協調性がない人への対処法,接し方
皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のお悩み相談は「協調性がない人への対処法」です。
相談者
32歳 女性
お悩みの内容
私の職場には協調性がない同僚がいて、付き合い方に悩んでいます。同僚は繁忙期にもかかわらず、有休をたくさんとります。
プライベートでは、旅行の計画をした時、みんなの意見に一人だけ反対をして、仕切り直しになった事もあります。なぜこんなに協調性がないのでしょうか。協調性のない同僚とうまく付き合ってい行く方法はありますか?
同僚の言動に振り回され、大変な気持ちが伝わってきました。当コラムでは、協調性がない人の対策について解説していきます。是非最後までご一読ください。
協調性がない人の原因
一口に協調性がないと言っても、原因を特定することは難しく、様々な原因が複合していると考えるのが自然です。そこで当コラムでは、協調性がない人に見られる7つの原因を紹介します。
①余裕がない
協調性を発揮するには、ある程度の心の余裕が必要になります。生活が安定し、精神的に安定してこそ、私たちは他人を思いやる余裕を持つことができるのです。
一方で、生きること、生活することに精一杯で、周りに気を遣う余裕がなくなります。その意味で、協調性がない人は、心がいっぱいいっぱいで、他人に気を配る余裕がない可能性があります。
②自尊心が低い
炭谷(2003)[1]は、高校生121名を対象に、向社会的行動(協調性に近い概念)と自尊心の関係について調査を行いました。その結果の一部が以下の図です
こちらは、自尊感情が低いは向社会的行動が少ないことを意味しています。自尊感情が低い状態だと、自分には人を助けられるだけの価値がないという心理になりやすく、積極的になれないと推測できます。
③自己愛が過剰
協調性がない方の中には、自己愛が強い方がいます。自己愛とは、自分を愛する気持ち、自分を大事にする気持ちを意味します。適度な自己愛は他者との前向きな関係に役立ちますが、大きすぎたり、歪んだ自己愛は問題となります。
自分だけのことを考えてしまう自己愛はナルシズムと言ったりします。自分の利益のために他人を操作する、自分中心に物事を考える、賞賛を得ようとする、見栄っ張りなところがある方、これらにあてはまる方はナルシズムな自己愛になっている可能性があります。より深く知りたい方は以下のコラムをご覧ください。
④性格傾向
ナイジェルレスター医学博士ら(2016)[2]は行動遺伝学という分野において、協調性の遺伝率、家庭環境、外部環境を調査しました。その結果の一部が下図となります。
上図のように協調性は38%の遺伝率があることがわかりました。遺伝的影響については、簡単に変えられるものではありません。その意味で、協調性がない人と接するときは、ある程度はそういうものだと割り切ることも大事になってきます。性格と遺伝について、より深く知りたい方は以下のコラムをご覧ください。
⑤ダークトライアド傾向
性格については、利己的で冷淡なパーソナリティ特性を意味するダークトライアドの研究もあります。喜入(2016)[3]は、ダークトライアドと性格の関連について調査をしています。その結果の一部が、下図となります。
上記のように、ダークトライアド傾向がある方は、協調性の低さが指摘されており、冷淡で他者を自分の思い通りに操りたい利己な特徴があるとされています。
なおダークトライアドの特徴として、サイコパス傾向がある人は人口の1%程度いるという研究もあります(Jeremy Coid,2009)[4]。ダークトライアドについて理解を深めたい方は以下のコラムを参照ください。
➅発達障害の可能性
協調性がない人の中には、一定数で発達障害の方もいます。例えば、発達障害のひとつである「自閉症スペクトラム障害」がある方は、他人の気持ちを汲み取ることが苦手です。自閉症スペクトラム障害の方は特に、中途半端な物言いを理解するのが苦手です。
なるべく早く 適当に いい感じにしておいて 早めにやっておいて
これらの抽象的なワードはトラブルの元になります。数字を使って明確にすると、お互いスムーズに協力できることもあります。障害の特性を十分りかいすることが大事です。
⑦文化差,地域差
