親友がいない男女の原因と作る方法
皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のお悩み相談は「親友がいない」です。
相談者
32歳 女性
お悩みの内容
私は学生時代から友人はそこそこ多い方だったのですが、深い関係になるのが苦手でした。結婚してからは、ほんとど友人がいなくなってしまい、寂しい気持ちが強くあります。親友を作る方法はあるのでしょうか。アドバイスがほしいです。
「深い関係の友達をつくたい」というお気持ちが伝わってきました。一方で大人になってから親友を作ろうと思っても、うまく行かず落ち込む方もいます。
なぜ大人になってからの親友作りは難しいのでしょうか?当コラムではそのなぞ解きと、現実的にどうすればいいのか?提案をさせて頂きます。是非最後までご一読ください。
親友とは何か
まずは「親友」の意味について考えていきましょう。
仲間,友人,親友の違い
社会心理学者のBukowski(1989)[1]は、仲間、友人、親友の違いを以下のように表現しています。
・仲間
偶発的に集まった緩やかな人たち
クラスメート 職場の同僚 町内会のメンバー
・友人
意図的につながった相手 あえて関係性を結んだ人たち
飲み友達 趣味友達 ゲームの友達
・親友
お互いを信頼し、打ち解けあい、助け合える間柄
このように親友は、人間関係の中でも極めて濃密な関係にあると言えます。
親友数と調査
宮本(2012)[2]は大学生(日本人169名、アメリカ人220名)を対象に、青年と友人数について調査を行いました。その結果の一部が下図となります。
このように日本人が親友と感じている平均は5人前後で、アメリカ人は9人前後と差があることが分かりました。また、宮本は、卒業や就職と共に疎遠となり、年齢と共に親友数は減少しやしすいと主張しています。
ギャングエイジとは
青年期は、ギャングエイジともいわれ、親友が最もできやすい時期です。この時期には、互いにいたずらをしながら、友人と固まった世界でつるんで過ごすようになります。そしてこの時期の友人関係は、
自己肯定感の源泉になる
知的水準に影響する
と言われています。青年期の友人関係が自己肯定感を作り、勉強や部活などを互いに頑張ることで、知的水準も高めることができるのです。現在、青年期にある10代~20代前半の人は、友達作りができるとてもいい環境にいます。周囲の友人を大切にしましょう。
親友と心理的効果
これまでの心理学の研究では、深い人間関係があると様々な効果があることがわかってきています。
私たちは信頼できる友人がいると、ピンチの時も助け合ったり、励ましあったりできるので、心理的にとても安定していくことがわかります。
その意味で親友がいるかどうかは、メンタルヘルスにおいて極めて重要であると言えそうです。
大人が親友を作れない原因
青年期に親友ができた人はとてもラッキーです。一方で、大人になってからの親友作りに苦労している方がたくさんいらっしゃいます。
大人になってからの親友作りは、なぜ難しいのでしょうか?ここで、青年期と大人の環境の違いを比較してみたいと思います。
青年期の環境
青年期は、以下のように親友作りに適した特殊な環境があります。
上下関係がない
類似している
接触頻度が多い
目的を共有できる
青年期に関わる友人は、上下関係がなく、気を使う必要がありません。同じ制服を着ている、年齢が近い、漫画やゲームなど趣味が同じ、などお互い似たもの同士になりやすく会話がはずみます。
住んでいる地域も近いため、一緒に登下校をしたり、放課後に遊んだりできます。相手との物理的な距離が近いと、仲良くなりやすい事が、心理学的にもわかっています。
部活、勉強、恋愛など目的を共有することも多く、一緒に苦労を乗り越える体験もしやすいと言えます。
大人の環境
一方で、大人になると、以下のように親友を作りにく環境に変化していきます。
上下関係がある
価値観がバラバラ
接触頻度が少ない
目的を共有しにくい
職場では、収入や立場の違いが明確にあります。また大人になると考え方が多様化し、気が合う人を探しにくくなります。接触頻度も仕事を抜けば、会える回数は月に数回というのが一般的ではないでしょうか。
目的に関しては、青年期のように複数の目的をたくさん共有することは、ほぼ無いといってもいいかもしれません。このように大人になってからの親友作りは現実的には難しいと言えるのです。
