第二次反抗期の時期と対応・接し方「小学生・中学生編」
反抗期コラム①では、反抗期の意味や定義、年齢、具体的な乗り越え方などを解説しました。
反抗期コラムの目次は以下の通りです。
コラム1 反抗期はいつまで?時期・対応
コラム2 第一次反抗期,接し方
コラム3 第二次反抗期,接し方
コラム4 反抗期がない原因,影響
今回は「第二次反抗期の子どもへの接し方」を紹介します。
第二次反抗期とは
第二次反抗期はいつ
第二反抗期は、シャーロッテ・ビューラーが 『青年の精神生活』の中で、青年期に反抗する時期があるとして、研究が進んできました[1]。具体的には、小学校高学年から中学生くらいに起こります。
青野(1997)[2]は、女子大生155名を対象に第二反抗期について調査を行いました。その結果の一部が下図となります。
図のように、反抗期を感じた時期は中学生に集中していることがわかります。一方ではじまりの時期や反抗期の長さには個人差があり、反抗期がない子もいます。
60%前後が反抗期を体験
江上ら(2013)[3]は、大学生100名を対象に反抗期についての調査を行いました。その結果の一部が下図となります。
このように60%前後の方が反抗期を体験しているようですが、逆に言えば40%前後の方は反抗期があったと特に感じてはいないようです。反抗期がない理由については以下のコラムで解説しました。興味がある方は後ほどご覧ください。
反抗期と成長プロセス
子どもは、親に「反抗 ― 依存」を繰り返す中で、成長し自立していくと考えられています。心理学者の小高(1998)[4]は、大学生801名を対象に「親に対する態度」を調査しました。その結果、親に対する態度(親子関係)には4種類あり、自立までの過程にもなっていると考察されています。
こちらの図は、少し難しい図なので、かみ砕いて解説します。
密着した親子関係(A型)
親和‐従属の状態を指します。このタイプは、一見、親子関係が良好に見え、親は子供を溺愛し、子どもも親が大好きで、服従する姿勢を持っています。親に依存し、親がいないと不安になります。一方で、過度な依存を生み出し自立を妨げる可能性があります。過保護、共依存関係になりやすい状態といえます。
矛盾した親子関係(B型)
不和‐従属の状態を指します。このタイプでは、親子間に矛盾や葛藤が存在し、第一次反抗期の状態です。子どもは親に反発しながらも依存が残っています。親の指示に疑問を持ち始め、親子間で意見の衝突が頻発します。これは子どもが自己の意見や価値観を形成し始める重要な過程です。一般的には幼少期にみられる状態です。
離反的な親子関係(C型)
不和‐独立の状態を指します。このタイプでは、子どもが親に強く反発し、距離を置きます。第二次反抗期に当たり、子どもは自分の独立性を意識し始め、親の指示に強く抵抗します。親子間の対立が深まり、コミュニケーションが減少し、一時的に疎遠になることもあります。
対等な親子関係(D型)
親和‐独立の状態を指します。第二次反抗期を乗り越えると、子どもが親を一人の人間として尊敬し、感謝の気持ちを持ちます。子どもは自立し、親との関係が対等です。親子間には相互の尊重があり、意見交換が円滑に行われます。親も子どもの成長を認め、自立を支援する姿勢を持っています。この関係性は、子どもが社会に出てからも続き、親子の絆が強く保たれます。
第二次反抗期の意義
第二反抗期には意義と危険性があります。まずは意義から解説します。
批判的精神の基礎
反抗期には世の中にあるルールや慣習に疑問が及びます。
なぜ茶髪がいけないのか?
なぜ門限を守らないといけないのか?
なぜ勉強しなくてはいけないのか?
なぜ大学に行かなくてはいけないのか?
