不倫の心理と対策
皆さんこんにちは。人間関係講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のテーマは「不倫の心理と対策」です。
相談者
27歳 新婚1年目 女性
お悩みの内容
旦那の浮気を心配しています。旦那の職場は女性が多く、社内恋愛が多い職場だと聞いています。旦那は面倒みがいいので、部下からも慕われており、浮気に発展しないかが不安です。不倫をしないような家庭を築きたいと思っています。どうすればいいでしょうか…。
不倫は家庭を崩壊させてしまう非常に危険な行為ですから、これをおそれるのは当然のことだと思います。不倫は人類にとって、重要性の高いテーマだと考えまとめましたので、是非最後までご一読ください。
不倫と統計
まずは不倫と現実的な数字を理解するところから始めていきましょう。
セックスをする相手がいる人
相模ゴム株式会社(2018)[1]は14,100名を対象に「結婚相手、交際相手以外にセックスをする相手がいますか?」という統計を取りました。その結果が以下のグラフになります。
男性は16.8%、女性は13.6%の方が「相手がいる」という結果になりました。こちらは未婚の方も入っているので、不倫とは必ずしも言えないですが参考になります。
10人に1人が不倫
次に、既婚者だけの統計も見ていきましょう。リゼクリニック(2018)[2]は、既婚者192名を対象に、不倫に関する調査を行いました。その結果、不倫の経験率は以下の結果と分かりました。
既婚男性 が38.5%、既婚女性が18.1%と分かりました。ざっと既婚男性の5人に2人は不倫経験があるという結果になりました。こちらはあくまで1つの統計なのですが、筆者がその他の統計を調査したところ、少なくとも10%を切る統計はありませんでした。控えめに見積もっても10人に1人くらいは何らの関係で不倫行為をしていることが推測されます。
浮気はバレる
株式会社メディアエクシード(2018)[3]は 浮気経験のある男女200人を対象に、浮気がバレたかどうかについて調査を行いました。その結果、バレた人とバレなかった人の比率は以下のようになりました。おおよそ20%くらいの確率で浮気がバレたことがわかります。
どんな行為が浮気?
原一探偵事務所(2021)[4]では、20代~50代の男女合計300名を対象に、どんな行動をしたら浮気だと思うかを調査しています。その結果は以下の図になりました。
このように「肉体的な関係」を浮気とする男性に対し、女性は「内面的な依存」を重視する傾向が強いことがわかりました。いわゆる男性は肉体的浮気に厳しく、女性は精神的浮気に厳しいという定説が、ある程度裏付けられた形になります。
不倫のリスク
不倫のリスクについて、4つの点から解説していきます。
①精神疾患
不倫はパートーナーにとって心に大きな負担となります。最も大事なパートナーの裏切り行為はPTSDやうつ病の原因になることがあります。不倫をする側は、判明した時に心の病気につながる重大な行為をしている自覚が必要になります。
②子供への悪影響
心理学の研究では、夫婦関係が悪い家庭で育った子供は愛着不安や、抑うつを抱えやすいことがわかっています。
菅原ら(2002)[5]は、1360名の母親を対象に、夫婦関係と子どもの抑うつ傾向との関係を調査しました。その結果、夫婦仲が悪い家庭では、子どもの抑うつ傾向が増えることがわかりました。
ポジティブな感情交流のない家庭は、注意が必要です。夫婦の会話を増やす方法は以下のコラムで解説しました。是非参考にしてみてください。
③自傷行為・他害行為
不倫は心に大きな負担となります。これを解消するため、パートナーが自暴自棄な行動をとりやすくなります。その結果、アルコールやギャンブルに走ってしまったり、DVや最悪の場合は殺傷事件につながることもあります。ちなみに殺人事件の親族の比率は、家族が40%で1位となっているので注意が必要です。
④社会的地位の失墜
会社では左遷につながってしまったり、今の時代はSNSで永遠に情報が残ります。不倫の事実は、何十年も検索されることにもなり、仕事や社会的活動にマイナスになりがちです。
不倫をする原因
人間はなぜ不倫をしようと思うのでしょうか。ここでは不倫をする3つの原因を推測していきます。
①本能説
不倫の原因「本能説」は、猿の結婚関係から解説していきます。猿の婚姻関係には、3種類あるとされています。[6][7][8]
1:乱婚
オスとメスが特定の相手を定めず性愛関係をもつ「チンパンジー」の婚姻スタイルです。グループ内では、不倫が当たり前に行われ、強いオスがメスの取り合いをするので争いが絶えません。また子どもの父親が誰か分からないことから、オスは子育てを手伝いません。
