方教室の種類
② 話し方教室の選び方
③ 話し方教室は効果があるか
④ 講師川島,騙された話

今回は
「話し方教室で騙された話」
について私(川島)の体験談をお話していきます。

まずは私、講師川島の経歴を軽くお伝えします。私は現在、こちらのコミュニケーション講座の講師をしていますが、元々引きこもりで対人恐怖症になったことがあります。

講師川島、対人恐怖と引きこもりの過去

紆余曲折あり、どうにか回復し、その経験を活かして、24歳の頃に社会のコミュニケーションの在り方を変えたいと、講座を開くことにしました…。

修業時代、私は数々のセミナーに参加し、この業界の深い闇を全力で体験することになるのです。

話し方教室を開きたい!

世の中の講座を調べる

引きこもりから起業ニートになった私は、話し方教室を創るという目標を立てました。やるべきことは山積みです。その中で行ったのが業界研究でした。

講師川島、コミュニケーション講座の業界研究

インターネットやタウンページを使い、片っ端から、話し方教室やコミュニケーションに関わる講座を見つけ、分類していきました。

すると関東圏内には有象無象、100か所ほどの講座があることが判明しました。

私は片っ端から受講を考えていたのでどれでもよかったのですが、まずは都内で開催される、自己啓発パワー系(やればできる!)講座に参加することにしました。

1日5万円のコースを受講

ちなみにこれから書く内容は、特定を避けるため、たくさん受けた講座のいくつかをミックスして書かせて頂きます。タチの悪い講座があり、まだ継続しているところもあるので。。(^^;

広告を見ると

心のブレーキを取る5つの方法
人生を180度変える方法
あなたの悩みが驚くほど消える

という感じの典型的なパワー系の広告が貼られていました。今でもこういった逆転満塁ホームランの広告は本当に多いですね。金額は1日5万円のコースでした。高いなあ~と思いつつ予約を入れました。

私は電話で予約をして、ドキドキしながら初めての講座に参加することになりました。

話し方教室の典型的な典型的なパワー系の広告

その講座はまさにパワー系でした。

その講座で私は、人格を破壊され、この業界の闇を痛いほど味わうことになるのです。

セミナー会場の様子

参加者5名集合

会場は新宿の雑居ビルの一室でした。会場に入ると30歳前後の女性が受付をしてくれました。受付の女性は変わった雰囲気はなく、派手でもなく、地味でもなく、ごく普通の女性でした。

ただ、どことなく目の焦点があっていないような雰囲気がありました。

受付を終えた私は、ドキドキしながら会場入りしました。会場は小さな会議室ぐらいの大きさでした。20代から30代の方、3名程度の参加者が来場していました。

時間になると、最終的に5名の参加者が参加することがわかりました。

男性1
・30歳前半?
・メガネ
・サラリーマン風
・おとなしく
・まじめそう

男性2
・30歳後半?
・浅黒いスポーツマンタイプの男性 
・テニスでもしていそう

女性1
・30歳前半?
・小柄な女性
・少し元気がない感じ
・うつむている

女性2
・20歳前半の女性
・なんでこんなところにいるの?
・というレベルのアイドル! 

以上の5名の参加者でどうもスタートする雰囲気になりました。

コミュニケーション講座の5人の仲間たち

アイドルにくぎ付け

この時点で、私の心が、20歳のアイドルにくぎ付けだったことは言うまでもありません。「コミュニケーション講座を創る!」という大義を瞬時に忘れ、

「アイドルと仲良くなりたい!」

という気持ちが圧倒的に大きくなっていきました。アイドルと、講座で友達になり、デートを重ねます。最初は、お茶に誘い、次は映画、その次は、遊園地です。

4回目のデートで新宿御苑の中の大きなイチョウの木の下で、

「初めて見た時から好きでした。」

という告白をすると、

「私も実はたつし君のことが好きだったの・・・」

と言われ、お付き合いをはじめるという妄想を走馬灯のようにしていると、ドアがガチャっと音を立てました。すると、講師らしき人が入ってきましいた。

講座開始

研修講師は60代後半でした。服装は背広のスーツ、身長は165センチぐらい、見た目はバスの運転手さんのような雰囲気でした。信仰宗教のような華美な洋服ではなく、うさん臭さはありませんでした。

講師の方は演台につくと、ボロボロになったノートを演台に1冊ドカッと置きました。おもむろにノートをパラパラめくると、待ってましてとばかりに講義がスタートしたのです。

講義内容は体系的に整理されたカリキュラムという感じではなく、このままではダメだ!堕落してしまう!という趣旨の内容を冒頭から言われました。5万円をとって罵倒されるという、さわやかな講義が続きました。

話し方教室の研修講師

魂で話せ!

