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説得力を高める,話し方

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説得力を高める,話し方

皆さんこんにちは。現役経営者,公認心理師の川島達史です。私は現在、コミュニケーション講座の講師として活動しています。

説得力を高める

ビジネスで成功するためには説得力は必須となります。説得力がある人は、提供するサービスを魅力的に心を打つようにアピールすることができます。そこで当コラムでは、説得力を高める11の話し方を解説していきます。

①原則1分ルール
②マジックナンバー
③両面提示法
④フットインザドア法
⑤主語を絞る法
⑥気分一致効果法
⑦中心ルート,周辺ルート法
⑧専門性アピール法
⑨単純接触効果
⓾早口で説得する
⑪ネームコーリング効果を狙う
⑫ジャムの法則を狙う

初学者が抑えるべき説得理論を網羅しました。是非ご活用ください。

説得力を高める11の話し方

①原則1分ルール

最近のビジネスの傾向として、短くシンプルに話すことが求められています。特に、打ち合わせ、商談、会議などでは、基本的な受け答えは

発言は60秒以内でまとめる
質問をもらいながら進める

を心がけましょう。どんなにすばらしい話でも、話が長いだけで集中力がそがれ、頭に入っていきません。短くシンプルに話せる方はそれだけで好印象です。

不足してる部分は相手がちゃんと質問してくれます。一方的に話し続けるのではなく、会話をしながら説得していくイメージを持ちましょう。

②マジックナンバー3

会話場面では1分ルールが基本となりますが、正式なプレゼンなど、充分時間があるときは、3つの項目にまとめることを意識しましょう。心理学者のNelson Cowan(2001)[1]は人間は「4+-1個」をひとまとまりとして記憶することを明らかにしました。

特に3という数字は「マジックナンバー」と呼ばれ、記憶に残りやすい、理解されやすいことがわかっています。3にまとめられている例としては

松、竹、梅
金、銀、銅
大、中、小
グー、チョキ、パー
安い、早い、うまい

などが挙げられます。しっかりプレゼンする際は、3つにまとめることをぜひ意識しましょう。

説得力,3つ

③両面提示法

説得力する時に、メリットだけを伝えようする方は多いです。しかし、提供するサービスの良い面しか言わないと、逆に怪しまれてしまうことが多々あります。

説明をする際は、勇気をもってデメリットを伝えることも大事です。これは心理学では「両面提示法」と呼ばれる手法です。

例えば、あなたが洗濯機を購入するとしましょう。この時、以下の2つだとどちらに信頼感がありますか。

メリットのみ
この洗濯機の一番の売りは、高速乾燥機能が付いています!これにより、洗濯にかかる時間が2倍以上短縮できます!

両面提示
この洗濯機の一番の売りは、高速乾燥機能が付いています!これにより、洗濯にかかる時間が2倍以上短縮できます!

ただ、注意点として、手順が4つあり、操作がちょっと複雑に感じるかもしれません。

最初はインストラクターのフォローもしっかりついていますのでご安心ください。1週間もすれば操作に慣れ、結果的に時間をしっかり短縮できると思います。

おそらく下の方が信頼感を感じる人が多いと思います。

メリットのみだけの方は、「なんとしても売りたい!」という感じが伝わってきます。しかし、両面提示は売上だけでなく、お客さんのことも考えている印象があります。

このように良い悪いの両方を伝えた方が信頼感は増すのです。両面提示法をより深く知りたい方は、下記をご覧ください。

両面提示法とは

④フットインザドア法

相手を説得する時は、まずは小さな説得をから始めることが大切です。承諾誘導で有名な手法に「フットインザドア法」というものがあります。フットインザドアとは、「小さなYESをもらい、だんだんと大きなYESをもらう」方法です。

Freedman(1966)[2]らは、フットインザドア法について、以下のような2つの条件を用意して、承諾率を比較しました。

フットインザドア群
小さな交通安全のステッカーを貼ってもらう
(小さなお願い)
   ↓
安全運転を呼びかける看板を立てさせてほしいとお願いする
(大きなお願い)
   ↓
承諾率 47.4%

大きなお願い群
いきなり安全運転を呼びかける看板を立てさせてほしいとお願いする
    ↓
承諾率 16.7%

このようにFreedmanの研究では3倍前後の違いが出たのです。現実のビジネス場面では以下のようなフレーズがあげられそうです。

保険無料相談があります
無料で試食ができます
このジムは体験割引期間があります
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特に世の中にまだ知られていない商品などは、フットインザドアでの説得が必須です。詳しくは以下のコラムを参照ください。

フットインザドア法

⑤主語を絞る法

皆さんは、以下の2つどちらに説得力を感じますでしょうか。

弊社の家電製品はどこよりも安いです!

