仕事に行きたくない,対処法
皆さんこんにちは。公認心理師の川島達史です。私が現在こちらのコミュニケーション講座の講師として活動しています。今回は「仕事に行きたくない」です。
相談者
33歳 男性 会社員
お悩みの内容
私は現在、IT系の会社でエンジニアとして働いています。会社の雰囲気が悪く、殺伐とした雰囲気ですごく疲れます。月曜日の朝は泣きたくなります。会社に行きたくない時にどのような心持でいれば良いのでしょうか。
泣きたくなる‥というお言葉から、苦しいお気持ちが伝わってきました。相談者の方は決して、少数派ではなく、本当にたくさんの方が同じお悩みを抱えています。そこで当コラムでは、仕事に行きたくない現状の理解と原因別の対処法を解説します。ぜひ最後までご一読ください。
仕事に行きたくない,現状の問題
現在、仕事に行きたくないと感じている人はどの程度いるのでしょうか。
約8割が感じたことがある
job総研は500人の社会人男女を対象に「2022年 仕事の意識度調査」を実施しました[1]。その結果の一部が下図となります。
Job総研「2022年 仕事の意識度調査」を実施-JobQ Townより引用
上図のようにこれまでの仕事を通して約8割の人が仕事に行きたくないと感じたことがあるようです。他の統計では、99%というものもあり、仕事に行きたくない感覚は誰しもが通る道と言えます。
現段階では60%がストレス
現時点で、仕事に行きたくないと感じる人はどれぐらいいるのでしょうか。この点については、直接的な統計はなかったので、厚生労働省の調査[2]を参考にしてみましょう。厚生労働省の調査によると、現在仕事にストレスを抱えている方は、60%前後になっています。
このように現時点で、強いストレスを感じている人は、労働者の半分以上であることがわかります。朝通勤している人たちの半分以上が大きなストレスを溜めていると考えると、やや切ない結果と言えます。
自殺者は毎年2000人前後
厚生労働省(2023)[3]では、勤務問題を原因・動機の1つとする自殺者数の推移を公開しています。以下のグラフをご覧ください。
このように平成20年から令和4年にかけて、基本的には2000人近くで推移していることがわかります。そして、おおよそ仕事の疲れや職場の人間関係が自殺に結びついていることがわかります。
生活のため、家族のために、仕事をやめたくてもやめられず、我慢した上で自殺をしてしまう方がたくさんいると推測されます。
仕事に行きたくない原因
株式会社ベクトル(2022)[4]では、500名の男女を対象に仕事に行きたくない理由についてアンケート調査を行いました。その結果が以下のグラフです。それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。
1位 職場に苦手な人がいる
グラフの最上位を占める理由です。多くの人が職場での人間関係に悩んでいることがわかります。苦手な人との日々の接触がストレスとなり、仕事への意欲を低下させているようです。
2位 疲れが取れていない
現代社会の特徴を反映した結果といえます。長時間労働や過度なストレス、睡眠不足など、様々な要因が慢性的な疲労をもたらしています。休日でも十分に回復できないことが、仕事への意欲低下につながっているのでしょう。
3位 やる気が起きない
モチベーション低下の問題が多くの人に共通していることがわかります。仕事の意義を見出せない、成果が適切に評価されていない、キャリアの展望が見えないなど、様々な要因が考えられます。
4位 人間関係が悪い
「苦手な人がいる」よりも広範囲な人間関係の問題を示しています。職場全体の雰囲気や、チームワークの欠如などが原因として考えられます。オープンなコミュニケーションを促進し、相互理解を深める取り組みが重要です。企業側も、良好な職場環境づくりに向けた施策を講じる必要があるでしょう。
5位 業務量が多い
過重労働の問題が依然として存在することを示しています。過度な業務量は身体的・精神的な負担を増大させ、バーンアウトのリスクを高めます。企業は適切な人員配置と業務の効率化を図り、従業員の健康と生産性のバランスを取る必要があるでしょう。
6位 労働環境が悪い
物理的な環境(騒音、温度、照明など)や、制度面(長時間労働、休憩時間の不足など)の問題が含まれます。また、ハラスメントや不公平な待遇なども、労働環境の悪化につながります。企業は従業員の声に耳を傾け、快適で生産性の高い労働環境の整備に努める必要があるでしょう。
仕事に行きたくない基礎的な対策
そこで当コラムでは、会社に行きたくない時の基礎的な対処法を3つ紹介します。