魂の連呼

講師の方はノートをめくりながら、様々な主張をしていきましいた。端的にまとめますと、コミュニケーションをする際は、

1.頭で考えて話すタイプ
2.魂で話すタイプ

の2種類があるらしいのです。そして、皆さんは頭で話すタイプから魂で話すタイプに変わらなくてはならない。ということをひたすらわれる続けるのです。

「魂」

「魂」

「魂」

と連呼されます。

「魂」を連呼する話し方教室の研修講師

最初は懐疑的に先生の話を聞いていました。私は勉強不足ではありましたが、基本的な心理療法の在り方を学んでいました。心理療法の基礎に、エビデンスベースドという考え方です。

端的に言うと、研究をしっかりして証拠を積み重ねたものを大事にしましょう。という考え方です。

私は主観的な療法は懐疑的になっていました。 なんだこの先生・・・根拠ゼロの主張ばかりじゃねえか・・・そう斜めに聞いていました。すくなくとも1時間は・・・・

2時間の講義で頭がおかしくなる

講義はひたすら続きました。全然終わる気配がありません。最初は斜めに聞いていた私もぼうっとしてきました。気が付けば、休憩なしで2時間ぶっ続けで、魂の話をしていました。

疲れてきたのか、頭がだんだん先生の主張を聞くようになってきました。判断能力が鈍ってきているのがわかります。だんだんとぼうっとしてきて、目がうつろになってきました。周りのメンバーも目がうつろになっていました。

2時間ひたすらこの類の話を聞くと、なんだかちょっと、おかしくなってきます。ほんと根拠のない話をひたすら聞かされているのですが、一瞬、あ・・・いま先生いいこと言ったかも・・・と持っていかれそうになるのです。

八百万の神様を信じる日本民族としては、どこか情緒的に受け入れてしまう面があり、やべ~!魂!魂!という気分になってきます。

「魂」

「魂」

「魂」

「魂」

「魂」

講師の方が強く力強く訴える度に、メンバーの一人はどこか、うるんでいるような眼をしていて、異様な空気になっていきました。

講師の方が強く力強く訴える度に、メンバーの一人はどこか、うるんでいるような眼をしている

スピーチせよ

魂のスピーチが幕を開ける

空気が変わると、講師がノートを閉じました。ワークの内容は、「魂でスピーチする」というものでした。頭ではなく、魂でスピーチをせよ!というのです。この魂スピーチで私は、自己啓発系セミナーの深い闇を全身で味わうことになるのです。 

お題は特に決められておらず、3分間好きな話をするというものでした。講師曰く、魂があればスピーチは自然とよくなる!とのお言葉を頂きました。順番を決めると、私は4番目でした。

続く罵倒

1番目のスピーカーはまじめ系サラリーマンの方でした。スピーチはスムーズです。あがっている感じはありません。平均的なスピーチではありますが、心のこもったスピーチのような感じました。皆同じ気持ちになったのか拍手をしていました。

しかし、先生は腕組みをしたままです。

「まだまだ、まだ魂を感じない」
「もう一度後でやるように!」

とのお言葉を頂きました。サラリーマンはしゅんとしてしまい、席に帰りました。

残りの参加者も同じように、魂の入っていないスピーチをしてしまい、先生に怒られました。チャレンジしたスピーカーはことごとく玉砕していきました。

圧倒的罵倒

私は究極のあがり症。人前で話す経験など、それまでの人生でほとんどありませんでした。もしあがり症、日本ランキングがあったら1億2000万人中、350位ぐらいだったと思います。

しかし、人生の試練は早くもきてしまうものです。いよいよ私の番が来ました。ひとまずですが、当日好きだった、国分寺のスタ丼の話をすることにしました。がちがちに緊張しながら、スピーチを決行しました。

