決断力をつける方法
皆さんこんにちは!現役経営者、公認心理師の川島達史です。私は現在はこちらのコミュニケーション講座を開催しています。今回のテーマは「決断力」です。
私は24の時に独立をして、17年間、会社を経営してきました。会社経営は、時代の流れを読んで、エイヤ!と物事を進めていかなくてはなりません。私は、リーマンショック、東日本大震災、コロナ渦、様々な試練がありましたが、そのたびに大きな決断をして乗り切ってきたと思います。
当コラムでは、決断力が向上するような対策を解説します。人生は決断の連続です。その時にきっとお役に立てると思います。ご自身でも使えそうなものを組み合わせてご活用ください。
決断力がない,デメリット
決断力をつけるには、まずはデメリットや意義を確認することが大切です。
チャンスを逃す
ビジネスの世界では「機会損失」という有名な用語があります。機会損失とは、本来なら得られるはずの、機会を失うことによる損失を意味します。例えば、以下のような状況が挙げられます。
すぐれたアイデアの提案を迷って決断できない
↓
気がついたら他の会社に実施されてしまう
本来なら自社が成功できたかもしれない
機会損失が発生してしまった
このように、決断力が鈍ると、チャンスを逃してしまう可能性が高まるのです。
経験値が減る
決断力がなく行動に移せない方は、経験値が乏しくなる傾向にあります。例えば、ビジネスでは以下のような状況が考えられます。
太郎さん 副業チャレンジ
→6回 1勝 5敗
花子さん
副業チャレンジ →0回 0勝 0敗
花子さんは副業経験がないため経験値は全くありません。一方で、太郎さんは決断力があり、どんどんチャレンジしました。5回連続で失敗したものの、6回目にして成功しました。
しかし、花子さんは何も行動を起こさなかったため、経理のやり方、商品企画、広告の基礎を学ぶ機会を逃しました。行動しないことで経験値が乏しくなり、成功する可能性が低下していきます。
後悔が少なくなる
上市ら(2004)[1]は大学生70名に対して「好きな異性に告白したか、しなかった」について行動の有無と後悔の大きさを調べています。その結果の一部が以下の図です。
図を見ると、「告白しなかった」方が「告白した」よりも短期、長期のどちらも後悔が多いことがわかります。人生は一度しかありません。迷って決断せず、行動しないままでいると、後悔の多い人生を歩むことになってしまいます。
後悔しないための心理学
生活の質が向上する
原田等(2007)[2]は女性看護師227名を対象にQOL(クオリティオブライフ)についての調査を行いました。QOLとは簡単にいうと人生の充実感を意味します。QOLとは生活全般の質を意味します。
結果の一部が上図となります。20代、30代、40代の方は、決断力がないほど、QOL(生活の質)が低くなりやすいことがわかります。つまり、優柔不断であるほどQOLが低くなるとも言えます。
20代、30代は就職、転職、日々の業務、そして恋愛や結婚などで大きな決断に迫られる状況が多くあります。この時に、先延ばしにして決断を避けていくことが、人生の満足度を下げる上で重要なポイントになってしまうのです。
(当研究は母集団が少なく、有意差は20代のみ確認されています。あくまで参考値として考えてください)
決断力がない原因
斎藤ら(2014)[3]の研究では、大学生225名を対象に優柔不断尺度の作成を行いました。その結果、以下の4つの項目が優柔不断の構成要素として挙げられました。
決定の熟慮
些細なことにこだわり、選択肢を細かく検討する傾向です。重要な決定に時間をかけすぎたり、小さな決定でも迷いが生じやすくなります。これは慎重さの表れでもありますが、行き過ぎると決断を遅らせる原因となります。
決定の先延ばし
決断を後回しにする傾向です。重要な問題でも締め切り間際まで決定を延ばしたり、どうしても必要になるまで決断しない傾向があります。この行動は、決定への不安や責任回避の現れかもしれません。
決定に対する他者への配慮
他人の意見や選択に影響されやすい傾向です。自分の選択が他人と異なると不安になったり、周囲の意見を過度に気にします。これは社会的な調和を重視する一方で、自己決定力を弱める可能性があります。
決定に対する不安感情
決断後の後悔や不安を強く感じる傾向です。自信を持って選択することが難しく、決定後も正しかったかどうか悩み続けます。この不安感が、新たな決断を躊躇させる原因となり得ます。
決断力をつける8つのやり方
それでは早速、決断力をつけるやり方として、基本的なやり方を4つ、補足的な考え方を4つ解説していきます。私の実戦経験と心理学の視点を組み合わせて8つ提案致します。
基本的なやり方
①マインドフルネスで冷静になる
②選択肢を絞る
③決断納期を設定する
④恐怖突入すべし
補足的なやり方
⑤ベターな決断でOK
