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話し方教室の「資格商法」の見分け方,被害者

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資格商法を見抜く方法を現役経営者が解説

皆さんこんにちは。ビジネスコミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「資格商法」に騙された私の実体験をお伝えします。

川島達史,講師

資格商法とは何か?

資格商法とは

はじめに資格商法とは何かについて抑えておきましょう。警察庁によると資格商法は悪質商法の1つとされていて[1]、概ね

専門性の薄い資格について対して過大な評価をアピールすることで、高額な授業料、高額な資格取得費を取る商法

を意味します。サムライ商法と呼ばれることもあります。

資格商法と法律

資格商法は、詐欺罪(刑法第246条)、特定証取法、優良誤認表記(景品表示法第5条第1号)、公序良俗違反(民法90条)などに該当する可能性があります。

被害の実例

実際に資格商法の被害に遭った実例を見ていきましょう。

1つ目は1995年に、北海道で発生したものです[2]。国家試験講習会の運営会社の社長は、中小企業経営者を対象に架空の資格に関し「近く国家資格となる。今回に限り講習を受講すれば簡単に資格が取れ、月々20万円の副収入が得られる。」などと嘘をつき、約2,000人から講習受講料の名目で約7億7,000万円を騙し取りました。8月までに、詐欺で26人を検挙(うち逮捕6人)となりました。

2つ目は1992年~2004年にかけて東京都で発生したものです[3]。当時22歳の青年が、3社に対して31契約の販売被害に合い、合計1204万円の契約をしてしまいました。原告は支払に追われ、青春時代に恋愛したり結婚をする経済的、精神的余裕もなく、現在38歳に至るも独身とされています。裁判結果としては勧誘手法が民法90条の公序良俗に反して不法行為を構成するとされ、合計70万4240円の支払いを命じられました。

グレーゾーン

上記は詐欺事件として立件され例を紹介しましたが、多くは法律に触れるかどうかの曖昧なグレーな資格が多いです。そのため、役に立たない資格を高額の受講料を取り取得させる会社が後を絶ちません。例えば私が知る例ではいかのようなものがありました。

学生に50万円規模のローンを組ませる
大学院6年分の学習が4か月で完了と広告記載
人生が変わるかのような広告記載がある
就職率99%と記述するが実態と異なる

これらは氷山の一角となります。十分注意しましょう。

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資格商法を見抜く8つのポイント

ここからは資格商法を見抜く8つのポイントを解説します。

①講座の日数が少ない
②受講料が高額
③段階が設定されている
④講師の経歴が不安定
⑤試験がない
⑥母体に学会がない
⑦強引なハク付き
⑧情報開示に消極的

あてはまる項目が多いほど資格商法である可能性が高くなります。資格を取得する前に、充分吟味してみてください。

①講座の日数が少ない

資格商法は高額であることがほとんどです。彼らの目的は短期間でいかに高額のお金を搾り取るかに焦点があります。そのために長期間、懇切丁寧に教えることはなく、短期間で一気に代金を聴取するビジネスモデルになります。数カ月で取得できるような資格は要注意です。

②高額である

1日あたりの受講費が3万円を超える場合は資格商法の可能性が高くなってきます。悪質な業者ですと、法定金利ギリギリの値段でローンを組ませる会社もあります。

③段階がある

資格商法の中にはグレードが3段階で設定されていることもあります。

1段階目 5万円前後
2段階目 30万円前後
3段階目 100万円以上

3段階目は資格の名前を使用して開業できる、トレーナーになることができる、などの条件が設定されています。

④講師の経歴が不安定

資格商法を行っている会社の責任者は多くの場合、博士レベルではなく、大学卒業レベルの講師が多いです。高度な専門性を持っているわけではないので、論文を読み込んでいない傾向があります。

また講師が乗っていたとしても、持っている資格が、発行している資格の方ばかりの場合は資格商法の疑いが上がります。最後まで受講すると、講師になれる!という空気感を出して、受講させようとしているのです。

⑤試験がない

試験問題は、大学教授レベルの試験官が厳密に精査し、試験問題が被らないようにするなどが一般的です。一方で、資格商法では、試験内容がないか、あったとしても稚拙な内容となっています。

