類似性,似た者同士の効果と心理
皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「類似性を活かす方法」をテーマに解説していきます。類似性が高いと相手とのコミュニケーションにおいて様々な面で有利に働きやすいことが数々の研究でわかっています。
好きな人と仲良くなりたい
恋愛で相性のいい人を探したい
安心できる関係になりたい
このような目標がある方は、是非最後までご一読ください。
類似性,似た者同士の効果
類似性についてはこれまで様々な研究がなされてきました。
①友人ができやすい
Richardson (1940)[1]は48 組の大学生の女性の友人と21組の成人女性を対象に友人の価値について調査を行いました。 その結果の一部が下図となります。
上図は、大学生と成人それぞれ、友達ペアとランダムペアの価値観の関係を調べたものです。数字が大きいほど、同じ価値観を持っていると考えることができます。ざっと目を通してみてください。
友達ペアの方が、ランダムペアよりも数字が大きいことが分かります。つまり、類似性のある方は、共通の価値観を持つ友達が多いことが考えられます。
②相談相手になりやすい
中村(1984)[2]は、学生60名を対象に類似性について調査を行いました。その結果の1つが以下の図です。まずは概観してみてください。
こちらの図は内向的な人は
似ていない人には悩みを打ち明けにくい
似ている人には悩みを打ち明けやすい
ことを示しています。確かに悩みを相談しやすいのは、年齢も近く、性格が似ている人だったりしますね。
③親しみを感じる
中村(1984)[2]は、学生60名を対象に類似性について調査を行いました。その結果の一部が以下の図です。
こちらの図は内向的な人は
似ていない人には親近感を持ちにくい
似ている人には親近感を持ちやすい
ことを意味しています。類似性が高いほど相手に好感を持つことがわかります。
④魅力的に見える
心理学者のネルソンら(1965)[3]は、魅力度と類似度の関連について調査が行われています。以下のグラフをご覧ください。
このように、「類似度」が高くなるほど「魅力度」も比例して高くなっていくことが分かります。態度や性格が似ていれば、対立することも少ないですし、個人的な意見を尊重してくれることもあります。その結果お互いを魅力的に感じると推測できます。
⑤アイデアが出やすくなる
三浦(2002)[4]は学生168名を対象に類似性と多様性がもたらす、アイデアの数について調査を行いました。実験デザインとしてはやや複雑なので、わかりやすく解説をすると、2要因をそれぞれ高い・低いに分けて、合計4パターンにわけて調査が行われました。
①グループ分け
類似性(アイデアが似ている程度)高いグループ,低いグループ
多様性(アイデアの数が多い程度)高いグループ,低いグループ
②話し合いをする
それぞれのグループが創造的なアイデアを生み出すか検討してみる
その結果の一部が下図となります。
このように、最も創造性が発揮されるのは、「類似性が高く」「多様性がある」グループであることがわかりました。この実験からグループで話し合う時に、以下の点が推測されます。
メンバーのアイデアが多ければ、創造性が発揮されるわけではない
メンバーのアイデアが多く、かつ似た部分があると、創造性が発揮されやすい
話し合いは、ある程度共通した部分がないと、価値観のズレを修正することにエネルギーを使うことになるため、結果的に創造的なアイデアが出にくくなります。一方で、共通した部分があると、より創造的な議論に時間を使うことができるため、新しい考えが生み出されやすいと推測されます。
*なお、当論文の解釈は、直感的にわかりやすくするため、かなり端折って解説しています。興味がある方は論文をご覧ください。
類似性を見つける6つの方法
ここでは、類似性を見つけるための6つの方法を紹介していきます。
①事実の類似性を見つける
②感情の類似性を見つける
③枠組みを広げる
④50%質問法
⑤予習で共通点法
⑥後付け共通点法
①事実の類似性を見つける
1つ目は事実に基づいた類似性を見つける方法です。例えば、出身地が同じであれば、同じ風土や文化を共有している可能性があり、親近感が湧きやすくなります。また、現在または過去の住所が近ければ、共通の生活圏内にいたことが分かり、地元の話題で盛り上がれるでしょう。
さらに、同じ出身校やクラブ活動に所属していた場合、同じ教育環境や経験を持っていることが分かり、深い理解や共感を得やすくなります。これらの共通点を見つけることで、相手とのつながりを強めることができます。
②感情の類似性を見つける
2つ目は感情の類似性を見つける方法です。例えば、たとえば、お互いに「おいしい」と感じる料理やレストランについて話すことで、味覚や食の喜びに共通点があるかを探ることができます。また、特定の食材や料理に対する思い出や、家族や友人との食事の経験を語ることで、共感を生み出すことができます。
「旅行」と「楽しい」というテーマで感情の類似性を見つけるには、お互いの旅行経験や旅先で感じた楽しさを共有することが効果的です。たとえば、訪れた場所や体験したアクティビティについて話すことで、相手も同様に楽しんだ経験があるかどうかを探れます。
③枠組みを広げる
3つ目は、話題の枠組みを広げるという方法です。例えば、「広島出身です」「兵庫出身です」という会話があったら、「同じ中国地方ですね!」と類似性を強調することができます。
*その他の例
「サッカーをしていた」「野球をしていた」
→「部活でお互い頑張りましたね!」
「マシュマロが好き」「シュークリームが好き」
→「私もスイーツは好きです!」
「ワンピースが好き」「NARUTOが好き」
→「お互いに漫画好きですね!」
④50%質問法
4つ目は、50%質問法です。これは50%以上の人は、YESと頷くような質問を投げかける方法になります。例えば、「旅行は好きですか?」という質問が挙げられます。旅行であれば、多くの人は1年に1回は旅行をするはずです。その結果、相手から「好きです!」という返事をもらいやすく、類似性を生み出しやすいと言えます。
*その他の例
お寿司は好きですか?
