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人間不信の原因と病気,治し方

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人間不信の原因と病気,治し方を公認心理師が解説,ダイコミュ

皆さんこんにちは。こちらのコミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のテーマは「人間不信」です。本記事では、人間不信の原因や克服のための方法について詳しく解説していきます。目次はこちらです。

・人間不信とは
・人間不信と深刻性
・人間不信の5つの原因
・人間不信を治す8つの方法

私たちが生きている社会はどこに行っても人がいます。人間不信だと、人生そのものが信じられないという感覚になりがちです。一度しかない人生です。皆さんが少しでも、人間不信を改善できるように解説をしていきます。

人間不信で苦しむ人 

人間不信と深刻性

まず初めに人間不信がもたらすデメリットを整理していきましょう。

回避的になる

人間不信になると「どうせ良いことにはならない」「どうせ裏切られる」と考えてしまうため、人との関わりを避けるようになります。例えば、食事の場面を避けたり、仲間と出かけることが減っていきます。その結果、人間関係を築く経験が不足し、会話の力が低下してしまいます。

社交不安症

人を避けることが習慣になると、対人不安が増し、社交不安症という精神疾患に発展してしまうことがあります。社交不安症になると、不登校、引きこもり、仕事が限られる、恋愛ができない、など生活圏が狭くなってしまいます。

うつ病のリスク

Ameringenら(1991)[1]は、57名の社交不安症患者を対象に、社交不安症とその他の精神疾患の因果関係を調査しました。その結果が以下の図です。

人間不信 SADSADは社交不安症のこと表しています。すなわち、社交不安症とうつ病は併発リスクが高いとされています。人間不信はうつ病のリスクを高める要因となります。他者を信頼できないことで、必要な社会的支援や感情的サポートが得られず、うつ病を慢性化する要因になるのです。

幸福感の低下

人間不信は個人の幸福感も著しく低下させます。1938年から始まったハーバード発達研究[2]では、当時ハーバード大学2年生だった男子大学生とボストンの極貧環境で育った少年たちが集められ、生涯を通じて幸福に影響する要因が継続して調査されることになりました。

この研究は現在でも続いており、最高齢の方ですと87歳まで調査に協力しています。研究の結果、人生を幸福にする最大の要因は、「人間関係の豊かさ」であることがわかりました。会話をする、共感しあう、困ったときは助け合う、このような人間同士の触れ合いが、追跡調査で明らかになったのです。

人間不信 ハーバード発達研究

人間不信になると、オープンに人と接することができなかったり、自分から関係を遠ざけてしまいがちです。その結果、幸福な人生を獲得する大きな要因を失うことになってしまうのです。研究に興味がある方は下記の折り畳みの動画をご参照ください。

ハーバード成人発達研究と幸福感,講演の様子

 

人間不信の5つの原因

次に人間不信の原因を見ていきましょう。人間不信は1つの原因に特定することはできず、さまざまな要素が絡み合って起こります。ここでは5つの原因を紹介します。

シャイネス

シャイネスとは、対人場面で不安や緊張を感じる特性のことです。日本語でもシャイな人柄という表現が用いられることがありますが、基本的には人見知りという意味で用いられます。シャイネスには以下の2つの種類があります。

恐怖シャイネス
恐怖シャイネスは幼少期に見られる、知らない人に対して覚える不安になってきます。子供は知らない大人と接する時に自分の後ろに隠れたりしますが、この心理が恐怖シャイネスになります。日比野(1977)[3]は、生後10か月の乳児43名を対象に、人見知りについて調査を行いました。その結果が以下の図です。
人間不信 シャイネス

このように人見知りが激しい乳児が15人で35%、中程度な乳児が19人で44%でざっくりと80%の乳児が人見知りをするということが分かりました。人生の経験値もない乳児が人間不信になるのは、ある程度遺伝の影響を受けていると考えられます。

自意識シャイネス
自意識シャイネスは他人からの評価が気になったり、周りからの視線が気になるシャイネスです。こちらは生まれつきというよりも、10代の思春期の頃に強くなっていく特徴があります。人の目がものすごく気になってしまったり、相手の心を読みすぎてしまう…そんな癖がある方は自意識シャイネスが大きくなっている可能性があります。

基本的信頼感の欠如

基本的信頼感とは他人や自分に対する土台となる信頼感になります。世の中は基本的には信頼できる人が多くて、「まあまあ裏切られることは少ないだろう、そんな感覚になっていきます。人間は根本的には、善い人間であるとする性善説と呼ぶこともできるでしょう。