これは資格商法を行っているような会社には、権威のある学者が断ることが多く、結局質の悪い講師しかいないことが多いことが原因として挙げられます。お金さえ払えば自動的に取得できる資格は要注意です。

⑥母体に学会がない

資格講座の中でも母体に学会がない場合は、注意が必要です。一般的に資格の質を高めるには、母体となる学会があることが望ましいです。学会がない資格=科学的な研究をしていない団体と言えるので、信憑性が薄いと考えられます。

⑦強引なハク付

資格商法の特徴としては、強引に権威をアピールすることです。平たく言えば、なんとなく凄そうな名前の資格を発行して、お客さんを集めようとします。講師の経験則となりますが

内閣府認証 米国〇〇△△ 一般社団法人認定

などは怪しいと考えて良いでしょう。内閣府認証は、さも内閣が認証した資格に見えますが、国家資格ではありません。NPO法人の設立を内閣が認定しただけです。

また、一般社団法人なども一見信頼できそうな感じかしますが、設立が簡単で株式会社よりも手続きが楽です。このように、なんか凄そうな資格名や強引なハク付には注意が必要です。

⑧情報がクローズされている

会社の住所がわからない、社長がニックネームである、電話番号の記載がない会社はその時点で、受ける資格がないと断言できます。資格商法をしている会社は、いつでも逃げられるように情報開示に消極的になのです。

川島の実体験

最後に川島の実体験をお伝えします。私は現在、公認心理師として活動してますが、この仕事を始める前に本当にたくさんの講座に参加しました。その中には、資格商法もたくさんありました。その実体験を書きましたので、興味がある方は展開をしてみてください。

資格商法で35万円失った話

手っ取り早い資格

24歳の私は、会社を辞め、コミュニケーションに関する仕事を一生続けようと誓いました。しかし、私は心理療法についての自分なりに実践してきましたが、資格は何も持っていませんでした。

そこでいろいろと調べてみるとコミュニケーションや心理学に関する資格がたくさんあることに気が付きました。とにかく箔をつけたいとあせっていた私は、それらの資格に飛びつくことになります。

具体的にはNLPというものがありました。なんだか名前がかっこいい!そう感じた私は、NLPの資格を取る講座に応募しました。この研修確か6日で35万ぐらいの研修だったと思います。私はなけなしの貯金をはたいて講座を受けることにしました。

妙な高揚感

 いざ研修を受けてみると、内容がグレーな研修でした。例えば、講師がこんな調子で問いかけをしてくるのです。

みなさんテニスボールは3つ縦に重ねることができるでしょうか?一見できなそうですね。しかし、時間をかけるとできるようになります。

講師はそう促します。そうして、用意されたテニスボールを3つ重ねようと努力すると確かに3つ縦に重ねることができました。そして講師はそう続けます。

ほらね。テニスボール3つ重なったでしょ。実はこれ人生に言えることなのです。できないと思うことも、チャレンジしてみると、実はできることがある。皆さんは実は可能性に満ちているのです

こんなやりとりが続きます。そしてなんだか教室の中に妙な一体感と高揚感が出てくるのです。1日目はこんな感じのワークをいくつか行いました。1日換算すると5万円でした。

高いなあと感じつつも、今更引き返すこともできないですし、資格がほしいです。私は継続して受講することにしました。

6日で35万円の研修が終わりました。一部なるほど!と感じたものもあったのは事実です。しかし、全体的に疑問の多い講座でした。

中身のない資格取得

私はNLPプラクティショナーという資格をもらえることになりました。この資格は証明書が必要で、証明書の発行料が確か3万円とかでした。さらに何年間かで更新しなくてはならないのでその度にまた手数料を払わなくてはならないというシステムになっていました。

セミナーが終わると、さらに上のステップで、マスターコースというのを紹介されました。そちらも35万円ぐらいで6日の講座だったと思います。

講座を受講して分かったこと

さらにその上には100万円ぐらいで得られる、コーチ?セミナーのようなものもありました。最後まで受講すると、NLPの講座を開けるというシステムになっていました。NLPは一般の経済活動においては合法ですが、以下の点で問題と感じています。

