自己肯定感が低い,高める方法
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「自己肯定感を高める方法」についてご相談を頂きました。
相談者
34歳 女性
お悩みの内容
私は幼少期にすごく厳しい家庭で育ちました。しつけが厳しく、褒めてもらった記憶がすごく少ないです。その影響からか自己肯定感が低く、いつもびくびくしている感覚があります。
自分のだめなところばかりを見てしまうので、いつも消極的です。どうすれば自己肯定感を高くすることができるのでしょうか。自分に自信がある人がうらやましいです。
幼いころの家庭環境が人生通して影響している感覚があるのですね。自己肯定感は人生の土台となる基本的な感覚です。これからの人生でしっかりと育てていけるように一緒に考えていきましょう。
自己肯定感とは何か?
まずはじめに自己肯定感の意味や効果から考えていきましょう。
自己肯定感とは
自己肯定感を理解する上では
「自己」
という言葉を理解する必要があります。下記は、「自己」の概念図です。自己には、実績、失敗、未来、過去、目的、長所、短所など、さまざまな要素が含まれています。
つまり、良い面も悪い面も含めて「自己」は成り立っています。「自信を持つこと」だけが「自己を肯定すること」ではありません。失敗体験を含めた「あらゆる面を持つ自分をまるっと肯定する感覚」が「自己肯定感」なのです。
高める4つのポイント
自己肯定感はこのように非常に広い概念ですが、高めるには以下の4つのポイントがあると考えています。
①自己効力感
②自己受容
③温かいコミュニケーション
④アイデンティティ
以下それぞれの項目について、代表的な改善策を複数提案させて頂きます。ご自身の状況に合いそうなを組み合わせて取り組んでみてください。
①自己効力感を高めよう
自己効力感は「自分にもできる!うまくやれる!」という感覚を意味します。自信の源ともいえる感覚で、自己肯定感の土台となります。
まずは、以下にあてはまる方かチェックしてみてください。
何をやってもうまくいかない感じがある
行動してもどうせ失敗すると思う
今まで挑戦してこなかった
結果が出なかったことが多い
いかがでしょうか。これらの項目に対して「よくある」と感じる方は、自己効力感が不足している可能性があります。以下に自己効力感を向上させる方法を提案しています。参考にしてみてください。
活動的にチャレンジする
自己効力感は、何かにチャレンジをして結果を出していくことで得られるものです。もちろん過度の目標設定はNGですが、自分の生活を豊かにするような前向きな目標を持ち、行動していくようにしましょう。
小さな目標を達成する
自信をつける上で大事なことは、目標を小さく分解して、スモールステップを作ることです。例えば、大型資格を取りたいという目標があったら、
まずは教材を買う
教材を3ページペースで進める
教材を5ページペースで進める
という形で、達成しやすい簡単な目標から1つ1つこなしていくのです。このような小さな目標にすると、「自分にもできる!」という感覚が芽生え、前向きな気持ちになっていきます。
スモールステップの作り方については、以下のコラムの中盤で詳しく解説しています。興味がある方は参照ください。
自分の成長を確認する
皆さんは日々、自分が成長した点を確認しているでしょうか。
たとえば、私(川島)が好きなプロゲーマーの梅原大吾さんは、1日1つ強くなるというテーマに練習をしているそうです。これはとても、自己肯定感を高めることができます。
一日1つと思うと小さく感じるかもしれません。しかし、1年なら365個、10年なら3650個です。長い目で考えるとすごい数になります。この1つ1つの成長が自信の源です。
自分ができたことを毎日、考える時間を持つようにしましょう。
②自分を受け入れる,自己受容
自己受容とは、失敗・短所・過去の過ちも含め、自分を受け入れる感覚です。自己肯定感はマイナス面をしっかり認めていくことも大事になります。
まずは以下にあてはまる方かチェックしてみてください。
過去の自分を消し去りたいと思う
学歴や家柄を受け入れられない
自分の容姿が嫌いである
自分を好きになれない
いかがでしょうか。これらの項目がよくあると感じる方は、自己受容が不足していると予測できます。以下に自己受容をするコツを提案しています。参考にしてみてください。
身の丈にあった理想を
アメリカの心理学者ロジャーズ (Rogers, C.R.)(1959)[4]は、人格の受容と成長を重視した「来談者中心療法(パーソン・センタード・セラピー;person-centered therapy)」を確立した人物です。