弊社のドラム式洗濯機は、大手販売店〇〇の30%程度安くなっています。

おそらく、後半の方が説得力を感じる人が多いでしょう。なぜこうした違いが生まるのか、それは「対象が絞られている否か」がポイントになります。

前半の例の主語は「家電製品」と広くなりすぎています。このように主語が大きいと、「ネットでもっと安い商品がある」と矛盾する証拠が出てきやすくなり、信頼性が下がります。

後半の例にの主語は「ドラム式洗濯機」と限定しているので、矛盾した証拠が出にくいのです。説得する際は、ついつい風呂敷を広げたくなりますが、主語は小さくして、正確な情報を伝えるように心がけましょう。

主語を絞るやり方は以下のコラムでも解説しました。参考にしてみてください。

説得の基礎,主語を絞ろう!

説得力,主語を絞る

⑥気分一致効果

説得力を高めるコツとして、相手の気分がいい時に説得をするという方法があります。これは「気分一致効果」と呼ばれるものです。気分一致効果とは、人は自分の気分に即して行動するという効果です。

Holloway(1997)[3]は大学生の男子 91 人と中学生の男子 108 人を対象に、気分一致効果に関連する実験を行いました。実験は以下の手順で行われました。

①グループ分け
グループ1、グループ2にわけます

②ニュースを見せる
グループ1には山火事で生還した家族の話
グループ2には山火事で家族が全員死亡した話

③交渉ゲームを行う
協調してお互いの少しずつ得する(協調作戦)
相手に損をさせて自分が大勝する(競争作戦)
のどちらかを選択するゲームを行う

この結果、先にポジティブなニュースを見たグループ1は77%が協調作戦をとり、ネガティブなニュースをみたグループ2は、46%しか協調作戦をとりませんでした。

このように私たちは気分がいいときほど、相手と積極的な関係を築こうとして、逆に気分が悪いときは拒否的な選択をしがちになるのです。この意味で、説得力を高めるには、以下のような環境やタイミングを狙うと良いでしょう。

金曜日の午後
給料日の前日
ユーモアを入れた後
応接室にアロマを焚く

これらは気分が良くなりやすく、前向きな決断をしやすくなります。説得をするには土台となる気分を良くすることをおさえておきましょう。気分一致効果をより深く知りたい方は、下記をご覧ください。

気分一致効果の意味とは

⑦中心ルート,周辺ルート法

説得をする際は大きく分けて「中心ルート」「周辺ルート」があります。

中心ルート
性能 機能 材質 効果 重量 味 持続時間 速さ 

周辺ルート
デザイン 雰囲気 売り手の印象 ブランド 人柄

基本的には中心ルートをベースに説得をしますが、場合によっては周辺ルートを組み合せながら説明をしていくと効果的です。両者の使い分けについては、以下を参考にしてみてください。

精査可能性理論,中心ルート,周辺ルート

⑧専門性アピール

説得力を高めたい場合には専門性アピールをしていくことが大切です。例えば、あなたが百貨店の青果売場にいった時、ネームプレートに以下のように書かれていたとします。

果物コーナー 販売員
川島達史 

果物選定検定1級
川島達史 

おそらく、後者の方を信頼する方が多いでしょう。社会心理学の研究では専門性をアピールすると、2倍程度説得力が向上するという研究もあります。説明をする際は、あなたの専門性をしっかりアピールすることを心がけましょう。