2:一夫多妻
一匹のオスと複数のメスが性愛関係をもつ「ゴリラ」の婚姻スタイルです。メスは一途ですがオスは不倫をします。グループ内に他のオスがいないことから、基本的に争いはありません。また一夫多妻の場合も、メスは一人で子育てをします。
3:一夫一妻
一匹のオスと一匹のメスが性愛関係をもつ「テナガザル」の婚姻スタイルです。オスもメスも一途で不倫はしません。グループ内は、オスがメスを取り合うことをしないため争いがありません。また、オスは子育てに積極的参加します。
猿の婚姻関係では「乱婚」「一夫多妻」で本能的に不倫をしていることがわかります。では人間はどうでしょうか。以下の地図は「一夫多妻」を認めているかどうかを色分けしています。
写真:Wikipedia
一夫多妻の国も多いことがわかります。人間も不倫をする本能はまだまだ色濃く残っていると推測されます。
②金銭的に余裕
金銭的な余裕があると不倫につながりやすいことがわかっています。黒澤(2019)[9]は既婚の男性294人,女性298人を対象に、調査を行いました。その結果、個人年収が200万円未満と、600万円~1000万円以上について、浮気・不倫経験の「はい」「いいえ」の比率が異なること#anchor6がわかりました。
年収200万円以下は不倫をしにくく、年収600万円を超えると、不倫をする比率が上がることがわかったのです。不倫には、食事代や交際をするための場所代など、お金がかかるものです。余剰資金があると、これらの費用を捻出しやすくなり、不倫しやすくなってしまうと推測されます。
③相手の魅力
牧野(2012)[10]は、男性195名,女性205名の学生を対象に、浮気についての調査を行いました。その結果、男性は22名、女性は29名に浮気経験があることがわかりました。そして、浮気の要因としては、相手の魅力が挙げられていました。グラフを見ると女性が多い結果になっています。
④性的欲求
一方で男性の浮気の要因には、顕著な性的欲求が挙げられます。男性は9名、女性は1名であり、これは大きな違いとなっています。男性は性的な欲求が高くなると、不倫に走りやすいと、推測できます。
不倫を予防する方法
最後に心理士視点で、不倫を予防する方法を6つ考えましたので、是非参考にしてみてください。
①あいさつ 感謝をしっかり
夫婦関係は長くなってくると、つい挨拶がおざなりになったり、感謝の気持ちがなくなってきてしまいます。
「おはよう」「おかえり」「ありがとう」
と、しっかり伝えていれば、いざ不倫するか迷った時には、そのやりとりがちらつくものです。
「ああ・・・やっぱり、妻を裏切れない 旦那を裏切れない」
このような気持ちになると思います。実際にある研究では、感謝表現が多いほど、夫婦関係は持続しやすいことがわかっています。是非、あいさつ、感謝をあらためて続けていきましょう。感謝が不足していると感じる方は以下のコラムを参照ください。
②夫婦の会話を増やす
夫婦の会話の量が多いほど、離婚率が下がるという研究があります。MDRT日本会(2006)[11]は、既婚男女516名を対象に、夫婦の意識調査を行いました。その結果、夫婦の一日の平均会話時間は
・離婚する可能性がない夫婦:約86分
・離婚する可能性がある夫婦:約22分
離婚する可能性がない夫婦の方が、会話時間は4倍近く多いことがわかりました。つまり、夫婦の会話時間を増やすことで、離婚の危険性を下げられる言えそうです。
会話はたくさんすると信頼関係が深まり、不倫の抑制につながります。食事の時間を合わせ、テレビを消しスマフォを見ないでしっかり会話をするようにしましょう。夫婦の会話を増やす方法は以下のコラムで解説しました。ぜひ参考にしてみてください。
③魅力を磨く
原因のところでも解説しましたが、浮気の大きな要因は、魅力的な異姓との出会いが挙げられます。これを防ぐには、やはり自分自身の魅力をあげておくことも大事です。筋トレをして体型を整える、肌の手入れをする、姿勢を良くする、ファッションセンスを磨くなどを普段から継続することが大事です。
④余剰資金を持たない
特にボーナスが出た時期、宝くじがあたった時期などは、気が大きくなってしまって、散財ついでに不倫をしてしまうリスクが上がります。現金を持たないように、余剰資金はさっさと積立NISAに入れるなど、自由に使えるお金をなるべく持たないように、夫婦間で相談しておくことも大事になるでしょう。
⑤アイドルのおっかけ
アイドルのおっかけはおすすめです。アイドルはあくまで偶像の世界でなので、現実的な不倫につながることがありません。おっかけ活動に時間を使うので不倫をする暇がなくなるという効果もあります。
