楽しく生きる,過ごす5つの方法
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「楽しく生きる方法」についてご相談を頂きました。
相談者
35歳 男性
お悩みの内容
私は社会人12年目になります。仕事はそこそこ安定してはいるのですが、収入はそんなに上昇しないことがわかっています。最近は、毎日同じ日々が続き、漠然とした手ごたえの無さを感じています。
これからの人生を考えると、結婚後のお金、病気、年金の不足、介護など、大変な未来を考えてしまいます。正直毎日楽しそうにしている人を見ると羨ましいです。人生を楽しく生きるコツがあったら知りたいです。
30代も中盤になると、人生の後半も考える時期になってきますね。これからのことを考えるのは、とても大事なことだと思います。どうすれば楽しく生きることができるのか?これはとても自由な概念です。人それぞれ多様な答えがあって良いと思います。
ただ、全く手さぐりに探していくのも少々骨が折れるとおもいます。そこで親和性の高いポジテイブ心理学をベースとして、楽しく生きるための提案をさせて頂きます。
楽しく生きる,ポジティブ心理学
ポジティブ心理学
アメリカ心理学会の会長であったセリグマンは2002年に「ポジティブ心理学」[1]という分野を立ち上げました。
1900年代までの心理学は主に、対人不安、孤独感、ネガティブ思考…など、マイナス感情に焦点があてられてきました。もちろんこれらの人間のマイナス感情を改善することは大事です。
しかし、セリグマンは、幸福感、充実感、自己肯定感など、ポジティブな感情にも焦点を充てていこうと考え、これを21世紀の重要なテーマとして提案したのです。
楽しく生きる,5つの指標
セリグマンはポジティブで楽しく生きるためには5つのポイントがあると主張しています。
①ポジティブな感情を大事にする
positive emotion
②没頭できるものがあること
engagement
③前向きな人間関係がある
positive relationship
④人生に意味を見出すこと
meaning
⑤達成感を得る
achievement
皆さんはいかがでしょうか?これらの5つの要素を満たしている感覚がありますでしょうか。以下それぞれを向上させるやり方を提案させて頂きます。
ご自身の生活に役立ちそうなものがありましたら、組み合わせてご活用ください。
①ポジティブな感情を重視
ポジティブ感情とは
まずはポジティブ感情から解説していきます。ポジティブな感情とは
幸福感 自尊心 自己肯定感 他者肯定感 充実感
を意味します。セリグマンはこれらの気持ちをしっかり保つようにしようと提案しています。
では実際にどうすればポジティブな感情を日々感じることができるのでしょうか?そのためにできることは、たくさんあるのですが、今回は「リフレーミング法」「3つの良いことエクササイズ」を紹介します。
リフレーミング力をつける
リフレーミングとは、物事を多角的、前向きに考えることで、心理的な強さを獲得する方法を意味します。例えば、接客態度が悪い店員さんに運悪く当たってしまったとしましょう。このような状況を楽しむにはどうすればいいでしょうか?
接客態度が悪くても
成り立っている店だから味はピカイチかも
接客態度が悪い店は
客もわりとちゃんとしなくていいので気楽
もしかしたら、
歯に食べカスが詰まっていて
機嫌がわるかったのかも(笑)
という感じで様々な角度から捉えなおしていくのです。心理学の研究では、考える引き出しの多さが、幸福感に関連することが分かっています。
もし今人生が楽しくない、充実していない、と感じていたとしたら、考えの引き出しをたくさん増やす練習が効果を発揮すると思います。
下記のコラムでは考えの引き出しを増やす練習ができます。是非参照ください。
3つの良いことエクササイズ
「3つの良いことエクササイズ(Three Good Things)」は、1日の終わりにうまく行ったことを、その理由をそれぞれ3つ書くというものです。非常にシンプルですが効果が実証されているのでおすすめします。セリグマン(2005)[2]が行った実験の結果は以下の通りです。
上記のように「うつ」「幸福感」共に改善していることがわかります。「良いこと」は基本的にはなんでもOKです。
今日天気が良くて気持ちが良かったなあ
きれいな景色を見ることができたなあ
友人との〇〇で笑ったなあ
今日は仕事で1つ成果が出たぞ!
