職場の人間関係に疲れた,良くする,改善する12の方法
皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のテーマは「職場の人間関係」です。
相談者
38歳 男性 会社員
お悩みの内容
会社の上司がパワハラするため、社内のムードがピリピリしています。冗談が通じない雰囲気なので精神的に参っています。
このような職場環境だと、仕事をするが嫌になっちゃいますよね。今日は、職場の人間関係を良くする手法をしっかりお伝えしたいと思います。
職場の人間関係と現状
まず初めに、統計的な資料を土台として、職場の人間関係について、理解を進めていきましょう。以下様々な統計を折り畳みました。気になる題名を中心に参考にしてみてください。
職場の人間関係の疲れと悪影響
職場の人間関係に疲れると様々な悪影響が生じ餡巣。
パフォーマンスの低下
対人関係の問題は、仕事へのやる気を大きく下げ、パフォーマンスを落とします。トラブルが続くと気分が沈み、集中力が欠けます。ストレスで注意力が散漫になり、ミスが増え、複雑な作業が面倒になります。これにより、生産性が低下し、成果が出せずに自己嫌悪や自信喪失が続く可能性があります。
メンタルヘルスへの悪影響
人間関係の疲れが続くと、心の負担が増し、不安や抑うつのリスクが高まります。対人ストレスが続くと、精神的なエネルギーが減り、仕事や生活が楽しく感じられなくなります。意欲が低下し、無気力感が進むことで、うつ病やバーンアウトの原因になることがあります。これが長引くと、心の健康に深刻な影響を及ぼします。
対人関係の悪循環
人間関係が悪化すると、改善が難しくなります。対立や誤解が続くと、不信感や警戒心が増し、コミュニケーションがぎくしゃくします。これにより、関係がさらに悪化し、問題の解決が難しくなります。放置されると、問題がさらに深刻化し、チームワークや協力にも悪影響を与えます。
身体的健康への悪影響
長期間の対人ストレスは、体にも悪影響を及ぼします。ストレスでホルモンバランスが崩れ、コルチゾールが増えることで、睡眠が質が悪くなり、睡眠不足や浅い眠りが続きます。食欲も変わり、過食や食欲不振が起こることがあります。さらに、筋肉の緊張や頭痛、胃痛などの体調不良が現れ、これが続くと健康全般に悪影響を及ぼします。
心理的な改善策
ここからは職場の人間関係を改善する具体的な方法として、人間関係に疲れた時の対策を、心理的な改善、コミュニケーションの改善、環境の改善、生理的な改善の視点から12個紹介します。
(心理的な改善)
①まずは心を落ち着ける
②選択的知覚に注意
③課題の分離
④交互作用を意識
(コミュの改善)
⑤感謝を増やす
⑥無条件の肯定を大切に
⑦小出しに主張する
⑧時間と財産意識
(コミュの改善)
⑨闘鶏場の鶏にならない
⑩仕事量の調整
⑪サポート体制の充実
⑫過度のネットの予防
まずは心理的な改善から見ていきましょう。
①まずは心を落ち着ける
職場での人間関係は、時に大きなストレスの源となることがあります。同僚との意見の相違、上司からのプレッシャー、部下の育成など、様々な場面で心が疲れてしまうものです。そんな時こそ、マインドフルネスの実践が役立ちます。
マインドフルネスとは、簡単に言えば「今この瞬間をただ観察すること」です。例えば、
周りの音
体の感覚
心の動き
に気づきを向けるのです。判断せず、ただ観察することで、心の中の嵐が少しずつ落ち着いていくのを感じられるでしょう。
職場での人間関係に疲れても、それは自然なことです。完璧を求めすぎず、自分や他人に対して優しくあることが大切です。一歩引いて物事を見つめ直すことで、新たな視点が生まれるかもしれません。マインドフルネスの実践は、このような職場でのストレス軽減に効果的です。
マインドフルネスについてより深く知りたい方は、下記をご参照ください。
②選択的知覚に注意
職場の人間関係に疲れた時、ある人に対して一度ネガティブ な感情を持ってしまうと、その人の言動すべてが気に障るようになってしまうことがあります。これは「選択的知覚」と呼ばれる心理現象かもしれません。
