神経質な性格を治す方法,6つの治し方
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「神経質な性格を治す方法」についてご相談を頂きました。
相談者
35歳 女性
お悩みの内容
私は昔から神経質な性格で、ずっと苦しんできました。
ウイルスが気になり外出できない
鍵のかけ忘れを心配して何度も確認しに帰る
発言の矛盾が気になり細かく指摘してしまう
こんな状態が毎日続いています。不眠も長くあり、体も疲れ気味です。30代の後半はもう少しおおらかな自分になりたいと考えています。
どうすればいいでしょうか?
些細なことが気になってしまうと、心が休まる暇がないですね。相談者の方は、日常生活全般について、神経質になってしまう傾向があると感じました。
当コラムでは、改善するための対策をしっかりお伝えします。参考にしてみてください。
神経質の意味や原因
神経質の意味
初めに神経質の意味や性質を理解していきましょう。「神経質(nervous)」は100年以上も前から心理学や精神医学の世界で使われてきた言葉で、以下の意味で使われます。
心のあり方、体の反応が極端になっている状態
神経質が過剰になると、以前は神経症という病気として認定されていた時代もあります。神経症は主に、心の問題を起因とする病気です。現在は不安障害、強迫性障害など、細分化されたため使わなくなってしまいましたが、アメリカ精神医学会DSM、国際診断基準ICDで使われていました。
神経質の対象
神経質は広い概念で、心と体の両方に関わります。
五感が敏感
聴覚、嗅覚、触覚、温度変化など、体で感じる感覚がとても敏感な場合があります。肌に触れられたり、小さな音に反応してしまうので、体の器官が人よりも優れている可能性があります。
エラーへの敏感さ
不均一なものを発見しやすい、不完全なものが気になる、確率が低いリスクを過剰に気にする場合があります。曖昧なものを受け入れることが苦手な傾向にあります。
人間関係の敏感
他人の表情や、雰囲気の変化に敏感、他者に対する共感力が高いなどの特徴がみられることがあります。
神経質になる原因
神経質になってしまう原因は、先天的なものと後天的なものがあります。
*先天的なもの
私たちは、身長や体重や顔つきなどそれぞれ個性があります。これと同じように、脳や体の仕組みにも個性があり、五感や情報処理に偏りがある場合があるのです。
例えば、自閉スペクトラム症の方の中には、匂いにすごく敏感な方がいて、特定の匂いに触れると具合が悪くなる方もいらっしゃいます。
行動遺伝学者の安藤(2000)[1]の研究では、神経質の遺伝率は41%、家庭環境は7%、外部環境が52%とされています。*性格と遺伝コラム
つまり、神経質傾向の約40%は生まれ持った特徴と言えますが、残りの約60%は後天的な要因が絡んでいると言えます。
*後天的なもの
神経質は、考え方の偏りや文化圏によっても変わってきます。例えば、私たち日本人は時間に対してきっちりしている文化圏に住んでいます。電車が10分遅れるだけでイライラしてくるのは、国民性と言っていいかもしれません。
このように神経質になってしまう原因は、遺伝から文化的な要因まで、幅広く関連していると言えます。
神経質と心の問題
神経質は過剰になると様々な心の問題を引き起ります。
・恐怖症
神経質が過剰になると、特定の状況や対象が怖くなります。例えば、広場が怖い、人が怖い、とがったものが怖い、特定の数字が怖いなど、その対象は多岐にわたります。
・不安症(不安障害)
神経質が過剰になると、根拠のない不安が膨らみやすくなります。例えば、ちょっとでも外に出るとウイルスに伝染すると考え、外出が困難になったりします。強い不安感があるため、行動が制限され、社会生活が困難になることがあります。
・病気不安症
実際には病気でないにも関わらず、病気と思い込む方がいます。病院の検査を繰り返したりすることもあります。
神経質を改善する6つの対策
ここからは神経質を改善する6つの方法を提案させて頂きます。
①神経質度を客観的に把握
②環境を整える
③認知療法を学ぶ
④行動療法で少しずつ慣れる
⑤あるがままの精神を持つ
⑥神経質を活かす
ご自身に合いそうなものを組み合わせてご活用ください。
①神経質度を把握
初めに、自分がどれぐらい神経質になりやすいかを客観的に把握していきましょう。神経質と言っても、比較的軽い方から、重度な方まで幅があります。特に重度な方は、場合によっては医療機関での支援が必要になることもあります。
以下の診断では、簡易的に神経質度を測ることができます。気になる方は診断してみてください。
②環境を整える
次に考えることは、環境設定です。特に五感に関する神経質さは、先天的な問題であることも多く、改善は難しい面もあります。
例えば、音に敏感な方は、どんなに訓練をしても改善は難しい傾向があります。このような場合は、自分の生活環境を整える必要もあります。
私が相談を受けた事例では、都内に住んでいた方が思い切って静かな郊外に引っ越したところ、かなり症状が改善した例もあります。自分自身が安心して過ごせる生活環境をなるべく整えるようにしてください。
③認知療法を学ぶ
神経質を治す方法として代表的なのが、認知療法です。認知療法では
神経質な考えを裏づける証拠はあるか
現実的か確率計算をしてみる
考えに囚われすぎて別の問題が起こっていないか
など、自分の考え方を客観的かつ現実的に見直していく練習をしていきます。例えば
外に出るとウイルスにかかる!