また何かに熱中するとメンタルヘルスに良い影響もあり、精神的に元気になれるという効果もあります。その意味でも、パートナーに好きなアイドルがいる場合は、おおめに見てあげるといいでしょう。私の妻も毎秒韓流ドラマを見ていますがどうぞどうぞと推奨しています。
⑥欲求不満にしない
夫婦関係の性的関係の行き違いは不倫につながりやすくなります。特に子育て期間中などは、男女でタイミングがずれやすくなり、男性側の不倫リスクがどうしても高くなります。恥ずかしがらずに、対策を夫婦で話し合うようにしましょう。
特に、女性は生理周期で、性的欲求の高まりが変わってくるので、女性側の高まりを男性側が把握しておくことが大事かもしれません。欲求不満の解消についてか以下のコラムで詳しく解説しました。参考にしてみてください。
仕上げの動画
不倫を防ぐ方法を動画でも解説しました。仕上げとしてご活用ください。
新しい夫婦の形態
ここまでは、不倫について解説をしていきました。冒頭でもお伝えしましたが、不倫については、本能として考える動きもあり、以下のような夫婦の形態も現代では出てきています。
モノガミー
モノガミーとは、一人の配偶者や恋人と排他的な関係を持つ結婚や交際の形態を指します。この概念は、結婚や長期的なパートナーシップにおいて、一方が他の人との恋愛的・性的関係を持たないことを前提としています。モノガミーは多くの文化や宗教において標準的な結婚の形態とされており、安定した家庭環境や信頼の基盤として広く受け入れられています。
日本の婚姻関係は、一夫一婦制(モノガミー)です。結婚25年目の銀婚式・50年目の金婚式があるように、一人のパートナーと長く沿い続けるのが一般的になります。頻繁にパートナーを変える感覚を持つ人は少ないでしょう。近年は、モノガミーに対する選択や価値観が多様化し、非モノガミーな関係も注目されています。
ポリガミー
ポリガミーとは、一人のパートナーが複数の配偶者を持つ婚姻形態を指します。この概念には、一人の男性が複数の妻を持つ一夫多妻制や、一人の女性が複数の夫を持つ一妻多夫制が含まれます。ポリガミーは多くの場合、文化的、宗教的、または歴史的な背景に基づいて実践されてきました。
例えば、イスラム教の一部の解釈では、特定の条件下で一夫多妻制が認められています。また、モルモン教の一部の分派でも過去に一夫多妻制が行われていました。アフリカや中東の一部の文化では、今日でも一夫多妻制が存在します。
シリアルモノガミー
シリアルモノガミー(serial monogamy:連続単婚)は、次のように紹介されています(デボラ・アナポール,2004)[12]。
一時的にパートナーはひとりだが、長い間には複数のパートナーを持つことになる、ポリアモリ―の一形態。
一夫一婦制で結婚をして、離婚した場合も再度、一夫一婦制で再婚をします。アメリカで現在主流を占めている恋愛スタイルになっています。
シリアルモノガミーでは、長い人生の中では、複数の人を好きになる事は人間の本能として当たり前のこととしています。そのため、同時期のパートナーは一人だけですが、人生においては何人もの人を愛することができ、頻繁にパートナーを変えることもできるのです。
ポリアモリー
ポリアモリー(polyamory)は、次のように定義されています(デボラ・アナポール,2004)[12]。
同時に複数の者を『誠実』に愛する性愛スタイル
1990年代の米国から始まったとされ、欧米を中心に増え続けているとされています。
ポリアモリー関係は既婚者にも広がっています。深海(2010)[13]は、自らを「ポリアモリー」として認識している 1010名を対象に調査を行いました。その結果、既婚者が約41%いることがわかりました。つまり一夫一婦制に則しながら、同時にポリアモリーを実践しているケースが多いとということです。
既婚者によるポリアモリーは、日本では不倫関係にあたります。しかし関係者全員が合意した上で、恋愛関係を結ぶので浮気や不倫には当てはまりません。
「既婚者を愛すること」「同時に2人を好きになること」「同性を愛すること」ポリアモリーは、一夫一婦制や1対1の恋愛など制度や慣習に捉われず本能的に人を愛することができるのです。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・夫婦の会話がはずむ♪会話の基礎練習
・旦那,妻の話を聞く,傾聴力トレ
・楽しい家庭にする,話し上手トレ
・夫婦の心が通い合う,心理学
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
*出典