ロジャーズは、自己には「理想」と「現実」があるとしています。多くの人は、自分の理想と現実とのギャップに悩んでいます。
もっと頭が良ければよかったのに・・・
自分にも才能があればよかったのに・・・
コミュ力の高い人間になりたいのに・・・
この問題を解決していくには、時には自分自身としっかり向き合い、理想を修正し、現実の自分を受け入れていく作業が必要となります。
過去を未来に活かす
自己肯定感の「自己」には
能力的にできないことがあった
いじめを受けた
暴言を言われた
誰かを傷つけてしまった
罪を犯してしまった
これらも含みます。自己受容をするには、過去の嫌な記憶も含め、「辛い過去があったからこそ今の自分がある」と捉える必要があります。
この時、過去の嫌な出来事を、人生の糧にするというやり方もあります。例えば、いじめを受けなければよかったというお悩み…これは本当にもっともです。しかしそれだけでは、自分自身を肯定することは難しいでしょう。大事なことは、失敗やマイナスの体験を、前向きな行動に変えていくことです。
例えば、私の同僚は、いじめを受けた体験をバネにして、いじめを世の中からなくそう考え、いじめの防止に関する動画配信をしています(いじめ撲滅委員会)。このように過去の自分の嫌な記憶を自分の活動のエネルギーに変えることも立派な自己受容の1つとなります。
もっと詳しく知りたい方へ
当コラムでは自己受容のやり方の代表的なものを紹介させて頂きました。自分を受け入れるコツをもっと詳しく知りたい方は後程、下記を参照ください。
③温かいコミュニケーション
自己肯定感は温かいコミュニケーションと深い関係があります。心理学の研究では、家庭環境、友人関係、恋愛関係が充実している人の方が自己肯定感が高いことが分かっています。
温かいコミュニケーションについて、以下にあてはまる方かチェックしてみてください。
気軽に雑談できる友人がいない
自分を助けてくれる人が少ない
休日を孤独に過ごすことが多い
いままで愛されてこなかったと感じる
いかがでしょうか。これらの項目について当てはまると感じる方は、温かいコミュニケーションが不足していると予測できます。以下に改善策を方法を提案しています。参考にしてみてください。
感謝を言葉にする
心理学の世界では、感謝をすることについて、いろいろな研究が行われています。いずれの研究においても、感謝することはプラス効果につながることが分かっています。
いただきます
ありがとう
助かったよ
これらのワードを口癖にして、人に感謝することを習慣にしましょう。自然と相手の笑顔も増えて、自分自身の自己肯定感を高まると思います。詳しくは下記のリンクを参照ください。
他人を肯定する
自己肯定感を高めるには、自分だけでなく、人を肯定すると効果的です。心理学の研究は、人を好きになる人ほど、自己肯定感が高い傾向があり、人を嫌いになりやすい人ほど、自己肯定感が低いことがわかっています。
心理学の世界には「返報性」という言葉があります。あなたが誰かを好きになると、同時にあなたも好かれやすくなり、関係性はより良くなり、結果的に自己肯定感もあがっていくのです。
誰かを嫌いになるより、誰かを好きになる。そんな世界観を育て行きましょう。詳しくは下記のリンクを参照ください。
温かいコミュニティに所属する
心理学の研究では、人に受けいられてもらった経験は、自己肯定感に極めて重要であることが分かってます。
もしあなたが所属しているコミュニティが殺伐としていて、蹴落としあうような環境にある場合、自己肯定感は向上しにくいです。
大事なことは、多様性を認める、懐の深いコミュニティ、助け合いの精神がある集団に、1つは所属しておくことです。
お互いを励ましあい、認め合うような体験は、きっとあなたの自己肯定感を育ててくれるはずです。
今所属しているコミュニティが殺伐としている…と感じる方は下記のコラムも参照ください。
④アイデンティティを確立
アイデンティティの確立とは、自分とは何か?自分はどう生きるか?、についてしっかり答えられる状態を意味します。自己肯定感は「生き方の肯定」とも言えます。
自分の生きる目的を明確にして、エネルギッシュに行動している人ほど自己肯定感は高くなる傾向にあります。アイデンティティの確立について、以下にあてはまる方かチェックしてみてください。
将来やりたいことがわからない
社会に居場所がないと感じる
自分の長所がわからない
周りに流されて生きてきた
いかがでしょうか。これらの項目が当てはまると感じる方は、アイデンティティの確立が不足していると予測できます。