研修100時間で高額のセミナーを開ける
全て受講すると200万ほどかかる
試験不要で独立したいビジネスマンが飛びつく
粗悪な講座、カンセラーが増える
トラウマの解消を心理学の素人が教えている

ちなみに、同じ心理業界で、代表的な資格は臨床心理士や精神保健福祉士があります。臨床心理士は、目安ですが3000時間程度、精神保健福祉士は1000時間程度は学習時間が必要です。

一方で
・臨床心理士
・精神保健福祉士
・米国神経言語プログラミング
 NLPプラクティショナー

と一般の人が見ると、差が分かりません。むしろNLPのほうがすごく見えてしまいます。その結果、重大な心理的問題を抱えている人に対して、高額のカウンセリングを受けさせるという歪んだ構造になっていると感じています。

 

資格商法を断る方法

実際に資格商法の勧誘を受けたときは以下のように断ると効果的です。

はっきりと断る

曖昧な返事や考える余地を与えると、相手がさらに説得してくることが多いため、「興味がありません」「必要ありません」とはっきりと断ることが重要です。明確な態度を示すことで、相手がこれ以上勧誘を続けるのは難しいという印象を与えることができます。

時間を理由にする

「今は急いでいますので話を聞く時間がありません」「この場では検討できません」と、時間がないことを理由にして断る方法も有効です。長々と説明を聞く余裕がないことを伝えることで、相手の勧誘を回避し、早めにその場を立ち去ることができます。

家族や他の人に相談する

「家族やパートナーに相談しないと決められません」「上司に確認が必要です」と伝えることで、その場で即答する必要がない状況を作り出します。家族や他の人の判断を尊重する姿勢を示すことで、相手も無理に勧誘を続けにくくなります。

法律や資格の信頼性を問う

「その資格の法的根拠や有効性について詳しく教えてください」「消費者センターや法律相談で確認したいので、後ほどお返事します」と、法律や資格の信頼性について質問することで、相手にプレッシャーをかけます。これにより、相手が対応に困り、強引な勧誘を諦める場合が多いです。

これ以外にも断る方法は複数あります。引き出しを増やしたい方は以下のコラムを参照ください。

勧誘を断る方法,トレーニング

資格商法と相談先一覧

自分では解決できないと感じる場合は、具体的な相談機関や窓口は以下の3つとなります。

消費生活センター

全国各地に設置されている消費生活センターは、詐欺的な商法や消費者被害に関する相談やトラブル解決を支援します。無料で相談を受けることができ、場合によっては仲裁やアドバイスを行ってくれます。

消費者ホットライン

警察(生活安全課)

詐欺や悪質商法と判断される場合、最寄りの警察署の生活安全課に通報することで捜査が開始される可能性があります。特に、金銭的な被害が出た場合は詐欺罪として取り扱われることがあります。

ご意見、各種相談・情報提供等

日本弁護士連合会(弁護士会)

資格商法などで法的なトラブルに発展した場合、日本弁護士連合会の無料法律相談や各地の弁護士会に相談することが可能です。弁護士を通じて、契約の無効や損害賠償請求などの法的措置を検討できます。

ひまわりお悩み110番 – 日本弁護士連合会

まとめ

資格商法はやる気を利用した非常に悪質な手法です。特に景気が悪い時に、被害にあう方が多いです。もし資格を取ろうか迷ったら、是非当コラムの8つの事項にあてはまらないか?チェックをしてください。皆さんが大事なお金を失うことなく、健全な資格を取得されることを願っています。

講座のお知らせ

国家資格保持者など、信頼できる専門家の元でコミュニケーションの練習をしたい方は、公認心理師が主催する講座をおすすめします。内容は以下のとおりです。

・不安の改善,心理療法の学習
・緊張をほぐす,リラックス法をマスター
・傾聴力,発話力,会話力をつける
・あがり症,人前で話す力をつける

🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)ちなみに資格は発行していません!あくまでご自身の研鑽と成長のための講座となります。

話し方教室の資格商法の見分け方,被害者,コミュニケーション講座

 

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1]警察庁(2022).(リンク取得) 安全な暮らし 被害にあわないために 悪質商法
 
[2]警察白書(1996).正常な経済活動等の確保 第4節