同調圧力に屈しない方法,心理学
皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のお悩み相談は「同調圧力」です。
相談者
35歳男性 会社員
お悩みの内容
職場では上司に従うことが当たり前になっているため、私もYESマンになってしまいます。友人関係でも、たくさん食べないのに周囲に合わせてしまい割り勘負けをしてしまうことがあります。自分自身が周囲に屈しない強い人間になりたいと思っています。
周りの意見に合わせてしまい、後悔することもありますよね。今回は同調圧力に屈しない強いための方法がわかります。ぜひ最後までご一読ください。
同調圧力とは
同調圧力とは
同調圧力は以下の意味があります。
集団意思決定の際に、周囲の意見と同調させるように作用する無形の圧力
(青木ら,2004)[1]
私たちは、会社であれ、友人関係であれ、なんらかの集団に属しています。集団にはルールがあり、その集団に属している人は、その規範に従うことが期待されます。
例えば、ある社交場での服装やマナー、学校内でのルールなどがこれに当たります。集団内での規範に従わない場合、周りの人から否定的な評価を受けるおそれがあるので、自分の考えや行動を変えることがあります。
同調圧力に関する実験
同調圧力については様々な実験があります。以下折りたたんで解説したので興味があるものを参考にしてみてください。
同調圧力に屈しやすい性格
同調圧力に屈しやすい人はどのような性格傾向があるのでしょうか。荻野ら(1996)は首都圏の大学生662名を対象に性格に関する調査を行いました。その結果は、それぞれ以下のようになりました。
劣等感があるほど同調する
このように、劣等感が高いほど同調しやすいことが分かります。自分を劣っていると感じる人は、周りに合わせようとしてしまう傾向にあるようです。
劣等感があるほど譲歩する
上図のように、劣等感が高いほど譲歩していることが分かります。自分を低く見積もる人は、他人からの要求に応じやすい傾向があると言えるでしょう。
優しい人ほど同調する
このように、攻撃性が低いほど同調しやすいことが分かりました。優しい人ほど周りの影響を受けやすく、我を通そうとしない傾向があると言えそうです。
6つの屈しない方法
ここからは、周囲の圧力に屈しない6つの方法を提案します。
①合理的か確認する
②アサーション権意識を持つ
③アメリカのことわざから学ぶ
③やわらかい言い方を大事に
④限界設定をする
⑤課題の分離
ご自身でも使えそうなものを中心にご活用ください。
①合理的か確認する
1つ目は「その圧力に合理性正当性があるか」を考えます。周囲からの圧力に筋が通っているなら、謙虚に受け止めることも必要でしょう。
・会議に遅刻しないように注意を受ける
・親睦を深めるため年1回の食事会への参加
・社運がかかっているプロジェクトの残業
→協力するとボーナスが倍になる
このような圧力は一定の合理性があるものです。時には折れる姿勢も大事になるでしょう。一方で筋が通っていない時には、しっかり主張をして結論を出すことが大事です。
・法律違反を強要してくる
・人の悪口を無理やり言わされそうになる
・パワハラを受け入れる会社の文化
このような圧力に屈せず正当な意見として声を出すことが大切になってきます。
②アサーション権意識を持つ
心理療法の1つにアサーティブコミュニケーションという分野があり、その中で「アサーション権」が大切にされています。アサーション権とは以下の意味があります。
誰しもが自分の考え、価値観を主張することができ、建設的に話し合う権利
アサーティブコミュニケーションでは、違う意見を持つことはとても自然で、それを表現する権利があると考えるのです。アサーションにおいては、特に以下の姿勢を大切にしています。
一方的に意見を押し付けられることを拒否する権利
人は自分の意志で行動し、責任を自分自身で持つ権利
人は自分なりの考えを持ち、失敗をしてもよい権利
このような権利意識を持つと、周りの意見を盲目的に信じるのではなく、自分の意見をしっかり保つ習慣がついていきます。もしあなたが、自分の考えには価値がない、主張しても失敗するに違いない、と感じていたら、アサーションをしっかり学ぶことをおすすめします。詳しくは以下のコラムで解説しました。参考にしてみてください。