おそらく人生でまともにスピーチをしたのは初めてだったと思います。話している間頭が真っ白になり、何を話しているか自分でも分からなくなってしまいました。先生は腕組みをしたままでした。

そうして、私がスピーチが終わった後に、重々しく口を開いたのです。

「川島くんは、頭脳型の話し方をしますね。魂を感じない!心がないです!すた丼への愛や魂を感じません!」

話し方教室の講師に罵倒される

と根こそぎスピーチを批判されたのです。そして講師は続けます。

「スピーチを見ていた皆さんはいかがでしょうか?川島さんのスピーチは魂がこもっていましたか?遠慮は不要です。川島君のためですから」

すると他の生徒さんも、

「頭で話している感じがする!!」
「心で話していない!!」
「魂がない!!」

とさんざん罵倒してきました。挙句の果てに、私が新宿御苑のイチョウの木の下で告白するはずであったアイドルも罵倒に加わりました。先程までの可憐でかわいらしい表情はどこかに行ってしまい、

「嫌いな話し方!」
「第一印象から暗い!」

と批判してきたのです。

24歳の男子にとって、片思い中の娘から「暗い」などと言われることは、極めてショッキングでありまして、私に限らず世界中の男子が人生における異性から言われた傷ついた一言ランキングに確実に入賞してくることは間違いないのであります。

きっついお言葉を頂いた私は、失恋も相まって、半泣きになってしまいました。

「ああ・・・そうですか・・・確かに感情がこもっていない話し方になっているかもしれません・・・」

とショックをうけて、皆様に反省の弁を述べたのでありました。

魂わずかに出る

うおおおおお!

泣きそうになっている顔を見ると、講師が「ああ!川島君!今少し出ているよ!魂」とおっしゃるのです。

どうも私は、罵倒をされることで初めて心の殻を破り、いくばくかの魂を発露することに成功したようでした。講師は、

「今の感じでそのまま次の順番の時に、魂を込めてスピーチをしてみてください。」

と課題を出してくれたのです。そうして、2巡目のスピーチがはじまりました。この2巡目のスピーチから会場の空気がますますおかしくなっていくのです。

スピーチ2巡目

1巡目のスピーチが終わると、2巡目のスピーチに突入しました。トップバッターは、「まじめ系サラリーマン」です。 まじめ系サラリーマンは、先ほどよりも感情をこめてスピーチをしていました。しかし、講師の方は、

「まだまだ!!もう1回!!」

とサラリーマンを煽ります。参加者も

「まだまだ出せる!頑張れ!」

と煽っていきます。スピーチは何度もやり直しとなりました。そして、スピーチが5回目を超えた頃・・・サラリーマンの様子がおかしくなります。

「わたしは!!!△××□□であります!!」

と半狂乱になり絶叫しはじめたのです。すると講師の方は、

「やったね!魂でたよ!」とやっと褒めたたえたのです。講師はまじめ系サラリーマンを抱きしめました。私もなんだか感動してしまいました。

世界の中心ですた丼への愛を語る

そうしてついに私の番になりました。サラリーマンの方とお同じく、私への罵倒からはじまりました。

「まだまだ暗い!」
「かっこつけてる」
「腹から声をだして」
「きもちわるい←(これほんとに言われました笑)」

さんざん罵倒されると、私も意地になり、

「わたしは!!!すた丼への愛が△××□□であります!!」

初めて心の殻を破り、いくばくかの魂を発露することに成功

 

と絶叫しました!するとどうも不思議な高揚感が体を支配しました。魂がでた!という手ごたえがありました。すると講師の方が

「川島君ついに出たね!!おめでとう!」

とほめてくれましたアイドルも、

「とても素敵でした!」

とほめてくれましいた。講師が私を抱き抱えてくれると、嬉しくて涙が出そうになりあした。どうも人間の精神というのは、

・人格批判→人格肯定
・人格批判→人格肯定
・人格批判→人格肯定

というループを繰り返すと脳が焼かれておかしくなるようです。

そうして全員がスピーチを終えると、ワンデーセミナーは終了となりました。会場は、引退試合を終えた甲子園の如く、不思議な一体感に包まれていました。

セカンドシーズンの説明

そうしてその空気のまま、講座は終わりとなりました。先生が退出すると、受付の女性が次の講座の説明をはじめました。

本日は皆さん、おつかれさまでした。そう!人間って変われるのです。今日の講座はまだ序章に過ぎません。次回の講座はさらに心のブレーキを外すセミナーを行います。通常ですと60万円なのですが、本日この場で決めて下さった方は、30万円となります。いかがでしょうか。

