レビー小体型認知症の症状や原因
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している、公認心理師の川島達史です。今回のテーマは「レビー小体型認知症」です。
目次は以下の通りです。
①レビー小体型認知症とは何か
②レビー小体型認知症の進行
③症状の経過
④治療方法
当サイトの特色は、臨床心理学、精神保健福祉の視点から心の病気を解説している点にあります。心の病気の解説サイトは多いですが、精神科医の先生が監修されていることが多く、心理師の専門サイトは多くはありません。
お薬以外での改善策を詳しく知りたい方に特にお役に立てると思います。ご自身の状況にあてはまりそうなものがありましたら是非ご活用ください。
レビー小体型認知症とは
意味
レビー小体型認知症とは、はっきりとした幻視やパーキンソン症状などを特徴とした認知症の一種です。全認知症の約20%がレビー小体型認知症だといわれています。
好発年齢
好発年齢は65歳以上の高齢者になります。40歳以降から発症することもあり、40歳~65歳での発症は若年性認知症と呼ばれています。
原因
レビー小体とは、αシニュークレインとよばれるたんぱく質が、大脳に表れることで起こる疾患です。レビー小体は大脳皮質とよばれる脳の外側や、脳幹と呼ばれる脳の中枢部分にも表れます。
アルツハイマーとの違い
同じ認知症でも、レビー小体型とアルツハイマー型では、症状にいくつか違いがあります。以下の表を参考にしてみてください。
レビー小体型認知症の症状
レビー小体型認知症の特徴的な症状として、大きく4つに分けられます。
幻視
幻視とは実際には存在していないのに、人や動物、物などが目に見えてしまう症状のことです。レビー小体型認知症に特徴的な症状として知られています。
パーキンソン症候群
主に運動の障害です。筋肉が固くなる固縮や、足が踏み出せなくて歩行障害が生じるなどの症状があります。
レム睡眠行動障害
悪夢を見てうなされたり、大声をあげることなどがあります。また、寝ているときの体動が大きく、ベッドから落ちることなどもあります。
認知の変動
ぼーっとした状態と、はっきりとした状態を繰り返して、それが1日のうちに変わります。その日の中で、まるで別人のように感じることがあります。
症状の経過
初期
幻視やパーキンソン症候群など、初期からレビー小体型認知症特有の症状がみられます。幻視は「そこに女の人の顔が浮かんでいる」などと、はっきりと出現します。一方で、記憶力の低下など認知機能の障害は、初期では多くありません。
中期
徐々に認知機能の低下もみられてきます。認知機能の低下には、記憶、注意、見当識などの低下が挙げられます。症状も一日のうちで変動する、日内変動がみられるようになります。特に朝よりも夕方になると症状が悪化することが多いです。
後期
パーキンソン症候群による歩行障害で転倒することも見られます。身体的な症状も目立つようになり、車いすでの生活が中心になることもあります。飲み込みの障害により食べ物がうまく食べれなくなり、誤嚥性肺炎につながることもあります。
レビー小体型認知症の治療
レビー小体型認知症については以下の治療法が挙げられます。
①認知症共通の治療法
②レム睡眠障害への対応
③幻視への対応
④パーキンソン症候群への対応
ご自身、ご家族の状況に合わせて組み合わせてご活用ください。
①認知症共通の治療法
レビー小体型認知症の治療はアルツハイマー型認知症の治療と基本的には同じ内容になります。例えば、リアリティーオリエンテーション、回想法、認知機能訓練などを行っていきます。詳しい手法はアルツハイマー型認知症のコラムで執筆しました。理解を深めたい方は下記のコラムのページ下部を参照ください。
②レム睡眠障害への対応
レム睡眠障害への対応としては、無理に起こさないことが大事です。無理に起こそうとすると、夢と現実を混同し、暴力を振るうなどの危険性があります。対象者の安全を確認して、しばらく静かに見守るということが大事です。レム睡眠は長時間持続しないため、自然とノンレム睡眠に移行して、症状が治まっていきます。
③幻視への対応
幻視の症状への対応としては、訴えを否定したり無視しないことが大事です。客観的には見えてはいませんが、本人にとってははっきりと見えているのです。周囲を驚かせる幻視を訴えることもありますが、ご本人にははっきりと見えています。それを否定しようとすると、怒ったり暴力につながったりします。まずは、ご本人の訴えを聞いて安心することを大切に対応します。
- 対応例1
「そこに怪しい人影がいる」と訴える
×「そんな人いないわよ!」と否定する。 - 〇「私も見回りしてみますね」と受け止める。
- 対応例2
会話中に「何か白い糸みたいなものが落ちた」と話し、会話が中断
×「何も落ちていないよ」と否定して会話を続ける - 〇「今も見えますか」と聞き、会話が中断しても本人の訴えを一度受け入れる
- 対応例3
部屋の置き物を見て「後ろに男の人が立っている」と言う - 〇置き物をしまって、幻視を引き起こす環境を変える
④パーキンソン症候群への対応
レビー小体型認知症はパーキンソン症候群による身体的な症状もあります。それぞれの症状に合わせて対応していくことが大切です。
・歩行の困難…足を大きく踏み出すように声掛け。突然の転倒もあることを周囲が理解しておく。
・動作の緩慢さ…筋肉のこわばり等もあるため、難しい動作は手助けする。
・言葉の出にくさ…言葉の流暢さが低下するため、急かさずに会話をする。
これらの症状に対しては重症度に応じて、リハビリなどの専門的な治療も必要になってきます。
支援の力を高めたい方へ
認知症の症状を和らげるには、日々の会話による支援が大事です。私たち公認心理師は、福祉関係の方、ご家族の方向けに、コミュニケーション講座を開催しています。内容は以下の通りです。
・傾聴スキルトレーニング
・共感の基礎とトレーニング
・話しやすい雰囲気の作り方
・カウンセリングの基礎理論
興味がある方は以下の看板をクリックしてご検討ください。皆さんのご来場をお待ちしています。
監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連