①過剰適応しないようにする
まずはじめに過剰適応という用語をおさえましょう。過剰適応とは以下の意味があります。
自分の気持ちを押し殺して、相手や環境に必要以上に合わせる状態
仕事に行きたくない状態を軽く考え、無理に適応しようともがくと、適応障害、うつ病と言う精神疾患になることがあります。特に仕事を理由とした精神疾患では毎年2,000人近くの方が命を落としています[5]。
有休を消化できない、上司のパワハラに耐え続ける、サービス残業が長時間続く、このような過酷な状況に無理に適応しようとしている方は要注意です。
自分の身を守れるのは自分だけです。まずは過剰適応はしない!という意思を固めましょう。過剰適応については以下のコラムで詳しく解説してます。理解を深めたい方は参考にしてみてください。
②病気のラインか判断
仕事に行きたくない時、深刻度が高いと感じる場合は、病気のラインかを判断しましょう。判断する上で、参考になりそうな診断を紹介します。以下の3つを参考に、医療機関にかかるラインなのかを判断しましょう。
仕事に行きたくない,簡易診断
厚生労働省,ストレスチェック
QIDS -J,簡易抑うつ症状尺度
結果が思わしくない場合は、③の基礎知識を抑えてください。結果が良好な方は④に進んでも大丈夫です。
③精神疾患の知識をおさえる
仕事に行きたくない気持ちが深刻になると、精神疾患になることがあります。精神疾患としては、適応障害とうつ病に関する知識は必ずおさえておきましょう。
適応障害とは
適応障害とは、ストレス因がはっきりしている時に、抑うつ感、焦燥感、不眠などの症状がでる精神疾患です。特にパワハラ、長時間残業、転職した際に起きやすいと言えます。
適応障害については、ストレス因を除去する、休息をとる、仕事量を減らすなどの対処が必要になってきます。詳しくは以下のリンク先にある動画で解説しました。あてはまるかもしれない…と感じる方は参考にしてみてください。
適応障害の基礎と治療法
うつ病とは
うつ病とは、ストレス因がない場合でも、抑うつ感、自殺企図、不眠、焦燥感の症状が出る精神疾患です。うつ病になると身体と心が鉛のように重く感じられ、いつも通り仕事をすることが困難になります。年間4000人近くが命を落とす深刻な病です[5]。
うつ病は個人での治療は極めて困難です。医療機関を利用し、心理療法を勉強しながらじっくり治療する必要があります。精神的にかなり追い詰められていると感じる方は、以下のリンク先の動画を参照ください。
仕事に行きたくない原因別の対策
先ほどの仕事に行きたくない理由別に、それぞれ対策をご紹介します。ご自身の状況に当てはまる対策があれば、ぜひ取り入れてみてください。
④人間関係の対処法
人間関係が悪いと、ストレスが蓄積し、心身の健康に悪影響を及ぼす状態になります。その結果、仕事に行きたくない気持ちが強くなってしまうのです。基本的に職場の人間関係が悪いと感じる場合は、「上司」が問題であることが多いです。
具体的には、過度な叱責や理不尽な要求、人格否定などのパワハラ行為が見られます。こうしたパワハラ上司に対応する方法としては、
アサーティブな精神を持つ
被害状況を記録する
職場の第三者に伝える
外部の専門家に相談
などの方法があげられます。特にアサーティブな精神を持つことは、自分を尊重する、不当な扱いに対して適切に対応する力を養います。また、被害状況の記録や第三者への相談は、問題解決に向けた具体的な行動につながります。
パワハラ上司に対策する方法として、まずは自分の権利を認識し、適切に主張する姿勢を身につけることが大切です。同時に、信頼できる同僚や上司、外部の専門家に相談し、サポートを得ることも重要です。
状況が改善されない場合は、転職も含めた環境の変更を検討し、自身の心身の健康を最優先に考得ていきましょう。パワハラ上司への対策について詳しく知りたい方は、下記をご覧ください。
⑤仕事のやる気が起きない
仕事に行きたくない方は、自分らしい感情を表現できていない傾向があります。最近の心理学では、感情労働が注目されています。感情労働とは、自分の感情を偽って、本来とは別の感情を演じることを指します。
いつも演技的に振舞うことが求められる
上司に嫌な気持ちがあってもうれしそうにする
嫌な仕事も二つ返事でYESと言わなくてはならない
このような状況が続くと私たちの心は悲鳴をあげてしまいます。もしそうだとしたら、以下のことを心にとめておいてください。
私たちはロボットではなく感情をもった人間である
私たちは仕事のために人間らしさを失う必要はない
あなたの感情を過剰にコントロールする人には注意する