すると、テニス焼けした男性と、メガネの男性、そしてアイドルが、

「参加します!!」

と電光石火で述べました。私も、

半額か・・・
修行だし・・・
高揚感も得られるし・・・
参加しようかな・・・

と感じていました。しかし、30万円はどう考えても大金です。この時脳裏をかすめたのが、何千枚と皿洗いをしたバイト時代でした。時給800円で30万円を貯めるには途方もない皿を洗わなくてはなりません。

簡単に手放せない・・・私は冷静さを保ちました。

女性の勧誘は30分近く続きました。いかにそのセミナーがすごいかを力説してたのです。30分も経つと、先ほどの高揚感もだいぶ薄れ冷静になっていく自分がいました。

私の目が死んできていると判断したのか、セミナーはお開きとなりました。受け付けの女性は、1週間以内であれば、40万円で受講できると、説明をしてくれました。まだ20万円の割り引きが効くとのことでした。

そうして長い一日のセミナーが終わりました。精神的にすごく疲れて、ほっとした気持ちになりました。

魔のお茶会へ

帰り支度を始めると、テニス焼けした男性が、よかったらみんなでお茶をしませんか?と声をかけてくれました。

お茶会へは全員が参加するようでした。もちろんアイドルも!

 

アイドルとの心のブレーキを外したい!!

 

と考えた私は、当然参加の一手でありました。しかし、このお茶会に参加することで私はさらなる泥沼引きずりこまれることになるのです。お茶会の話題は次の講座で持ち切りでした。

心のブレーキが外れた!
性格を変えることができる!
次回が楽しみだ!

という話題ばかりでした。お茶会はどんどんヒートアップしていきます。

チャンスは行動した者のみに訪れる!
変わるのは今しかない!
次のステップにいこう!
みんなで変わるチャンスだ!
投資したお金は絶対に戻ってくる!

集団圧力が半端ではありません。そしてついに!私ともう1人参加を見送っていた女性が、

「わ、私も参加します!」

と宣言をしました。

話し方教室のセミナー後のお茶会での様子

「おお!参加してくれるのですね!」

一緒に頑張りましょう。5人中4人が、意気投合し、目を輝かせていました。

サードステージは150万円

セミナーの話題は尽きません。テニス焼けした男性は、セミナーは3段階になっていることを教えてくれました。2段階目は40万円、3段階目もあるようです。

こちらはトレーナーを目指す方ようで150万円かかるらしいということでした。150万の研修に出れば資格が発行され、開業ができるとのことでした。日焼けした男性は開業を目標にしているようでした。

私は金の話が出てきた時点で冷静になりはじめていました。なぜテニス焼けした男性が今後の流れを知っているだろう・・・疑惑の念が出てきました。

アイドルに誘われ再び心が動く

心が冷めていくのが隠しきれなくなり、だんだん生返事になってくると、アイドルが私を集中的に褒めはじめました。

「セミナーの日は空いているのですか?」
「今日のスピーチとても良かったですよ♥」
「一緒に心のブレーキを外しましょう♥」

夜遅くなって店内が薄暗くなってくると、そのアイドルが妖艶に見えてきます。一度完全にクールダウンしていた感情がだんだんと揺さぶられていきます。

アイドルが顔を近づけて私を応援してくれると、再び妄想がはじまりました。

アイドルに迫られる講師川島の妄想

セカンドシーズンを2人で乗り越え、2人は心を開き合う。
セミナーが終わっても2人の関係は続く。
他のメンバーには秘密でデートを繰り返します。
そしてついに3回目のデート・・・
新宿御苑のイチョウの木の下で、アイドルに告白します。

告白は成功・・・

たっちゃん!わたし嬉しい♥

アイドルとの心のブレーキを外したい!!