協調性に対する考え方は、文化の違いや地域の特性の影響も受けます。吉野ら(2021)[5]は、約15,000人以上を対象として「協調性」の地域差について3回に渡って調査をしています。
その結果、「協調性」については以下のような地域差がみられました。数字が大きいほど協調性が高く、小さいほど低いことを意味しています。
図のように、東京や大阪など大都市や大分、宮崎など九州東部、沖縄などが協調性の高さがみられます。一方、北海道、富山や石川などの北陸地方、静岡、愛知など中部地方などは協調性の低さがみられます。
こうした背景には稲作や農業の盛んな地域では周囲との調和的な傾向にあることや、商業都市では客との会話で調和が求められるなどの傾向が指摘されています。
協調性がない人,8つの対処法
ここまで解説したように、協調性がない原因は様々です。原因がさまざまということは、解決策も複数必要であると言えます。そこで、協調性がない人とうまく付き合う8つの方法を提案させていただきます。
① アサーティブに伝える
② 目標を自分で決めてもらう
③ 叱り方のコツ
④ 限界設定をする
➄ 過剰適応しない
⑥ チームプレイを減らす
⑦ 長所を活かす
⑧ 先天的な傾向も視野に
ご自身の状況に活かせそうなものを中心に組み合わせてご活用ください。
①アサーティブに主張する
協調性がない人と接する場面があったら、基本的にはため込むことはおススメしません。自分が感じていることを、我慢しても短期的にはどうにかなっても、長期的に考えるとストレスが溜まる一方になるからです。
ここでおすすめなのがアサーティブに主張することです。アサーティブとは、自分も相手も大切にした自己表現で、人間関係を大事にしながら健康的に主張する技術の総称です。当コラムでは、アサーティブの技術の1つである「主張とメリットを伝える」法を紹介します。具体的には以下のように伝えます。
*友人関係
連絡なしで30分遅刻するのは正直、きついなあ…たまには遅れてもいいけど、早めに言ってくれよ…適当に時間つぶせるからさ(主張)。そうすればこんな感じで険悪にならなくて済むからさ。(相手のメリット) そうそう、今日の遅刻分、ジュース奢りな笑
*日々の生活の場合
少し言いにくいんだけど、朝にやることが多すぎて、かなりストレスになっているので。だからできれば、ごみ捨てをお願いしたいの…(主張)。あなたも、朝、奥さんが笑顔なほうがいいでしょ(笑顔)(相手のメリット)
*仕事の場合
○○さん、今日のこの作業を30分手伝ってもらえると嬉しいんだ(主張)。この作業おわったら、今度、ランチおごるからさ笑(相手のメリット)。
このように相手のメリットも加えながら、協力をお願いすると、角が立たず、人間関係を維持しつつ、自分の主張も伝えることができます。アサーティブコミュニケーションには、柔らかく主張する技法がたくさんあります。
より深く知りたい方は下記コラムをご覧ください。
②目標を自分で決めてもらう
アサーティブに主張すると、あくまで私の経験則ですがざっとですが50%ぐらいは、意外と相手は行動を改善してくれるものです。一方で、主張したとて、自分の要求が拒否されることもあります。
そんな時は、約束や目標を自分で決めてもらうのも1つのやり方です。心理学の研究では、指示されたことについては、心理的リアクタンス(反抗的な気持ち)が生じる一方で、自分が決めたことには行動しやすいことがわかっています。
できる範囲を自分で決めてみてください
気持ちよく手伝える範囲を教えて
今月の業務改善の目標を自分で立ててみましょう
このように自分で考えるように促すと、責任感が生まれ、協調性も向上していきます。
③叱り方のコツ
アサーティブに主張する、自分で目標を決めてもらうのは、比較的穏やかな主張の仕方です。一方で、仕事上では、どうしても強く主張をせざるを得ないこともあります。特に、会社に大きな損害が出る、非倫理的な行動、犯罪、命の危険がある、このような緊急性の高い事例がある場合は、しっかり叱ることも大事です。
ただし、頭ごなしに叱っても、協調性のない人は余計にやる気を失ってしまいます。
この〇〇をしなさい!これは会社命令です。
○○さんってほんっと自分勝手だよね!
いつも約束破るよね。いい加減!
〇〇さんまじで信用できない!
