感受性が強すぎる,4つの対策
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「強すぎる感受性への対策」についてご相談を頂きました。
相談者
29歳 女性
お悩みの内容
私は小さい頃から感受性が豊かな方でした。特に絵画の点数は良く、高校卒業後はデザインの専門学校に進みました。絵を描いている分には楽しいのですが、一方で音や光の刺激に反応しすぎてしまいます。都会で暮らしているのですが、慢性的にストレスを溜めています。
対人関係でも声が大きい人や、身振り手振りが大きい人と話すとすごく疲れてしまいます。私のように感受性が強すぎる場合の対策などありますか?
感受性が強すぎるという特性は、芸術的な才能や、仕事上の創造性に活きることもありますが、自分を苦しめる要因となることもありますよね。
そこで当コラムでは、感受性の豊かさをプラスに活かしていけるよう、理解と対策を提案させて頂きます。是非最後までご一読ください。
感受性の意味とは
感受性は、心理学の世界では、直接研究されてきたものは少ないです。一方で近い概念としては、ビッグファイブ研究とHSP研究が挙げられます。
ビッグファイブと感受性
心理学者であるゴールドバーグ(1993)[1]は、人間の性格は「開放性」「神経質な傾向」「誠実性」「外向性」「協調性」の5つに分類されることを研究しました。この点、開放性(Openness to experience)はポジティブな感受性と言い換えられます。
開放性が高い方は、好奇心が旺盛である、芸術的な興味がある、冒険心が高い、自由主義である、などの特徴があります。世の中の面白い部分を積極的に取り入れる感受性が高いと言えそうです。
一方で、5つの中でも、神経質な傾向(neuroticism )はネガティブな感受性と言い換えられます。神経質な傾向が高い方は、不安な出来事をより大きく感じやすい、病気への不安が強い、不潔なものへの感受性が高い、などの傾向がみられます。
HSPと感受性
HSP(Highly Sensitive Person)とは、1997年に精神保健カウンセラーのエレイン・N・アーロンによって提唱された概念であり、外部刺激に敏感で情報を深く処理する人々を指します[2]。
HSPは感受性が高く、繊細であり、日常生活や社会的な状況において、他の人よりも刺激に対する反応が強くなる傾向があります。これはHSPが情報をより深く処理し、感情や感覚を豊かに経験するためであり、その結果、よりストレスを感じやすいとされています。
一方で、HSPの感受性は独自の観察力や創造性をもたらすこともあります。繊細でありながらも、同時に強みや豊かな内面を持っています。
4つの領域と肯定・否定
私たちは日々、周りから様々な刺激を受けて暮らしています。もし感受性がなかったら、何も感じる取ることができず、無味乾燥な世界になってしまいます。感受性は私たちが人間らしく生きていく上でプラスな側面もあります。
一方で、ネガティブなものを必要以上に大きく感じてしまうため、マイナスの影響もあります。以下、4つの領域にわけて考えてみましょう。
①生活領域
1つ目は日々の生活における感受性です。例えば、四季の移り変わり、日々の家事、社会情勢などが挙げられます。
プラスの影響
普通の人が見逃しがちな、草花の変化を発見したり、日常の家事の楽しさを発見したりするなど、豊かな心を育みます。
マイナスの影響
些細な社会情勢の変化を深刻に感じ取ります。例えば、震度2ぐらいの地震でも混乱してしまいます。
②自分の感情領域
2つ目は自分の感情への敏感さです。私たちは日々感情を持って生きていますが、その感情の変化を敏感に感じ取ります。
プラスの影響
日記を書くと、自分の感情の変化を活き活きと描写することができます。例えば、少女漫画の作者は驚くほど繊細に感情を細かく描写できます。
マイナスの影響
心理学では「不安感受性」という言葉を使うことがあります。不安感受性が強い人は、少しでも不安なことがあると敏感に察知し、逃げたくなってしまいます。
③対人領域
3つ目は人間関係への感受性です。江田ら(2007)[3]は、対人感受性が高い方は他者の言動や状態に関して敏感で、影響を受けやすいと述べています。
プラスの影響
相手の好意をしっかりと感じ取ります。相手の楽しい感情や、長所もたくさん発見していきます。幸福な時期は人一倍幸せを感じ取ることができます。
マイナスの影響
相手のマイナス感情も多く受け取ってしまいます。例えば、ちょっとした意見の食い違いがあった時に、すごく批判されたような気持ちになってしまいます。相手の感情の変化に振り回され疲れてしまいます。
④身体感覚
感覚感受性は、視覚や触覚など、外的な刺激に対する感受性です。この感受性は、五感の感覚が大きくかかわっています。
プラスの影響
おいしいものを食べたときに人一倍おいしく感じます。細かい味の変化などもわかります。温泉に行ったときなどは心身共に充分リラックスできます。
マイナスの影響
船橋(2013)[4]は、感覚感受性のデメリットとして以下のような項目を挙げています。例えば、蛍光灯のチラつきが気になる、大きな音に敏感に反応する、部屋の乾燥に気づきやすい、など、聴覚や視覚、皮膚感覚などが過敏になります。
このように、感受性が豊かだと、日々の生活を豊かにする側面もある一方で、対人関係での問題があったり、不安やストレスを抱え込みやすいなどの問題があります。
マイナスの影響が長期的に続いたりすると、場合によっては適応障害、不安障害(不安症)、うつ病などの精神疾患にもつながりやすくなるので注意が必要です。
感受性が強い-心理学研究