親友がいない,5つの対策
さて!!ここまで悲観的なことをお伝えしましたが、希望はもちろんあります。親友とまでは行かなくても、心が通い合った友人は作ることができます。そこで親友がいない大人の方向けに、以下の5つを提案させて頂きます。
①部分部分の親友作り
②フラットなコミュニティを探す
③気長に仲良くなる
④自己開示を深くする
⑤見捨てられ不安とうまく付き合う
ご自身でも使えそうだなと感じるアイデアを組み合わせてご活用ください。
①部分部分の親友作り
大人の場合、プライベートから仕事まで、お互いをどっぷり理解するような親友作りは現実的ではありません。そこで、現実的な落とし所として「部分部分の親友作り」をおすすめします。例えば、
趣味 習い事 スポーツ 副業 仕事 資格の勉強
など、それぞれ個別の分野で、意見を交換できる友人関係ができればOKと考えるのです。趣味の友達とは趣味の話でつながる、習い事の友人と習い事の話でつながる、そんなイメージです。
1人の友人に集中するのではなく、個別の分野でそれぞれ深い関係になれると、それなりに心は満たされるものです。また複数の人と個別の分野で関係を作っておくと、友人関係に厚みができるので、依存的な関係にならないというメリットもあります。
②フラットなコミュニティを探す
そもそも友人が少ない…と感じる方は、所属するコミュニティをじっくり探していくことをオススメします。コミュニティを探すときのコツですが、上下関係が小さい場所が理想です。
歌のサークル 社会人サークル 地元のスナック ゲームのサークル
などが挙げられます。これらのサークルは上下関係や利害関係が薄いので、素の自分で接しやすくなります。
筆者の川島は、20代の前半にメンタルヘルスがすごく悪かったのですが、歌のサークルに入ってから屈託のない関係にすごく助けられました。
以下のコラムでは、コミュニティの探し方について解説しています。孤独な環境である、殺伐とした人間関係しかない、という方は下記のコラムを参照ください。
③気長に仲良くなる
いざ友人ができそうな環境に入ることができたとしても焦りは禁物です。心理学の世界には単純接触効果という用語があります。単純接触効果とは
接触頻度に応じて好感度が自然にあがる効果
を意味します。無理に仲良くなろうとせず、会う回数、顔を出す回数を増やしていけば、自然と仲良くなれます。親友作りは長期戦です。1年ぐらいかけてじっくり馴染んでいくぐらいの気長さを持つようにしましょう。
④自己開示を深くする
友人作りの基本はまずは、表面的で無難な会話から始めていくことです。最初は、食事、旅行、趣味など軽めの話題でそつなく話していきましょう。
そして、ある程度仲良くなれたな…と感じたら、深い自己開示をしてみてもいいかもしれません。
恋愛の相談 夢を語る 職場の悩み、コンプレックスの話
これらの自己開示をすると、相手も深い話がしやすくなり、お互いの価値観を交換しやすくなります。会話や自己開示については以下のコラムで解説しています。練習したい方は参考にしてみてください。
⑤見捨てられ不安に注意する
今まで友人関係が少なかった方に、深い友人ができると、よく起こる心理があります。それは見捨てられ不安です。見捨てられ不安は、いつか相手がいなくなってしまうのではないか?という不安になります。
仲が良くなればなるほど起こりやすい心理状態で、扱いを間違えるとせっかくの友人関係の日々が入ることがあります。
仲が良くなるほど不安になる傾向があるな…と感じる方は以下のコラムを参照ください。
動画で仕上
大人の親友作りについては動画でもまとめています。仕上としてご活用ください。
まとめ
大人になってからの友達作りは、青年期ほど容易ではありません。しかし目的別の友達であれば、深い仲の親友を作ることはできると思います。
職場や趣味、プライベート、地域活動など、色々なコミュニティに所属して気の合う人を見つけるところから、友達作りをはじめてみてください♪
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・友人作りの基礎,人間関係を築く練習
・友人作り,信頼を深める,自己開示トレ
・温かい人間関係を築く心理学
・イベントを通して実際に友人を作る
🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連