かわいい女の子から、「一緒に〇〇♥」と言われると、24歳の男子の98%は脳が脊髄反射起こし、その誘いに乗ってしまうという説が脳科学では立証されていることはいうまでもありません。

私も、そのDNAレベルに埋め込まれたリビドーに抗うことができず、参加する!と宣言しようとしたその瞬間・・・・

「お客様・・・閉店のお時間となりました・・・」

絶妙のタイミングで 店員さんが声をかけてきたのです。気が付くと、時間は夜の9時になっていました。セミナーが終わったのが6時ぐらいだったので、3時間近く喫茶店にいたことになります。

本当に参加の意思を表明しそうになっていただけに、私自身狼狽してしまいましたが、ギリギリのところで回避することになったのです。

アイドルのメアドゲット

さすがに会はお開きになることに・・・するとテニス焼けした男性が、

「折角なのでみんなでメアドを交換しましょう!」

と提案をしてくれました。これはすばらしい提案でした。みんなということはそのアイドルのメアドも内包されているはずです。そうして実際、アイドルのメアドを私は無事ゲットしたのでした。

おそらく、彼女以外の若い女性のメアドをゲットしたという行為は4年ぶりぐらいのことでありました。

帰宅後…

家に帰ると、嬉しさと罪悪感という、塩アイスのような、複雑な感情に支配され、私は、布団に突っ伏してしまいました。しばらく悶々としていると、メールの受信着信音が鳴りました。

差出人は、なんとアイドルだったのです。

アイドルからのメールは以下の通りでした。

川島さん 今日はお疲れさまでした!スピーチとっても素敵でした。一日でこれだけ変れるってすごいことだと思います。私も次の講座に進んでもっと頑張りたいと思います。またメールしていいですか?

こんな感じの、メールが来ました。「またメールしていいですか?」という、ジューシーなメールは、乾ききった心に、猛スピードで染み込んでいきました。

「またメールしていいですか?」

「またメールしていいですか?」

「またメールしていいですか?」

「またメールしていいですか?」

頭の中を「またメールしていいですか」というジューな言葉が山彦のように鳴り響く

頭の中を「またメールしていいですか」というジューシーな言葉が山彦のように鳴り響きます。

駆け巡るエンドルフィンっ・・・こ・・・これま、まさか・・・本当に私のことを気に入っているのかもしれない!そう感じると、さっそくアイドルにメールの返信をしました。

メイさん メールありがとうございます!今日は大変なセミナーでしたが、自分の殻を敗れたような気がしました。次に進むかは検討していますが、メイさんともまたお会いしたいです。お互い頑張りましょう

 *以下アイドルの名まえをメイと仮定します

「またお会したいです」という文言を適度に入れて、プチ恋愛模様をにおわせつつ、メールを返信しました。

何気ないやり取り

そしてその日からアイドルとのメールのやりとりが活性化していきました。最初の3日は何気ないやり取りが続きました。

「おはよう」

「今日は、ハンバーグ食べたよ。」

「今日は品川に行ってきたんだ!」

そんなやりとりが続きました。どうでもいい会話ばかりだったのですが、相手がアイドルと思うと、メールの文面が輝いているのが不思議です。こんなどうでもいい話題をメールしてくるなんて、これはもう本当にイケるかもしれない!!

アイドルとのメールに舞い上がる講師川島

セミナーの話

そうして、しばらくは4日目、すっかりセミナーの話は忘れ、アイドルとの日常的なやりとりに没入していました。しかし、4日目・・・

「今日は講師が進める成功哲学の本を読んだんだ♪次のセミナーが楽しみ・・・」

というようなメールがきました。元来私はセカンドステージに参加する動機はアイドルと仲良くなるためが80%占を占めていました。

もはや2人でのメールをする仲になった時点で、セミナーに出席するモチベーションをかなり失っていたのです。

セミナーへの興味を失っていた私は、「メイさんは、前向きですね~私も頑張ります」という感じでお茶を濁していると、

「川島さんは、セミナー参加するのですか?」

と核心を突いたメールが来ました。答えはNOでした。しかし、相手が気にいっているセミナーを否定して参加しない旨を伝えるのはマナー違反です。

「日程が微妙になってきまして・・いま考え中です」

と返信してのらりクラリとメールをするようになりました。

止まらないマンセー

そうして、メールのやりとりが4日目を過ぎたあたりから、私の雑談的なメールは華麗にスルーされるようになり、ほとんどが、セミナーをマンセーする内容に変わって行ったのです。