⑥スモールステップ決断
⑦損切する勇気を持つ
⑧タイプごとの対策練る
①マインドフルネスで冷静になる
決断できない人は、しばしば感情に振り回されて冷静さを失ってしまいます。例えば、株価が急激に暴落したような状況では、パニックに陥り、合理的な判断ができなくなることがあります。不安や焦りが高まり、「すぐに売らなければ」という衝動的な思考に支配されがちです。
一方、決断力のある人は、冷静さを失わず常に状況を俯瞰できます。例えば、株価が急激に暴落しても、長期的な視点を持ち保有するか、売った方が良いか様々な情報に基づいて性格に決断できるのです。
この冷静さを培う技術がマインドフルネスです。マインドフルネスとは、今この瞬間の体験に意図的に注意を向け、判断せずに受け入れる心の状態です。これにより、感情に振り回されることなく、状況を客観的に観察し、より賢明な決断を下すことができるのです。
マインドフルネスの簡単なエクササイズとして、「呼吸への集中」があります。以下の手順で実践してみましょう。
1.目を閉じるか、薄目で一点を見つめる
2.呼吸の動きに意識を向けつづける
3.雑念が浮かんだら、判断せずに眺める
4.ゆっくりと呼吸に注意を戻す
4.これを5分間続ける
このような簡単な実践を日常的に行うことで、ストレスフルな状況でも冷静さを保つ力が養われていきます。決断を迫られる場面で、この呼吸法を思い出し、実践することで、より落ち着いた状態で選択肢を考えることができるでしょう。
マインドフルネスについてより詳しく知りたい方は、当サイトのマインドフルネスコラムをご覧ください。
②選択を絞る
心理学者のバリー・シュワルツ(2002)[4]は、選択のパラドクスと言う概念を提唱しました。選択のパラドクスとは以下の意味があります。
情報や選択肢は、多ければ多いほど迷う
そして後悔もしやすくなってしまう
選択肢が多すぎると、決断力が鈍ります。そしてどうにか選択をしたとしても、選ばれなかったものに目が行き、決断に対して不信感を持ってしまうのです。多すぎる選択肢は、自分を苦しめるということをおさえましょう。
以下選択肢を絞る方法を3つのステップでまとめました。理解を深めたい方は参考にしてみてください。
③決断納期を設定する
選択肢が絞られた段階で、決断に具体的な期限を設定することを強くお勧めします。これは意思決定プロセスを効率化し、不必要な遅延を防ぐ効果的な方法です。例えば、以下のような明確な時間枠を設定することが有効です。
2分以内に答えを出す
今日の夜10時までに決断する
3月20日が最終決断納期
相手の答えを待つのはあと2日
このように具体的な納期を設けることで、まず、決断のプロセスに明確な構造が与えられ、だらだらと先延ばしにすることが大幅に減少します。さらに時間の制約があることで、より集中して問題に取り組むことができ、効率的な思考や分析が促進されるのも大きなメリットです。
④恐怖突入で実行
そして実際納期がきたら、まだ迷いがあったとしても、エイや!で実行するようにします。心理療法の用語に1つに「恐怖突入」という言葉があります。恐怖突入には以下の意味があります。
不安や恐怖があったとしても、実際チャレンジすると意外と大したことはないものだ。だから積極的に行動しよう。
これは日本の心理療法家として有名な、森田正馬の考え方です。決断ができない方は、先にリスクが頭に浮かび、決断できないことが多々あります。しかし、実際行動してみると、意外とリスクは小さいこともよくあるのです。
私自身、決断する前は恐怖心が出ることもありますがそんな時は「恐怖突入だ~」と心の中でつぶやいて行動するようにしています。恐怖突入に興味がある方は下記のコラムを参照ください。
以下②~④の対策について練習問題を作成しました。折り畳みを参考にしてみてください。
⑤ベターな決断でOK
①~④は決断力をつける基本的なやり方を解説してきました。ここからは補足的なやり方を解説していきます。
決断できない方は以下の傾向があります。
ベストな選択をしたい
リスクをゼロにしたい
100%正しい決断をしたい
このような思考に陥ると、確実な選択を探し求め、決断できない状態が続いてしまいます。あてはまる方は、ベストな決断よりも、ベターな決断を習慣にすることをおすすめします。
ビジネスの世界では、100%正しくて、リスクがない決断など存在しません。ある程度調査をして、そこそこよさそうな選択肢であれば、思い切ってチャレンジしてみるようにしましょう。
⑥スモールステップ決断法
決断力が低い人は、始めから大きな目標を達成しようとしてしまいがちです。すると、決断のリスクも高まり、優柔不断になりやすくなります。例えば、
ビルゲイツのような起業家になりたい
大きな市場を狙う必要がある
そのためには莫大な資金がいる