親もうまく答えられないような哲学的な問いが始まります。発達心理学者の乾(1977)[5]は、「反抗の質こそ私たちは重視しなければならない。一生持ち続けるべき建設的な批判精神の基礎」と述べています。
反抗期は、自分の頭で考えて世の中の価値観やルールに疑問を持つ時期です。このように既存の価値観に疑問を持ち、思考することは、一生の財産になるのです。
自立の準備
親や他人からの依存を減らし、独立した生活を営むための準備をすることができます。この時期に自分の意志を強く持つことで、将来的に困難な状況に直面しても、自分で対処できる力を養うことが可能です。
反抗期においては、自分の決断や行動に責任を持つことが求められるため、自然と自己管理能力が高まります。例えば、親の指示に頼らずに自分で計画を立て、実行することで、自立心が育まれます。一時的に親子関係が緊張することもありますが、それを乗り越えることでより強い独立心を育むことができます。
子離れの準備
子供が巣立った後に、からの巣症候群になる親が一定数います。これは子育てがひと段落したことで、自分の存在意義を感じることができず、むなしい気持ちになる症状を意味します。深刻な状況になると、適応障害やうつ病の原因になることがあります。
この時、第二次反抗期を体験した親はからの巣症候群になりにくいと筆者は考えています。なぜなら、子供は家にいる状態ではありますが、心理的には親と距離を置く時期になります。親としては寂しいですが、子供が巣立っていく準備を徐々に始めることができるのです。
第二次反抗期のリスク
次に第二次反抗期のリスクについて解説します。
劣等感が増大する
他人と自分を比較し、理想と現実とのギャップに悩むことが多くなります。この時期の子どもは、視野が広くなるとともに自分のことも周囲のこともよく見えるようになってきます。容姿や学力、運動能力の差を実感し、理想と現実のギャップに悩み葛藤するのです。やり場のない不安やから、自らストレスを大きくしてしまうこともあります。
非行行動につながる
学校での友人関係、学力や進路への不安、家庭の不安定さなど、思春期はストレスが大きくなります。一方で心はまだ未熟な状態です。心の葛藤の処理がうまくできないと、非行という負の行動として発露することがあります。
暴言、暴力行為、性的な逸脱、薬物乱用がある場合はその背景にあるストレスを把握することが大事です。
SNSでのデジタルタトゥー
現代ではSNSが普及し、誰でも気軽な投稿ができるようになっています。この時、SNSを使って社会において問題のある動画や文章を投稿することで一生残るデジタルタトゥーになることもあるので注意が必要です。
健康的,不健康な反抗期
反抗期に関する研究はまだ発展途上です。実は研究の中では第二次反抗期はない方がメンタルヘルスが良いという結果も出てきています。筆者もこれまでさまざまな人のカウンセリングを行ってきましたが、健康的な反抗期もあれば、不健康な反抗期もあると考えています。その上で思春期には以下の4つのパターンがあると考えています。
反抗期あり‐健康的
親が十分愛情を注いでいる一方で、過干渉にならず、子供行動を尊重できる反抗期です。子供は一般的に推奨される生き方とは別の行動をとることはありますが、犯罪や非行に走るレベルではなく、やっていいことと、悪いことの垣根を理解した上で、自己表現をどうにかしようともがいていきます。親とのコミュニケーションは減り、会話も最低限になりますが、自我の確立をするうえで健康的な反抗期といえます。
反抗期あり‐不健康
親が愛情を注がず、暴言を吐いたり、怒鳴ったり、無理やり勉強させるなど、子供を屈服させようとする時に起こる反抗期です。このケースは、精神的に充実した時期とならず、自己肯定感が下がり、他者への攻撃性が増す、ゆがんだ形の反抗となります。場合によっては、友人に暴力をふるったり、薬物に手を出したり、してしまいます。このような反抗期は、健康的な発達とは言えません。
反抗期なし‐健康的
親が愛情を注ぎ、逐一子供と話し合うケースは目立った反抗期がないことがあります。子供が大きな犯行をする前に、しっかり話し合うので、反抗せずとも心理的に発達していくことができます。このパターンは親のコミュニケーション能力が高い場合が当てはまります。
反抗期なし‐不健康
親が過剰な愛情を注ぎ、子供のいうことをなんでも聞いてしまう場合があてはまります。親がこどもの機嫌を取るために、高額のものを買い与えたり、一日中ゲームをする環境を容認してしまうなどがあてはまります。過保護になっているため、子供の自立性が育たず長期的な引きこもりを生み出すなどの原因となります。
なお反抗期がないことについては以下のコラムで詳しく解説しました。理解を深めたい方は参考にしてみてください。
第二次反抗期の対応
第二次反抗期を健康的なものにするには、様々な対応法があります。当コラムでは以下の8つを紹介します。
①暖かく見守る
②大人として接する
③限界設定はしておく
④雑談を大事にする
⑤肯定的な認知を増やす
⑥夫婦関係を円満に保つ
⑦親も余裕を持つ
⑧子離れの準備
ご自身の状況でも使えそうなものを組み合わせてご活用ください。
①暖かく見守る
子どもの反抗的な態度にはイライラしたり、批判したくもなりますが、まずは子どもを温かく見守ってあげましょう。反抗期は自立するための通過点です。
さまざまな不安や悩みを抱えながら、心身共に成長をしていく子ども温かく見守ることが大切です。具体的には「無条件の肯定ストローク」を送るようにします。例えば以下のような態度が挙げられます。
朝は必ず「おはよう」と挨拶する
食事を一緒にする
目を見て話す
キャッチボールをする
一緒にゲームをする