エリクソンは基本的信頼感を育てる段階は、0歳から1歳半の乳幼児と考えました。この時期に親や養育者から十分な愛情を受けられれば「自分はなんとかやっていける!」という信頼感が得られます。以下の図のもっとも下の段階になります。

人間不信 発達断簡


一方で家庭環境が悪かったり、虐待を受けていたりすると基本的信頼感が根本的には築かれず、人間関係で不安を覚えやすい傾向が高まると考えられています。この意味で過去の家庭環境が悪かった方は、それが影響して現在の人間不信につがってる可能性があると言えます。

傷つけられ経験

天貝(1999)[4]は、高校生102名を対象に一般高校生と非行少年の信頼感に関する研究を行いました。その結果が以下の図です。

人間不信 受容少ない 低い

このように受容経験が少ない人は、他人への信頼感が低下することが分かりました。つまり、他人から受け入れられた経験が多い人は、人間不信が改善されるということです。

次に傷ついた経験がある人はどうでしょうか?以下の図をご覧ください。

 

人間不信 傷つき

このように対人的傷つき経験が多い人は、他人への信頼が低くなっていることがわかります。人から何か傷つけられた経験、例えばいじめを受けた、暴言や暴力を受けたなどの経験がある人間不信に繋がりやすいと言えます。

劣等感が強い

中井(2016)[5]では、中学生563名を対象に信頼感に関する研究を行いました。その結果が以下の図です。

人間不信の劣等感

※論文上は劣等感の「なさ」となっていますが、わかりやすくするため劣等感と表記しました。正確には論文を参照ください。

図のように劣等感が増えると、友人への不信感が高まるという研究結果になりました。劣等感が強くなると「自分のことを馬鹿にしてるんじゃないか」「自分の評価を小さく見てるんじゃないか」と考えがちになってしまいます。その結果、不信感を持ちやすくなると推測できます。

会話力の不足

会話力がある人は、冗談を言い合ったり、楽しい人間関係を築いたり、困った時にはお互いに悩みを相談し合って心を軽くすることができます。このように、人間関係での成功体験が増えていくと、

私は人としてなんとかやっていける
なんやかんや言って人と関わると楽しい
人間関係が豊かになるとぽじてぃなことが増える

という感覚が育っていきます。一方で、会話力が不足していると、お互いの自己開示が進まず、警戒心が強まります。自己開示が進まないと、悩みを共有したり会話を楽しむことが難しくなるのです。

人間不信を治す8つの方法

ここからは人間不信を治す方法を8つ提案します。

①根拠なき不信に注意
②選択的知覚に注意
③基本は信用から入る
④あったか体験を増やす
⑤雑談力を高める
⑥ネットに頼らない
⑦本音で話し合う
⑧芸術や仕事に昇華

ご自身に合いそうなものを組み合わせて実践してみてください。

①根拠なき不信に注意

人間不信になりがちな方は、相手の行動の真意を根拠もないのにネガティブに推測しがちです。

この人は自分を褒めてくれるけど、裏があるんじゃないか
メールが1日返ってこない、きっと嫌われたんだ
あの笑顔は上辺だけで本音はイライラしているはずだ

このように根拠なく予測する癖をつけると、想像が膨らみ不信感のループはまってしまいます。ここで大切なのが、事実に基づいているか?一度冷静に考える習慣です。

この人は自分を褒めてくれるけど、裏があるんじゃないか
 →裏がある証拠はない 証拠がないのに裏がある!
  と考えるのは失礼かな

メールが1日返ってこない、きっと嫌われたんだ
 →嫌いになったと言われたわけではない
  これまでは毎日帰ってきていたから、心配するには早い

あの笑顔は上辺だけで本音はイライラしているはずだ
 →笑顔=うわべだ と考えるのは強引すぎる
  このような考えだと笑顔すべてが嘘に見える
  現実的ではない

このように、根拠に基づいて考える習慣をつけると、相手への不信感が実は独り相撲だったことに気づくことが増えます。相手への不信感が出てきたときには、その不信感に根拠があるかどうかを意識してみてください。下記のコラムでは根拠をもとに考える練習をすることができます。興味がある方は参考にしてみてください。