ユニクロで買い物したりしますか?
犬派ですか?猫派ですか?
⑤予習で共通点法
5つ目は予習をして似たところを作っていく方法です。例えば、重要な取引先との会合前に共通点を作っておけば、有利に働きます。例えば、取引先が将棋に興味があることがわかれば、自分も将棋について話せるように準備しておきます。会話の中で「私も将棋が好きです」と共通の話題を持ち出すことで、自然なコミュニケーションを図り、信頼関係を築くことができます。
例えば、取引先が犬を飼っていることがわかった場合、犬を飼うことは現実的ではないですが、あらかじめ犬のことを調べて興味があることを示すことはできます。例えば「私、将来は犬を飼いたいです」と話題を振ることで、共通の関心が生まれ、会話がスムーズに進み、信頼感を高めることができます。
⑥後付け共通点法
6つ目が後付け共通点法です。これは相手が興味のある事柄を学び、後だしジャンケン的に共通点を作り出す方法です。後付け共痛点法は、カウンセリングにもよく用いられる方法になります。相談者の趣味を自発的に学習し、相手の内側に共感できるようにします。
例えば、「好きな漫画ある?」と聞いて、自分が知らない漫画であれば、それを勉強していきます。もしくは、相手に教えてもらったり、一緒に体験したりします。
*その他の例
好きな映画ある?
おススメのゲームは?
最近ハマりのアーティストは?
上記の方法は動画でも解説しています。文章だとわかりにくい!という方は、以下の動画をご参照ください。
日常生活での活かし方
似た者同士・類似性を日常生活でどのように活かせばよいのでしょうか。以下、恋愛での活用、職場の結束を固める、友人同士の喧嘩に分けて提案させて頂きます。
恋愛での活かし方
気になる異性と会話をする時は、共通点が見つかったら積極的に伝えるようにしましょう!
好きな芸能人が同じ
好きな食べ物が同じ
地元が一緒
などなど、どんなに小さなことでも良いので共通点を探していきましょう。もし共通点が見つかったら
一緒だね♪
気が合うなあ!
え?おれもおれも!
と積極的に強調していくとGoodです。
職場の結束を固める
ビジネスシーンでも類似性は頻繁に活用されています。「服装」で考えてみましょう。
堅い会社に訪問する場合はスーツを着る
自由な社風の会社に訪問する場合は砕けた服装で行く
社内の結束を上げるため定期的にユニフォームを着る
その他、同じ目標を持つなども効果的です。
来年は成功して社員旅行に皆でいこう
社長賞をとボーナスを皆でゲットしよう
今期は利益前年比+20%を目指そう
このようにグループ内で同じ目標を共有することで、仲間意識が生まれ、生産性もUPします。
友人同士で喧嘩をした
友人と喧嘩した時も類似性を活用して、スムーズな関係維持することができます。例えば、お互いに野球ファンで巨人と阪神でもめたとします。この時、お互いの違いを指摘し合うと喧嘩がより発展してしまいます。
こんな時は、お互い類似しているところを確認していきましょう。
サッカーに負けない野球の魅力とは?
メジャーで成功しそうなプレイヤーは?
野球場でおいしい食べ物を教えあう
などチームの話をするのではなく、「野球」の話しで共感を誘うことが大切です。このように、友人との食い違いが起きた時は、共通している部分はないか?と考えて見ることをお勧めします。
まとめ
ここまで見てきたように、似た者同士は打ち解けやすく、お互いに魅力を感じやすいです。私たち心理師は相手との関係性を築くため、相手の趣味を勉強することも結構あります。
例えば、引きこもりの子供とお話するカウンセラーは、子供の漫画やアニメを見るケースがかなりあります。
もちろん自分を押し殺して相手に合わせる必要はありませんが、相手がどのような性格なのかを理解して、できるかぎり相手に寄り添うように心がけることが時に大事になる場面がありそうです。
ぜひ、似た者同士の関係をうまく活用して円滑なコミュニケーションを目指してみてくださいね。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・類似性アピール,共通点を探す練習
・似た部分が見つかる,50%質問法
・好感度UP,心がつながる会話の技術
・恋愛,友人関係がうまくいく心理学
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連