心理学者の Maritn-Alboら (2007) [7]は、大学生420人を対象に、5つのアイデンティティと自尊心について調査を行いました。その結果、すべてがプラスの強い相関になっていました。
私たちの人生は一度しかありません。一度しかない人生をどう生きたいのかが定まってくると、私たちの心にはよりどころができて、筋の通った一貫性のある生き方ができるようになっていきます。
少し深い話になってしまいますが、自己肯定感の芯を固めていくには、自分の人生を胸を張って肯定できるような、前向きな目標や哲学が大事であることを抑えておきましょう。
詳しくは下記のリンクを参考にしてみてください。
アイデンティティの確立
まとめ
当コラムでは自己肯定感を高める方法を紹介していきました。自己肯定感は非常に広い概念で、様々な感情や環境と関連しています。紹介させて頂いた、それぞれの項目で心に響くものがありましたら、日常生活で取り組んでみてください。
皆さんが自分をしっかりと肯定し、自信をもって生きて行かれることを心から応援しています。なお、自己肯定感については動画も作成しています。仕上げとしてご活用ください。
研究紹介
自己肯定感が高くなると人生において様々な効果があります。今回はその中から4つの効果を紹介します。気になる項目がありましたらクリックしてみてください。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・自己肯定感を高める,心理学の学習
・自己肯定感の診断
・自分の長所,発見ワーク
・自信をつける,スモールステップ法
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
・出典[1] 佐藤 祐基 (2009). 自己効力感と性格特性との関連 人間福祉研究, 12, 153 -161.[2] 横山 里沙・久保田 瑞・古田 真司 (2011). 中学生における感動体験と自己肯定感の関連についての検討 ―学校適応と家族機能の影響に着目して― 東海学校保健研究, 35, 17-24[3] 浦上 昌則 (1995). 学生の進路選択に対する自己効力に関する研究 名古屋大學教育學部紀要. 教育心理学科, 42, 115-126.[4] Rogers, C. (1959). A Theory of Therapy, Personality and Interpersonal Relationships as Developed in the Client-centered Framework. In S. Koch (Ed.), Psychology: A Study of a Science. Vol. 3: Formulations of the Person and the Social Context. New York: McGraw Hill.[5] 樋口 善之・松浦 賢長 (2003). 大学生における自己肯定感と生活習慣との関連に関する研究 福岡県立大学看護学部紀要,1, 65-70[6] 細田 絢・田嶌 誠一 (2009). 中学生におけるソーシャルサポートと自他への肯定感に関する研究 心理学研究, 57, 309-323.[7] Martín-Albo, J., Núñez, J.L., Navarro, J.G., & Grijalvo, F. (2007). The Rosenberg Self-Esteem Scale: Translation and Validation in University Students The Spanish Journal of Psychology, 10, 458-467.[8] Lindsay, E.K., & Creswell, J.D. (2014). Helping the self help others: self-affirmation increases self-compassion and pro-social behaviors, Frontier in Psychology, 12, doi: https://soi.org/10.3389/fpsyg.2014.00421[9] 藤本 学・大坊 郁夫 (2007). コミュニケーション・スキルに関する諸因子の階層構造への統合の試み パーソナリティ研究,15, 347-361.
具体的でわかりやすい説明ありがとうございます。自分の短所、長所が明確になりました。ここに書いてあったことを実践し、少しづつ自己肯定感を上げていきたいです。