根拠をもとに考える,現実検討練習

人間不信,根拠を大事にする,サウナ猫様作成

②選択的知覚に注意

選択的知覚とは、自分が重要視している情報ばかりを集め、余計に確信を深めてしまう心理です。選択的知覚の心理を持つ人は、人間関係でトラブルがあると、ネガティブな側面ばかりに着目してしまいます。以下のような傾向がある方は注意が必要です。

人間の好き嫌いが激しい
喧嘩をすると欠点ばかりが見えるようになる
好きだったのに一度嫌いになるともとに戻れない

選択的知覚への対策として、自分が選択的知覚をしていると感じたら、相手の良いところを改めて考え直してみることが大切です。

→アイツは信用できないことばかりする
約束を破ることもあるが、困ったときに助けてくれたことが何度もある

→遅刻をしてきた!だらしない奴だ
確かに時間にはゆったりしているがその分癒される

→優柔不断でイライラする
日常生活では優柔不断だが、大きな決断の時は意外とスパッと決める

このように、欠点や失敗に目を向けることに一区切りをつけ、ポジティブな面を冷静に思い返すようにしましょう。10回やり取りがあって1回トラブルがあっても、残りの9回は楽しいことがあったと気づくかもしれません。

選択的知覚については以下の動画でも解説しました。理解を深めたい方は参考にしてみてください。

③基本は信用から入る

人間関係の強調性や裏切りについて考える理論の一つに、ゲーム理論というものがあります。このゲーム理論で有名なのが、ロバート・アクセルロッド先生の『The Evolution of Cooperation』という本[6]です。この本では、協力するか裏切るかの選択に関して、さまざまな戦略が紹介されています。

人間不信 TFT

例えば、自分の利益だけを考えて他人を裏切る戦略もあれば、相手を常に信用し続ける戦略もあります。その中で、最もうまくいく可能性が高い戦略として、アクセルロッド先生が提唱したのが「TFT戦略(Tit for Tat)」です。これは、しっぺ返しという意味で、具体的には次のような戦略です。

まず、相手を信用することから始める
裏切られた場合、自分も同じように裏切る
もし相手が再び協力してきたら自分も協力する

これはゲーム理論という比較的閉じられた世界の理屈ではありますが、私自身もこの戦略を基本的なスタイルにしています。不信から入ると、自分自身の警戒心がストレスになってしまうため、最初は信頼から入った方が心が穏やかにいられると感じています。

もちろん、裏切られたり期待とは違ったことをされたりすることもありますが、その時に考えれば良いと思っています。基本的には相手を信用しながら人間関係を築くよう心がけています。

ゲーム理論,しっぺ返し戦略

④あったか体験を増やす

温かいコミュニティを持つことは、心に余裕を持つことができ、自己肯定感を育むことができます。ですので、競争や批判ばかりの集団に属している方は、お互いを肯定し合えるような、少し緩めのコミュニティにも一つ所属してみることをお勧めします。

具体的には、私が参加した歌のサークルや、ボランティア活動、またスナックなども良いかもしれません。受容的な雰囲気で、話を聞いてくれる人が多い環境が良いでしょう。自分の心がほぐれるような環境をぜひ見つけてみてください。温かいコミュ二ティに所属をしたいけど、探し方が分からない…と感じる方は以下のコラムを参照ください。

温かいコミュニティを探す方法

暖かいに所属するコミュニティ

⑤雑談力を高める

温かいコミュニティに属していても、ずっと黙っていては良い関係を築くことは難しいです。最低限の会話の練習をしておくことをお勧めします。雑談のトレーニング法は様々なものがありますが、まず初期段階として以下の点を抑えておくのが良いでしょう。

質問攻めは禁止
一問一答はNG
そんでもって法を使う
1つ1つの話題を大事にする
会話-発話の比率は40~60%

会話の力もある程度体系立てて練習すれば、上達することができますので、雑談力を高める訓練も大事にしてください。雑談が苦手・・・という方は、以下のコラムをご参照ください。

雑談力を上げるトレーニング法

⑥ネットに頼らない

今の時代、ITが発達しすぎて、直接顔を合わせてコミュニケーションしなくてもなんとかなる時代になっています。しかし、文明の利器に頼りすぎて直接顔を合わせないでコミュニケーションをする癖がつくと、人間不信が高まるということが最近の研究で分かっています。

柴田ら(2012)[7]は、大学生158名を対象に、携帯メール依存と青少年の心理についての研究を行いました。その結果、携帯に頼ったコミュニケーションと人間不信の関係が明らかになりました。以下の図をご覧ください。