専門性アピールで説得力アップ

⑨単純接触効果

説得力を高めるには、相手との接触回数を増やすことが大切です。心理学では「単純接触効果」と呼ばれるものがあります。単純接触効果とは、簡単に言うと、

よく接するものほど、好感を持つ、安心する、信頼する

という効果です。そこで、サービスを提供する際は

SNSで毎日ツイート
動画を3日に1回更新する
メルマガを月1で発行する

など地道に、お客さまの目に触れる機会を増やす必要があります。繰り返しになりますが、説得力を高めたい場合には、接触回数を増やす!という鉄則を意識してみてください。

単純接触効果をより深く知りたい方は下記をご覧ください。

単純接触効果とビジネスの活用法

⑩早口で説得する

Dannyら(1986)[4]の研究では、商品をPRするメッセージについて、以下の2つの条件で顧客が受ける印象を比較しました。

130%早口のテープ
160%早口のテープ

その結果、130%早口で話すテープよりも、160%早口で話すテープの方が商品を欲しくなったというのです。

ゆっくり話すと、声が小さくなりがちで、相手に話しが伝わらないこともあります。一方で、早口は話すと声が大きくなり、活発なイメージを与えます。

ただ早口を意識しすぎると、滑舌が悪くなったり、どもってしまったりすることもあるため、発声には気を配る必要はあるでしょう。

⑪ネームコーリング効果を狙う

心理学の研究では、名前を呼ぶと相手を説得しやすいことがわかっています。これはネームコーリング効果と言われています。ネームコーリング効果については、様々な研究があります。以下動画で解説したので参考にしてみてください。

⑫ジャムの法則を狙う

「ジャムの法則」は、選択肢が多すぎると人はかえって選択に悩み、決断力が低下する現象を指します。これは、心理学者のシーナ・アイエンガーの研究で示されたもので、24種類のジャムを試食させる場合よりも、6種類に限定した方が実際の購入率が高くなるという結果が得られました[5]。詳しくは以下の動画で解説しました。

⑬ユーモアを大切にする

牧野 (2000)[6]は大学生316名を対象に、説得力とユーモアの関係について調査を行いました。

実験では、被験者たちに「パソコンの使用と購入を勧める」という内容の文章を読んでもらいました。文章の中にユーモアを入れるかどうか、入れる場合はどんなユーモアをどれくらい入れるかを変えて、8種類の文章を用意しました。

その結果の一部が以下の図です。

説得力 ユーモア 購入の意思

このように、遊戯的ユーモア感知が高いほど、パソコンの有効性に関する態度が良くなり、また肯定的気分が高まり、パソコンの使用・購入の行動意思が高まることがわかりました。

遊戯的ユーモア感知とは、コミカルなエピソードやたとえ話のような人を傷つけることがないユーモアのことです。こうしたポップなユーモアで訴求することで、説得力が高まるといえます。

まとめ

説得力は社会人にとって生命線です。就職活動、営業、昇進、販売、プロジェクトリーダー、日々の業務のやりとり、さまざまな場面で説得力は必要になります。

説得力をつけると、ビジネスシーンのあらゆる状況が進めやすくなります。ぜひ、ご紹介した方法を活用して、説得力を高めてください。皆さんがビジネスマンとして一皮むけることを切に願っています。

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した方法は、現役経営者、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。

・説得力をつける,プレゼン練習
・両面提示法,実践練習
・人前で話す力をつける,トレーニング
・あがり症の改善,場慣れをする

🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^) 

説得力を高める,話し方,コミュニケーション講座

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
 
[2]Freedman, J. L. & Fraser, S. C.(1966).Compliance without pressure: The foot-in- the-door technique. Journal of Personality and Social Psychology, 4, 195-202.
 
[3]Holloway, S., Tucker, L., & Hornstein, H. A.(1977). The effects of social and nonsocial information on interpersonal behavior of males: The news makes news. Journal of Personality and Social Psychology, 35(7), 514–522. 
 
[4]Danny L. Moore, Douglas Hausknecht, Kanchana Thamodaran(1986).Time Compression, Response Opportunity, and Persuasion, Journal of Consumer Research , Volume 13, Pages 85–99,
 
[5]Iyengar, S. S., & Lepper, M. R. (2000). When choice is demotivating: Can one desire too much of a good thing? Journal of Personality and Social Psychology, 79(6), 995-1006.
 
[6]牧野幸志 (2000). 説得に及ぼすユーモアの種類と量の効果(3)『高松大学紀要』34, 53-68.