回避依存症の男女の特徴と治し方

皆さんこんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史です。私は現在心理学講座を開催しています。今回のテーマは「回避依存症」です。

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皆さんは好きな人ができたとき、恋人ができたとき、なぜか距離を取ってしまうことはありませんか?なぜ好きなのに距離を取りたくなるのでしょうか。今回は、回避依存症の原因や直し方を解説していきます。ぜひ最後までご一読ください。

回避依存症の意味とは

語源

回避依存症とはどのような意味があるのでしょうか。筆者の川島が調査した限りでは、回避依存という言葉をはじめに使ったのは、恋愛に関する書籍を多数出版している伊東明(2000)[1]が最初だと考えています。伊藤は恋愛には恋愛依存があり、恋愛依存にはさらに、共依存、回避依存、ロマンス依存、セックス依存の4種類があるとしています。

一方で、心理学辞典、学術サイト、精神疾患の診断基準、のどこにも記述はなく、精神医学や心理学で使われる用語ではありません。あくまで一般的な用語として使われています。学術的には使われていないにも関わらず、流通しているということは、それだけ、共感する方が多いと言えそうです。

意味

伊藤の定義や、その後の使われ方を総合すると、回避依存症は現在では以下のように定義できると言えます。

深い人間関係になることを避けることで、精神的なバランスを保つことが習慣化している症状

人間関係を構築することは嬉しい反面、怖さもあります。それは相手のことを好きになればなるほど、失ったときのショックが大きくなるからです。そうしたショックを回避するため、深入りしないようにするのが回避依存症の特徴と言えます。

回避依存症の特徴

回避依存症の方には以下の特徴があります。

短期間の出会いと別れを繰返す
付き合った人数が多い,もしくはいない
深い自己開示を避ける
メールがサバサバしている
悩みを相談してもしっかり聞いてくれない

あてはまる項目が多い場合は回避依存症の傾向があるかもしれません。

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回避依存症の原因と治し方

ここまで解説したように回避依存症の学術的な研究はほとんどありません。一方で、心理学の世界では、よく似た概念があり、研究されてきました。筆者の経験も含めると、以下の原因が複雑に絡みあっていると考えられます。

①社交不安を抱えている
②対人信頼感が少ない
③愛着不安がある
④見捨てられ不安がある
⑤プロセス依存になっている
⑥ソーシャルスキルが不足している

ご自身にあてはまる項目を中心に理解を深めてください。

①社交不安を抱えている

回避依存症の方の中には、社交不安を抱えている方がいると推測されます。社交不安とは、人間関係に不安を覚えることを意味します。重症化すると社交不安症(障害)という病気に発展することがあります。社交不安を抱える方は、相手の気持ちを考えすぎて、不安が強くなり、疲れてしまうという特徴があります。

社交不安を改善するには、人の目を気にする心理を改善する、相手の心を読みすぎる癖を改善する、などが挙げられます。以下のコラムで詳しく解説していますので、あてはまると感じる方は参照ください。

社交不安(症)障害の原因と治し方

②対人信頼感が少ない

松永ら(2008)[2]は、大学生228名を対象を、

・本音群
・気遣い群
・うわべ群

の3つのグループに分けて、対人的信頼感との関わりを調べました。対人的信頼感とは、簡単に言うと「他人のことを信頼できる感覚」のことです。結果は、以下のグラフのようになりました。

図の意味をわかりやすく解説すると、

・対人的信頼感が高い人は本音で話す
・対人的信頼感が低い人はうわべで話す

となります。ここからは推測となりますが、うわべの付き合いになりやすい回避依存症の方は、対人信頼感が低い可能性があります。対人信頼感は様々な原因が複合的に関連する心理で、自分でもなぜ対人信頼感が低いのかわからない方もいます。

臨床現場では、過去の人間関係の失敗を整理する、アサーションを学び他人と自分の価値を感じられるようにする、会話の力をつけて肯定的な体験を増やす、などが挙げられます。

