パワハラ上司への対策
皆さんこんにちは。現役経営者,公認心理師の川島です。今回の相談内容は「パワハラへの対策」を知りたいです。
相談者
26歳 男性
お悩みの内容
上司の人格否定がひどいです。理不尽な仕事を押し付けて、「使えねえ」「馬鹿なんじゃない?」と毎日罵倒されています。やり方も全く教えてくれません。
会社に行くのが苦痛で仕方ありません。不眠が続いており、もう半年間笑っていないです。
職場で人格否定されつづける状態はとても辛いですよね。パワハラの相談事例は年々増しており、社会的にも深刻な問題となっています。そこで当コラムではパワハラの定義や現状、対処法など解説していきます。是非最後までご一読ください。
パワハラとは何か
まず初めにパワハラとは何か?基本的な知識を理解していきましょう。
パワハラの語源と歴史
パワハラとは、パワーハラスメント(Power Harassment)の略語です。「パワー」「ハラスメント」にはそれぞれ以下のような意味があります。
power …権力
harassment…困らせる
パワハラは職場内での優越的な関係を利用して、労働者を虐待する行為で、厚生労働省では、次のように定義しています。
職場において⾏われる優越的な関係を背景とした⾔動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること[1]
パワハラは、セクハラの防止で活動をしていた岡田康子が2001からパワハラの実態調査をはじめて作られた言葉で和製英語となります。[2]岡田氏はさまざまな労働相談をうける中、セクハラ以外にも職場にはさまざまなハラスメントがあると考え、調査研究を行った中で生まれました。
パワハラの6つの種類
パワハラには大きくわけて6つの種類があります。以下それぞれの意味と判断基準を解説しました。理解を深めていきましょう。
深刻な被害
パワハラは放置しておくと様々な深刻な事態に繋がります。以下、基礎的な知識を折りたたんで記載しました。展開してパワハラへの対策の知識を把握しておきましょう。
パワハラへの8の対策
ここからは、パワハラから身を守る8の対策を紹介します。
①過剰適応しない
②主張する権利の確認
③証拠を記録する
④第三者に伝える
⑤第三者を交えて話し合う
⑥外部機関の利用法を検討する
⑦環境を変える
⑧心の傷に対処する
ご自身の状況に合わせて組み合わせてご活用ください。
①過剰適応しない
パワハラ被害にあっている方は、過剰適応という心理学の用語をおさえておきましょう。過剰適応とは以下の意味があります。
自分の気持ちを押し殺して、相手や環境に必要以上に合わせる状態
パワハラ被害が深刻化するほとんどの事例でこの過剰適応状態があります。特に、自分の意見がいえない、理不尽な要求にも応じてしまう、自分より他人を優先してしまう、これらの傾向があるかたは要注意です。
過剰適応が長期化すると、メンタルヘルスが悪化し、最悪の場合うつ病などの精神疾患につながる恐れがあります。
まずは過剰適応という用語をおさえ、自分がその状態にないかを確認しましょう。そしてもし過剰適応状態になっている場合は、断固とした姿勢が大事になってきます。以下のコラムでは、過剰適応と対策について詳しく解説しちえます。より深く知りたい方は下記をご覧ください。
②アサーティブな精神を持つ
受け身で我慢強い人は、パワハラ被害を受けやすい傾向にあります。主張ができないため、加害者のパワハラがエスカレートしてしまうのです。感情や意見を伝えることが苦手…と感じる人は、アサーティブコミュニケーションを学ぶことをおすすめします。
アサーティブコミュニケーションでは以下の価値観を大事にしています。
私たちには生まれながらにして、主張する権利がある
私たちは自分の想いを、尊重してもらう権利がある
私たちは一人の人間として尊厳をもって扱われる権利がある
パワハラ被害にあわないためには、自分を大切にする意識を高めることが不可欠です。興味がある方は下記のリンク先を参考にしてみてください。
③被害状況を記録する
言い逃れできない証拠は、パワハラ被害を外部に相談しやすくなります。被害状況を記録し整理するようにしましょう。厚生労働省では、整理する項目を次のように紹介しています。
・いつ
・どこで
・どのような事を
・誰に
・その時、誰がみていたか
感情を交えずなるべく事実を淡々とまとめると信頼度が高められます。被害状況の記録は、
・カルテ、診断書
・メモ
・写真、動画、録音 など
・メールやSNS
・同僚の証言
などでするといいでしょう。
④職場の第三者に伝える
パワハラ被害にあった時には、加害者に対し一人で戦うことは避けたほうがいいでしょう。まずは職場で相談できる人を探して改善を目指しましょう。
・社長、上司(話が分かる人物であれば)
・人事部
・労働安全委員会の代表
など、加害者より優位な立場の従業員に相談しましょう。理解者が多いほどパワハラ被害を撃退する力になります。
⑤外部の専門家に相談
・厚生労働省 総合労働相談コーナー
労働局にある相談窓口です。各都道府県に設置されており、専門の相談員による面談・電話相談ができます。
・あかるい職場応援団
厚生労働省が運営する、ハラスメント対策の総合情報サイトです。外部の相談窓口を利用する際の手順や具体的な連絡先も紹介されています。
・法務省 みんなの人権110番
法務局・地方法務局の常設相談窓口です。パワハラ被害などさまざまな人権問題について電話相談ができます。
・労働相談情報センター
各都道府県労働局、全国の労働基準監督署内などに設置された労働相談専門の機関です。パワハラ被害など労働問題全般について相談ができます。
・法テラス
パワハラ被害の解決に役立つ制度、弁護士会や消費者団体など関係機関の相談窓口を無料で案内してもらえます。
パワハラ被害は発生から時間がたつほど、解決が難しくなります。外部の相談窓口も視野に入れ、早期解決を目指しましょう。
⑦環境を変える
7つ目は環境を変えることです。以下のような状況が続く場合は、転職をしたり、働き方のあり方を変えることも検討しましょう。
相談をしても状況が変わらない
限界を超えて仕事を要求される
経営者が100%株主で体質が変化しない
新しい環境に飛び込むのは、勇気がいることです、ただ、パワハラで苦しい日々を続けていても、心身の健康が悪化していくだけです。今の環境で出来ることを行った上で、会社が変わらないのであれば、きっぱりと次に向かう決心も大切です。
⑧心の傷に対処する
パワハラは心に深い傷となります。人格批判をされる、無視をされる、人間的に軽く扱われると、仕事をすること自体に強い恐怖を持つ方もいます。不眠が続く、フラッシュバックする、などの症状がある方は、専門家のカウンセリングを受けることも視野に入れましょう。カウンセラーの探し方については以下の動画で解説しました。是非参考にしてみてください。
まとめ
私たちは自分の人生を豊かにするために仕事をしています。パワハラをされ、陰鬱な気持ちを持ちながら仕事をするぐらいならば、主張をして、自分の人生を取り戻すべきです。
パワハラをされている方は、権利意識を持ち、周りの方の力をたくさんかりながら、是非健康的な気持ちで仕事ができる環境を取り戻してください。皆さんが温かい心で日々尊厳を持ちながら仕事をされることを切に願っています。
動画でも解説
パワハラ上司、毒上司への対策を動画でも解説しました。仕上げとしてご活用ください。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・NOと言える人に,断る練習
・自分を守る,自己主張練習
・権利意識を高める,アサーションの学習
・自分らしさを認める,心理学を学ぶ
🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連