ヒステリックの原因と治し方

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している、公認心理師の川島達史です。今回のテーマは「ヒステリック、ヒステリー」です。

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ヒステリックという言葉は心理学者泣かせの用語です。なぜならヒステリックという用語は「包括用語」だからです。包括用語とは、様々な意味があり、整理しきれない用語を意味します。そのため、現代の心理学の研究ではほとんど使われなくなっています。

一方で、ヒステリックという用語は日常生活に定着し、様々な場面で使われています。そして実際にお悩みの方もたくさんいます。そこで、改めて、用語を整理しながら、心理的な対処法まで提案させて頂きます。

ヒステリックの意味とは

ヒステリックは大別すると3つの使われ方があります。

①感情的な女性
②演技的な性格
③体に表れる症状

以下それぞれの歴史を追いながら意味をおさえていきましょう。

①感情的な女性

古典的な意味としてのヒステリーは紀元前1900年ごろのエジプト人が使っていたとされています[1][2]。当時のエジプト人は、女性の行動の異常や体調不良は子宮に問題があるために起こるとしていました。

その後、ギリシャ人が、その考えを引きつぎ、古代ギリシャ語としてὑστέρα(子宮)と表現するようになり、女性のさまざまな病気を、子宮の病と結びつけていたようです。

その後、医学の父と言われる、ヒポクラテスが紀元前400年ごろに、古典ギリシャ語である「ὑστέρα」をはじめて医学的な見地から使用したとされています(朴,2022)[3]

このような古典的な表現は現代でも受け継がれています。

彼女がヒステリックで困る…
あの女性はヒステリックだね…
女性上司ってヒステリーをよく起こすよね…

今でも女性がイライラする場面でこのように使われることがあります。

女性特有のヒステリックをもたらす原因として、女性ホルモンの変化が挙げられます。以下関連する知識を折りたたんで解説しました。理解を深めたい方は参照ください。

女性のヒステリックに関連するホルモンとしては、エストゲンとプロゲステロンがあります。それぞれ以下の意味があります。

・エストロゲン
別名美容ホルモンとも言われています。排卵日前に増加し、髪の毛、肌の艶の増加、精神的な安定などに関わっています。

・プロゲステロン
別名妊娠ホルモンと言われています。排卵日後に増加し、不安を抑える、体温の上昇、皮脂の分泌、骨の生育に役立ちます。

生理学の研究では、どちらのホルモンも生理前に急激に減少していくとされています。下記はエストロゲンの量になります。

情緒不安定と月経周期

上図のようにエストロゲンは生理前に減少する傾向があります。このタイミングで情緒不安定になりやすい女性は月経が原因である可能性が高くなります。理解を深めたい方は以下のコラムを参照ください。

女性とヒステリックの関係

 

②演技的な性格

2つ目は神経質な性格として使われます。ヒステリーは1800年代から心理学や精神医学の世界でも使われるようになり、現代でも「ヒステリー性格」という用語を使うことがあります。ヒステリー性格は心理学辞典(2013)[4]によると以下のように定義されます。

虚栄心が著しい、大げさで演技的な言動、被暗示性が強く、感情が不安定な性格

具体的には、人の目をすごく気にする、ちょっとした批判に過剰に反応する、主人公になったかのような言動がみられる、派手な服装で注意を引こうとする、などが挙げられます。

ヒステリー性格は深刻になると演技性人格障害(histrionic personality disorder)と診断されることがあります。

③体に現れる症状

3つ目は心の問題が体に現れる症状を意味します。先程の「ヒステリー性格」から「性格」が抜け「ヒステリー」だけで考えると意味が変化してきます。心理学辞典(2013)[5]では以下のように定義されています。

現実に問題となっていること解決することができず、心に負担がかかっているときに、その問題を感じないようにすることで、体に様々な症状が出る事

私たちの心には、辛い出来事や、抱えきれない問題があるときに、防衛機制という心を守るメカニズムがあります。ヒステリーはこのメカニズムの1つです。

心を守ろうとして、様々な問題を感じないようにすることで、結果的に体に症状があらわれることを意味します。より深く理解したい方は以下の折り畳みを参照ください。

心理学の世界では、心の問題を守ろうとする心理を「防衛機制」と呼びます。防衛機制には様々なものがありますが、典型的には「抑圧」があります。

抑圧とは、心の問題をひとまずは、心に底に押しとどめ、感じないようにする、考えないようにすることを意味します。心を守る手段としてはあまりレベルが高くないと言われています。