絶対に外出してはいけない!
と考え、家に完全に引きこもって、メンタルヘルスが不安定になっている方がいたとします。この考え方が現実的か考えていきます。
外に出るだけで感染する
という学者は1人もいない
人がいない場所で
感染する確率はほぼゼロ%
外出をしないと
別の健康リスクが出る
など、現実的な証拠をベースに考えていくのです。
以下、よくある事例を折りたたんで掲載しました。不安な気持ちに振り回されているかも…と感じる方は、参考にしてみてください。
認知行動療法は、以下の心理学講座でしっかり学習することができます。神経質な考えを治したい方は以下の講座を参照ください。私も講師をしています。
④行動療法で少しずつ慣れる
神経質な傾向は、何度もチャレンジをしていくことで克服することもできます。以下の図をご覧ください。
このように、神経質になってしまう場面も、何度もその状況にさらされると、回数を重ねるごとに不安が低下していきます。
このように「何度も」挑戦する手法として代表的なのは、行動療法です。行動療法では
嫌な刺激に少しずつ慣れる
避けていた状況を実際にチャレンジする
回避癖を直して行動力をつける
これらのチャレンジを行っていきます。神経質な考えと折り合いがついて、現実場面を改善していきたい場合は、以下のコラムを参考にしてみてください。
⑤あるがままの精神を持つ
森田療法は、日本人である森田正馬によって考案された精神療法です。森田は、神経症の症状は「注意が注意を呼ぶことにより起こる」と考えました。
例えば、時計の音が気になる…という神経質な考えがあった時に、
時計の音を気にしてはいけない!
時計の音を気にしてはいけない!
と考えるほど、症状が悪化してしまうのです。森田はこれを“精神交互作用”と呼びました。
心身の不快な症状にばかり注意を向けると、神経質な状態はより大きくなってしまいます。神経質な状態はある程度はあってもOkです。健康的な範囲内の神経質は“あるがまま”に受容することも大事にしましょう。
神経質を改善する古くからある手法でとてもおススメです。森田療法を学んだことがない方はぜひ下記のコラムを参照ください。
⑥神経質を活かす
神経質な傾向は、心理的、身体的に負担が大きくなることもありますが、過剰になりやすい状態を分析して、避けたり、考え方を改善すればある程度は対処できるものです。
視点を変えてみると、偏った考え方や反応ができるということは、うまく活かせば才能として活かすことすらできるかもしれません。職人、研究職、医療関係、高度な接客などでは、神経質さはむしろプラスとなります。
皆さんが、ご自身の神経質さとうまく付き合っていけることを切に願います。
しっかり身につけたい方へ
当コラムの内容をしっかり身につけたい方は、公認心理師による講座をおすすめします。内容は以下のとおりです。
・神経質な考え方をほぐす,認知療法
・神経質な性格とうまく付き合う練習
・あるがままの姿勢,森田療法を学ぶ
・神経質を味方に,リフレーミングワーク
🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
2件のコメント
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それは、HSPの可能性がありますね。
実は、自分も匂いや音に敏感です。
確かにしんどいですし、限界に感じることもあるかと思います。
自分は、そういう自分がめんどくさいと感じることが多いです。
ですが、それが悪いことでもないですし、絶対に治さないといけないものでもないと思います。
ただ、治せなくても、何か紛れるようななんていうか自分が好きなことをして、気を紛らわしたりして少しでもコントロールできたら少しは気持ち的に楽になるのかなと思います。
あと、自分なんかは、敏感だからこそ色んな悩みがあるのですが、悩むときはとことん悩みますし、落ちるときはとことん落ちます。
悩んでいる自分を否定しないようにはしています。
確かにしんどいですが、自分と向き合うきっかけにもなりますし、しんどいときはぐっすりと休むほうが自分的にはリラックスできるからです。
あとは、周りに相談するとか・・・。始めまして。私は、現在 音と匂いに過敏です。時計の秒針の音や雑音、印刷物や洋服の染料の匂いを不快に感じます。もう 限界です。どなたかアドバイスをお願いします。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
・出典[1] 安藤 寿康 (2000). 心は ように遺伝するか―双生児が語る新しい遺伝観 講談社
認知機能障害、なのかもですが、仕事などで暗記ものが来た時に、覚えられない恐怖が頭を占め、余計に覚えられない、の様な事があります。
若い頃は素直にスポンジのように吸収して行ったのですが、余計な気働かせをしてしまいます。
「そうなんだねぇ〜」と受け入れて少しやってみようと思います。