私たちの脳は、一度形成された印象に合致する情報を優先的に取り入れる傾向があります。つまりと思ってしまうと、その人の嫌な部分ばかりが目につくようになってしまうのです。
しかし、少し立ち止まって考えてみましょう。誰にだって良い面はあるはずです。改めてその人の良い部分や、一緒に仕事をする中での良かった経験を思い出してみましょう。
怒りっぽいが、背中を押してくれる上司
飲み込み遅いが、作業が丁寧な部下
雑談が多いが、ムードメーカーな同僚
などその人の今まで見えなかった側面が、見えてくることもあるかもしれません。選択的知覚をより深く知りたい方は、以下のコラムをご覧ください。
③課題の分離
課題の分離はアドラー心理学で重視されていて「自分の課題と相手の課題をごちゃまぜにせずわけて考えるという」意味があります。
たとえば、
遅刻をした
連絡をしなかった
仕事をさぼった
というチョンボを自分がして怒られたとしましょう。
まあこの状況はしかたがないです。「自分が悪かった」と反省することも大事です。
一方で、
遅刻をせず時間厳守している
ほうれんそうをしっかり
与えられた仕事は完璧にこなしている
これでも上司が怒っている場合は、どうでしょう。
この状況では、自分の問題ではなく上司の問題です。自分のやるべきことをやったら、後は上司の問題だと割り切って考えることが大事になります。もしかしたら「上司の家庭がうまくいっていない」「健康に問題をかかえているかもしれない」など、原因は分からないかもしれませんが、上司の怒りに巻き込まれては自分の人生を生きれなくなります。
「自分の問題」と「相手の問題」をわけて考えることも人間関係でストレスをためないようにするために大事にしましょう。
④交互作用を意識する
職場の人間関係で交互作用を意識してみると、良い効果が生まれる可能性もあります。交互作用とは混ざり合うことでうまれる利益です。卵かけごはんを例に見てみましょう。
卵かけごはんは、ご飯と卵、醤油をかけ、ごちゃまぜにして食べると非常に美味しいです。もしこれがバラバラだったらどんな味になるでしょうか。
ごはんだけを食べる、生卵だけを食べる、醤油だけを食べる、バラバラに食べると美味しくないのが想像できると思います。それぞれの食材は混ぜ合うことで、ちょうど良いさじ加減になり抜群の美味しさになる状態が交互作用です。
交互作用は人間関係でも同じことがいえます。
たとえば、しょっぱくて、塩分濃度が高い、しょうゆみたいな人が職場にいませんか。
「なんでこの人、いつも冷たいんだろう?」
「しょっぱいことしか言えないんだろう」
と感じるような人です。そんな人でも、他の人と混ざり合うと意外といい味を出すことがあります。
悪口やしょっぱい発言をする人だからといって「あいつは○○だから、よくわからない。やめておこう」みたいな関わり方をすると、相手の良さを殺してしまう事もあったりします。もしかしたら、論理的で誰も言えないような指摘をバシっと言ってくれるようなひとかもしれません。
抽象度が高い解決策ですが、交互作用を意識して人間関係は混ざり合うことで、価値がうまれるという視点もぜひ大事にしてみてください。
コミュニケーションの改善策
続いてコミュニケーションの改善策を見ていきましょう。
⑤感謝を増やす
笑顔で感謝を伝えると職場の人間関係がよくなります。
奥山ら(2008)[6]は、看護師26名を対象に研究を行いました。研究では、対象者に職場で感謝と笑顔を増やしてもらうことを実践してもらいました。その結果を以下の図にまとめました。
研究の実施前(感謝・笑顔前)と比べ、感謝と笑顔を増やした実施後(感謝・笑顔後)は、同僚への信頼感・職場指向性・コミュニティ感覚、いずれも増えたことがわかりました。職場指向性は、職場のことを前向きに捉える気持ちのことで、コミュニティ感覚は、職場にいる安心感や居心地がいい感覚です。