1日の出来事の中で、ポジティブな出来事があったらそれを確認するようにしていきます。正式には、日記などで書くとされていますが、寝る前に目をつむりながら考えるだけでも安眠ができるのでおすすめです。
②楽しく生きる人生と没頭
皆さんは時間を忘れて取り組んだ趣味や仕事はありませんか?スポーツ、旅行、友人との会話など何か1つは思い当るはずです。その時はきっと充実感に満ちていたと思います。セリグマンは楽しい人生を送るためには、没頭して取り組むことが大切だと主張しています。
フロー状態とは
時間や自分を忘れるぐらい没頭して充実している状態を「フロー状態」と言います。心理学者のミハイ・チクセントミハイが名付けた用語です。[3]まずは下図をご覧ください。
フロー状態に入るためには、課題の難易度と、自分が使っているスキルがともに「高くなる」必要があります。フローに入ると、意識が活動に完全に注がれ、外部の刺激や他の考えが排除され、没頭状態になります。フロー状態が長いほど、創造性や成長、満足感を高めることができるため、パフォーマンスや幸福感のにつながるとされています。
適度なチャレンジをしよう
フロー状態を増やすには以下のようなチャレンジが挙げられます。
なんとか達成できそうな副業にチャレンジ
なんとか合格できそうな試験にチャレンジ
スポーツで切磋琢磨できるライバルがいる
頑張れば完成させられる作品を作る
このような、適度なプレッシャーのある生活は人生を充実させることがわかっています。生活で没頭できるものがないな…と感じる方はこちらのフロー状態コラムを参考にしてみてください。没頭できるチャレンジをするコツを解説しています。
③前向きな人間関係
前向きな人間関係が楽しい人生にかかせないことは感覚的にわかりやすいと思います。心理学的な見地でもこれは確かめられています。
友人の数と希望
平成25年に実施された内閣府の調査[4]では「友人の数」が「自分の将来への希望」に影響することがわかりました。
仲のいい友人が多いほど、自分の将来に希望があると回答した人が多いことが把握できます。また、この調査では仲の良い友人数が多い人ほど
自分に誇り持っている
明るく生きている
協調性がある
自分の将来について希望がある
と報告されています。仲のいい友人の数が多い、人間的魅力を持ちやすく将来への希望も持ちやすい事がわかりました。その他の研究でも、人間関係が充実していると、幸福感が高い、精神疾患になりにくい、認知症になりにくいなどの効果があることがわかっています。
人間関係を充実させる
人間関係を充実させるには、まずは基本的なソーシャルスキルが必要となります。ソーシャルスキルとは、人間関係を築く技術で、雑談スキルや主張スキルなどが挙げられます。もし不足していると感じたら、以下のコラムがおすすめです。
会話の基礎力がある方は、コミュニティーへの所属が大事になります。筆者は、家族、仕事、サークルなど、3つのコミュ二ティに所属することをおすすめしています。所属するコミュニティが。2か所以下ですと、依存的になりやすく、人間関係の問題が深刻化しやすくなります。
3か所以上あると、うまく行かない時期があっても、他のコミュニティで回復することができますし、人間関係の経験値も得ることができるのでおすすめです。所属しているコミュニティが不足している・・・と感じる方は以下のコラムを参照ください。
④人生に意味を見出す
コラムが長くなってきたので復習しましょう。セリグマンは楽しく生きるためには、以下の5つの指標を満たす必要があるとしています。
① ポジティブな感情
② 没頭できるものがある
③ 前向きな人間関係
④ 人生に意味を見出す
⑤ 達成感
ここでは「人生に意味を見出す」について解説していきます。人生の意味について考える分野としては、「アイデンティティの確立」を学ぶことをおすすめします。
アイデンティティの確立とは
今やりたい活動ができている
将来やりたいことがはっきりとしている
自分の長所を充分把握している
嘘偽りない自分で生きている
これらの感覚が充分あることを意味します。アイデンティティを確立するには、自分の価値観を吟味して、深い自己洞察をしていく必要があります。
具体的なやり方としては、ライフチャート法、長所ツリーなど複数の手法があります。人生にしっかり意味を持たせたい…と感じる方はこちらのコラムを参考にしてみてください。
⑤達成感を得る
人生に意味を見出し、没頭できる対象があれば、きっと人生ではなんらかの達成が得られるものです。是非行動力をつけて、積極的にチャレンジをしていきましょう。
達成感は、結果を意識するだけでなく、プロセスを認めていくことも大事です。チャレンジできたこと、前向きに行動できたこと自体を大事にしてみてください。
一方で身の丈に合わない行動をすると、失敗が増えて挫折感だけが残ることもあります。以下のコラムでは、自信がつきやすい行動のコツを解説しています。積極的に行動していきたいと感じる方は以下のコラムを参考にしてみてください。
セリグマンの主張,筆者の主張
セリグマンの主張
以下楽しく生きるためのセリグマンの動画です。是非参考にしてみてください。
川島の主張
恐縮ですが、最後に筆者の川島の話をさせて頂きます。私は22歳ごろに、社交不安障害という心の病気になり、大学卒業後、就職活動もせず、引きこもりになったことがあります。
当時は生きる意味を失い、生物はなぜ生きているのだろうか?とよく考えていました。生き物がなぜ生まれてきたのか?という問いについては、生命起源学という分野があります。生命の起源はざっくりと、
神様が作ったという説
地球の外から種が飛んできた説
有機物が複雑に動き偶然生まれた
という説に分けられます。ですが、どの説も立証されていません。結局のところ私たちは、なぜ生まれてきたのか?よくわからないわけです。
*私たちの祖先ミジンコさん
共通していることは、私たちの生にはさしたる意味などなく、そう大きな目的ななさそうだということです。
しかし、偶然にせよ、私たちは生まれてきてしまいました。そして人生は一度しかありません。私は熟考した結果、どうせ生きるなら、楽しい人生にしたいという結論に達しました。
偶然にせよ、生まれてこれたことをラッキーと考え、どうせ生まれてきたからには、楽しい人生にするというシンプルなものになりました。
そして大事なことは、楽しい人生に答えはありません。自分なりに創っていくことが大事なのです。楽しい人生は、与えられるものではなく、自分自身で創り上げていくものである。
私はそう考えて1日1日を過ごしています。皆さんは、どんな人生観をお持ちでしょうか?語り合いたいものですね。
最後までご一読頂きありがとうございました。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・楽しく生きる,心理学を学ぶ
・セリグマン,ポジティブ心理学を活かす
・意味を見出す,リフレーミングワーク
・達成感を得る,行動療法
🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連