社交不安症,薬物療法での治療
皆さんこんにちは。公認心理師の川島達史です。私は現在、社交不安症の専門カウンセリングを行っています(興味がある方はこちら)。社交不安症(障害)コラム1では、心理療法を中心に解説してきました。今回のテーマは「社交不安症と薬物療法」です。目次は以下の通りです。
①社交不安症と精神科,心療内科
②最低限おさえる薬の知識
③薬物療法と脳の仕組み
④心理療法と精神科の違いなど
について解説していきます。社交不安症でお薬を飲む可能性がある方は参考にしてみてください。
①SADと精神科,心療内科
精神科と3つの対処法
社交不安障害の治療には、心療内科や精神科病院での治療があります。精神科では以下の手法で治療が進められています。
1.生物学的対処
薬物療法、電気療法など
2.心理的対処
カウンセリング、精神療法、SSTなど
3.社会的対処
社会復帰プログラム、デイケアなど
その中でも、薬物療法は基礎となる治療法であり、心理療法と合わせて治療を行うことが多いです。
精神科の実態
精神科では基本的には、脳や体の仕組みの面から改善していくのが基本です。後程詳しく解説しますが、私たちの脳は、さまざまな脳内伝達物質が影響し、不安を感じたり、悲しくなったりします。
精神科ではこれを「薬」の面から改善していくのです。一方で、薬以外の手法である、心理療法、社会復帰プログラムは、精神科によってはかなりばらつきがあります。
精神科によっては薬物療法だけのクリニックもありますし、公認心理師,臨床心理士,精神保健福祉士のカウンセリングや社会生活のアドバイスを充実させている機関もあります。
精神科医の悩み相談は控えめ
ただ大概のクリニックが、まずは薬物療法を基本としていて、カウンセリングや精神療法は補助的に組み合わせていくケースが多いです。
診察はまずは予備面接から始まることが多く、30分前後、コメディカルの面接を挟み、検査などを行い、そのうえで、精神科医のお医者さんとの面接にはいります。
精神科のお医者さんが1時間しっかり悩みを聞いてくれるようなことはまずありませんのでその点は、あまり期待しないようにしましょう。。(お医者さんに怒られてしまうかもしれませんが (^^; )
②最低限抑える薬の知識
さて社交不安障害,赤面症,視線恐怖症で精神科のクリニックに行くと、かなりの確率でお薬の処方となると思います。もちろん自由意志ですので無理に服用する必要はありませんが、最近では副作用が少ない薬も開発されています。まずは薬についての正しい知識を身に着けておきましょう。
薬物療法の歴史
薬物療法は、1952年のフランスの精神科医 Delayと Deniker が初めて抗精神病薬を発見したことが始まりになります。
以来、半世紀に渡って研究が進み、薬物がどのようなメカニズムで脳に作用するかが解明されました。比較的副作用が少ない薬物が誕生し、臨床に導入されるようになりました。
精神科で社交不安障害,赤面症,視線恐怖症を治療する際は、薬物療法が基本となります。
処方される薬の種類
社交不安障害で処方される可能性があるのが、以下の3つになります。
SSRI,SSRI
「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」
「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬」
ベンゾ系
「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」
プロプラノロール
「プロプラノロール塩酸塩」
それぞれ果と副作用について解説をします。
SSRI,SNRIは社交不安障害で最もよく使われるお薬です。SSRI、SNRIを処方された際は、比較的穏やかな薬と考えると良いでしょう。
効果
・不安を和らげる
・抑うつ緩和
・前向きにする
SSRIはセロトニンという精神を安定させる神経伝達物質を増やすことで症状を和らげる薬です。SNRIはセロトニンとノルアドレナリンという意欲に関する神経伝達物質を増やすことで症状の緩和をしていきます。
副作用
精神神経系症状
頭痛、眠気、不随意運動、めまいやふらつきなどの症状があらわれる場合があります。
運転などの危険をともなう機械作業は控えましょう。
セロトニン症候群
いらいらする、不安、混乱するなどの症状があらわれる場合が稀にあります。
消化器症状
口渇、吐き気、便秘、下痢、食欲不振、嘔吐などの症状があらわれる場合がある
上記の症状は服用初期にあらわれることが多いが、2〜3週間前後で治まる傾向にあります。