もし上記の表現が心に刺さったとしたら、おそらくあなたは感情労働をすごくしていると思います。以下のコラムで理解を深めることをおすすめします。
⑥疲れが取れない
仕事に対するストレスを溜めると、交感神経を使いすぎて、不眠や血管に関する病気になりやすくなります。体が慢性的に疲れている感覚があるかたは要注意です。
休日はしっかりと睡眠をとる、食生活を安定させる、深夜に飲酒しないなど、健康的な生活をするように気を配ってください。体の不調については以下のコラムで改善法を解説しています。参考にしてみてください。
⑦業務量が多い
厚生労働省の調査では、ストレスを抱える原因として、60%前後の方が、仕事の質と量をあげています[2]。
仕事のストレスを溜めないためには、自分の限界を明確にしておくことが大事です。限界を設定する際は、抽象的にするのではなく、とにかく客観的に判断できる表現にしておくことが大事です。例えば以下のような設定が挙げられます。
残業は月20時間を超えないようにする
有休取得率は80%
休日出勤は年に3回まで
人格批判は文章にして人事に報告
などです。そして限界を超えたら、きちんと主張することが大事です。しっかりと限界を決め、その基準を超えた場合は、意志を強く持ち、主張することも大事にしましょう。自分の身は自分で守るしかありません。
限界設定のやり方については下記を参照ください。
⑧労働環境が悪い
労働環境が悪いと、ちょっとした仕事でもストレス感じやすくなり、体も心も疲れ果ててしまいます。毎日の仕事が苦痛になって、仕事に行きたくないと感じることもあるでしょう。
多くの場合、「職場の設備」や「働き方」に問題があります。例えば、安全対策が不十分だったり、働きすぎて休む時間が足りなかったりすることがあります。
こんな状況を改善するには、次のような方法があります。
上司や人事の人に相談する
労働組合に助けを求める
労働基準監督署に相談する
環境を変える
これらの方法は、働きやすい職場づくりの大切な一歩です。まずは信頼できる上司や人事の方へ相談をしてみましょう。状況によっては、すぐに労働環境の改善につながるかもしれません。
もし、職場が劣悪で改善する意向も見えない場合には、労働組合や労働基準監督署に相談するのも良い方法です。法律の専門家からアドバイスをもらえます。
しかし、会社の職場環境は一朝一夕では変えられないことも多いです。いくら相談しても解決しない場合には。環境を変えるのも1つの手段です。ご自身の心身の体調を優先して、限界を感じている場合には早めに行動を起こすようにしましょう。
まとめ
仕事は人生の半分の締めます。仕事に行きたくないという状態を改善することは、ある意味で人生の半分を改善することと同じ意味合いを持ちます。
皆さんが紹介した対処法を参考に、仕事の満足度を少しでも上げられたら、私としてはすごくうれしいです。心から応援しています!
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・過剰適応への注意,断る練習
・自分を守る,限界設定練習
・疲れた心を整理,心理療法を学ぶ
・温かいコミュニティでほっとしよう
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
・出典[1]Job総研「2022年 仕事の意識度調査」を実施-JobQ Town[2]厚生労働省 平成29年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況[3]資料厚生労働省 2023_第1章_03_自殺の状況 第 1-3-5 図 勤務問題を原因・動機の 1 つとする自殺者数の推移(年齢層別)[4]株式会社ベクトル(2023).仕事に行きたくない理由やタイミング、その時の対処法についてのアンケート調査[5]警察庁(2017).平成29年中における自殺の状況
私は仕事の行きたくない理由はなんだろう?
と自分自身でも原因が分からないまま両親から言われた
(仕事=辛いのは当たり前だと思いなさい)この言葉が正しいと思って、
辛いけど頑張らないといけない、転職しても辛いに決まっている、
天職、遣り甲斐がある、仕事が楽しい、そんなことを思える人生なんて自分にはこない、
なぜなら(仕事=辛いのは当たり前だと思って生きていきなさい)
(とにかく頑張りなさい)この言葉しか返ってこなかったから。
しかし、このままでは自分は精神的な病気になってしまうかもしれない。
そうなる前に転職して、天職、遣り甲斐、仕事が楽しい、そう思える仕事を探そうと
心からそう思いました。
ちなみに私の仕事行きたくない深刻度は31点でした。