研究の結果から、感謝や笑顔を増やすだけで職場や人間関係に対して、前向きな効果が生み出されることがわかりました。笑顔や感謝を伝えることは、お金をかけずにだれでもすぐにできます。笑顔でありがとう!ぜひ習慣化してみてください。
⑥無条件の肯定を大切に
私たちが行っているコミュニケーションには「条件付き」「条件」の2種類があります。
「条件付き」は、
うまくいった から ほめる
うまくいかなかった から しかる
というという条件が入ったコミュニケーションです。
職場における具体例は、
営業成績が良い だから 誉める
作業量がはやい だから 褒める
などが挙げられます。
営業成績が良い人を褒めることは非常に大事です。しかし、条件付きコミュニケーションばかりを使うと人間関係は不安定になります。条件がなくなってしまうと「いつかこの集団から排除されるのでは?」と不安や焦りを絶えず抱えることになり、目の前にいる人を信用できなくなってしまうからです。ここで大事になるのが、無条件の肯定になります。
「無条件の肯定」は、上手くいったとかいかないとかに関係なく前向きに付き合っていくコミュニケーションです。無条件の肯定が安心や信頼につながり人間関係の土台が築けます。
具体的には、
おはようと元気に挨拶をする
ありがとうと日々感謝を伝える
屈託のない雑談をしてみる
困っている事がないかこまめに声をかける
などのコミュニケーションです。
無条件の肯定があることで、安心して働ける職場の空気につながっていくのです。ここで、働きやすい職場と働きにくい職場の比較図(厚生労働省)[3]を見てみましょう。
働きやすい職場(青色)は上司からのフィードバックの頻度が多いことがわかります。一方で、働きにくい職場(ピンク色)はフィードバックがない傾向が読み取れます。
職場の人間関係を良くするうえで、互いに困っていることがないか、今日の仕事はどうだったかなど、話し合う機会をこまめに設けていくことが大切です。
⑦小出しに主張する
人間関係でストレスをためやすい人は、小出しにすることを意識しましょう。
ストレスを溜めやすい人は1つ1つの小さなストレスをため込んでしまい、どんどん膨らませてしまう傾向があります。気が付くと解決できないぐらい大きな問題となってしまう事もあります。
一方でストレスをためこみにくい人は、小さなストレスを感じたら小出しに主張してその都度解決していく習慣があります。ストレスを翌日に持ち越さ無いため、不満や悩みがたまりにくいです。
ストレスは今日、この瞬間に主張して解決していきましょう。職場で問題があればその都度話し合って解決していく習慣を持つようにしましょう。人間関係での不満や問題を小出しに主張して、明日に繰り越さないようにすることが大事です。ぜひ実践してみてください。
⑧時間と財産意識
職場の人間関係は、時間への意識を変えるだけで良好になる可能性が高いです。
人間関係のトラブルは、時間に関するものが非常に多いです。人間関係のトラブルには時間がほとんど絡んでいるのです。
たとえば、
・遅刻
・納期遅れ
・連絡が遅い
いずれも、人間関係を悪くする典型例です。時間に関する意識を高めるだけで人間関係は劇的によくなります。
時間に関する意識を高めるには、
『相手の時間を奪う=相手のお金を盗む』
ぐらいの感覚で考えた方が良いです。時間は相手の貴重な財産だという意識を持ちましょう。
たとえば、
時給2,000円の人に対して連絡をしなかったとします。相手の仕事が1日はかどらなかった場合には、8時間×2,000円なので16,000円を盗んでいるのと同じです。
これぐらいの感覚を持つと、遅刻や納期遅れが減って人間関係がよくなっていきます。時間に関する意識をしっかり持つように心がけていきましょう。
環境の改善策
次に環境の改善策を見ていきましょう。
⑨闘鶏場の鶏にならない
職場が、闘鶏場のような環境となり人間関係が悪くなることもあります。
闘鶏とは、おんどり同士を戦わせる環境をつくって勝負をさせる競技です。職場において典型的には、過度の競争主義が挙げられます。