「〇〇先生は本当にすごい人だ!」
「潜在意識にアクセスできる!」
「次のステップでさらに変わることができる!」
「私もトレーナになる!」

私のメアドは、先日までの、ジュシーなやりとりが駆逐され、全てがセミナーマンセーメールへと変わって行ったのです。

セミナーマンセーメールへと変わっていく様子

メールは当初たわいもない内容でしたが、その後なぜか、セミナーをひたすらマンセーするようになっていきます。

そのメールは段々と常軌を逸してきて、セミナーセカンドステージが近づくにつれ、一日5件ぐらいお誘いのメールが届くようになりました。

当初のジューシーなやり取りは、一切なくなり、ひたすら講座の素晴らしさと一緒に行こう!という内容が書かれていました。止まらないマンセーメールをみて、私の中で核心が生まれました。

「こりゃさくらだ!!!」

間違いありません。

いま思い返すと、アイドルはそもそもコミュニケーションに悩んでいる感じがありませんでした。

ハキハキと話してとても美人です。極めて社交的でしたさらにいえばテニス焼けした男性もどこかうさん臭かったのです。やけにエネルギッシュで、押しが強く、ひたすらセミナーを持ち上げていました。

話し方教室の悪しき洗脳

おそらくセミナー参加者の構成は以下の通りだったのでしょう。

さくら1 イケメン
さくら2 アイドル

参加者  メガネ男性
参加者  おとなしい女性
参加者  私

私は冷静に今までこの講座のビジネスモデルをはじき出しました。

洗脳ステップ1

初回セミナーでは

「批判→肯定デスループ」

を繰り返す。
批判→肯定により、変わったと錯覚させる。

洗脳ステップ2

錯覚が効果を発揮しているうちに、お茶会に誘う。集団圧力で、次の高額なセミナーに勧誘する

*勧誘ポイント
イケメン→女性参加者
アイドル→男性参加者

を担当する

洗脳ステップ3

セミナーセカンドステージで30万~40万しばき上げる
おそらくイケメンとアイドルに10万円程度のリベートが発生する

洗脳ステップ4

セカンドステージではさらに全人各的な肯定や否定を繰り返し、人生が変わったと錯覚を起こす。そして、高額なサードステージ(150万)に進む。

その後は、講師となり、セミナー開催費などを上納する仕組みを創る。

私はこのセミナー会社の月間の売上を計算しました。

セミナー1 月間30名×5万円=150万
セミナー2 月間9名×30万=270万
セミナー3 月間3名×150万=450万
総額 920万

ここから広告宣伝費や、人件費、会場費を払ったとしても充分ペイできるビジネスモデルになっているなと感じました。私はアイドルが、さくらとの確信を得ると、複雑な気持ちとなりました。

アイドルが、さくらとの確信を得ると、複雑な気持ちになった講師川島

メアド着拒

アイドルとの邂逅は全て瓦解し、全ては私を騙すための行為であったことがとてもつらい気持ちになりました。私はアイドルのメアドをそっと消去し、メアドも着信拒否をすることにしました。

アイドルとのメールを削除・着拒する講師川島

初回からいきなり、強烈な業界の闇を体験し、私は話し方教室というもの怪しさと、グレーな形態に危機感を覚えました。同時に、私の中でより実態を詳しく知りたいと考え、1カ月あまり、有象無象のセミナーを受講することにしました。

やたら高い講座が多く、わずか1ヶ月で50万円ほど使ってしまいました。

まとめ

話し方教室には高額な講座に参加させようとするものも多くあります。マルチ商法や特殊詐欺に絡んでいるケースもあるので、以下のコラムを読んで、健康的な講座を受講するようにしましょう。

資格商法を見抜く方法を現役経営者が解説

発展編・お知らせ

ここからは「発展編と「お知らせ」になります。

発展編

話し方教室に関するコラムは全部で4つあります。話し方教室に通う前に、ぜひ理解を深めていきましょう。

① 話し方教室の種類
② 話し方教室の選び方
③ 話し方教室は効果があるか
④ 講師川島,騙された話

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連