抑圧は、トラウマなどから心を守るために有効に作用することもありますが、心には抑圧できる限界があり、体に問題が出てくることもあります。防衛機制によるヒステリー症状としては、

典型例
胃痛、不眠、声が出ない、円形脱毛症

重篤化
解離性障害、転換性障害

など様々な障害に結びつくこともあるので注意が必要です。防衛機制については以下のコラムで詳しく解説しています。参考にしてみてください。

心の防衛機制とは何か

 

このようにヒステリックという用語は最初は女性特有の用語として使われてきまたが、時代とともに、性格の問題、身体の症状、など様々な意味が付与されてきたのです。

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ヒステリックを治す方法

ここまで解説したようにヒステックには様々な意味がありますが、共通する部分としては、感情的に不安定になりやすいという側面があります。そこでここからはヒステリーに対処する共通の方法を5つ提案させて頂きます。

①感情コントロール力をつける
②マインドフルネス力をつける
③アンガーマネジメント力をつける
④バランスの良い考え方を身につける
⑤体のリラックスを大事にする

ご自身に合いそうなものを組み合わせてご活用ください。

①感情コントロール力をつける

ヒステリックな方は感情コントロールが苦手で情緒不安定になりがちです。この点、感情コントロール力をつけると、情緒を安定させ、自暴自棄な行動を抑制することができます。情緒不安定になりがちな方は以下のコラムを参照ください。

情緒不安定を改善する方法

②マインドフルネス力をつける

最新の心療療法の1つにマインドフルネス療法があります。マインドフルネス力をつけると、自分を客観視し、冷静な行動をとれるようになります。以下のコラムでは様々なエクササイズを紹介しています。感情的になると我を失う…と感じる方は参考にしてみてください。

マインドフルネス療法とエクササイズ

③アンガーマネジメント

ヒステリックの中で、特に怒りは自分にも他人にも重大な悪影響を及ぼします。そこでヒステリックに怒ってしまう方にはアンガーマネジメントを学ぶことをおすすめします。アンガーマネジメントとは、怒りを予防・制御するための心理療法プログラムで、不適切な怒りの感情をうまくコントロールすることを目指す手法です。怒りをうまくコントロールできない方は以下のコラムを参照ください。

アンガーマネジメントのやり方

④バランスの良い考え方を身につける

認知行動療法は感情を安定させる考え方の学習や、健康的な行動のあり方を学んでいく心理療法です。保険適応もされることがあるベーシックな手法です。メンタルヘルス獲得の入門として、心理療法を学んだことがない方におすすめです。是非下記のコラムを参考にしてみてください。

認知行動療法の基礎

⑤身体のリラックスを大事に

ヒステリックな方は、交感神経が優位になりやすく、身体が長期的に緊張状態になります。その結果、不眠や血管系の病気になりやくなります。改善をするには、リラックスできる時間を作る、身体をほぐすなどが挙げられす。体が緊張しやすくリラックスできない…と感じる方は以下のコラムを参考にしてみてください。

身体のストレス発散法

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心理療法を学びたい方へ

私たち公認心理師は心理療法をしっかり学べる講座を開催しています。内容は以下の通りです。

・不安を軽くする,認知行動療法の学習
・不安を緩和,認知の偏りの改善
・あるがまま,森田療法の学習
・マインドフルネス,エクササイズ

皆さんのご来場をお待ちしています。↓興味がある方は以下の看板をクリックしてご検討ください↓

コミュニケーション講座,心理療法の学習

 

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典

[2] エティエンヌ・トリヤ(1998).『ヒステリーの歴史』安田一郎・横倉れい共訳、青土社

[4] VandenBos, G.R. (Ed.). (2007). APA Dictionary of Psychology. Washington, D.C.: American Psychological Association. (ファンデンボス, G.R. (監修)繁枡 算男・四本 裕子(監訳) APA 心理学大辞典 p92,p111,p244,p278,p335,p452,p573,p631,p744,p841,p881,p898 培風館)