最近では、感受性が強いと起こる問題について研究が進んできています。気になる項目があったらクリックしてみてください。
感受性とうまく付き合う方法
これからは、感受性が豊かすぎる人が日々の生活でどうすれば豊かに暮らせるのか?その対処法を提案させて頂きます。
・プラスに活かす決意
・日々の生活
・自分の感情
・対人関係
・身体的対処
ご自身の生活に活かせそうなものがありましたら是非参考にしてみてください。
プラスに活かす決意
まずはじめに、感受性のメリット・デメリットを把握したうえで、感受性の強さをプラスに活かす決意を固めていきましょう。
優れた芸術家、小説家、商品企画者は、誰も気が付かないような作品や商品を生み出しています。感受性の強さは、言い換えれば天からの贈り物です。是非、日々の生活でプラスに活かすよう工夫する決意を持ちましょう。
日々の生活
活かし方
例えば日本では四季の移り変わりがありますが、感受性が豊かな方は、季節の変化をしっかり感じ取ることができると思います。是非草花の移り変わり、自然の美しさなどを楽しんでください。
絵を描いたり、写真を撮ったりするのもオススメです♪
困った時は
日々生活をしていると、様々なニュースを目にする機会があると思います。感受性が豊かな方は、ネガティブなニュースを必要以上に大きなものとして捉えてしまうことがあります。
この時の対処法としてまず大事なことは、ネガティブな情報から距離をとることです。例えば、大災害が起こった際に連日ニュースが流れてきてしんどくなる方は、思い切って情報をシャットアウトすることも大切です。ある程度知っておかなければならない場合も、「関連ニュースを見るのは1日30分まで」と決め、自分の心を守りましょう。
もう一つ大事なことは、現実的に考えていくことです。拡大解釈をしていないか?事実を元に考えているか?意識して、冷静に考える癖をつけましょう。拡大解釈してしまう癖がある方は以下のコラムを参照ください。
自分の感情
活かし方
感受性が強い人は、自分の感情の変化によく気が付きます。特に肯定的な感情であれば、人一倍人生を楽しむことができます。楽しい、うれしい、幸せという感情をしっかりと感じ取れるのは大きな財産です。今日あった嬉しい出来事を日記に綴るなどもいいかもしれません。
困った時は
一方で、ネガティブな感情を感じ過ぎてしまうこともあるかもしれません。そんな時は、「くよくよ考えるのはあと5分だけ」と決め、何か別の活動を開始してみましょう。リラックスしたり楽しめるような活動に取り組み、気持ちをリフレッシュしましょう。
また、自分の感情に振り回されると、行動が制限されてしまうことがあります。例えば、外に出ると菌があると感じ恐怖心が芽生えると、その恐怖心を元に行動するかを決定してしまいます。
これは心理学の世界で、感情的決めつけと言います。感受性が強い方によくみられる認知の歪みです。感情の赴くままに行動を決定する感覚がある方は、ぜひ以下の動画を参照ください。
感情的決めつけへの対処(動画)
対人関係
活かし方
対人関係の感受性が強い方は、人の感情の機微に敏感なので、接客業、秘書業務、カウンセラーなど向いていると言えそうです。これらの職業は感受性の強さが武器となり、気が利くという長所として活かすことができます。
困った時は
感受性が強いと、特に相手の怒りや悪口を何倍にも感じてしまいます。敏感に相手の感情を察知してしまい、苦しくなってしまう…ことが多くなります。
改善するコツは、相手の目を気にするのではなく、私的自己意識を強くしていくことが大事です。私的自己意識とは、自分がどう感じているか?自分はどうしたいか?という意識になります。
周囲の人に対する意識を低くし、自分自身の価値観、生き方に目を向けるようにするのです。人の目がすごく気にする…人の感情に敏感…という方は下記のコラムを参照ください。
身体的対処
活かし方
感受性が豊かは方は、体の面でもたくさんの快感情を得ることができます。おいしいものを人一倍楽しみ、いいにおいを人一倍楽しむことができます。
困った時は
身体的な感受性が強い人は、騒音や化学薬品などに敏感です。もし辛い場合は、環境の調整が極めて大事です。例えば仕事で静かな席に移動させてもらったり、生活環境が合わないと感じたら引っ越しも視野にいれてもいいかもしれません。落ち着いて生活できる環境を整えましょう。
特に体がいつも緊張しやすいという方は、以下のコラムも参考にしてみてください。体のリラクセーション法を解説しています。
まとめ
ここまで、感受性について解説し、感受性が強すぎる方の基本的な対処法をお伝えしました。繰り返しになってしまいますが、感受性の豊かさは天からの贈り物でもあります。
是非ご自身のポジティブな個性として発揮できるように、自分の感性とうまく付き合い、一度しかない人生を豊かに過ごしてほしいなと感じます。是非参考にしてみてください♪
お知らせ・発展編
ここまでは感受性の基礎について解説をしてきました。ここからは「お知らせ」と「発展編」になります。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・強すぎる感受性の改善
・思い込みを改善する方法
・現実的に考える練習
・感情のコントロール法
体験受講に興味がある方は下記のリンクからお待ちしています。筆者も講師をしています(^^)
HSPとは何か?
近年感受性研究としてHSPが発展してきています。基本的な知識として学んでおくことをオススメします。
おススメの仕事
感受性が豊かな方におススメのお仕事を考えてみました。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連