このように、目標が高すぎるとリスクに目が行きやすくなります。その結果、決断しづらい状況になってしまうのです。一方で、以下のように考えるとどうでしょうか。
まずはスマフォ代を稼ぐことを目標にする
自分の小遣いの範囲で試そう
失敗しても傷は浅い
このように、目標を小さくすると比較的リスクも小さくなり、決断しやすくなります。小さく決断をして、成果がでたら、次はもう少し高い目標を作っていけばOKと考えると決断もしやすいと思います。
⑦損切する勇気を
人生を生きていくうえで、決断力をつけるために「損切り」の勇気を持つことは非常に重要です。損切りとは、これ以上の損失を避けるために、不利な状況や損失が出ている状態をあえて断ち切ることです。これは特にビジネスや投資の場面で使われる言葉ですが、人生のあらゆる側面にも当てはまります。
たとえば、時間やエネルギーを注いできたプロジェクトが期待通りに進まない場合や、人間関係が健全でなくなった場合、損切りを決断することで、さらに大きな損失を避けることができます。損切りをするには、勇気と冷静な判断力が必要ですが、これにより、あなたの人生をより良い方向に導くことができるでしょう。
損切りの決断は、感情に左右されず、長期的な視点で考えることが重要です。未来に向けて自分にとって何が最善かを見極め、必要な場合には損切りの勇気を持ちましょう。それが、あなたの決断力を強化し、人生を豊かにする一助となるはずです。
⑧タイプごとの対策を練る
心理学では、決断力の不足に関するタイプ研究があります。当コラムでは、斎藤・緑川(2015)[6]の研究を土台として、4つのタイプと対策を解説しました。ご自身がどのタイプにあてはまるか検討し、対策も合わせて参考にしてみてください。
ご自身にあてはまるタイプはありましたか?対策も合わせて参考にしてみてくだしさい。
まとめ
決断力の不足は、1つ1つ原因を取り除いていけば改善することができます。「期限を設定する」「ベターな選択でOk」「スモールステップで決断する」「恐怖突入!」などご自身に合う手法を試してみてください。皆さんがビジネスのチャンスを逃さず、経験豊富になることを応援しています。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、現役経営者、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・決断力をつける,行動療法の学習
・恐怖心と折り合いをつける,森田療法
・自分に自信をつける,プレゼン練習
・ビジネスコミュニケーション力をつける
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
・出典[1] Ueichi, H, & Kusumi, T. (2004). Change in feelings of regret over time: Relation to decision-making style, behavior, and coping methods. The Japanse Journal of Psychology, 74, 487-495. https://www.jstage.jst.go.jp/article/pacjpa/81/0/81_2D-004/_article/-char/ja/[2] 原田 貴史・中村 明美・友竹 正人・大森 哲郎 (2007). 女性看護職の強迫傾向が主観的QOLに及ぼす影響 心身医学, 47, 33-40[3] 斎藤聖子・緑川晶 (2014). 優柔不断尺度の作成と妥当性の検討. 日本心理学会第78回大会発表論文集, 2PM-1-005. https://doi.org/10.4992/pacjpa.78.0_2PM-1-005[4] Schwartz, B., Ward, A., Monterosso, J., Lyubomirsky, S., White, K., & Lehman, D.(2002)「Maximizingversus satisficing : Happiness is a matter of choice.」Journal of Personality and Social Psychology[5] Bandura, A. (1977). Social learning theory. Prentice-Hall.[6] 斎藤 聖子・緑川 晶 (2016). 優柔不断尺度の作成と信頼性および妥当性の検討 心理学研究, 87, 535-545.
当方40代です。
歳を重ねるにつれ、優柔不断傾向がQOLに与える影響が弱まっていくという箇所が面白かったです。どんな理由があるか知りたいところです。
私に決断力はあるかは不明ですが、決めたことに後悔はあまりありません。
ただ完璧主義があるので、ベターなので選択を心がけるようにすると吉なんですね。