このような人格まで含めたいい方はNGです。大事なことは、NGな行動のみに焦点をあて、叱ることです。
○○さん、△△については、これだけ遅れているよ。
今回で遅刻は3回目だよ。さすがにこれはNGだよ。
返信が3日ないよ。これでは信用をうしなうよ。
このように明確に何がNGなのかを焦点をあてて叱ると、改善しやすいですし、人格を否定されたわけではないので、心理的なリアクタンスが生まれにくいと言えます。もっと詳しく、叱り方のコツを学びたい方は以下のコラムを参照ください。
④限界設定をする
強い主張をしても、やはり変わらないケースもあるでしょう。この時、最後の手段として、限界を設定しておくことも大事です。限界設定とは、
ここまではできるけど、ここから先はできないという区切りを明確にすること
を意味します。例えば、
10分以上、遅刻をしたらその日は帰る
メールの返信が2日ない場合は上司に報告する
納期を守らない場合は次の案件から外れてもらう
などが挙げられます。協調性がない人は、限界を設定しておかないと、どこまでもズルズルとだらしなくなってしまいます。OKとNGのラインを明確にして宣言しておくと、意外とうまくいくこともあります。
抽象的な表現ではなく、具体的な表現でルールを明確にしておきましょう。限界設定については以下のコラムで詳しく解説しました。参考にしてみてください。
➄過剰適応しない
心理学には「過剰適応」という言葉があります。過剰適応とは以下の意味があります。
自分の気持ちを押し殺して、相手や環境に必要以上に合わせる状態
主張をして、限界設定をして、それでも相手が変わらない場合、NGなのは、あきらめてしまい必要以上に相手に合わせてしまうことがです。自分の信念やライフスタイルを変えてまで、相手に合わせてしまうと、過剰適応になり、自分の人生を生きることが困難になります。
相手がどこまで行っても協調的でない場合は、ある意味での割り切りも必要になってきます。自分とは違う、個性的な存在として受け入れ、喧嘩になりそうな部分は、思い切って相手と距離を取り、健康的に関わることができる部分だけを残すというやり方もあります。
相手に合わせすぎて、過剰適応しているかもしれない…と感じる方は下記コラムをご覧ください。
⑥チームプレイを減らす
協調性がない人にわざわざ、協力をお願いするとトラブルになります。ある程度割り切って、個人で行動する環境を整えることも大切です。例えば以下のような例が挙げられます。
*友人関係
飲み会をする時は、スタート時間を設定だけして、現地集合にする。自分が来たい時間にゆるゆるとこれるようにする。
*夫婦関係
趣味のランニングはお互い高めあえるので、一緒に走るが、家事を分担するともめるので、役割を完全に分けて自己責任にする 例えば、ごみ箱を個人用にして、それぞれ自己責任で自分で捨てるなど
*仕事の場合
協調性が必要な、プロジェクトリーダーなどをお願いすることは割ける。複数人で協力するより、ある程度枠組みが決まっていて、個人で進めていく仕事を中心にお願いする。例えば、プログラミングの仕事、データを分析する仕事、動画を編集する仕事
このように集団行動が苦手であれば、個人が輝くような環境を整えることも大切です。
⑦長所としても捉えなおす
協調性がない人は、集団での行動が苦手ですが、きらりと光る才能を持っている方もいます。たとえば、協調性がない人の長所としては、
周りの目を気にせず発言できる
気遣いは苦手だが、集中して取り組める
だらしない分もあるがムードメーカーになっている
我が道を行くことで新しい発想ができる
などが挙げられます。人はそれぞれ、長所、短所がデコボコなものです。前向きにフォローすれば、もしかしたら才能を発揮できるかもしれない!そんな視点も是非持つようにしましょう。
⑧先天的な傾向も視野に
当コラムの冒頭でもお伝えした通り、先天的な性格傾向、自己愛が強い性格、発達障害など複数の原因により、協調性が持てない方もいらっしゃいます。小さな頃から長期的に協調性がない場合は、先天的な可能性が高くなります。
このような方に、あなた自身の物差しを元に、無理に協調性を求めても、相手もあなたも疲れてしまいます。もし先天的な問題が大きいと感じたら、協調性の無さを嘆くのではなく、⑦で挙げた長所を探す視点を持ち、良いところを引き出す気持ちを持って接してみてください。そうすればきっとお互いWINWINな関係になれるはずです♪
仕上げ動画
協調性について動画でもしっかり解説しました。仕上げとしてご活用ください。
しっかり身につけたい方へ
当コラムの内容をしっかり身につけたい方は、公認心理師による講座をおすすめします。内容は以下のとおりです。
・協調性がある人,ない人の心理学
・過剰適応をしない,断る練習
・成長を促す,叱り方練習
・アサーティブコミュニケーションの基礎
🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連