人間不信 携帯・脱コミュニケーション

携帯・脱コミュニケーションというのは、本来直接顔を合わせてすべきコミュニケーションを携帯に頼って行うことを指します。

この結果、携帯に頼ったコミュニケーションが増えるほど人間不信になりやすいことが分かりました。人間不信になると、また携帯に頼ったコミュニケーションが増えるという悪循環が生まれます。

仕事上で効率を追求してインターネットを使うことは当然ですが、本当に大事なコミュニケーションの際には、なるべく顔を合わせて行うことが大切だと思います。

 

人間不信 携帯

⑦本音で話し合う

人間不信になっている時は、疑心暗鬼になり、人間関係でモヤモヤして自分の中でどんどん妄想を膨らませてしまうことがあります。

一方で、自分の中で悶々と考えていることの真実は分からないことが多いです。このような時、悶々とする時間が長引いてしまったら、思い切って相手と腹を割って話し合うことが大切です。例えば、会話をしている時に相手の表情が冴えなかったとしましょう。この時、

「もしかしたら私が変なことを言ってしまったのかも」
「何か気に障ることをしてしまったかな」
「私といると楽しくないのではないか…」

と思ってモヤモヤすることがあります。しかし、思い切って相手に、

「私、何か変なこと言っちゃった?」
「私、何か気に障ることしてしまった?」
「今日は私といて楽しかった?」

など聞いてみるのも時には良いと思います。そうすると、意外と相手は虫歯が痛かったり、ただ体の調子が悪かったりするだけだったというケースもあります。

自分の中で相手の心を読み過ぎて不信感が募っていると感じたら、実際に相手がどう思っているのか腹を割って話し合ってみてください。

⑧芸術や仕事に昇華

人間不信になりやすい方は、逆に人間模様に非常に興味を持っていることがあります。「あの人はどう考えているのだろう」「この人はどんな気持ちなんだろう」といったことをよく考えるため、人間関係の描写が上手なことがあります。

ブログを書くと非常に良い文章を書く
芸術作品で人間模様の細かい繊細なところを表現できる

など意外と隠れた才能があるかもしれません。

このように、人間不信という気持ちを芸術作品や仕事に生かしてしまうことも一つの方法です。人間不信な方は相手の顔色を非常に気にしますので、「この人は不満に思っていないかな」という気持ちは接客業でも役に立ちます。「この人を楽しませるにはどうすればいいだろう」と考えることで、仕事に役立てられます。

人間不信は、シャイネスのところでも述べたように、遺伝的な要素もある程度ありますので、完全になくなることはありません。しかし、完全になくならなくても、その気持ちを生かしてしまうことも可能です。自分の日々の生活を豊かにするための動機付けに変えてしまうことが大事だと考えています。

まとめ

人間不信については動画でも解説しました。仕上げとしてご活用ください。

しっかり身につけたい方へ

私たち公認心理師による講座では、心理学や人間関係を築く方法を学べます。内容は以下のとおりです。心理学を学びたい方、人間関係を健康的にしたい方はぜひ参加してみてください。

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1]Van Ameringen M, Mancini C, Styan G, Donison D.(1991). Relationship of social phobia with other psychiatric illness. J Affect Disord. Feb;21(2):93-9. doi: 10.1016/0165-0327(91)90055-w. PMID: 1827645.
 
 
[3]日比野 敬子 (2019). 乳児期における人見知りについて: 個体識別の認知との関連で (発達7, 口頭発表).日本教育心理学会総会発表論文集, 第19回総会発表論文集, セッションID: 252, DOI https://doi.org/10.20587/pamjaep.19.0_172, 
 
[4]天貝由美子 (1999). 一般高校生と非行少年の信頼感に影響を及ぼす経験要因. Japanese Journal of Educational Psychology, 47, 229-238.
 
[5]中井大介 (2016). 中学生の友人に対する信頼感と学校適応感との関連. パーソナリティ研究, 25(1)p. 10-25
 
[6]Axelrod, R., & Axelrod, R. M. (1984). The Evolution of Cooperation. Basic Books.
 
[7]柴田拓, 菅千索 (2012). 携帯メール依存が青少年に及ぼす影響について -自己肯定意識・対人依存欲求・社会的スキルとの関係-. 和歌山大学教育学部教育実践総合センター紀要, №22.