夫婦喧嘩から仲直りする方法
皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のお悩み相談は「夫婦喧嘩から仲直りする方法」です。
相談者
34歳 女性
お悩みの内容
私は現在結婚3年目で共働きをしています。出産後に家事や育児の分担で喧嘩をすることが多くなり、3か月ぐらい険悪な雰囲気になっています。楽しく暮らしていきたいのに息が詰まる思いです。夫婦喧嘩から仲直りする方法を知りたいです。
3か月も険悪な雰囲気が続くと心にも相当な負担がかかっていると思われます。当コラムでは、夫婦喧嘩の心理と、仲直りのやり方について解説していきます。円満な家庭のために少しでもお役に立てればと思います。是非最後までご一読ください。
夫婦喧嘩と研究
心理学の分野ではこれまで、夫婦仲について様々な研究がなされてきました。重要なものをピックアップしたので、気になる項目がありましたら展開してみてください。
仲直りをする12の方法
ここからは夫婦喧嘩から仲直りをする10の方法を提案させて頂きます。口を利かないほどの気まずい状況から改善していくアイデアをお伝えします。
①自分から仲直りする
②いったん矛を収める
③小さなコミュニケーション
④感謝の表現を増やす
⑤話し合いの提案
⑥まずは傾聴
⑦おどしは厳禁
⑧昔のことを持ち出す
⑨アサーティブに話し合う
⑩最後の手段,限界設定
⑪目的を共有する
⑫愛情表現を増やす
夫婦喧嘩の状況はご家庭によって変わってくると思います。ご自身にあてはまるアイデアを組み合わせてご活用ください。
①自分から仲直りする決意
お互いが意地を張っていると夫婦喧嘩は長期化しがちです。
喧嘩の原因は相手が作った…
相手から譲歩すべきだ…
謝るのは相手だ…なんで自分から…
自然と関係は修復するでしょ…
お互いこのように考えていると、いつまで経っても仲直りのタイミングは訪れません。特に夫婦喧嘩が長期化している場合は、前向きにあきらめ、「自分から修復しよう」と決心することが大事です。
理由はさておき、あなた自身が動かなくては、いつまでもこの状態が続くと考え、アクションを起こす意志を固めましょう。
②いったん矛を収める
夫婦喧嘩が長期化している場合、お互い相手の非に目が向き、文字通り喧嘩モードになっています。ここで大事なことは、矛いったん収め、仲直りモードになることです。
心理学の世界には「返報性の原理」という言葉あります。返報性の原理とは、相手に投げかけた気持ちは、返ってきやすいという原理です。
あなたが、仲直りしたい!と感じれば感じるほど、相手にもその気持ちが伝わり、修復は早くなるのです。
③小さなコミュニケーション
次に土台となる関係作りをしていきます。大切なことは毎日の小さなコミュニケーションです。冷戦状態でも以下のように、日常の何気ないやり取りを積み重ねていきましょう。
「おはよう」「おやすみ」だけは言う
仕事から帰ってきたらお茶を出す
そっとおやつを渡す
お風呂を沸かして入浴剤を入れておく
これだけで、印象はだいぶ変わるものです。相手は戸惑うかもしれないですし、返してくれないこともあるかもしれません。それでもコツコツ続けていきいましょう。
④感謝表現を増やす
Allen W. Barton(2015)[5]ら米国ジョージア大学の研究チームは、468組の夫婦を対象に感謝の表現が結婚関係にどのような影響を与えるかということを調べました。
以下は、女性の離婚のしやすさに影響する結果です。
結果から、夫婦間の感謝表現が少ないと、離婚しやすくなることが読み取れます。上図は、女性の統計となりますが、男性でも同じような結果になっています。
この研究をヒントにすると仲直りの話し合いをする前に以下のような行動をすることをおすすめします。
*感謝を思い出す
落ち込んだ時に笑わせてくれた
旅行の計画を立ててくれた
なんやかんや稼いでくれる
*感謝を言葉にする
掃除をしてくれたらありがとうという
給料日におつかれさま♪と感謝する
このように、相手の存在の大事さを再認識したり、伝えることから始めていきましょう。日常的に感謝する気持ちが夫婦関係の質を高め、相手にその気持ちを積極的に伝えることで、良好な夫婦関係の継続につながるといえそうです。
改めてパートナーに対する感謝の気持ちを育てたい方は下記のコラムを参照ください。
⑤話し合いの提案
ベースの関係作りができたら、いよいよ話し合いの提案をしていきます。ここは率直に伝えてOKです。
この前のことで話し合いのだけど…
今度の休日、しっかり話し合いたい…
としっかり告げましょう。残念ながらNGな場合もありますが、ほとんどの場合はOKをもらえずはずです。
話し合いは環境も大事です。月曜の夜、深夜、騒がしいお店、などはおすすめできません。落ち着いて話し合える時間と場所を選びましょう。
⑥最初は傾聴に徹する
夫婦関係は「異なる価値観」自体が必ずしも問題なのではありません。問題なのは
相手の価値観を否定する
自分の価値観を押し付ける
このような態度事態が最も大きいのです。いざ話し合いの場面に入ったら、まずはあなたの主張はいったん脇においておきましょう。
そして、初めは相手の気持ちを傾聴することに徹しましょう。そうして相手の話を傾聴するなかで、