などが挙げられます。このような態度は、思春期の心理的な激動の時代を乗り越えるための基礎になります。無条件の肯定的な態度について理解を深めたい方は以下のコラムを参照ください。
②大人として接する
第二反抗期の子どもの意見を聞く時には、ひとりの大人として接するようにします。子どもが主張してきたときには、子どもの考えをしっかりと聞いてから親の意見を伝えるようにします。そのうえで話し合うようにしましょう。
大人の経験値からNGと判断できることでも、頭ごなしに否定することはしません。道筋を立てて丁寧に話し合うようにします。
心理学の世界には「アサーティブ」という表現方法があります。アサーティブは、自分も相手も大切にしたバランスの取れた自己表現方法です。
対等な関係で納得がいく結論を導くことができます。頭ごなしに叱ってしまう…という方は、以下のコラムをご覧ください。
③限界設定はしておく
反抗期とはいえ、一線を越えた言動があった場合には、毅然とした態度で指導をすることが大切です。例えば以下のような設定が挙げられます。
親に向かって「死ね」と言った場合
→子どもの発言にしっかりと怒る
門限22時を守らなかった場合
→ルールを破ったことをきちんと怒る
暴力をふるった場合
→暴力行為は絶対許されないと怒る
「反抗期だから仕方ない…」と、子どもの反抗的な態度を放置すると、犯罪につながるまで問題が大きくなってしまう場合もあります。社会に出た時に許されない事、良くないことはしっかりとダメと伝え指導することが大切です。
第二次反抗期の子どもは、同じミスをしてしまうこともあります。子最低限守って欲しいルールなど、限界設定をして程よい距離感で子どもを見守るといいでしょう。
④普段の雑談を大事にする
筆者の経験即となりますが、親子関係がうまく行っていない家族は雑談が不足している傾向があります。雑談が不足すると、子供の微細な変化を読み取る機会が減り、気が付くと心理的な問題を抱え込んでしまっていたということがよくあります。
毎日雑談する時間を取ると、子供の表情の変化、声の抑揚の変化、ネガテイブな話題が増えているかなど、感じやすくなり、問題に早めに対処できるようになります。
具体的には、週末は必ずご飯を皆で食べる、食事中はテレビを消す、スマフォをいじらない、お互いの近況を話し合う、などの習慣を家族で持つことが大事になります。
また親が雑談力をつけておくことも大事です。会話が続かない…と感じる方は以下のコラムを参照ください。
⑤肯定的な認知を増やす
中谷ら(2006)[6]は、3~4歳児の母親207名を対象に、被害的認知と虐待の関係について調査を行いました。こちらは第一反抗期に関する研究ですが、参考になりそうなので紹介します。まずは下図をご覧ください。
こちらは、子供の反抗的な行動について、被害的認知、すなわち自分が否定されたように感じたり、悪意を持って親を困らせていると感じた場合に、暴力的になったり、子育てを放棄しやすくなりやすいことを意味しています。次に下図をご覧ください。
こちらは育児に対して肯定的認知が増える、すなわち子供の成長の証拠、大人になる階段、子供らしい一面だ、と考えると、親自身が自尊心を維持しやすく、また育児ストレスをいつも通り保ったり、虐待を促進する考えを予防できると解釈できます。第二次反抗期でも活かすことができそうですね。
⑥夫婦関係を円満に保つ
反抗期の子どもの心の安定には、夫婦関係を円満に保つことが大切です。
第二次反抗期の子どもは感受性が豊かです。夫婦が喧嘩をしていれば「原因は自分にあるのでは…」と考えたり、「自分のせいで両親は離婚できないのかも…」とも考えたり、「自分さえいなければ!」と衝動的な行動に走ってしまう可能性もあります。
夫婦関係が良好なら、心穏やかな家庭環境も整います。子どもがゆっくり休める場所があることで、反抗期の悩みや葛藤を上手に乗り越えることができるでしょう。
夫婦喧嘩が多い、夫婦が険悪な状態…という場合は、以下のコラムを参考にしてみてください。
⑦親も余裕を持つ
子どもと少し距離を置き、温かく見守るくらいの距離感で余裕をもって関わるようにします。
子どもの反抗的な態度に振り回されてしまうと、親の方が過度のストレスに悩まされてしまいます。「反抗期は自立に向けた通過点、いつかは終わる」と捉えて、ある程度見守るくらいの方がいいでしょう。
心理的に安定した状態で子どもと関わるには、8割くらいの力を心がけて見ましょう。子どもの反抗的な態度も、受け流しやすくなります。そして残りの2割で休憩することで余裕をもって子どもと関わることができるでしょう。
2割くらいサボってOK!という気持ちで、心に余裕をも子どもと向き合ってみましょう。
動画解説もあります。よかったら参考にしてください。
⑧子離れの準備
かわいいわが子もいずれは自分のもとから巣立っていきます。第二次反抗期からはまだ先の話とはなりますが、少しずつ覚悟をしていかなくてはなりません。第二次反抗期は、自分の人生を改めて考え直す良い機会です。子供がいずれ巣立っていくことを考え、「自分自身の人生」を考える良い機会とすることも大切です。
まとめ
子どもの反抗的な態度は、不安や葛藤の表れです。干渉しすぎると子どもの反発が更に強くなってしまうこともあります。子どもの気持ちに寄り添いながら、見守りに徹する覚悟を決めて関わるといいでしょう。
反抗期の子どもに振り回されないためにも、80%くらいの力で関わり、適度に休息をとって子どもと関わってみてください。夫婦関係が良好だと、家庭内で子どもが心穏やかに過ごせます。コラムの対策を参考に、第二次反抗期を上手に乗り越えていきましょう。
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
日本教育心理学協会