リーダーシップ入門③コミュニケーションスキル
当コラムでは、リーダーシップについて解説をしています。コラム全体の目次は以下の通りです。
①経営学から派生した方法論
②心理学から派生した方法論
③コミュ力とリーダーシップ
今回は、コミュ力とリーダーシップについて解説をしていきます。コラム①でも解説したように、リーダーシップの土台は人間関係を築く力になります。そこで本コラムでは、リーダーシップ初心者向けに6つのスキルを厳選しました。
①部下の話を受け止める
②褒め上手になる
③共感力しながら聞く
④屈託のない雑談をする
⑤笑顔で接する
⑥視線を合わせる
⑦叱り上手になる
不足しているな…と感じる部分について、組み合わせてご活用ください。
①部下の話を受け止める
リーダーは聞き上手にならなくてはなりません。その中で最も基本となるスキルは「相手の言葉を繰り返す」技術です。これをオウム返しと言います。
例えば、部下が
やっとプレゼンが終わりましたね。今日は、パッと飲みにでも行きたいですね!
といったとします。この時にリーダーは、部下の言葉をそのまま繰り返します。
飲みに行きたいよな~。
自分の感情は入れず部下の言葉だけを繰り返します。部下やメンバーとの気持ちのズレが100%無いため、信頼感や共感を与える事ができリーダーシップを取りやすくなります。
ただし、使いすぎると、違和感が出てしまい、本当のオウム?!と不信感につながることも…。ほどほどに使っていきましょう。
オウム返しは「傾聴」というスキルの1つです。傾聴についてより深く知りたい方は下記をご覧ください。
②褒め上手になる
部下を褒める時に重要なのがほめ上手になることです。例えば、部下が
仕事のミスで周りに迷惑をかけることが多くて反省しています。同じミスはしないよう努力はしているんですけど…なかなかうまくいきません。
といった場合、上司は
自分のミスを真摯に受け止めて改善しようとする姿勢は、きっとみんなも認めている。私は素晴らしいと思う。
このように、部下の人間性を肯定していきます。リーダーシップをとる部下やメンバーの人間性を肯定する習慣は、相手にポジティブな感情を芽生えさせるトレーニングにもなります。
ポジティブな感情は自然と部下やメンバーへの好感につながり、明るく楽しいコミュニケーションができるようになります。人間性肯定をより深く知りたい方は、下記をご覧ください。
③共感しながら聞く
リーダーシップを発揮する上では、部下の話を共感しながら聞くことが大切です。部下の話を聞いていても、空返事だったり、「そっか。」だけの冷たい返事であれば、部下からの信用も得ることはできません。
共感力を高める方法はいくつかありますが、その中でも「いったん相手になる」というやり方が活用できます。例えば、新入社員の部下が、
○○の操作方法を忘れてしまいました。。すいません。よろしければ教えてもらえませんか?
といった場合、上司は、
○○の操作方法忘れてしまったんだね。まだ入ったばかりだから、色々覚えることがあって大変だよね。これをこうして…
と対応してあげます。一度教えたことは覚えておいてほしい!と思うところですが、「いったん相手になる」ことを意識することが大切です。
共感力を高める方法をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
④屈託のない雑談をする
プライベートの話など屈託のない雑談はとても大切です。常に仕事だけの話しかしない職場が殺伐としたムードになりやすく、肩の力を抜くことができません。
2014年に松本らが行った「美容師の指名客数増加のための社会的スキルトレーニングの効果」という研究[1]があります。研究では、新人美容師に対し、以下の7つの社会的スキルについてトレーニングを行いました。指名客数増加との関連を調査しました。
笑顔・声・傾聴・雑談・説明・提案・承認
その結果が以下の図です。
社会的スキルの中でも、傾聴スキルと雑談スキルが指名客数増加に影響している傾向が見られました。
この研究はあくまでも、お客さんのとやり取りですが、上司と部下の関係でも雑談があった方が、「この上司と一緒に働きたい!」という気持ちになりやすいと推測できます。
雑談力の鍛え方をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
⑤笑顔で接する
強いリーダーシップを発揮するには、笑顔で接することが大切です。梅野(2015)[2]は非言語コミュニケーションと好感の関係について、大学生230名に対して調査を行いました。その結果、笑顔は印象形成において一番大事であることが分かったのです。
このように、笑顔で接すると好感の持てるリーダーになれることが考えられます。常に難しい表情をしたリーダーは部下から信頼されにくく、チームの雰囲気も殺伐なものになりやすいです。
笑顔の作り方をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
⑥視線を合わせる
人を動かすためには、相手の目を見てしっかり伝えることが大切です。
深山ら(2002)[3]は、人の顔のアニメーションを利用して“視線と印象の関係”について研究しました。その結果の一部が下図となります。
図を要約すると、
・アイコンタクトが適度にある
→「自信がある」「強い」
・下を向いている
→「自信がない」「弱い」
という印象になることがわかりました。
リーダシップを取り、人を動かすためには、自信のある振る舞いをする必要があります。そのため、アイコンタクトは欠かせないと言えそうです。
アイコンタクトのやり方をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
⑦叱り上手になる
リーダーは叱るところしっかり叱り、メンバーの誤りを正すことも重要な役割の1つです。一方で叱り方を間違えると、メンバーのモチベーションが下がり、チームの結束が揺らいでしまいます。そこでリーダーは叱り方のコツを学ぶことをおすすめします。
叱り方のコツは複数ありますが、当コラムでは、肯定サンドイッチ法を覚えましょう。肯定サンドイッチ法は
肯定する
否定する
肯定する
と否定を肯定でサンドイッチするしながら叱る手法です。
サンドイッチの図のように、柔らかいパンで具材を挟むことでゴツゴツとした食感が和らぎます。叱り方も同じで、肯定で「挟む」ことで印象が大きく変わってくるのです。例えば以下のような叱り方があげられます。
今日も1日おつかれさまです。〇〇さんが書いた会議資料、イラストが豊富でめちゃめちゃ見やすいね。特にこの△△のキャッチコピーは最高だなあ~
(肯定)
反省点として、損益の出し方で経費の予測が不足しているところが2か所ほどあったかな。見積もり等しっかり出してブラッシュアップしていこうね。
(否定)
でも全体としては十分な資料だったよ。次回はもっとうまくなると思います。楽しみだなあ。
(肯定)
人は肯定をされると、相手の話を聞こうという心構えができます。いきなり叱るのではなく、まずは良かった点を認めて、関係性を築いてから指摘を入れるようにしましょう。最後は再び肯定して締めると、さらに盤石となります。
お知らせ・発展編
もっと学びたい方へ
当コラムの内容をしっかり身につけたい方は、現役経営者、公認心理師による講座をおすすめします。内容は以下のとおりです。
・初級リーダーシップ入門
・コーチングの基礎,トレーニング
・やる気を引き出す,フロー心理学
・ビジネスコミュ力,トレーニング
体験受講に興味がある方は下記のリンクからお待ちしています。筆者も講師をしています(^^)
リーダーシップ論の発展
リーダーシップ論シリーズは全部で3つあります。
①経営学から派生した方法論
②心理学から派生した方法論
③コミュ力とリーダーシップ
まだ読んでいないコラムがある場合はぜひ参考にしてみてください。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連