ここは納得できるな 確かに〇〇私にも問題があるかも
と感じる部分をしっかり見つけていきましょう。そしてその部分をしっかりと相手に伝えます。
確かに私もそう思う そうかあ~その点については申し訳なかったよ…
と共感しながら聴いて行きます。これだけでも、あなたに対してこわばった印象がかなり解れてくでしょう。共感の方法については下記のコラムに書いてあります。後程練習してみてください。
⑦おどしは厳禁
戸田(2008)[6]の研究では、幼稚園に通う幼児の母親214名を対象に、脅しと夫婦喧嘩について調べたものがあります。以下の図をご覧ください。
このように脅し/非難をする母親は夫婦喧嘩が起こりやすいことがわかります。夫婦の問題として、脅しや非難がある場合は感情的になりやすく、夫婦喧嘩に発展する恐れがあり注意が必要です。
⑧昔のことを持ち出さない
戸田(2008)[6]の研究では、幼稚園に通う幼児の母親214名を対象に、問題増大(昔のことを持ち出すなど)と夫婦喧嘩について調べたものがあります。以下の図をご覧ください。
このように、問題の増大(昔のことを持ち出すなど)の行為が多い夫婦は、喧嘩しやすいといえます。特に夫婦喧嘩中は、よく昔の話を持ち出すケースが多いため、さらに喧嘩がエスカレートする結果になりかねません。喧嘩に発展しそうなときは、その議題に対して建設的に話し合うことが必要です。
⑨アサーティブに主張する
相手の話をしっかりと聞いた場合は、相手の気持ちは随分和らぎます。ここまでできれば70%ぐらいは仲直りしているかもしれません。
一方で、価値観のズレがある場合は、あなたの価値観も伝えるようにしましょう。ここで大事なのはアサーティブな精神を持つことです。アサーティブとは
相手もOK 自分もOK
の精神をもって人と関わることを意味します。
相手の話にしっかり耳を傾けたら、今度は自分の話を主張しても良いのです。あなたが感じていることも、伝えて、建設的に話し合っていきましょう。
アサーティブコミュニケーションについては下記のコラムでしっかり記述しています。話し合いの前にぜひ参考にしてみてくださいね。
⑩最後の手段,限界設定
あなたがここまで相手を気遣い、それでも相手が頑なになっている場合は、最後の手段として、限界設定をしておくことも大事です。限界設定とは
ここまではOK これ以上はNG
の線引きとなります。限界を設定し、もし相手が守らない場合は、どう行動するかを決めておくのです。
休日半日は子育てを手伝う
→できない場合は1か月実家に帰る
便所掃除はパパ担当
→できない場合は小遣い2000円カット
夫婦関係は月に1回は行う
→できない場合は離婚する
このように明確な線引きをしましょう。限界設定は最後の手段なので、基本は①~⑧までの話し合いを大事にしてください。
⑪目的を共有する
腹を割って話し合い、お互いの主張を譲り合えると、相手と今までよりももっと大きな絆で結ばれるはずです。
神原(1992)[7]は、うまくいく夫婦の基本的結合パターンを、「共生的結合(きょうせいてきけつごう)」という言葉で示しています。共生的結合とは、以下のように説明されています。
共に生き、人生を共に歩むという共同目標のもとで、相互信頼に支えられた相互成長を期しながら互いの人生における短期的・長期的なゴールを目指して喜怒哀楽の体験を積み重ねていく関係
つまり、夫婦は、互いの価値観や感情・ビジョンを共有しながら同じ方向を目指すチームであり共同経営者なのです。夫婦喧嘩というとネガティブなイメージが強いですが、仲直りすることができれば、より絆を深めるきっかけにもなるのです。
これからも衝突することはあれど、また話し合えば乗り越えていけると確認し合うのも良いでしょう。
⑫愛情表現を増やす
戸田(2008)[6]の研究では、幼稚園に通う幼児の母親214名を対象に、愛情表現と夫婦喧嘩について調べたものがあります。以下の図をご覧ください。
このように愛情表現が多い夫婦は、夫婦喧嘩が少ないことがわかります。つまり、夫婦の関係を円満にしたい場合には日ごろから愛情表現をすることが大切です。
具体的には、
・会話を増やす
・笑顔を増やす
・感謝の言葉を増やす
などがあげられます。
愛情表現というと、昔のようなキザなことを言わないといけないのか…と考えがちですが、実際はそうでもありません。ほんのちょっとした心がけで夫婦関係は安定するものです。夫婦喧嘩から仲直りしたい人は、ぜひ小さいことから初めてみてください。
愛情表現する方法をより深く知りたい方は、以下のコラムをご参照ください。
まとめ
夫婦生活に喧嘩は付きものです。夫婦の信頼関係は、お互いにぶつかり合い、本音で話しあうことでより強固なものになっていきます。夫婦喧嘩の最中は辛いものですが、その辛い状況を2人で乗り越えていくことで絆は深まっていきます。紹介した方法を活用して、円満な夫婦関係を送られることを願っています。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・夫婦喧嘩から仲直り,歩み寄り練習
・言い分を理解,傾聴力をつける練習
・最後の手段,限界設定のコツ
・人間関係を長続きさせる心理学
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連