アサーティブコミュニケーションの基礎
会話の力をつける方法

③愛着不安を抱えている

3つ目は愛着不安の問題です。愛着不安とは深い人間関係になることに対して、不安を感じる心理を意味します。愛着不安は過去の家庭環境に問題を抱えていた方がなりやすいと言われています。

症状としては過去の家庭環境の悪さを、友人や恋人にも投影してしまうことがあります。投影とは自分自身の苦しみを、他人に映し出す心理で、

どうせ〇〇ちゃんもいつかはいなくなってしまう
一緒になっても最後は裏切られる
結婚をして深い仲になってもろくなことがない

という感覚になりがちです。この心理の特徴は、相手には何ら問題がないにも関わらず、自分の気持ちを相手に映し出してしまう点にあります。

具体的な対処法としては、まずは愛着不安を抱える自分に気がつくことが大事です。そしてそういった家庭環境にあった自分を許し、自己受容し、よく頑張ってきたと認める必要があります。愛着不安については以下のコラムで解説をしました。あてはまると感じる場合は、参考にしてみてください。

愛着障害の原因と治し方
投影とは何か(動画解説)

④見捨てられ不安がある

見捨てられ不安は、さきほど解説した愛着不安に見られる典型的な心理で、仲良くなった人がいずれはいなくなってしまう、と感じてしまう心理を意味します。見捨てられ不安があると、人間関係に投げやりになってしまいます。

改善するには、投げやりになりそうな時に、衝動的に行動するのではなく、健康的な行動をとる練習が大事になります。詳しくは以下のコラムで解説をしました。理解を深めたい方は参考にしてみてください。

見捨てられ不安を改善する方法

⑤プロセス依存がある

5つ目はプロセス依存のケースです。プロセス依存とは、行為依存ともいわれていますが、過程そのものを楽しむ依存症を意味します。人間関係では以下のような方は注意が必要です。

付き合った人数が多い
すぐに身体の関係を結びたがる
一度身体の関係を結ぶと冷たくなる
最初は社交的で,急に冷たくなる
深い話はしたがらない

恋愛に置き換えると、恋愛のプロセス依存の方は、恋愛して体の関係を結ぶまでのドキドキ感そのもののを求めていることがあり、一度手に入ってしまうと目的を達成した安心感から興味を喪失してしまうのです。

プロセス依存の可能性がある方は下記を参照ください。依存については以下の動画で対策を解説しています。あてはまる…と感じる方は参考にしてみてください。

依存症への対策

⑥ソーシャルスキルが不足している

相川(2005)[3]は学生1002名を対象に、成人のソーシャルスキルについて研究を行いました。ソーシャルスキルとは、人間関係を始めたり、継続する技術を意味します。具体的には以下のことがわかりました。

回避依存とソーシャルキル

上図のようにソーシャルスキルがないと、関係維持をしにくい、対人不安を持ちやすい、孤独感をもちやすい、という結果になっています。人間関係は発展していくにつれて、価値観の違いが明確になり、トラブルも起こりやすくなります。その際にソーシャルスキルがないと、事態を収めることができず、お別れしてしまいます。そうした失敗体験から自信を失い、人間関係に回避的になる人がいると考えられます。

ソーシャルスキルをつけるには、グループを作って困りやすい場面を想定して練習する、専門家が用意したカリキュラムでスキルをアップを目指すなどのやり方があります。詳しくは以下のコラムを参照ください。

ソーシャルスキルトレーニングの基礎

 

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私たち公認心理師は人間関係を健康的に築く講座を開催しています。内容は以下の通りです。

・人間関係を豊かにする,SSTトレーニング
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・温かいコミュニティでほっとした関係を築く

興味がある方は以下の看板をクリックしてご検討ください。皆さんのご来場をお待ちしています。

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監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典

[1] 伊東明(2000).恋愛依存症  KKベストセラーズ

[2] 松永真由美,岩元澄子(2008).現代青年の友人関係に関する研究 Kurume University Psychological Researeh 2eO8,No .7,77−86

[3] 相川充, 藤田正美(2005). 成人用ソーシャルスキル自己評定尺度の構成 東京学芸大学紀要. 第1部門, 教育科学 56巻
87-93ページ