③アメリカのことわざから学ぶ
アメリカには『Squeaky wheel gets the grease』ということわざがあります[5]。『Squeaky wheel gets the grease』は、直訳すると”キーキー音を立てる車輪は油をさしてもらえる”ですが、”黙っていたら注目されない”という逆の意味もあります[6]。
言葉にせずとも空気を読んでほしいと思う
自分の気持ちを悟ってほしいと思う
本当は不快なのに笑顔で対応してしまう
同調圧力に弱い方の中には、このように自分の気持ちをこと場にすることが苦手な方がいます。しかし黙っていても、自分の考えが相手に伝わることはありません。自分の意見のほうが正しい、自分のほうが筋が通っている、と感じたらやはり素直にそれを言葉にして主張することを大切にしましょう。
④やわらかい言い方を大事に
このように、同調圧力に巻き込まれないためには、主張することが大事ですが。一方的にまくしたてるだけでは、相手が納得できずトラブルにもつながることもあります。主張する時には、関係性を大切にしながら丁寧に主張することが大事です。
1つのやり方としては、「主張+メリット追加法」があります。たとえば、残業をしないと決めた日に上司から「今日残業してくれないか?」と言われたとしましょう。この場合、残業しない事での上司のメリットを考えて伝えます。残業しないで帰ると集中力がアップしてより良い仕事ができる場合なら、
・主張
今日は疲れているのでこのままだとミスが連発しそうです。申し訳ないですが早めに帰りますね。
・メリット
しっかり寝て体力を回復させて、明日はバリバリ仕事をします!
このような伝え方をすると、上司としても早く帰って休んでもらった方がパフォーマンスが上がるかな?っていう気持ちになると思います。
自分の意見を伝える時は、相手が自分の主張を受け入れてくれた場合にどんなメリットがあるのかもワンセットで伝えていくことをオススメします。ついつい口調が厳しくなってしまう…という方は、以下のコラムを参照ください。
⑤限界設定をする
屈しない方法の3つ目は「限界設定をする」です。「限界設定」は、NGなラインの線引きをしっかりとすることです。たとえば、筆者は小学生と保育園児の3人の子どもがいて、また地域の団体にも半強制的に属しています。そして、以下の役割を担うように、無言の圧力(?!)を感じています。
PTAのかかり 保護者会 運動会 学童の会合 保育園のイベント係 自治体の係 自治体が主催するイベントの手伝い
仕事や子育てをしながらこれらの役割をこなしているとおそらく、ストレスで体が壊れてしまいます。そこで夫婦で話し合い、以下のルールを決めました。
・家庭外の活動は週に3時間まで
・それを超える場合は断る
・子供との時間を大切にする
・休息をしっかりとるようにする
ルールがあると、自分自身が安心できますし、断る時の判断材料になります。断るラインを決めておくと、自分としても納得がしやすいのでおすすめです。詳しくは以下のコラムを参照ください。
⑥課題の分離
アドラー心理学の「課題の分離」が参考になります。「課題の分離」は、人間関係のトラブルが起きた時に、自分の課題なのか相手の課題なのか、切り分けて考えるというものです。
同調圧力に対して、自分の主張をした場合、話し合いがうまくいかず、相手が不快に思うことがあるかもしれません。しかし、もしあなたの主張に正当性があるなら、その主張に対して機嫌を損ねるのは相手の問題と割り切ることも時に大事になります。
必要以上に相手の機嫌を気にしすぎてしまう方は、以下のコラムの課題の分離を学習することをおすすめします。
まとめ
今回は同調圧力への戦い方について解説をさせていただきました。「自分がやりたくない事だけど周りがやってるからやる」という感覚が習慣化されると、メンタルヘルスを崩してしまうこともあります。深刻な場合、ご紹介した5つの方法を参考に屈しない心を養ってください。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・同調圧力にから身を守るトレーニング
・周りに合わせすぎない練習
・ストレスから身を守る,アサーション
・健康的な人間関係を築く練習
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連