性機能障害
勃起障害、射精障害などの性機能異常も微小な確率ですが、考えられます。
ベンゾジアゼピン系は慎重に処方されるべきお薬です。比較的効き目が強い一方で、副作用も出やすいお薬と言われています。
効果
・不安を和らげる
・緊張を和らげる
・安眠効果
この薬には、「GABA」と呼ばれるリラックス効果を高める物質の働きが関わっています。GABAに直接作用して、増強する働きがあるため、不安を鎮めを精神の安定につながるのです。
副作用
強い眠気
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は脳内の活動を低下させる薬なので、日中に強い眠気に襲われたりと、人によっては強い副作用が表れることもあります。
薬の種類やどれだけの頻度で服用するかなどによって変わりますが、数週間以上、毎日服用していると、薬に対する依存が形成される恐れがあります。例えば、用量を今までより多く服用しないと、これまで得られていた薬の効果が感じられなくなります。
効果
・手足の震えを抑える
・書痙の緩和
・動悸を抑える
インデラルは、交感神経の1つであるβ受容体を遮断する作用があります。β受容体にフタをすることで、神経の興奮を抑え震えや動悸を鎮静化していきます。
※β受容体…交感神経の受容体。ノルアドレナリンと結びつくことで、心拍数・血液量を上昇させ、体を緊張状態にする。
副作用
主に徐脈、めまい、発疹、蕁麻疹、視力異常、霧視、涙液分泌減少などが報告されています。こうした症状が現れたら、担当の医師または薬剤師に相談してください。
処方されたら調べよう
お薬を処方される際は、大概のお医者様が副作用も教えてくれると思いますが、念のため自分自身でも副作用をしっかり理解した上で飲むようにしましょう。基本的には商品名で処方されるので、商品名をネットで検索すると、上記のどのタイプかはわかると思います。
薬を飲むことは罪ではない
お薬を飲むときは、精神病者になってしまった…というような感覚に陥り、罪悪感を持つ方も一部います。しかし、社交不安障害は脳の複雑な仕組みによって引き起こされる部分もあります。特に日本人はS型という緊張遺伝子を多く持っていると言われています。
このような気質的な部分はあなたの責任ではなく、脳の仕組みの問題なのです。例えば、糖尿病の方が体の仕組みの問題を抱え、お薬を飲むように、社交不安障害も脳の仕組みの問題であることもあります。
薬を飲む=悪いこと,罪
と考えるのではなく、自分を助ける治療として重要なことであると考えましょう。もちろん意味もなく飲むことはNGですので、効果をよく主治医の方と相談しながらうまく使っていきましょう。
③薬物療法と脳の仕組み
薬物療法がどうして効果があるのか?そのプロセスを知りたい方は、下記を展開して理解をぜひ深めていきましょう。脳の中で何が起こっているか?理解が深まると思います。
①セロトニンの再取り込み
神経の末端部には、「シナプス小胞」という化学物質が貯まっている袋があります。そこから「セロトニン」という神経伝達物質が放出されます。セロトニンは次の神経細胞に届き、「セロトニン受容体」という所に作用します。
このとき、分泌されたセロトニンは前の神経細胞にある「セロトニントランスポーター」に再取り込みされて、リサイクルされます。健康的な人では、セロトニンの量が十分分泌されているため、再取り込みされても変調をきたすことはありません。
しかし、うつ病や不安が強い人はセロトニンの量が乏しいので、再取り込みされてしまうと、濃度が低くなり、不安を感じやすくなってしまいます。
②SSRIの作用
SSRIはこの「セロトニントランスポーター」に蓋をして、リサイクルされないように作用します。リサイクルされないで残ったセロトニンは、シナプスの間に残ることになり結果的にセロトニンの濃度が高く維持されるようになります。セロトニンの濃度が高くなることで、うつや不安などの症状が和らいでいくのです。
カウンセリングのお知らせ
社交不安症コラムにお付き合いいただき、ありがとうございました。皆さんのメンタルヘルスのお手伝いになったら光栄です。最後にお知らせがあります。筆者の川島は社交不安症のカウンセリングを行っています。内容は以下の通りです。
・社交不安の改善法
・認知行動療法の学習
・回避癖の治し方
・ソーシャルスキルトレーニング(SST)
興味がある方は以下の看板をクリックしてご検討ください。まずは気軽にご相談ください。
監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連