社員を過度に競わせる会社にいると、本来なら協力しあうべき同僚が敵に見えてくることがあります。しかしよく考えてみると、その同僚は仲間であって戦うべき相手ではないということがよくあるのです。
たとえば、皆さんの職場でムカつく人がいたら
「もしかしたら戦うべき相手は目の前の相手ではないのかも?」
と疑ってみることも大事になります。具体的には、会社の仕組みや職場環境に問題があるのでは?と疑ってみることです。経営者や管理職、人事などが作る職場環境によって競わされ、目の前にいる相手のことを嫌いになっているのかもしれません。
闘鶏場の鶏にならないコツは、目の前にい嫌いな同僚やムカつく上司がいた時には「別の環境でも同じように敵対するか?」を問いかけることです。
たとえば、
「歌のサークルであったらどうなんだろう?」
「麻雀仲間として出会ったらどうだろう?」
「地元の飲み仲間として出会ったらどうだろう?」
と考えてみてください。
その結果、もし別の環境なら「こんなに仲が悪くならなかったかも・・・」と感じたら、それは会社の仕組みの問題、職場環境が大きいといえます。「闘鶏場の鶏になっていないか?」はぜひ注意するようにしましょう。
⑩仕事量の調整
職場の人間関係で疲れてしまったとき、意外と見落としがちなのが仕事量の調整です。人間関係のストレスと仕事の負担は、実は密接に関係しているんですよ。
仕事が忙しすぎると、ゆとりがなくなってしまいます。ちょっとした言葉のやり取りでも、イライラしてしまったり、相手の気持ちを考える余裕がなくなったりしがちです。これが人間関係の悪化につながることも少なくありません。
だからこそ、自分の仕事量を見直してみるのも大切です。
上司や同僚と相談する
優先順位をつける
締め切りの調整する
など「忙しいから」と抱え込まずに、助けを求めることも時には必要です。
仕事量が適切になれば、心にゆとりが生まれます。そうすれば、周りの人とのコミュニケーションも自然と良くなっていくかもしれません。自分のペースを大切にしながら、少しずつ改善していく。そんな姿勢が、長い目で見たとき、職場の人間関係を良好に保つコツかもしれません。
⑪サポート体制の充実
職場の人間関係で疲れたとき、一人で抱え込まないことが大切です。そんなとき、サポート体制を充実させることが、思いがけない解決策になるかもしれません。
まず、信頼できる同僚や上司に相談してみましょう。自分だけが悩んでいると思いがちですが、話してみると意外と共感してくれる人がいるものです。時には、新しい視点やアドバイスをもらえることも。職場以外でも、家族や友人に話を聞いてもらうだけで、心が軽くなることがあります。趣味の仲間との交流も、良い気分転換になりますよ。
また、職場の相談窓口やカウンセリングサービスを利用するのも良いでしょう。専門家の助言は、状況を客観的に見直すきっかけになります。
⑫過度のネットの予防
リモートワークが増えた今、職場の人間関係で疲れを感じる方も多いのではないでしょうか。オンラインでのコミュニケーションが中心になると、どうしても人間関係が希薄になりがちです。
常にオンラインでつながっていると、仕事とプライベートの境界が曖昧になります。休憩時間や帰宅後も、仕事のメールやメッセージが気になって落ち着かない…そんな経験ありませんか?
そこで意識的にネットから離れる時間を作ってみましょう。例えば、昼休みはスマホを置いて、窓の外を眺めるだけでもOKです。また、可能な範囲でリアルな交流も大切にしましょう。時々オフィスに出勤したり、同僚とランチに行ったりすることで、画面越しでは感じ取れない相手の表情や雰囲気を直に感じられます。
仕上げの動画
職場の人間関係について動画でも解説しました。仕上げとしてご活用ください。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・人間関係の疲れを改善ワーク
・温かい声がけ練習,無条件の肯定,
・嫌なことは断る,ストレスフリーに
・職場の人間関係が明るくなる心理学
🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連